クリエイティビティとプロジェクトマネジメントの程よい関係
[イベントレポート]
こんにちは!2023年の5月に入社した、KYOTO BRANCHの山﨑です。
今回は、先日開催した「プロジェクトマネジメント」に関するイベントの様子をレポートします。
そもそもPMとは何か、なぜ大事なのか
まず、「プロジェクトマネジメント(以下PM)」という言葉を初めて聞く方もいるかと思うので、簡単に紹介します。PMとはゴールや目標に向かい、計画、進捗を管理すること。加えてプロジェクトが円滑に進むよう「環境を整えること」や、クライアントやチームメンバーといった「人へ働きかけること」も重要視されるようになってきています。
そもそも「プロジェクト」とは独自のプロダクトやサービスを創造するために実施される有期的な業務を指します。そして「マネジメント」とは人や物やお金などの経営資源を効果的に活用しながら、ミッション達成を目指すこと。つまりPMとは目標達成に向けた活動を多角的に推進し、価値を生み出すことなのです。そして、プロジェクト全体の舵をとりながら、実行するチームと伴走し、ゴールまでサポートし続けるのがプロジェクトマネージャーの役割です。
PMはプロジェクトを進行する上で欠かせない役割・スキルであり、ゆえに知識体系も存在します。例えば、世界中のノウハウを集約したガイドブックが「PMBOK®GUIDE(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)」です。このPMBOK®GUIDE(通称:ピンボック)は、PMの実質的な世界標準として、多岐にわたるプロジェクトの現場で活用されています。また、PMの体系的知識を有していると証明されるのが米国PMI(Project Management Institute)が認定するPMP®(Project Management Professional)という国際資格。ロフトワークも2023年現在、約10名程PMP®保有者がいます。PMはロフトワークにおけるコアスキルといわれ、手厚い資格取得支援があるなど、社内でも浸透している考え方やメソッドです。
なぜロフトワークがここまでPMに力を入れているのか。それは私たちの仕事が、未知の領域にチャレンジする探究的なものが多いから、というのが理由の一つです。ロフトワークでは、Webやサービス開発、空間設計から新規事業支援まで、多種多様なプロジェクトを担当しています。答えのない仕事、そして社外のクリエイターとクライアントなど、異なるバックグラウンドや文化の人々をつなぎ合わせ、それぞれがもつ創造性を発揮させることに、PMの思考や知識が生きているのです。
初心者からベテランまで、立場を超えて「PM資格のその後」を考えた夜
一方、入社して間もない私はPMビギナー。「実際にPMの知識や資格が、どう現場に生きていくのか」という具体的なイメージが掴みきれていませんでした。私と同じように「知識体系と言われても、堅苦しいプロセスを踏襲するだけなのではないか」「結局、大事なのは現場力なのではないか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
PMベテランはもちろん、ビギナーの人にも「PM」の面白さを伝えるため実施したのが、「PM Lesson Kyoto #02 」。本イベントでは、PMP®ホルダーのベテランをゲスト登壇者として迎える一方、私と同じようなPMビギナーの人も参加され、経験値や業界の差を超えて議論が盛り上がる場となりました。具体的なトークの内容も、PMの歴史から始まり、PMP®の受験体験談、資格取得後の自身の変化など、PMをテーマに話題がどんどん広がっていったところからも、PMの奥深さを感じる一夜でした。
歴史を紐解きながら、PMの「本質」に迫る
イベント冒頭は、PMに関する講義を50以上開発されている、有限会社システムマネジメントアンドコントロール 代表取締役社長 野村 隆昌 先生が、PMの歴史についてお話しされました。歴史的に見ると、平安時代に「積算」という概念が登場し、計画を立ててそれをコントロールするようになったことが、日本におけるPMの始まりだと言われているそうです。
野村先生のお話の中で印象的だったのが、PMの本質は「人が人にはたらきかけること」である、ということ。PMと聞くと、なんだか無機質なもののような印象を持たれる方もいるかもしれません。しかし、プロジェクトは人と人の間で動くものであり、ゆえにプロジェクトマネージャーも、コストや生産性だけでなく、人に向き合う必要があります。
特に、昨今では心理的安全性、自己組織化、内発的動機づけ、ティール組織など、「人」が中心のマネジメントが注目されていると、野村先生は続けます。こうした社会的背景を考慮しても、PMの考え方の中心には人がいるのだということは重要になるはずです。
アートとWeb、それぞれの視点でみるPMの重要性
その後は、PMP®を先日取得したばかりの京都市立芸術大学・共有工房 技術職員の高橋 志津子さんと、ロフトワーク シニアディレクターの小野村による受験体験談が紹介されました。
高橋さんは、芸術大学の中にある共有工房のスタッフとして、学生やクリエイター、アーティストの方をサポートする立場。業務の中で、管理やマネジメントを「あえて」避けるような人も多い状況で進めるプロジェクトの難しさを痛感し、疲弊していく制作現場をどうにかできないかと、独学でPMP®にチャレンジしたそうです。
自身を「野生のプロジェクトマネージャー」と呼ぶ高橋さんは、「PMとは、目標までの道のりを定量化する技術であり、文化の異なるステークホルダーとうまくやっていくための共通言語だと思う。」と話していました。PMP®️を勉強したことで、「プロジェクト全体のスケジュールや役割分担を、長期的に逆算して考えられるようになった」とのことで、プロジェクトに対する視野の広がりを実感されたということでした。
(高橋さんの受験体験記は、こちらのnoteからもご覧いただけます。)
ロフトワークのテクニカルグループ シニアディレクターとして活動している小野村 香里は、『自己流・ロフトワーク流ではないPMを学びたい』とPMP®にチャレンジ。「勉強を通して、ロフトワークに入ってから仕事でやっていたことを改めて整理でき、アジャイルについても正しく理解することができた。」と話していました。PMには、形や正解はないけれど、型はある。それを学ぶことで、経験としてやってきたことに理論が肉付けされていくのかもしれません。
登壇者3名によるクロストークでは、PMのいまとこれからについて、参加者も交えてディスカッションしました。特に印象的だったのが、「クリエイティブにこだわる姿勢を、マネジメントしたりコントロールするのって難しいなと思う」という小野村からの話題提起。クリエイターをはじめ、プロフェッショナルとして創造物に関わる人には「良いものを作りたい」という強いこだわりやクラフトマンシップがあるのは自然なことです。一方で、こだわろうと思えば際限なく手を動かせてしまうからこそ、自己犠牲的な働き方に繋がったり、その結果、予算やコストといったプロジェクトにおける「制限」をはみ出してしまうこともあるのです。
PMにおいては「クライアントや社会のニーズに合わせたアウトプット」が最良とされます。「作り手側の最良」を目指すことは、必ずしも最終目的とされていないのです。作り手、アーティスト側のクラフトマンシップと、ビジネスニーズや制限内に収めるマネジメント。プロジェクトマネージャーは、その両者の間でバランスをとりながら「目指すべきゴール」を見極めていく必要があります。それはすなわち「そもそも、良い品質とは何か」という議論にも繋がってくるでしょう。このように、クロストークではPMについての多角的な議論が展開されました。
型を学び、実務を重ねながら「良いバランス」を見つけていく
イベントの中でも頻出していた言葉に「バランス」というものがありました。
クリエイターとクライアントとのバランス、予算と品質のバランスなど、PMを語る上で外せない言葉のようです。ただ、「バランス」という言葉は感覚的なもので、正直、今の私には掴みどころがない言葉ともいまえす。
それでも、基本の型となる知識を学び、実務での経験値が重なりあうことで、きっとこの「バランス」の正体を掴んでいけるような気がしています。そのために、まずはPMBOK®のような型を通じ、PMの全体像を掴んでいきたいと感じました。
最後に、ロフトワークでは、共に働く仲間を募集しています!PMを学ぶための社内勉強会や、資格取得のための受験費補助など手厚いサポートを受けることができる環境。PMスキルを伸ばしながら、創造的なプロジェクトに力を発揮していきたいと考えている方、ぜひ一緒に働いてみませんか?
一緒に働く仲間を募集しています
各拠点にて募集をしています。
カジュアルな説明会も開催しているので、ぜひお気軽に参加ください。