FINDING
吉田 真央 2021.08.02

「若者に会う」vol.1
人とつながる、僕たちの本音。

はじめまして!ロフトワークプロデューサーの吉田です。プロデューサーという役職柄、あらゆる企業の皆さんとお話する機会があるのですが、その中でも「若者」というキーワードがよく出てきます。若者向けに〜とか、若者にもっと知ってもらいたくて〜など。元々、ラジオのディレクターやファッション誌の編集者をやりながら生声を聞いてきたからこそ、ちょっと感じる社会と若者の間にある距離感。考えるより、まずは飛び込んでみよう。ということで、ここでは若者の生活に入り込んで見えてきた、リアルな声をお届けします。

吉田 真央

Author吉田 真央(プロデューサー)

大阪府出身。関西外国語大学在学中、公立中学校にて特別支援学級の講師を経験。卒業後は、幼少の頃から憧れていた制作の道へ。関西のラジオ局でディレクターの経験を経て、上京。女性ファッション誌の編集者として誌面制作、広告、イベント、商品開発に携わる。海外留学を経験したのち、2020年よりロフトワークに入社。趣味は器集め。

入り込みテーマ

学生が作り出すコミュニティのリアル

輪に入れてくれた方たち

(作)ドット荘

出会いは、ロフトワークも携った「DESIGN WEEK TANGO 2021」のプロジェクト。丹後ちりめんをハックするプロジェクトに参加してくれていたのが彼らでした(詳しくはコチラ)。話し掛けてみると京都工芸繊維大学生で、その中の2名が京都の町屋でシェアハウスをしてるという。若者のコミュニティに興味があると相談すると、即OK、ナンパ成功! 早くて軽くてゆるい、最高な彼らに会いにいきました。

自分たちで町屋を改装しながら住んでいるらしく、まだ途中段階だそう。至るところに、イスと人。場違いな私! と内心、心配していたのですが、どうぞ〜と温かい笑顔と冷たい紅茶で迎え入れてくれました。

”コロナ後、世界に自分ひとりなんじゃないかって思った”

よしだ みんなは何がきっかけで暮らしはじめたの?

たむにい まず改装というのをやってみたかった。僕、建築やっていて、彼ら(かいり、まえしょー)も建築やデザインをやっていて。

すみちゃん 私は将来田舎で暮らしたくて古民家にも興味があったので、大学生活で体験してみたいなと思って。

かいり そもそもは、田舎に住んでいる友達の家にみんなで遊びにいった時に仲良くなって。後日みんなで京都で飲んでいる時に、テンション上がって踊ってたら、このみんなで暮らしたら楽しいんじゃない? ってなったんです。

よしだ 踊ってて(笑)。一般人が改装できる町屋って、どう探したら見つかるの?

かいり そうなんです、難しくて。不動産サイトを見てもピンとくるものがなくて。町にある不動産屋に直接行って探してたら、この家を見つけたんです。しかも本当に古かったので「改装するからその分家賃安くしてください」って大家さんに交渉しました。使う材料を全部項目化して、かかる費用も算出して、すごい頑張りましたね。結果、家賃8ヶ月分を改修費として代替してます、大家さんも良い人だったのもよかった。

よしだ おお、すごい。自分たちで交渉して改装したんだ、しかも家賃交渉まで。その過程も含めてこの家が持つどこか新鮮な雰囲気に出ている気がする。気持ちの面も聞いてみたいのだけれど、コロナも大きな理由のひとつだったのかな?

すみちゃん そうですね。私は一人暮らしだったんですが、コロナ後、すごく孤独を感じたんです。オンラインばかりだった時に気分転換に外でランニングしていたら、近所の知らない人に話しかけられて家に戻りなさいと指導されたこともあって。家にいると、世界に私ひとりなのかもと思う瞬間もありました。だから、人が隣にいる生活いいなって、心的にもよかった。

つながるために、共通点をわざわざ求めようとはしない

ロフトワークも携った「DESIGN WEEK TANGO 2021」のプロジェクトに参加してくれたチーム「緬麺」

よしだ ここの2人はなんで出入りするようになったの?

おーみん かいりさん、すみちゃんちゃんと知り合いなのと、私もすぐ近くに作業場所を借りてることもあって集まるようになりました。来たら来たで、知らない人もいるので、勝手に知り合いが増えたりしますね。

おくまり 私の場合、友達と言える人はここの住人の中にはいなくて(一同笑!)最初です!今は違いますよ!(笑)おーみんととゼミで一緒になって、プロジェクトあるんだけど参加する?みたいな感じで、その流れでここの住民とつながった感じです。それがロフトワークの丹後ちりめんのプロジェクトでした。

たむにい こんな感じで、それぞれが友達連れて来ることもよくあります。友達にも、自分いないけど誰かいると思うから先入ってて、とか普通なので、家に帰って知らない人がいるのも日常ですね。

よしだ 家帰って知らない誰かいる、みたいな状況って中々ないし、確かに偶然出会う機会って少なくなったよね。ここ以外で、今って友達どうやって作ってる?SNSとか使うのかな?

おーみん 私写真部なんですが、新入生歓迎会も去年・一昨年とオンラインでやったんですよ。画面上で話して、レクリエーションもしたんですが、あまり仲良くなれなくて。コロナが明けて、対面で話して、初めてこういう子なんだって初めて知ったことも多いです。実際、意外な子と仲良くなりました。

よしだ オンラインやSNSで交流する機会を作ろうと色んなところで動きがあるけど、実際は実感がないままなのかもしれないね。

おーみん 実際に会ったときの雰囲気とか肌感が重要だと思います、SNSだけではどうしても友達にまでいかない。

よしだ 話の途中なんですが…あそこにいる方は?

マイケル マイケルです。すみちゃんちゃんきっかけでここにきました、今居候してます。

すみちゃん コロナがはじまって、私が田舎暮らしに興味あるということもあって、糸島のシェアハウスに行ったんです。1ヶ月間行ったんですけど、そこで同室だったのかマイケルさん。

マイケル 私エンジニアなんですが、田舎のシェアハウスとかを転々としているんです。それもコミュニティがあった方がそこの地域性が知れるし、社会人になってから友達作るのって大変じゃないですか。でもシェアハウスってめちゃめちゃできるんですよ。面白いのが東京では友達できなくて、田舎って情報共有大事なのでめちゃめちゃ話すんです。あとコンセプトのあるシェアハウスに行くようにしてますね。一緒に畑したり、一緒に家直したりとか。そういうところに行くと、興味が同じなんで、余計に友達出来やすい。自動的にガンガンつながっていく。みたいな。

すみちゃん 確かにはじめましてで話すよりも、そこに何か一緒にすることがあれば、仲良くなるスピードが早い気がします。一緒の作業があった方が関わりやすいのかな。

よしだ ここはそういう、コンセプト的なものってある?

かいり いやー、ムードっぽいものに人が集まっているような感じがある。根幹的なところは同じというか、多分作り手を大事にするみたいな感覚がみんな同じで。それに対しての目標が彼の場合なら建築とか、家具とか、農作物とか、対象は違うんですけど根幹の大事にしたいところは一緒。そこすら違うとなるとまた難しい気がする。

たむら たぶん根幹の奥にはそういうことがあると思うけど、僕らの感覚としては共通点をわざわざ求めようとはしてないですね。

一緒じゃなきゃという空気感がここにはない

かいり 僕、家具が好きなんですけど、この家イスめっちゃ多いんです。1人でいてもいいし、みんなで集まってもいいし、気分のまま過ごしてます。それぞれの好きなものが偶然かぶれば一緒に何かするし、かぶらなければ勝手にやってるしっていう。

おーみん よくサークルとかである、みんな一緒じゃなきゃみたいな同調圧力は全くない。ここに来たらそれぞれが好きなことをしててみんな生きやすそうというか、自分もこんな感じでいいんだなって思える。好きなことは認め合うし、それが居心地が良いから来ちゃいます。

よしだ シェアハウスって、何かすごく価値観が合った人たちが集まるイメージが私はあったけど、今日の話聞いているとそうじゃない人の方が向いているのかもですね。

おくまり それが受け入れられる人が集まれば出来るんだと思います。

よしだ みんなの周りにも、同じ感覚で同居している人っているの?

たむら コロナ後に爆増!(一同笑)この近くにも2件ほど知ってます。学生なんで、単純に学内でも作業場所が使えなくなったというのもありますね。

よしだ 誰でも使える作業できる場所が、閉鎖されているのか。

おーみん 作業部屋があって、元々はデザインとか、建築とか勉強している異分野の人がいて、考えていることを話したりとかする時間があったんですけど、コロナでなくなっちゃって。人がいる空間の方が、考えを共有したり、喋っている中で自分の考えがわかったり、刺激もらったりとか。多分みんなそれがないのが寂しいというか。

よしだ それは、やっぱり画面では全然違うんだよね?

かいり コロナ後の、僕らも友達とのプロジェクトときもはじめはオンラインでやっていたんですけど、後半オフラインでも実施するようになってから、オフラインに勝てるもんないなってなってます。丹後ちりめんも最初からオフラインでこの家でやりました。結局、プロジェクトとしても進めやすいし、仲も良くなれる。仲良くないと、意見も言いにくいんで。

人がランダムに行き交う場・本音を話せる場が心地良い

よしだ みんな、仲が近くなる瞬間ってどんな時?

すみちゃん 私はお酒です。

かいり ご飯とか1回に2キロとか作るんですよ、それをみんなで食べればもう友達です。

たむら 僕はあまり人とのつながりをすごい求める訳ではないですね。かといって、繋がりたくない訳でもないんですよ。話したい時に話すことができるのがよくて、人がランダムに適当にいる場があるのが一番嬉しい。

おーみん 周りにもうらやましいって言われます。学校だとプロジェクトとかゼミとか期限があるけど、ここはそういうんじゃないし。それこそ、ご飯食べたりもするし、恋愛の話もするし、普通の話も出来る場所。でも、自分の分野の話も出来る。

おくまり 本音を話せる場があることが1番大事な気がします。みなさんも経験あるかもなんですけど、話すことが目的じゃなくて、その場にいることを楽しむという空気ってたまにあって。ここにはそういう感覚がなくて、自由だし、でも適度な距離感があります。

よしだ 確かに、飲み会でひとりだけ食べていなくて、会話に入らずずっとSNS見てるとかすると、なんで来たの?って空気になるもんね。

おくまり ずっと着飾っている感覚だったんです、それもそれで楽しいと思うんですけど。そういう空気だと本音が話せないので、仲良くなるスピードが遅いし本音も見えない。

友達とはなんなのか、そんなことは愚問

よしだ みんなはちょっと先や、これからについて考えたりすることある?

たむら 学生がこの場所を引き継いでもらえたら嬉しいかも。

かいり 僕らが東京とかで就職したとしても、京都帰ってきたらこの家があって帰って来れる。っていう、実家みたいな場所とかになってたら嬉しい。

よしだ そっか、実家か。今日話を聞いてみて、この場所ってシェアハウスって言葉がしっくり来ない感じもして。

かいり そうですね、ここはトッド荘と呼んでます。ここに残ってた映画のポスターからとったんです。コミュニティなのかもわからない。ただ、僕らは自分たちのこと「同居人」って呼んでます。

よしだ みんなは何かコミュニティを作ろうとしてなくて、そこに名前をつけてひと括りにするなんて反省。あと今日持ってきた質問で最後に「みんなにとって友達とは?」という用意してたけど、これも駄目なやつだ。

一同 (笑)

たむら そうですね。愚問です。

インタビュー後、「よしださんも、いつでもどうぞ」と言ってくれました。

中に入ってみてわかったことは、ここは彼らがやりたいことに素直でいるための場所であり、その場所を自分で作ることに意味があること。コミュニティだ、友達だということではなく、自分のライフスタンスとしてここにいること。でした。

最後まで、読んでいただきありがとうございました!少しでも若者との距離感が近くなっていたら嬉しいです。
では、また次の出会いでお待ちしています!

写真/おーみん
構成・文・写真/吉田 真央

Keywords

Next Contents

The KYOTO Shinbun’s Reportage
京都新聞論説委員が見る京都ルポ「課題の価値」