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古田 希生, 大内 裕未, 原 亮介, 丸山 翔哉, 手塚 太地, 松本 遼, 棚橋 弘季, 大里 カオル 2025.07.07

手を動かすから見えてくる、AIと価値をつくるプロセス
「未来デザインとAI」ワークショップレポート

AIは、単なる効率化の道具ではない。ともに価値を創造するパートナーだ。

そんなメッセージのもと開催された、ロフトワーク・SHIBUYA QWS共催のカンファレンス「未来デザインとAI」。多様な分野の実践者が、AIと未来社会をめぐる議論を交わした前半のトークセッションに続いて、後半では参加者自身が手を動かす4つのワークショップが実施されました。
ロフトワークはこれまでも「実践=プロジェクト」を通じて、変革に挑む人々とともに社会の常識を問い直し、多様な分野で未来の可能性を形にしてきました。生成AIという急激な技術変化のただ中にあっても、その本質的な価値は、自ら試し、手を動かしてこそ見えてくる。今回のワークショップには、そんな思いが込められています。

人と人、そして人とAIのあいだで生まれる偶発的な化学反応は、どんな新しい価値を導くのか。本記事では「未来洞察」「UXシナリオ」「情報設計」「社会のデザイン」という4つの視点から、AIとの共創を試みた実践の記録をまとめます。

今回のイベントに合わせて制作されたリーフレットでも、実践の記録として、4つのワークショップの内容を紹介しました。

<AI×未来洞察>
未来をその手中に掴む「Future in Hands」

生成AIを活用し、誰もが未来を鮮明に描けるように

急速に成長する生成AI技術、その変化の波の真っ只中にいる私たち。多くの企業がAIの可能性を感じつつも、ツール導入にとどまり、価値創造まで結びつけられていないのが実情です。

もし、これまで人間が行ってきた複雑で専門的な領域の一部をAIが担うことができたなら、そこにどんな価値が生まれるのでしょうか。ロフトワークのVUユニットが考案したのは、不確かな未来における変化の兆しを捉える「未来洞察」のワークフローをAIと共創し、事業戦略立案やイノベーション創出に活かす「未来シナリオ」を共に描き出す手法でした。

本ワークショップ「Future in Hands」では、ロフトワークが開発した共創型サービスを活用し、未来シナリオとそれに基づくデモ映像を生成。これまで専門知識が必要とされてきた未来洞察にAIを活用することで、未来トレンドの収集、兆候(シグナル)の抽出、シナリオの構築までを可能にしました。従来、数週間から数ヶ月を要していたリサーチプロセスを、約2時間に凝縮して体験することができます。これは複雑で困難な「未来洞察」の手法を多くの人の手に渡し、民主化する試みと言えます。

議論から未来が生成される『Future in Hands』のプロセス

今ある兆しから、さまざまな未来の変化やニーズを探る「未来洞察」の取り組み。新規事業の立ち上げをはじめ、既存事業のリポジショニング、既存事業の撤退など様々な戦略へ昇華できる可能性を持っています。

一方で、分析者の経験値や知識、テーマへの解像度によっては未来シナリオが現実の延長線上から外れることができず、飛躍したアウトプットが生まれづらいのが難点です。

『Future in Hands』を活用した本ワークでは、AIが抽出する社会の兆し(シグナル)を起点に、人の想像力を掛け合わせることで、誰もがリアルな未来の物語を描くことのできるワークショップを設計しました。

今回は、未来シナリオを制作するためのテーマを「健康」「都市」「教育」の3つに設定。6つの班に別れた参加者は、サービス上で提示される幾つかの選択肢についてメンバー間で議論を交わし、選択することで未来シナリオを生成していきます。

具体的には、以下のステップで進行していきました。

「Future in Hands」の進行プロセス

Step 1:未来トレンドの把握

キーワードを選択すると、今ある変化をもとに今後数十年で拡大・普及すると予測される動向「未来トレンド」が提示されます。これらの情報の収集・特定にあたっては、これまでロフトワークが未来洞察プロジェクトで活用してきた分析フレームワークを組み合わせて活用しています。

Step 2:未来の兆しの選択

トレンドを元にした、シナリオの起点となる「未来の兆し」が複数提示されます。参加者が自身のシナリオの起点としたい兆しを選択すると、未来に起こり得る現実的な状況を描写した「未来シナリオ」のイントロが生成されます。

Step 3:シナリオの分岐と発展

「未来シナリオの分岐」として3つの選択肢が提示されます。参加者たちはチームで議論を行い、異なる内容の中からどの内容が最も可能性を感じるかを選択。すると、内容がブラッシュアップされた未来シナリオが生成されます。このプロセスを計3回繰り返すことで、最終的な未来シナリオが導かれます。

Step 4:事業機会の提案

未来シナリオと同時に、それと関連した生活者や社会の抱えるニーズや課題を分析し、未来における事業機会を提案する「アナリストレポート」も提示。参加者たちは、自分たちの対話と選択から生まれた未来シナリオと出会い、アナリストレポートを通してそこにある事業可能性を把握・検討していくことができます。

ワークを通して見えてきたもの

生成AIが提示する数十年後の未来トレンドや未来シナリオの分岐を観察しながら、いま自分たちが生きる現実と擦り合わせるようにして議論を深めていった参加者たち。印象的だったのは、未来シナリオを前に、参加者たちが予想以上に活発な議論を展開したことです。「この未来社会には、どんな意味や可能性があるのか」という人間の目での判断が行われ、選び取っていく様子は、AIによって人の可能性が創発された瞬間として見えました。

また、「自分たちだけでは思い浮かばない選択肢がたくさん提示された」という声が多数聞かれました。テーマを設定し、提示された未来トレンドや未来シナリオの分岐点の多くは参加者にとって新規性があったと言えます。

各チームの成果発表の時間には、未来シナリオとアナリストレポートをもとに生成された映像も掲示されました。未来洞察の経験のある無しに関わらず、個々人の「判断」を持ち寄るだけで、わずか2時間で説得力のある未来像が描かれる。まさにこれからの価値創造のあり方を示唆するような光景でした。

このワークショップにおいて驚くべきことがもう1つあります。それは、「Future in Hands」のプロダクトを、新卒1年目の社員がAIを活用しノーコードで全て作成したという事実。ワークショップの成り立ちそのものからも、AI活用の可能性を感じさせるものになりました。

<AI×UXシナリオ>
未来施策のUXを導く「THE HUMAN開発センター」

これまでのUX手法は、未来に通用するのか?

「未来社会における新たなサービスの開発」を目指すとき、現在のユーザーを起点とするペルソナやジャーニーマップはどこまで有効なのでしょうか? この問いから立ち上がったのが、仮想の“未来人”の思考と行動モデルをAIで生成し、UXシナリオを描く試み「THE HUMAN」です。

人間の根源的な行動心理や進化心理、文化人類学的な知見をベースに、未来の社会・技術・倫理を想定することで、「まだ存在しない顧客像」に向き合う方法論の構築を目指しています。

このプログラムを開発したのは、ロフトワークの中でもアート・テクノロジー・カルチャーを横断しながら、社会に新たな世界線を提示していく専門チーム、MVMNT(ムーブメント)です。今回のワークショップは、「THE HUMAN」のアイデアをMVP(Minimum Viable Product)として試す初の公開テストの場。参加者は、仮想未来人のプロファイルをもとに、彼らの世界観を読み解き、対話し、サービスの可能性を探るプロセスを体験しました。

「現代と全く異なる価値観」を持つ、未来の人物のペルソナを描く

ワークでは、あらかじめMVMNTチームが生成した2人の未来人に向けたサービスを考案しました。そのうちの一人、「MY Story Tellers」と名付けられた未来人は、「子どもを持たない人生」を選択し、その代わりに「記憶や感情、意志」をテクノロジーの力で物語として残し、誰かに継承することを志向しています。

現代とは全く異なる価値観ですが、その背景には、未来社会における身体観・死生観の変化が想定されています。サイボーグ化や意識の部分保存といった技術が一般化すると、自己の存在意義をどのように未来へ託すのか、「遺す」という営みが再定義されていくかもしれません。このような仮想のペルソナを起点にUXを考えていくプロセスが、参加者の思考を刺激しました。

ワークを通して見えてきたもの

ワークショップは4ステップで構成されました。

  1. THE HUMANのプロファイル情報を読み込む
  2. AIチャットツールで再現された彼らに対し、インタビュー形式で行動や価値観を深掘る
  3. その未来人に向けたサービスを構想する
  4. 最後に、THE HUMANの改善点や実用化に向けた議論を行う

とくに印象的だったのは、インタビューによって未来人像に内在する価値観があらわになっていく過程です。たとえば、「最近困ったことはなんですか」「1日をどう過ごしますか」といった具体的な質問からは、想像よりもリアルで繊細な感情が立ち上がり、物語の輪郭が次第に濃くなっていきました。

また、サービス構想のフェーズでも、「終活サービスや墓を未来風にアップデートする」という問いに対して、デジタルアーカイブや分散型贈与による継承の仕組みなど、さまざまなアイデアが持ち寄られました。

AIへの違和感と期待のあいだで

「未来人のUXシナリオを考える」という先鋭的な取り組みに挑んだ参加者たち。参加後のアンケートでは、「THE HUMANを自分の会社でも使ってみたい」という声が多く見られた一方、「モデルに個性が薄い」「ブラックボックス感がある」といった改善点も挙がりました。

何より、「問いを通じて自分たちの思考が深まった」「未来をフィクションとして可視化することに意味がある」といった意見からは、AIモデルが単に解を出すのではなく、対話の起点として機能していたことがわかります。ビジネスという土俵の中で、AIに対する距離感や違和感も含めて、その場にいた人間の感情や思考に揺らぎが生まれたこと。それこそが、本ワークショップの最大の成果だったと言えるかもしれません。

THE HUMANは、どこへ向かうのか?

セッションの最後には、「どのようにTHE HUMANを発展させられるか?」をテーマにグループディスカッションを実施。ペルソナの多様性や組織での活用方法など、現場視点の意見が数多く出されました。

THE HUMANはまだβ版です。しかし、未来にいる誰かの視点を想像しながら、私たちのアイデアや問いを深めていくプロセスには、これまでにないUXデザインの可能性が宿っているはず。次に出会う未来人は、どんな世界を見ているのでしょうか? ぜひ一緒に、THE HUMANの開発に加わってみませんか。

企画担当チーム

MVMNT Unit

エモーショナルな社会と文化の創造をミッションに、アーティスト/クリエイターとともに未知のムーブメント(新たな伝説)を生み出す

ユニットの詳細はこちら

<AI×情報設計>
情報の見方を変える「価値のリフレーミング」

「情報の探し方」が大きく変わる今、私たちはどう情報を設計できるか?

生成AIの登場により、情報の探し方や扱い方が大きく変わる今、人はAIとどう共創していけるのか?

ロフトワークのMTRLチームが実施した「価値のリフレーミング」ワークショップでは、まだ知られていない観光地の魅力を「情報として伝える」体験型セッションを開催。参加者はAIを活用した独自ツールを使って、観光サイトを生成・編集しました。

「人が行きたくなる」情報設計とは何かを考え、表現を人の手でブラッシュアップ。AIによる効率的な情報収集と、人間の微細な感性を掛け合わせることで、Webサイト上の新たな情報設計の手法に挑みました。

AIと人間の機能分担が、より良い情報発信をかたちづくる

冒頭のキースピーチでは、検索エンジンの誕生から生成AIの普及まで、情報探索の変遷が語られました。AIを使うことで「情報のありかを探す」手間は減り、質問を投げかけるだけで要約や比較もできるようになりました。

しかし、何を伝えるべきかという動機や、共感を生む言葉の設計は、今も人に委ねられています。今回のワークショップは、「AIを活用した、人の心を動かす情報設計とは何か?」という問いを軸に展開されました。

参加者は4〜5人のチーム(A〜F班)に分かれ、ChatGPTなどを使って“隠れた観光地”を探索。弊社開発のAIツールを用い、フォームに情報を入力するだけで画像とテキストが生成され、観光サイトが完成します。

「自然」「伝統文化」「お祭り」などのキーワードをもとに、AIとの対話を重ねながら地域を選定。「アクセス指数」や「ランチ充実度」など独自の評価軸を設定し、候補地をスコアで比較。ロジックと感性を組み合わせ、各チームが自分たちなりの“魅力”を再定義していきました。

印象的だったのは、多くの参加者がAIに任せきりにせず、得られた情報を自分たちで精査・再構成していたこと。共感を生む言い回しを人の手で整える姿勢が随所に見られ、「AIの文章に気持ちが乗っていないと感じたので書き換えた」と語る声もありました。

魅力を伝えるのは、人間/AIのどちらが上手い?投票で見えた気づき

各チームが制作した観光サイトに対し、参加者間で「どのWebサイトが良いか」という視点から投票を行いました。ここでは、AIが完全に自動生成したサイトを紛れさせて、各チームの制作物に加えて表示する、という仕掛けを実施。

結果として最多票を獲得したのは、チームF、つまり人間が協力して制作したサイトとなりました。彼らのサイトは、自然や伝統といった観光地の魅力に、AIを使って収集した科学的エビデンスを添え、ユーモアや情緒も加えた説得力ある内容に仕上がっています。

一方、AIが自動生成したサイトに票を投じた参加者も。彼らは「最も心を動かされたもの人間が関わっていなかったと知って、少し複雑だった」と振り返ります。これは、人間らしさが介在しないアウトプットへの“居心地の悪さ”とも言えるかもしれません。

「誰がどんな意図で作ったのか」が見えづらくなる──。その違和感は、AIとの共創を考えるうえで重要なヒントと言えるでしょう。

AI活用は、業務効率化に留まらない

AIは単なる効率化のツールではなく、新たな視点を得て、情報の“見せ方”を再設計する手段にもなり得ます。情報があふれる時代において、「なにをどう伝えるか」は、ますます本質的な問いとなっていくでしょう。

今回のワークを通じて見えたのは、これから企業に求められるのは「AIに任せる部分」と「人が向き合う部分」を見極める設計力なのかもしれない、ということ。AIとの共創はまだ始まったばかり。情報設計や顧客接点をつくる現場では、これからも「人間らしさとは何か?」という問いに向き合いながら、価値の再編集は続いていきます。

企画担当チーム

MTRL

素材メーカーとクリエイターの共創を支援し、「素材が牽引するイノベーション」を生み出すプロジェクトデザインチーム

事業部の詳細はこちら

<AI社会のデザイン>
人口減少問題の介入点を探る「AI社会デザイン会議」

複雑な課題の介入点を“みんな”で考える AI社会のデザイン会義

人口減少という喫緊の社会課題に対し、私たちが打つべき一手。それは、どのようなアプローチから導かれるのでしょうか?

「AI社会のデザイン会議」では、AIを「共創パートナー」として活用し、問題構造を多角的に可視化しながら効果的な介入点を探る議論を展開。「システム思考」のフレームワークにAIを導入することで、議論やアイデア創出の質を高め、複雑な課題に対する介入点を発見するプロセスを体験しました。

システム思考×AIで、複雑な課題の構造と打ち手を明らかにするワーク

本ワークは、AIによる社会変化と人口減少という複合的な課題に対して、生成AIを活用しながら「どこに、どう介入できるのか?」という視点を探ることを目的とし、AIを組み込んだインプットと対話を重ねる形で進行していきました。

ワークショップの流れ

  • STEP1:イントロダクション
  • STEP2:構造のインプット・インプットトーク
  • STEP3:全体ディスカッション
  • STEP4:ループ図の生成・解釈
  • STEP5:チームディスカッション

STEP1〜2 イントロ〜構造インプット

ワークは「構造のインプット」からスタート。まず、事前にAIで収集した「生成AI」や「人口減少」による社会変化とその影響をまとめた調査データを紹介。さらに、人口減少の問題を研究している専門家によるインプットトークや質疑応答を実施。人口減少社会の全体像と、その中で注目するべきポイントを把握していきます。

有識者からのインプットトークとして、リクルートワークス研究所 研究員/アナリストの坂本貴志さんをお呼びし、人口減少社会における課題について参加者を交えて対話を行なった。

STEP3 全体ディスカッション

インプットを踏まえ、私たちの生活にどのような影響があるかを参加者全員で考える「全体ディスカッション」を実施。AIや人口減少が影響を与えるであろう労働市場の二極化や人手不足の問題、少子化対策に向けた社会保障の考え方、地域での子育ての共助の仕組みのあり方、コミュニティとしての豊かさの実現など、多様な議論が展開されました。

STEP4 ループ図の生成・解釈

専門家によるインプットや全体ディスカッションの内容をAIが学習し、議論の要約とシステム思考のツール「ループ図」をリアルタイムで自動生成します。参加者の意見も反映した形で、AIの社会的影響や人口減少問題が抱える多様なループが図示されることで、問題構造が可視化されます。

議論を元に自動生成されたループ図の例。”完成形”ではないものの、課題の構造を掴み、議論を深める下地として大きく機能した。

STEP5 チームディスカッション

ループ図を受けて、「なぜそうなるのか」という問題の根本にある社会構造や人々の無意識の前提(メンタルモデル)にどう働きかけていくべきか、より少人数のチームで議論を深化。この議論もAIが要約し、具体的な打ち手(レバレッジポイント)をその場で確認することができ、議論の最終的な着地点も、参加者間で認識を揃えることができました。

議論の質を凝縮する。システム思考にAIを活用するメリット

従来、複雑な社会課題を紐解き、事業や施策のアイデアを考えていく場合には、膨大な事前調査と、複数回に分けたワークショップやループ図の検討が必要でした。しかし、AIを適切に活用することで、これらを数時間に凝縮することができます

これは、単に時間短縮をもたらすだけではありません。短時間で実施することで、思考が連続的になってアイデアの質が向上し、周囲をより巻き込みやすくなるというメリットがあります。実際、参加者からも「従来ならワーク実施後、1週間〜1ヶ月かけて支援会社から報告書が提出されるが、その間に周囲の熱が冷めてしまうこともあった。これは熱量が維持できる」という声がありました。

また「議論内容の記録」についても、従来はポストイット等でテキスト化した情報しか残らず、口頭での議論(本来であれば、細かな発話内容にこそ価値があるにも関わらず)が記録しにくく、記録できたとしても人力での文字起こしや内容整理に工数がかかりすぎるという課題がありました。音声データの分析をAIが担うことで、これまで拾えていなかった情報を活用でき、アウトプットの可能性が広がっていきます。

このように、AIが調査・統合・ループ図の仮作成を担うことで、人間同士の対話とアイディエーション、認識合わせの質を高め、複雑かつ巨大な社会課題に対しても、課題解決に向けた次の一手を導くことにつながるのです。

AIとともに社会課題を紐解き、次の一手を考えるために

一方で、AIを社会価値創出のパートナーとして迎えるうえでは注意点もあります。AIが提示する情報を鵜呑みにせず、批判的に検討する「目利き」の力が必要であること 。「何を解決したいか」「どこを目指すか」という明確な目的意識を人間側がしっかり持つこと。これらのスタンスや技量は、「AIとの共創」を推進していくためには欠かせないものです。

そして何より、AI活用以上に、地域や世代、業界を超えた多様な人々の視点を取り入れることなしには、本質的な課題発見や合意形成に至れない、ということも言えるでしょう。

私たちはどんな未来を目指すのか、そのために技術をどう活用していくのか?それを考えるのは、私たち人間です。私たちが目指すべき豊かさとはどのようなものでしょうか?ロフトワークはこれからも、多様な人々と議論を重ね、AIも活用しながら、この問いに向き合っていきます。

企画担当チーム

SYSTEM IMPACT LAB.

システム思考と人類学的アプローチを取り入れたデザインリサーチの方法で、
社会的インパクトをもたらす構造を明らかにする

サービスの詳細はこちら

手を動かし続ける、これからの実践に向けて

4つのワークショップを通じて明らかになったのは、AIとの共創における一つの本質でした。それは、AIが単なる道具を超えて、私たちの思考を拡張し、創造的な対話を促進する存在になり得るということです。

どのワークショップにも共通していたのは、参加者たちがAIの力を借りつつも、批評的に検討し、自分たちの感性や意思のもと選択とブラッシュを重ねていったこと。AIとの共創とは、テクノロジーに全てを委ねることではなく、むしろ人間性をより鮮明にしていく営みなのかもしれません。

ロフトワークは今後も、この「実践を通じた学び」を大切にしながら、AIと人がともに価値を創造する新たな方法論の探求を続けていきます。変化の激しい時代だからこそ、手を動かし、試行錯誤を重ね、多様な人々との対話を通じて、未来への道筋を描いていく。そんな実践的なアプローチで、社会に新たな可能性を提示していきたいと考えています。

私たちと一緒に、AIとの共創による価値創造を探求してみませんか? 次はあなたも、手を動かしながら未来をデザインする実践者の一人として、この旅路に加わっていただけることを願っています。

執筆:乾 隼人, 宮崎 真衣, MAO, 後閑 裕太朗
スチール撮影:川島 彩水

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スタートアップ連携の新たな一手、
大企業が「戦略的な顧客」として繋がる可能性