ロフトワーク渋谷オフィスメンバー一同
ロフトワーク京都オフィスメンバー一同

あけましておめでとうございます。本年もロフトワークをよろしくお願いします。
マネジメントメンバーより、それぞれ2016年のご挨拶と抱負をお届けします。

対話からはじまる"デザイン"

諏訪光洋(代表取締役社長)

今年の年末年始はタイバンコクで過ごしました。…っていうと、素敵リゾート正月っぽい? 
もちろん「少し」常夏のバンコクを楽しんできたけど、主な目的はFabCafe Bangkokメンバーとの対話。

FabCafeはものづくりのコミュニティだけどローカルなカフェでもある。
東京、台北、バンコク、バルセロナ、南仏トゥールーズ。
世界に5つに広がったFabCafeは所謂「マニュアル化されたフランチャイズ」ではない。
各国各地の文化、クリエイティブとデジタルファブリケーションの環境、その地でFabCafeをスタートさせる仲間がどんなFabCafeをデザインするかによってビジネスモデルすら異なっている。

新しいビジネスやサービス、そしてコミュニティをつくろうとする事は簡単ではない。
少し壁にぶつかったFabCafe Bangkokに僕がまずできる事はバンコクに渡り、カラヤ達のBangkokメンバーと「話すこと」だった。
良い結論がでるか予想は出来なかった。

メンバーと話した結果は自分でも驚くほどだった。
基本的な情報はわかっていたはずだけど、状況を直接聞き、対話をし、アイデアをぶつけ合う事でその壁を乗り越える最初の手立てを見つけられた。僕がこの15年、コミュニティやビジネスをデザインしてきた経験も役に立った。

2015年。ロフトワークは、
飛騨古川に木と向き合う事業「ヒダクマ」をスタートし、
台湾にFabCafe Taipeiに続き「ロフトワーク台湾」をつくり、
FabCafe Tokyoを2倍のスペースに拡張し、
南仏にFabCafe Toulouseがオープンし、
”素材”と向き合うコワーキングスペース「MTRL(マテリアル)」を京都と渋谷にオープンする、
と日本と世界に場を広げた1年だった。

でも大切なのはこれから。
それぞれのサービスやコミュニティを育てる、繋げる。そして何をもたらすのか。
日本と世界に拡大するクリエイティブなコミュニティと一緒に企業や社会の課題にどう取り組むのか。

IoT, コミュニケーションと体験から考える職場や街づくり,  次に訪れるバイオ, 新しい活用を待つ伝統的な技や素材, 地域の課題, AIとロボット, ASEAN経済共同体の発足。今年も変化は訪れ課題は連続している。

個人の家とWEBサービスの出会いはAirbnbを生み、自家用車とWEBテクノロジーの出会いがタクシーを超える体験をもたらすUberを生んだ。
企業や社会が持つ”アセット”はテクノロジーとクリエイティブ、そして新しい場と出会う事でもっと新しい価値が生まれる。

京職人の手による漆と螺鈿で彩られた小さな手鏡に埋め込まれたセンサーが、遠いだれかとどんなコミュニケーションや「美」の情報を伝達する。
これからの未来はそんなところからも生まれ得る。
点と線を結びつけ面をつくる。場とコミュニティから生まれるプラクティス。
デザインと対話から生まれる課題への糸口。

FabCafeもMTRLもその地では小さい場にすぎない。
ロフトワークとFabCafeのメンバーはまだたったの100人。
建築家・デザイナー・エンジニア・企業のビジョナリストとリーダー・サイエンティスト。
ロフトワークとFabCafeのクリエイティブコミュニティはこの15年で数千数万に、日本中に世界中に広がりたくさんの対話を出来るようになった。 
今年はフットワークを軽く、新しい場所に新しい領域に、軽やかにチャレンジをしていきたい。

まずは対話から。

今年もよろしくお願いします。

諏訪 光洋 (代表取締役社長)

森羅万象 めくるめく

林千晶(代表取締役)

不思議な縁で、飛騨に30ヘクタールの森を所有することになりました。
「森をもっています」と伝えると、「凄いですね」と反応するのは都会人。
田舎の人は「大変ですよね」とため息をつきます。
日本では、森を手入れしてもちっともお金にならないことを知っているから。
国土の7割が森林だと言うのに、なんだかおかしい。

ロフトワークでは、未来づくりのプロジェクトが増えました。
家電の未来、農業の未来、都市の未来。色々な未来の相談が舞い込んできます。
でも、私たちは未来予測の専門家ではありません。
ただひとつずつ丁寧に、どんな明日があると嬉しいか、一緒に想像力を働かせ、
イメージを膨らまし、実験を重ねています。

その実践で感じられるのは、未来の手触り。
SF映画のようなテクノロジー一辺倒の世界ではなく、どこか懐かしい未来の予感です。
たとえば、農家のおじさんが育てた、柔らかく瑞々しいレタスを口いっぱいに頬張る喜び。
森に足を踏み入れ、空高く突き抜ける木々を見上げて全身で息をする爽快感。
それらは効率や生産性とは無関係な、近代化のプロセスで切り捨てられた「ムダ」の領域。
テクノロジーは、そんな「ムダ」や「余白」という名の「豊かさ」に、
もう一度目を向ける余裕を生んでくれるのではないでしょうか。

森とデジタルファブリケーション。農家のおじさんとロボット。伝統と革新。
この世の森羅万象、極端で相性の悪そうなものを、
やすやすと繋げてしまうユニークな存在でありたいです。

林 千晶 (代表取締役)

変化に向き合い、パラダイムの橋渡しに取り組む

矢橋 友宏 (取締役 兼 CMO)

今まさにパラダイムが変わろうとしている。
資本主義の終焉。エネルギーの転換。所有からシェア・利用へ。
書籍やネットからの情報と共に、日々会う人たちや、FabCafeやOpenCUに出入りする方々を見ていると、その現実感を徐々に感じている。
競争ではなく協働へ。規模の経済から共有の経済へ。

翻って、日本、政府、企業、そして我々のパートナーはその変化についていけているか?
過去の成功体験による古くなった”常識”や、大きな組織に働く慣性の法則。

我々の存在意義のひとつは、このパラダイム転換の只中で、
様々な立場の方々とコミュニケーションをし、寄り添い、
具体的なアクションプランを提案し、起こしていくことかも知れない。

それでも、こと日本においては2020年のビッグイベントまでは、
これまでのパラダイムが主役なんだろう、とも思いながら、
このパラダイム転換に、どうやって向き合うか?を考え、
具体的に取り組み始める年にしようと決意した年始でした。

矢橋 友宏 (取締役 兼 CMO)

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