東京・吉野・成都(中国)の3地域、170名対象|「老い」への向き合い方のリアリティを探求する デザインリサーチ報告書を公開
概要
2017年2月6日、株式会社ロフトワークは、「高齢化・高齢社会」をテーマに、東京・吉野・成都(中国)の3都市で実施したリサーチ結果を「高齢化にまつわる基礎調査報告書」として公開します。
「課題先進国」と言われて久しい日本。2100年の人口は今より4,300万人減少し(*)、高齢化も一層、深刻化することが予測されています。今、日本が率先して「課題解決」の先進国としてソリューションを提示することは、地球規模の課題解決に寄与することであり、新たな産業創出にもつながります。
(*)UN Statistics, 2015
そのため当プロジェクトでは、デザインリサーチの手法を用いて170名の高齢者にインタビューを実施。「高齢社会」は実際に高齢者の生活の場でどう表出しているのかを抽出しました。世界的に活躍するデザインコンサルティングファームのメンバー、企業のエンジニア、研究員らが1つのチームとなり、経済産業省の委託業務「平成28年度産業技術調査事業(社会課題及び技術シーズを起点としたビジネスモデルの構築に係る調査)」に基づき実施しました。
報告書にはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付与、日英2ヶ国語で公開します。また、リサーチ過程で蓄積した写真(161枚)と、プロジェクトを通じて得たデザインリサーチについての知見をまとめた「実践ガイド」も、同時公開します。当報告書が起点となり、世界を巻き込んで新たな議論が生まれ、高齢化が引き起こす諸問題の解決に寄与することを期待しています。
報告書の特徴は、以下の3点です。
「老い」に対する知見を深める4つの要素で構成
主に、リサーチから得られた「Concepts(視点)」「Findings(発見)」、新たな製品やサービスを発想する際の「Archetypes(顧客像)」「Opportunity Areas(機会領域)」の4つの要素で構成されています。
高齢者をより正確に捉えるために、ライフステージを再定義
従来のライフステージは、65歳以上の人々を表す分類が「壮年期」「老年期」といった漠然としたものでした。長寿命化が進む今後を想定し、高齢者を取り巻く環境をより詳細に捉えるために、50歳以上の年代を4つのライフステージに再定義しました。
漠然とした一般通念を可視化する8つのフレームワーク
リサーチでの発見は、全8つの概念図と共に掲載。引退・退職への移行過程を属性ごとに可視化したモデルや、親子三世代における与える・受け取るという立場の変化を表した互恵関係のモデルなど、年齢を重ねる意味について、“暗黙の了解”と捉えがちなこともインタビューから再考し、可視化を試みました。
Thomas ArmstrongのTwelve Stages of Human Development理論に基づきつくられた12のライフステージ。リサーチでは、高齢化をより詳細に捉えるため、事前のリサーチから仮説をたて、50歳以上に焦点をあて4つの新しいライフステージ(赤部分)を再定義しました。
親子の関係性を「互恵」の観点から図式化。与える・受け取るという依存関係を明らかにしました。
ダウンロード
以下の文書・写真は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0*)を付与し一般公開します。 このライセンスは、非営利な目的のもと、適切なクレジットの表示、ライセンスへのリンク貼付、変更がある際はその旨を表示し再配布の際は同じライセンスを付与すれば、利用・再配布することが可能です。営利目的の利用の際は、ロフトワーク広報(pr@loftwork.com)にお問い合わせください。
*Transformation images, figures, and content are published under a Creative Commons, Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License. https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/
報告書*(2017/2/13更新・一部のテキストを修正しました)
▶︎「Transformation – 高齢化にまつわる基礎調査報告書」 >>PDF(日本語・11.9MB)
▶︎「Transformation – A Foundational Study on Aging In Japan and China」 >>PDF(English・10.8MB)
*当ドキュメントは、経済産業省の委託業務「平成28年度産業技術調査事業(社会課題及び技術シーズを起点としたビジネスモデルの構築に係る調査)」の報告書とは異なるものです。
デザインリサーチの実践ガイド(2017/2/13更新・一部のテキストを修正しました)
▶︎「Design Research 101 – 高齢社会のデザインリサーチプロジェクトに基づく実践ガイド」>>PDF(日本語・7.7MB)
フォトライブラリ
▶Transformation >>flickrフォトアルバム
本質的な課題を汲みとり解決へと導く、デザインリサーチ
今回の調査で用いた手法「デザインリサーチ」の特徴は、調査を行う主体が実際に事業や製品を設計・デザインしていく本人であることです。従来のマーケティングリサーチではマーケターやリサーチャーが調査主体となりますが、実際にデザインに携わる人が調査段階から関わることで、人々の生活のニュアンスまでも汲み取った理解につながります。
またデザインリサーチは、定量調査や形式的な定性調査では明らかにすることが難しい、生活者の行動や思考の裏側にあるコンテクストも含めた“Why”に着目します。本人さえ気付くことのなかった視点や心的態度を明らかにし、より本質的な課題発見につながる調査手法といえます。
今回のリサーチは、リサーチマネジャーにデザインコンサルティングファームStudio Dのヤン・チップチェイス氏を迎え、企業や大学など多彩なバックグラウンドをもつメンバーでチームを構成。東京・吉野・成都(中国)の3地域で170名を対象に実施されました。
当リサーチは基礎調査であり、課題解決に直結することを目指すものではありません。今回築いた基礎情報から議論が生まれ、新たなステップにつながることを期待しています。
※今後、リサーチで明らかになった機会領域をふまえ、企業とともに高齢者のニーズに合う新たな製品・サービスを開発するプロジェクトを展開予定です。高齢化にご関心のある企業・メディアの方は、以下へお問い合わせください。
問い合わせ先
pr@loftwork.com / 03-5459-5123|ロフトワーク広報(担当:原口)
プロジェクト概要
期間: 2016年9月〜12月
場所: 東京、吉野、成都(中国)
テーマ: 高齢化とそれに関わる社会、人の行動様式・思考のあり方について
内容・対象: 専門家へのインタビュー、90〜180分程度のデプス・インタビュー、グループインタビュー、アドホック・インタビューなどを170名へ実施
クライアント: 経済産業省 産業技術環境局
体制:
Studio D|Jan Chipchase, Venetia Tay
ロフトワーク|林 千晶、神野 真実、桑原 季、国広 信哉、カワナ アキ
大学パートナー|(慶應義塾大学SDM)神武 直彦、小高 暁、相崎 香帆里、隅屋 輝佳(慶應義塾大学SFC)佐々木 剛二
企業パートナー|(NEC)河又 恒久、平尾 英司、矢野 有美 (パナソニック)福井 崇之
デザインリサーチについてのお問い合わせ・ご相談
株式会社ロフトワークについて
ロフトワークは、オープンコラボレーションを通じてWeb、コンテンツ、コミュニケーション、空間などをデザインするクリエイティブ・エージェンシーです。
グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材と向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL(マテリアル)」、2.5万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「ロフトワークドットコム」、クリエイティブな学びを加速するプラットフォーム「OpenCU」を運営。世界中のクリエイターコミュニティと共創することで、幅広いクリエイティブサービスを提供します。
株式会社ロフトワーク 広報:pr@loftwork.com
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