毎年恒例、ロフトワークの全社合宿。2018年は長野県・諏訪市です!6月28日・29日の2日間、海外ブランチも含めたロフトワーク全社員で諏訪へお邪魔します。早いものであと3日です(執筆当時)

そして、古代日本の歴史や文化が好きな安藤が、全4回にわたって諏訪の魅力を解き明かしていくシリーズコラムの第4弾は「どうして諏訪に温泉がたくさんあるのか」です。

第一弾:縄文までさかのぼる、諏訪に根づく“ものづくりのDNA”

第二弾:外的要素を取り込み変化してきた、諏訪の地形と文化

第三弾:諏訪大社とロフトワークの、氏族的な縁

諏訪といえば、やっぱり温泉ですよね

下諏訪温泉の「綿の湯」の碑

今まで諏訪の歴史を主に書いていきましたが、諏訪といえば温泉ですよね。長野県は温泉地の数が全国2位日帰り温泉施設は全国1位なんだそうです。(参考:データで知る信州

長野県の中でも主要な温泉地である諏訪ですが、なぜこれほど温泉があるのでしょうか?

温泉地に必要な条件

まず、諏訪の温泉はどのように湧いているのでしょうか。
諏訪の温泉の秘密を解く手がかりとして、大分県別府を参考にしてみます。
『ブラタモリ 別府』を見直したところ「温泉地に必要な条件」として、次の3つがありました。

  • 豊富な水
  • 温泉が湧くすきま
  • 熱源

これをキーワードに、諏訪の地質を紐解いていきます!

第一の条件「豊富な水」

まず、第一の条件である「豊富な水」です。諏訪の場合、諏訪湖に注ぐ31もの流入河川が当てはめられますね。

第二の条件「温泉がわくすきま」

別府の場合、扇状地(山側を頂点に、火山活動や川の流れによって土砂が扇状に堆積した地形)のため水はけがよく、断層の隙間から温泉が湧き出ていました。

これは諏訪でも同じことが言えます。
急峻な山々に囲まれ、そんな山を勢いよく流れる川がたくさんあるので、諏訪にも扇状地が多数形成されており、北西部では複合的扇状地まであります。

そして第一弾「20180530_縄文までさかのぼる、諏訪に根付く“ものづくりのDNA”」でも書きましたが、諏訪は2つの大規模な断層に挟まれた珍しい土地です。

下諏訪温泉、上諏訪温泉ともに東側の断層線の方向に一致しており、諏訪も断層の隙間から温泉が湧き出ている事がわかります。

第三の条件「熱源」

箱根や別府のような活火山が近くにあるならわかりやすいのですが、諏訪周辺にモクモクと噴煙をあげる火山は見当たりません。

では熱源は一体どこから?これも地質に関係していました。

諏訪は多様な地層でできている!

諏訪は2つの断層線に挟まれているだけではなく、多様な地層によってできています。

諏訪の東側はフォッサマグナ地域(中央地溝帯)と呼ばれる地域で、西側と地質が異なり、新しい岩でできています。

フォッサマグナ地域とは、日本列島の真ん中あたりを分断する大きな溝に、火山から噴き出したマグマや土砂などの堆積物が積もった地域のことをいいます。

フォッサマグナの形成

ざっくりとしたイメージです

古い地層が割れて大きな溝ができました。海水が土砂と一緒に流れ込んだり、溝ができた際に、南北方向の断層があったのでマグマがそこを通って上昇することで、南北方向の火山列ができます。そして噴火でまた溶岩や灰が積もっていく・・・。

そうして新しい地層が積み重ってできていったのが諏訪の東側になります。

多様な諏訪の地層を見てみよう

上諏訪と、SUWAガラスの里がある豊田周辺を断面にした時の地層を、ざっくりとイメージに起こしてみました。
こんなに異なる地層があるのはびっくりですね!
ちなみに、縦線は断層です。

  • A:約258万年前〜1万年前までの、有賀峠噴火で積もった岩
  • B:約258万年前〜1万年前までの、噴火による堆積物(成田凝灰角礫岩層)
  • C:約2億年前〜6600万年前までの岩
  • D:約1万年前〜現在までの、火山や河川による堆積物
  • E:約1600万年前〜800万年前の噴火によるマグマがゆっくり固まってできた岩
  • F:約258万年前〜1万年前までの、噴火による堆積物
  • G:約258万年前〜1万年前までの、霧ヶ峰の噴火による堆積物

ここで注目したいのが、Eの地層です。
実はこの地層こそ、諏訪の温泉の熱源なんです。諏訪の温泉は、大昔の噴火で流れた溶岩の”予熱”で温められていたんです。おそるべし、地球の力!

大量の雨水が水はけの良い土砂の地層に染み込み、その下の大昔の溶岩の層で温められ、長い時間をかけて断層のすきまから温泉となって湧き出していたんですね。

諏訪も温泉地に必要な条件を満たしていた!

地質を見てみると、諏訪もしっかり温泉地に必要な条件を満たしていました!

まとめると、

  • 豊富な水:31もの流入河川
  • 温泉が湧き出るすきま:断層と土砂が堆積して出来た地形
  • 熱源:地下300m深にある、大昔の噴火で流れた溶岩の予熱!

ということになります。

多様な地質によって、各温泉にも特徴がでます。
諏訪で温泉めぐりをする際は、周りの地形を見てみると面白い発見があるかもしれませんね!

みんなでここに行ってみたい!諏訪のおすすめスポット

  • 片倉館
    千人風呂で有名。会館、浴場、渡廊下の3つが国指定重要文化財。
    製糸で財をなした片倉財閥の二代目が、創業50周年を記念して建てた温泉施設。当時、海外に視察して先進国では文化福祉施設が充実していることに感銘を受け、故郷の諏訪に帰って建てたもの。
  • 諏訪湖間欠泉センター
    全国でも珍しい間欠泉を見られるスポット。間欠泉と七つの温泉の湧出口「七ツ釜」から漂う湯けむりを楽しめます。かつては世界最高クラスの水の高さを誇っていました。足湯、売店もあります。

筆者プロフィール

安藤 大海

Author安藤 大海(テクニカルディレクター)

大学卒業後、web制作会社でフロントエンジニアとしてwebサイトを幅広く制作。2016年に「クリエイティブの流通」というコンセプトに惹かれ、ロフトワークへ入社。

前職のスキルを活かし、主にWordPressサイトの技術サポートを行う。また郷土の歴史文化の関心も高く、『言霊』でライターとしても活動。近年は新たなクリエイティブとして「ボードゲーム」に注目し、自身でも制作中。

Next Contents

2050年の京都市の都市構想への道筋を描く。
「創造的都市、京都」を提唱する、最終報告書を公開