こんにちは、テクニカル・ディレクターの安藤です。

毎年恒例、ロフトワークの全社合宿。これまでに千葉や小豆島、奥多摩、台湾、飛騨……様々な地域に滞在してプレゼン大会や、リノベーション「免疫マップ」ワークなどいろんな取り組みをしてきました。そして2018年は長野県・諏訪市となりました!6月28日・29日の2日間、海外ブランチも含めたロフトワーク全社員で諏訪へお邪魔します。

なぜ諏訪なのか?実はロフトワークでは、諏訪市とタッグを組み、諏訪が世界に誇る精密加工技術の魅力を発見・発信する『SUWAデザインプロジェクト』を2016年から取り組んでいます。

プロジェクトで出来たつながりもあり、今回合宿の舞台に決まりました。古代日本の歴史や文化が好きな自分としても、諏訪はとても魅力的な場所です。そこで今回は全社合宿に向けて、全4回にわたって諏訪の魅力を解き明かしていくシリーズコラムを綴ろうと思います。

※本文でいう「諏訪」は、諏訪市だけでなく、おとなりの岡谷市、茅野市も含む広い意味での「諏訪」とします。

私も大好きな諏訪が今年の合宿の舞台!

諏訪を愛してやまない安藤が、諏訪の魅力を解き明かすシリーズ。第1回目のテーマはずばり「ものづくり」。精密機械工業の地として発展していったのは戦後のことですが、諏訪の「ものづくり」は、はるか縄文時代の遺跡からも見出すことができます。

綺麗な諏訪湖、最高です

製糸で栄えた諏訪の歴史

江戸時代、諏訪では農閑期である冬間の収入源として養蚕を行っていました。
幕末になり横浜港が開港すると、イタリア、フランスから機械が輸入されました。これにより生産性が飛躍的に向上し、製糸は輸出品の花形に。

諏訪では、製糸生産高が国内の4分の1を占めたというほどに発展。「シルク岡谷」ブランドが世界に轟きました。その名実ともに製糸業のトップだったのが、「片倉組」でした。

培った利点を活かし、機械工業へ転身!

しかし、世界恐慌を期に製糸業は衰退。製糸業に代わる新しいものづくりのため、企業誘致が進められました。

幸い、工場はある、人もいる、製糸業で培った機械工業の土台もあるという利点から、多くの企業が諏訪に目をつけ、戦争疎開で移ってきました。そして、そういった企業から独立創業するケースも多く、中小企業も増えていきます。

腕時計の「セイコー」もその一つです。

1942年、服部時計店(現在のセイコーホールディングス)の従業員だった山崎久夫氏が、この地で大和工業を創業。翌年に、服部時計店の製造会社・第二精工舎が諏訪に疎開し、工場を開きます。二つの企業は互いに協力を強めながら発展し、1959年、大和工業はこの工場を譲り受ける形で、「諏訪精工舎」になりました。

これが現在のセイコーエプソンの前身に当たります。ほかにも様々な企業が互いに研鑽しあい、諏訪は「精密機械工業の地」として世界的にも認知されるまでになりました。

"ものづくりのDNA"は、縄文から?

現在の「精密機械工業の土地」に至る流れは、幕末・明治に盛んだった製糸業に端を発すると見ることができます。

しかし「ものづくり」という意味でいうと、その流れははるか先史時代から!諏訪は旧石器・縄文の遺跡が多く、古くから人が住んでいました。そして、既にものづくりで交易を行っていたことが、遺跡からわかっています。

先史時代における諏訪…もとい信州で盛んだったのが、黒曜石

元祖・信州ブランド!火山の恵み・黒曜石

黒曜石は、火山から噴き出したマグマが冷えて固まってできた黒色の石。加工がしやすく、割るとするどい断面をつくることから、金属器が伝わる前の旧石器時代では、ナイフや矢じりとして重宝されました。

長野県の霧ヶ峰、八ヶ岳、和田峠周辺は、その良質な産地。霧ヶ峰産の黒曜石は、西は奈良県から北は北海道まで広く流通していました。

北海道の館崎遺跡から出土した黒曜石製の矢じりが、実は霧ヶ峰産だった!というのは、2016年にニュースにもなりましたね。霧ヶ峰周辺の黒曜石採掘遺跡では、「星糞峠黒曜石原産地遺跡」や「星ヶ塔黒曜石原産地遺跡」が有名です。

どちらも”星”が地名についていますが、黒曜石の漆黒の岩肌にキラキラとした光沢から、昔の人は”夜空の星“を連想したようです。星糞とは「星くず」「星のかけら」のことで、星ヶ塔も「星の峠」が次第になまっていったと考えられます。

遺跡は山奥にあり、許可が必要な場合もあります。諏訪市博物館などでも周辺の遺跡の出土品が展示されていますので、そちらがよいでしょう。

諏訪市博物館

もう少し足を伸ばせるなら・・・

尖石縄文考古館(尖石・与助尾根遺跡)

尖石縄文考古館(尖石・与助尾根遺跡)もおすすめです。竪穴式住居跡33ヶ所をはじめ、53ヶ所の炉跡や列石などが発掘された、縄文時代中期の大集落跡です。縄文のビーナス仮面の女神と名付けられた土偶(国宝!)を展示しています。

(僕が日本神話にハマるきっかけになった、諸星大二郎『暗黒神話』冒頭の舞台でもあります…)

写真右が仮面の女神、左が縄文のビーナス

今回は「ものづくり」という面から、諏訪を見てみました。閉ざされた土地のようでいて、外との交流を柔軟に受け入れ、時代に合ったものづくりをしていく。諏訪の”ものづくりのDNA”は、歴史からも感じとることができますね。

みんなでここに行ってみたい!諏訪のおすすめスポット

  • 旧片倉組本部事務所
    かつて製糸業のトップだった「片倉組」の本部事務所。中央印刷株式会社の社屋として現在も現役です。往時の姿を今に伝えます。
  • 諏訪市博物館
    諏訪の歴史を知るなら、まずはここ。諏訪の祭り、伝説など、諏訪信仰にまつわる歴史をわかりやすく紹介しています。
  • 茅野市尖石縄文考古館
    縄文時代中期の大集落跡に併設された資料館。集落の大きさは圧巻です。周辺の遺跡から出土した考古資料のほか、国宝の土偶2体を間近で見ることができるのも魅力です。

筆者プロフィール

安藤 大海

Author安藤 大海(テクニカルディレクター)

大学卒業後、web制作会社でフロントエンジニアとしてwebサイトを幅広く制作。2016年に「クリエイティブの流通」というコンセプトに惹かれ、ロフトワークへ入社。

前職のスキルを活かし、主にWordPressサイトの技術サポートを行う。また郷土の歴史文化の関心も高く、『言霊』でライターとしても活動。近年は新たなクリエイティブとして「ボードゲーム」に注目し、自身でも制作中。

Next Contents

新たな都市コモンズを構築する『Aru Society』始動
「共に在る社会」について、学び合う体験型ツアーを開催