受賞マテリアル9点を発表!
素材の新たな価値を探るマテリアルアワード
「Material Driven Innovation Award 2022」
「暮らしをWell-Beingにするマテリアル」をテーマに9点を選出
ロフトワークが運営する、「素材」をテーマとしたクリエイティブプラットフォーム「MTRL(マテリアル)」が主催する、素材の新たな価値を探るマテリアルアワード「Material Driven Innovation Award 2022(MDIA 2022)」は、受賞マテリアル9点を発表しました。
身体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態である「ウェルビーイング」の考え方を、マテリアル(素材)視点で捉えたとき、私たちのウェルビーイングにどのように結びつき、どう貢献していくのでしょうか?本アワードでは、「人の暮らしをWell-Beingにするマテリアル」をテーマに、人や地球環境の幸福に貢献する製品を生み出す可能性のある、革新的なマテリアル(素材)を募集しました。
約1ヶ月半の応募期間で102点の応募が世界中から集まりました。厳正なる審査のもと、大賞1点、ファイナリスト3点、奨励賞1点、渡邊淳司賞、堀内康広賞、井高久美子賞、小原和也(弁慶)賞の合計9点が選出されました。
大賞に選ばれたマテリアルは、FabCafeでの展示や製品パッケージ化したマテリアルサンプルボックスを制作し配布。また、大賞・ファイナリストに選定された4点のマテリアルを題材に、「ウェルビーイング」な観点で素材の活用方法を発想するイベントなどを開催。私たちのウェルビーイングを素材起点で考える機会を創出します。
Material Driven Innovation Award 2022
応募期間:2022年1月25日(火)〜3月7日(月)
応募総数:102点
受賞数:9点
審査員
- 渡邊 淳司/NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員
- 堀内 康広/トランクデザイン株式会社 代表取締役/クリエイティブディレクター/デザイナー
- 井高 久美子/インディペンデント・キュレーター
- フレデリック・セイエ/Aesop Asia CEO
- David Tena Vicente/FabCafe Barcelona CEO
- 小原 和也(弁慶)/株式会社ロフトワーク MTRL事業責任者
結果発表・各審査員総評コメント
受賞マテリアル
大賞:100%土に還る、野菜や果物から作られた「Food Paper」
応募者 : 株式会社五十嵐製紙
概要:Food Paper は、フードロスとして捨てられてしまう野菜や果物を紙に生まれ変わらせるためのプロジェクト。1919年に創業した越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」の技術を用い、フードロスの廃棄を減らしながら、日本の紙漉き文化を次世代につなげていくこと。適量の生産と消費、そして廃棄物を出来るだけ出さない循環型社会の実現を目指して活動している。
https://awrd.com/creatives/detail/12329205
審査員コメント : 堀内 康広
社会問題と伝統工芸がちゃんとミックスされ、なおかつ誰でも使えるプロダクトになっている。子供から大人までこのプロダクトを使いながら、プロセスを感じてもらえるとほんとにいいプロジェクトに成長していくと思います。伝統工芸、廃棄野菜のリサイクル、デザイン、どれもが一つだけ目立つことなく、バランスが取れているところに大賞として選ばせていただきました。この先も、コラボレーションを増やしながら、よりたくさんの地域や問題に対して出口をつくっていくことを期待しています。
ファイナリスト:Co-Obradoiro Galego
応募者 : Individual in collaboration with Galician basket weavers.
概要:Co-Obradoiro Galegoは、スペインのガリシア地方で発生したパンデミックの際に、より地域に密着したアプローチを求められて生まれたプロジェクトです。魚介類の外骨格に含まれるバイオポリマーであるキトサンから、柔軟で生分解性のあるバイオマテリアルを開発。この生分解性素材を使って、水産物とバスケット産業を再び結びつけ、ガリシアの貴重な籠細工技術の永続性について考えています。また、例えガリシアの籠細工職人やガリシア文化やが消えてしまっても、このマテリアルを通してガリシア経済を再活性化させられると考えています。
https://awrd.com/creatives/detail/12152716
審査員コメント : 井高 久美子
地域文化は自己を規定し、内的評価を高めていく重要な要素の一つであると思います。満足度や幸福度と結びつく消費行動は、国や既存の経済圏の中で規定していくことは難しく、限定的なコミュニティといった小規模な公共圏を再認識していくことが一つのキーワードになってくるのではないかと思います。このプロジェクトは、未完の要素も多分にありますが、ガリシアの経済活動と工芸という民族文化の活動を視野に入れたプロジェクトであり、他のプロジェクトにはない視点をご提示いただきました。これからのプロジェクトへの期待も込めてファイナリストに選ばせていただきました。
ファイナリスト:TRF+H - Well-beingを叶える 3Dプリント素材
応募者 : ファブラボ品川 / ユニチカ株式会社
概要:『TRF+H』は、ヘアドライヤーなどで加温することで簡易に加工し、個別の身体曲面に適合した製作ができる3Dプリント素材です。従来、身体に合わせるためには3Dスキャンを活用し、立体的にモデリング・造形する試みが一般的でした。しかし『TRF+H』は、平面で3Dプリントし、簡単に後加工で身体に合わせることができます。それにより、プリント時間の短縮、サポート材など不必要な素材の削減、肌に接触する面の滑らかさを実現するとともに、幅広い「生活者」が内部構造も調整しながら道具をつくることを可能にします。
https://awrd.com/creatives/detail/12323926
審査員コメント : 渡邊 淳司
3Dプリントをはじめとするテクノロジーによって、誰でもオーダーメイドの装具を作れるようになりました。一方で、本プロジェクトで使用されるマテリアルは、3Dプリントされた後に温めることで、形状を調整する機能を持ちます。これは私たちの心にどんな影響を与えるでしょうか。例えば、身体に合わせて装具の形をなじませる時間は、自分の身体が唯一無二であることを感じさせてくれます。また、子供の装具の形状を変えることは、子供の成長を実感することにつながります。身体に寄り添い、その存在を祝福する時間をもたらす本マテリアルは、まさに暮らしをWell-beingにするマテリアルだと思います。
ファイナリスト:ZEROカーボNソイル
応募者 : グリーン&ウォーター株式会社 環境開発事業部
概要:ゼロカーボンの実現を目指すCO2を吸着固定する低炭素型土系舗装材。これまでの一般的な土系舗装材では実現できなかったセメント不使用、CO2を吸着固定しながら高強度、高耐久を発揮する製品として誕生。天然由来の素材からできており、使用後は土に還すことが可能です。
https://awrd.com/creatives/detail/12324424
審査員コメント : David Tena Vicente
ZEROカーボNソイルは、業界が気候変動にどのように適応しなければならないかを示す素晴らしい例です。道路や舗装は、社会のインフラとして欠かせないものであり、世界中のあらゆる場所で使用されています。これほど広く使用され、一見不変に見える素材をCO2吸収材にする方法を見つけたことは、世界中で大量に使用されている他の素材を気候変動に適した物質に変えるきっかけとなるはずです。古い材料やプロセスを見直すことで、いつも決まった方法で行われていることを省みない傾向がある世界の産業界に真の変化をもたらすことができるのです。審査員として、また科学者として、発表されたプロジェクトの化学的プロセスの具体的なデータを見ることができるのは、とても新鮮なことです。
奨励賞1点、渡邊淳司賞、堀内康広賞、井高久美子賞、小原和也(弁慶)賞は下記をご覧ください。
結果発表・各審査員総評コメント
「Material Driven Innovation Award 2022」について
新しい生活様式「ニューノーマル」が浸透したいま、健康と幸福を見つめ直し、心豊かにより良く生きるWell-Being(ウェルビーイング)な暮らしに人々の共感が生まれています。それに呼応するように、私たちの暮らしや社会のなかでWell-bingを実現するサービスや製品が急速に求められています。この高まる需要のなか、幸福に貢献する製品を生み出す最小単位のマテリアル(素材)から見つめ直すため、本アワードは生まれました。これまでの暮らしを支えてきたマテリアル、さらにはこれから生まれてくる革新的なマテリアル。これらはいかにして新たな価値をもち、産業を向上させ、人々のより良い幸福Well-Beingを生み出すことができるのでしょうか。アワードからこれまで気づかなかった新たな価値の発見、可能性を探っていきます。
https://awrd.com/award/mdia-001
MTRLについて
MTRL by Loftworkは、世界中の素材メーカーを中心に、素材起点のイノベーション「マテリアル・ドリブン・イノベーション」の創発を支援しています。
従来の製造業では、思いがけない発明、高度な機能の開拓こそがイノベーションを創出するとされてきました。しかしそれだけではイノベーションを実現することは困難です。ものづくりでは、モノのイノベーションではなく、“意味”のイノベーションが、企業価値の源泉になりつつあるのです。
「なぜ開発するのか」「それは私たちの生活に意味があるものなのか」。私たちは「意味づくり」のプロフェッショナルとも言えるデザイナーが活用してきた思考の道具を、ものづくりの「現場」へ配りたいと考えています。
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