さいたま市、ユニバーサルメニューにより実現した市の“顔”となるサイト
公式ホームページの課題解決に向け、CMSの入れ替えを機にフルリニューアル
埼玉県の南東部に位置する県庁所在地であり、関東圏域を牽引する政令指定都市として、さらなる発展を目指すさいたま市。開かれた市政の実現において重要な役割を担うのが公式ホームページです。CMSの入れ替えを機にスタートしたリニューアルプロジェクトは、自治体のCMS導入に強みを持つ三谷コンピュータ株式会社とロフトワークが連携して取り組みました。
さいたま市の関口裕介氏、山田淳司氏、青山容氏と、三谷コンピュータの中出諒太氏、ロフトワークの齋藤実帆、菅原直也の6人でプロジェクトを振り返りながら、自治体サイトが抱える課題とその解決策について考えました。
齋藤(ロフトワーク):どのようなきっかけでリニューアルに踏み切られたのですか?
関口(さいたま市):CMSの入れ替えが直接的なきっかけです。市のPRマスタープランの中で、公式ホームページの課題が明示されており(※下記参照)、これに基づいてトップページだけはリニューアルしていました。そして、今回のCMSの入れ替えを機に、サイト全体をリニューアルすることにしました。
公式ホームページに関する課題
1). 市の「顔」として格別の配慮が必要
2). デザイン上の工夫が足りない
3). 市のアピールポイントが見えにくい
4). 市政の方向性を示す重要な情報にアクセスしにくい
5). PDFファイルの多用は安易なページづくりの印象を与える
(さいたま市「PRマスタープラン」より)
齋藤:パートナーを選定される過程で重視された要件は何ですか?
青山(さいたま市):まずはCMSの使いやすさです。機能要件として200近くの項目を設定しました。これとは別にデータセンターに関する要件を50くらい設けました。その他、リニューアルに対する考え方や価格などを総合的に評価し、最も評価が高かった三谷コンピュータのCMSに決定しました。
中出(三谷コンピュータ):当社のCMSは、マニュアルレスでページ作成ができるのはもちろん、自治体が、容易に高いアクセシビリティやユーザビリティを実現できるのが大きな特徴です。この点が要件にフィットしたのだと思います。
市民は何を目的に訪れるのか?原点に立ち返り、公式ホームページのあるべき姿を追求
齋藤:ロフトワークでは主に、情報設計からデザイン制作、コーディングまでを担当しました。その過程で「現行サイトのKPTの洗い出し※」「全政令指定都市サイトを俯瞰しての要素の優先順位付け」「さいたま市の魅力をエレベータピッチでプレゼン」など計4回のワークショップを実施しました。調達仕様書に、「市の魅力を発信できていないことが大きな悩み」として挙げられていたので、初回のワークショップでは、公式ホームページのAs-Is To-Be(現状とあるべき姿)を考え、必要な機能の洗い出しを行いました。
※KPTの洗い出し:対象をK=Keep、P=Problem、T=Tryの3つに分類する方法
関口:明確な問題意識はあったものの、具体的な解決策にまで踏み込めていませんでした。内部だけで考えると、私たちが押したいポイントに偏ってしまいます。三谷コンピュータやロフトワークという外からの視点を入れ、「さいたま市」を一緒に考えることができたのは良かったです。
中出:ワークショップは初めての参加だったので、新鮮な体験でした。「さいたま市」をより深く理解でき、その後の構築作業が格段に進めやすくなりました。作る側がクライアントを理解する、という意味で非常に有意義ですね。オリエンを受けるのとは明らかに違います。
齋藤:リニューアルで重視された点は?
青山:自治体のサイトを訪れる人のほとんどは、何かしらの情報を探していますから、訪問者をいかに迷わせずに誘導するかを重視しました。さらにインターネット世代をメインターゲットに据えつつ、また誰にでも使いやすいように、アクセシビリティにも配慮しました。
齋藤:作る側も一市民です。暮らしの中でサイトを利用する際に何がベストなのかをユーザー目線で整理し、トップページの上から順に、メインの「顔」になる部分、手続きに関する部分、市からのお知らせ、最後にさいたま市のプロフィールを配置したワイヤーフレームを作成しました。これも、ワークショップを通じて、より使いやすい形を一緒に追求した成果のひとつです。
青山:お知らせすべき情報が山ほどあるので、つい市が伝えたい情報を優先してしまいがちです。改めて「市民は何を目的に訪れるのか?」という原点に立ち返り、ゼロベースで構築できました。
菅原(ロフトワーク):デザインは、3案のうち、一番挑戦的な案を選択いただきましたが、実はデザイナーが別々でした。同じ資料をベースに3人に依頼し、電話で微妙に伝え方を変えることで、クリエイティブの幅が広がるように工夫しました。決定したデザインをCMS上で設計できるかどうか、三谷コンピュータさんとは密にやりとりしました。
中出:それでも、もともとあるCMSの機能から、大きく拡張はしていません。当社のCMSは、案件を通じて得られた情報をもとに毎年バージョンアップしていくので、新たにいただいたご要望も特に大きな問題にはなりませんでした。
菅原:今回新鮮だったのは、アクセシビリティツールを使った確認作業です。視覚障害者の方に見ていただいてコーディングし直したり、ご提案した色がJIS基準を1つだけクリアできておらず、色調整を繰り返したり。私自身も初めてのことで勉強になりました。
変わって困る人がいないのは、情報が探しやすくなった証拠
菅原:リニューアルしたサイトの特徴的なポイントはどこでしょうか?
山田(さいたま市):シンプルで各エリアがわかりやすく、ボタンなども直感的に操作できるので、初めて来た人も迷わずに情報が探せます。トップページに市の紹介エリアが欲しいというリクエストにも、イラストを使った表現で応えていただきました。
齋藤:市のプロフィールをこういう形で表現したのは、自治体サイトでは珍しいかもしれません。
実感として、情報を探しやすくなりましたか?
山田:情報を探しやすいという意味では、ユニバーサルメニューを使ってサイト構成を整理できたのが良かったですね。サイト構成をゼロから作るのは大変です。また、データの移行作業では、庁内の各課との調整作業は大変でしたが、全ページを見直す良い機会にもなり、18,000ページから15,000ページにスリム化できました。
※ユニバーサルメニュー:「ユニバーサルメニュー(UM)」は、市区町村等自治体による身近な行政サービスの情報を、誰もが簡単に検索・活用できるように設計した行政サービス関連標準メニュー体系です。(OpenUM Project サイトより引用)
齋藤:具体的な成果は見えていますか?
関口:自治体サイトは、単にアクセス数が伸びればいいわけではありませんから、何をもって効果とするかが難しいのですが、良くも悪くも大きな反応がないということは、受け入れられたのだろうと解釈しています。都内のある自治体の議員の方からは、「すごくいい!整理されているし、情報が探しやすい」という電話があり、ほかにもデザイン会社を教えてほしいという問い合わせがありました。
菅原:行政のサイトは変わると困る人が多いので、うれしい評価ですね。ロフトワークとのプロジェクトはいかがでしたか?
青山:自治体サイトはこうあるべきとか、この3つから選んでください!というやり方だと、こちらが飲み込まなくてはいけない部分も出てきますが、ユーザー目線で使いやすいことを最優先に一緒に考えていけたことで、完成イメージも共有できました。アプローチとして非常に良かったと思います。
齋藤:今後について何かお考えですか?
関口:市全体を紹介するエリアを充実させていきたいですね。地域情報や民間情報、街で盛り上がっているイベントなども載せていき、市のPRにつなげていく考えです。
齋藤:リニューアルして終わりではないので、ここからがスタートですね。市のPRツールとして大いに役立ってくれることを祈っています。本日はありがとうございました。
関連リンク
お客様の声
さいたま市市長公室 広報課 広報係 主任
関口 裕介氏
現状に問題があることは認識していたものの、具体的な解決策にまで踏み込めていませんでした。内部だけで考えていると、私たちが押したいポイントに偏ってしまいます。三谷コンピュータやロフトワークという外からの視点を入れ、「さいたま市」を一緒に考えることができたのは良かったです。リニューアル後、ある自治体の議員の方からは、「すごくいい!整理されているし、情報が探しやすい」という電話があり、ほかにもデザイン会社を教えてほしいという問い合わせがありました。
さいたま市市長公室 広報課 広報係 主任
山田 淳司氏
シンプルなデザインで各エリアがわかりやすく、ボタンなども直感的に操作できるので、初めて来た人も迷わずに情報が探せます。トップページに市の紹介エリアが欲しいというリクエストにも、イラストを使った表現で応えていただきました。情報を探しやすいという意味では、ユニバーサルメニューを使ってサイト構成を整理できたのが良かったですね。また、データの移行作業では、庁内の各課との調整作業は大変でしたが、全ページを見直す良い機会にもなりました。
さいたま市市長公室 広報課 広報係 主事
青山 容氏
市としては、お知らせすべき情報が山ほどあるので、つい市が伝えたい情報を優先してしまいがちです。改めて「市民は何をしに訪れるのか?」という原点に立ち返り、ゼロベースで構築できました。自治体サイトはこうあるべきとか、この3つから選んでください!というやり方だと、こちらが飲み込まなくてはいけない部分も出てきますが、ユーザー目線で使いやすいことを最優先に一緒に考えていけたことで、完成イメージも共有できました。アプローチとして非常に良かったと思います。
三谷コンピュータ株式会社ITソリューション部 第一営業課 システムエンジニア
中出 諒太氏
当社のCMSは、マニュアルレスでページ作成ができるのはもちろん、自治体が、容易に高いアクセシビリティやユーザビリティを実現できるのが大きな特徴です。この点が要件にフィットしたのだと思います。今回は、もともとあるCMSの機能から、それほど拡張はしていません。案件を通じて得られた情報をもとに毎年バージョンアップしていくので、新たにいただいたご要望も特に大きな問題にもなりませんでした。