
ロフトワークのコーポレートロゴを変更
Outline
ロフトワークは、2000年の会社創立から25周年の節目にコーポレートロゴのデザインを変更しました。新しいコーポレートロゴでは、ロフトワークが大切にしている創造性や実験性といった企業文化を意識しながら、多様なプロジェクトへ長期的に伴走するパートナーにふさわしいアップデートを行いました。デザインはKamimura & Co.が担当し、フォーマルさと親しみやすさをバランスよく備えた新たなロゴを制作。社内外のステークホルダーに向け、ロフトワークの信頼感と創造性を体現するデザインを目指しました。
Press Release
Outputs
新ロゴは、従来のコーポレートカラーであるイエローを継承しつつ、より洗練されたシンプルなフォルムと有機的なニュアンスを併せ持ちます。複数の事業部やコミュニティが共生する「ビジネスエコシステムをつくるアプローチ」を表現するため、シンボルは流動的で柔軟な形状に設計。ロゴタイプは、フォーマルさとフレンドリーさのバランスを重視し、信頼感と革新性を両立しています。制作にはFigmaなどのデジタルツールを使用し、展開時の一貫性と実用性も重視しました。
新コーポレートロゴ
ワードマーク
あたたかみのある手書き調のニュアンスと、時代や流行に左右されないニュートラルな佇まいを組み合わせてデザイン。すべての人のクリエイティビティを尊重する、柔軟な感性とロジカルな思考を併せ持つ社風を反映しています。
シンボル「Creative Triangle」
これまでのシンボルを、よりシンプルにリファイン。矢印や紙飛行機など、さまざまな物に見立てられるミニマルな三角形に、多様な視点や可能性を大切にする想いを込めました。点と線、面による形状は、ロフトワークの役割である「点をうつ(=起点になる)」、「線をつなぐ(=構造化する)」、「面をつくる(=コミュニティをつくる)」というアクションも象徴しています。

モーション
三角形のシンボルが、自由に動き、組み合わさることで新たな形を生み出す様子をモーションで表現。ロフトワークとさまざまなクリエイターやクライアントが出会い、ともに新たな未来を描いていくイメージを表しています。
モーションロゴ
モーショングラフィック
CI STORY
シンボル「Creative Triangle」
たとえば、右肩上がりの矢印。あるいは、向き合ったクライアント、クリエイター、ロフトワークの関係。もしくは、ふと心がうごいて折り目をつけたページかもしれない。シンプルな点・線・面によるこの三角形は、自由な想像を刺激し、新たな視点や発見をもたらしてくれます。一人ひとりが持つ創造性を信じる、わたしたちロフトワークのアイデンティティと行動指針を内包したシンボルです。
点をうつ
アイデアとパッションを大切に、一人ひとりが起点となって
次々とプロジェクトを動かしていきます。
線をつなぐ
しなやかに思考の線をつなぎ、複雑にからみあった物事も
構造化することによってロジカルに整理します。
面をつくる
多様な人々があつまる場やコミュニティを積極的に生み出し、
未来への豊かな可能性をひろげていきます。
Members Message
シニアディレクター 山田 麗音

以前のロフトワークは、どこか異端児的な存在として見られていたかもしれません。でも今は、大企業や行政との取り組みも増え、より信頼される佇まいも意識するようになりました。とはいえ、見た目までよそゆきになりすぎては、私たちらしさが薄れてしまう。信頼感と、ロフトワークらしい遊び心。その両立こそが大切だと思ったんです。
一方で、シンボルマークをなくすかどうかも議論になりました。ロフトワークにとってシンボルは必要なのかを改めて考えたとき、私たちらしさを認識させるキーファクターは、マークそのものではなく、「黄色」というコーポレートカラーだったのではないか、と気づいたんです。そこで、新しいロゴにおけるシンボルの役割は、黄色の歴史を継承し、表現するための媒体として捉えました。印象面を引き継ぐ重要な要素として、シンボルを再定義していきました。
クリエイティブディレクター 佐野 まり沙

今回、新しいロゴが出来上がったあとの、その背景や想いを伝えるCIストーリーの制作を担当しました。誰とともにこのストーリーを紡ごうかと考えたときに、私たちがお願いしたのは、かつてロフトワークのことを外側から見てくれていた編集者の方でした。そして、その方の視点に今のロフトワークの空気を補い合える存在として、ロフトワークの現在進行形を生きている私が一緒に対話を重ねながら進めていく形になりました。
ロフトワークという組織を、過去と今、外と内という多層的な視点で見つめなおし、ロゴがどのような未来を歩むのかを想像するプロセスだったと思います。そんな重層的なまなざしが、今回のCI STORYに滲みでていたら嬉しく思います。
取締役 COO 寺井 翔茉

私たちロフトワークは今、「創造性のエコシステムをデザインする」企業へと進化の真っ只中にいます。 これは、私たちが25年にわたり培ってきたオープンイノベーション支援や共創の場づくりの経験を礎とし、個々のプロジェクトを超え、多様な才能が参画し持続的なインパクトを生み出す「仕組み」そのものをデザインする存在を目指すということです。変化の激しい現代において、企業や地域が生き残るためには、流行や一時的なムードに留まらない、オープンな活動を通じた新たなエコシステムの構築が不可欠であると確信しています。
この大きな変革を実現するため、ロフトワーク自身もまた、エコシステムとしての成長と変化を絶えず実践し続ける必要があります。独自の事業領域開拓に挑むチーム制度「ユニット」、共通の理念をもちつつも地域ごとに異なる主体が運営する「FabCafe」とそこから生まれる独自のコミュニティ、そして共同出資による関連会社群。これら多様な活動体が、それぞれのビジョンとアイデンティティを胸に、未来の可能性を切り拓いています。
この喜ばしい多様性の進展は、一方で「ロフトワーク」という集合体の輪郭を、意図せず曖昧にしてしまうのではないかという懸念も生んでいました。 だからこそ今回のロゴリニューアルは、それぞれの活動の独自性を尊重しつつ、公の場での一貫性を保ちながらも、私たちの核である「出会いと変化を愛する精神」を体現するという、非常に挑戦的な試みとなりました。
Kamimura & Co.からご提案いただいた「Creative Triangle」は、まさにこの思想を形にするものでした。私にとって、3つの点が繋がることで初めて生まれるこの最小単位の形は、創造性のエコシステムの“はじまり”そのものを象徴し、ロフトワークの今とこれからを見事に表現してくれたと感じています。
Story
ビジュアルアイデンティティを制作いただいたKamimura & Co.と、CI STORYを制作いただいた編集者 M.R.さんに、テキストインタビューを実施しました。
Kamimura & Co.
Q1 ロフトワークに対してどのような印象を持たれていますか。また、今回ご一緒したことで、その印象が変わったり新しい発見があったら教えてください。
自分たちがウェブのクリエイティブを通して育ってきた世代なので、一緒に仕事をすることはなくても、常になんとなく見えている、同じ業界にいる存在だと感じていました。2000年代後半あたりから知っていたので、関わる人や活動内容がどんどん広がっていく様子はずっと横目で見ていて、特に、デザイン思考という言葉が流行り始めたあたりから、社会の中でのポジションが定まってきている印象でした。今回のプロジェクトで声をかけてくれたレノンさんは、ロフトワークに所属する以前からの友人で、共通の友人を介してドーハの空港ではじめて出会い、ヴェネチアビエンナーレなど、一緒に海外のアート関連イベントにいくような仲です。途中でロフトワークに所属したことは知っていましたが、どのように仕事をしているかはまったく知らなかったので、きっと色々な人が集まる会社なんだろうと思っていました(笑)。今回のプロジェクトを通して、実際に社内の方にもたくさんお会いし、その印象はあながち間違えていなかったんだなと思いました。
Q2 新しいコーポレートロゴのデザインコンセプトについて
ロフトワークが掲げる「すべての人のうちにある創造性を信じる」というメッセージを、今回のロゴデザイン変更にどのように反映させましたか。
シンボルの表現の抽象度の高さから、結果的にメッセージが反映されるようになったと思いますが、今回、メッセージをもとに表現を作ったかと言われると、実際はそうではありません。どのような会社でも、規模が大きくなると、ビジョンやパーパスはどんどん倫理的なものになり、抽象度が高くなり、それをビジュアルやグラフィックとして表現することが難しくなります。アイデンティティやロゴの原点は、他との区別のためのしるしです。社会的で倫理的であればあるほど、どの会社でも人類共通の目標に収束していくので、それをそのまま絵にしようとすると、誰もが区別のできない表現をすることになってしまいます。そのようなフェーズの会社が大切にするべきなのは、その会社固有の歴史や原点、創業者や代表がもつ非凡で個人的な感性だと、私たちは思っています。結局のところビジョンやパーパスとは、その企業の経営者の考えそのものだと思います。自分自身も、小さな会社ではありますが経営者でもあるので、「すべての人」に含まれにくい、なかなか理解されにくい人間の最たるものが経営者だと思っています。経営者は、義務のように非凡であることを求められます。今回であれば、代表の諏訪さんの非凡さこそを表現に反映するべきで、それこそが「すべての人のうちにある創造性を信じる」という態度の反映になると考えました。
Q3 シンボル「Creative Triangle」のデザインに込められた意味について
矢印や紙飛行機など、多様な物に見立てられるミニマルな三角形に、多様な視点や可能性を大切にする想いが込められていますが、具体的なデザインプロセスや意図についてお聞かせください。
これは、これまで愛されてきたロフトワークのシンボルを、これ以上ないほどにシンプルにした結果として現れたかたちです。変更前の元々のシンボルは、アルファベットの「L」を立体化したものと聞いていましたが、これを紙飛行機だと思っていた人もいるし、Lだという人もいて、社内の誰もあまりはっきりとした由来を知らず、しかし、皆がこのかたちと黄色に愛着を持っていました。私たちは、由来がはっきりしていないという点も含め、これを良い話だと思いました。なので、新しいシンボルでは、表現は新しくしながらも、文脈を引き継ぐことを最も意識しました。新しいシンボルをここから先どう考えるかは、これまでと同様に、受け取る人や使う人の創造性に委ねたいと思っています。また、個人的には、シンプルでミニマルなものは、シンプルであればあるほど豊かであると思っています。私たちのスタジオでは、デザインはすべてケースバイケースで考えるべきで、シンプルにすることが絶対的な正解だとは考えてはいないのですが、それでも、シンプルさというものには抗えない魅力があります。私たちのスタジオのマニフェストの一つに、「美しい道をつくる」というものがあります。これは、彫刻家のカール・アンドレの「私の理想の彫刻は道である」という言葉に触発されたものです。私たちの理想とするデザインの在り方も道のようなものであり、それ自体が美しいだけでなく、そこを通ると美しい景色が見え、その上を歩く人々自身も美しくいられる道。人々をより良いところに導く道。そして、誰もが通ることのできる道。ロフトワークのロゴも、そんな道のような存在になれると良いなと思っています。
編集者 M.R.
Q1 ロフトワークに対してどんな印象を抱いていたかも、そして、今回ご一緒したことで、印象が変わったり新しい発見があったら教えてください。
ロフトワークのイメージは、楽しそうでチャレンジング。和気あいあいとしたムードを持ちながら、さまざまな領域に次々と挑戦している企業という印象がありました。また、個性的な方ばかりなのに、なぜかみんな“ロフトワークらしい”と感じられる雰囲気をまとっているように思います。今回のCI STORY制作では、さまざまな立場や年次の方がフラットに意見を交わしながら議論を進めていくのが印象的で、共創という意識が自社プロジェクトにおいても自然に貫かれていることを感じました。また、ロゴのリファインという選択にも、自分たちらしさを大事にしたまま、さらに新しいステージへ進んでいこうというロフトワークらしい姿勢を感じています。
Q2 <シンプルな点・線・面による形>というセンテンスが印象的ですが、ここを拾い上げた理由はなんでしょうか。
「点・線・面」というキーワードは、ブレストの中でロフトワークのみなさんが挙げてくださったアイデアのひとつです。きわめてシンプルにリファインされたシンボルを、さらに点・線・面の要素に分解して語るアプローチが面白いなと思ったのと同時に、ロフトワーク自体の役割を表すキーワードになるのではないかと感じました。座談会「ロフトワークの今とこれから—創立25周年を迎えて」でお話されていた、起点になることや軸を通すこと、場をつくることなどとリンクする部分があると考えたからです。
Q3 ロゴの変更に合わせて、言葉の面でどのような変化や強調を行っていきましたか。
リファインされたロゴやシンボルが持つ、ニュートラルさの中に、さりげない遊び心やあたたかみのある佇まいとの親和性を意識しました。シンプルなわかりやすさを心がけつつ、「たとえば」「かもしれない」などの想像のふくらみを残すやわらかな言葉を取り入れることで、企業の言葉でありながらロフトワークらしい体温のある表現を目指しました。
Q4 企業のステートメントは、一貫性を持たせるものとして固定化させることも多いですが、受け取った人によって印象は違ってよいという懐の深さを感じます。ロフトワークの文化やアプローチとどのように関わっているのでしょうか?
見る人によって解釈が変わるシンボルという考え方は、ロフトワークが掲げる「すべての人のうちにあるクリエイティビティを信じる」というスタンスと結びついています。ブレストの際に、ロフトワークの山田さんが「諸説あり」というキーワードをあげて、複数の意味を内包するシンボルというアイデアを出してくださったことが大きなヒントになりました。テキストに記された例もあくまでひとつの可能性に過ぎないことを示すために、「たとえば」「あるいは」「もしくは」などの仮定や推量を表す言葉を選んでいます。
Credit
<株式会社ロフトワーク>
プロジェクトマネジメント:佐野まり沙
クリエティブディレクション:山田麗音、寺井翔茉
<制作パートナー>
ビジュアルアイデンティティ:Kamimura & Co.
モーショングラフィック:水野開斗 (Schiff)
CI STORY:編集者 M.R.
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