株式会社ダイフク, ディスカバリー・ジャパン合同会社 PROJECT

デジタル×フィジカルで「感動」を同時共有するUX設計
学生向けオンラインハッカソン Discovery Hackathon

2021年9月4日・5日の2日間にわたって開催された、2日間の学生向けものづくりハッカソン「Discovery Hackathon 2021」。3回目の開催となる今回は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、オンラインで開催されました。ハードウェア、ソフトウェア・アプリ開発、プロトタイピング、デザイン、ビジネスデザインなどに興味を持つ国内外15チーム60名の学生を対象に行われた短期集中型のハッカソンを、仕掛け人であるDAIFUKU、ディスカバリー・ジャパン、FabCafe/ロフトワークの3社が振り返ります。

聞き手・編集:FabCafe編集部

ハッカソン当日の様子

学生にありのままのDAIFUKUを伝えたい

DAIFUKUさんの企業活動について、教えて頂けますか?

DAIFUKU 大岩さん(以下、大岩さん) DAIFUKUは、1937年設立の機械メーカーです。業界用語ではマテリアルハンドリングといって、工場や物流センターでの保管、搬送、仕分け・ピッキングなど、モノを動かす技術を基盤に活動してきました。物流の自動化、合理化、高度化を追求しながら、現在世界26か国で展開しています。

株式会社ダイフク 大岩さん

今回、ハッカソンをやろうと思った背景を教えてください。

大岩さん もともとメーカーの製造部門や流通業界の方々には名前が通っているDAIFUKUですが、一般的な認知度はそれほど高くありません。今年のDAIFUKUの新入社員は98名なのですが、その内の9割近い84名が理工系学部の出身です。これまで顧客向けに展開してきたブランドマーケティング活動の一部を、これからのDAIFUKUの要となる理工系学生の認知訴求のために使いたいと考えました。もし、採用に繋がらなくてもファンになっていただければ、それで良いのではないかと。

Discovery Hackathonは、今年で3年目となりました。継続してきた効果は、既に感じ始めていますか?

ディスカバリー・ジャパン小川さん(以下、小川さん) 感じています。1年目はDAIFUKUさんの展示会場に実際に足を運び、DAIFUKUさんの物流システムを実際に見ながら、大阪の会場でハッカソンを実施しました。2年目以降は、コロナの影響もあり、オンラインにシフトしましたが、映像などを使って、DAIFUKUさんの魅力を伝え、学生たちがファンになっていくなどの様子も見られましたね。3年連続実施することによって、先輩から後輩へ口コミで参加者が増えたり、徐々にコミュニティが広がっていっているので、継続していく価値というのはたいへん実感しています。

ディスカバリー・ジャパン合同会社 小川さん

大岩さん 新たな関係性の構築に向けて、必ず3年間はやりたいと思っていました。学生との接点として「採用」という窓口がありますが、そこだけに限ってしまうと理解いただけないこともある。理工系学生に、ありのままのDAIFUKUを知ってもらうことが大切だと考えました。

Discovery Hackathonの開催にあたって、DAIFUKU、ディスカバリー・ジャパン、ロフトワーク が関わりましたが、3社の体制を教えて頂けますか?

小川さん 主催がディスカバリー・ジャパン、共催がDAIFUKU、企画運営がロフトワークという座組みです。ディスカバリー・ジャパンは大学や学生との繋がりがあり、DAIFUKUさんの方では、物流やものづくりの楽しさを通してサポートしてくれました。そこに、設計やアイデア出し、当日の運営でロフトワークが入ることで相乗効果がありました。企画の中身は、3社でアイデアを出し合い考えています。

配信会場

2021年のテーマは”リカバー”でした。なぜこのテーマを選んだのでしょう?

大岩さん このテーマ設定にはこだわりがあります。2019年のハッカソンは、「足りてるモノを足りないトコへ」をテーマに行いました。必要なものを必要なだけ、必要な時に、というマテリアルハンドリングの基本を表したもので、DAIFUKUの事業を理解いただくために設定しました。2回目のテーマは、「あたりまえをハックせよ」。パンデミックが始まり緊急事態が続くなか、あえて「当たり前」ということに向き合ったのが2回目でした。

パンデミックが常態化し日常が大きく変わり続ける現在、私たちは、失ったもの、変化したものをどのようにリカバーしていけるか。それが2021年のテーマです。変化し続けられる仕組みと可能性を考えながら、失われた日常をどう取り戻し、アップデートしていくかを考えました。

オンラインを逆手にとったUX設計

配信会場

今回のハッカソンは、オンラインで開催されました。UX設計で意識したポイントはなんですか?

ロフトワーク 金岡(以下、金岡) 1年目のハッカソンは完全にオフラインで行いました。2回目は、パンデミックが始まった転換期のなかでオンラインで実施し、コロナの状況が当たり前になった3年目に、何ができるのか、みんなで考えました。3回目となる今回は、2日間で今までにないオンライン体験を作りたいという想いがありました。2年目はオンラインですること自体がチャレンジでしたが、3年目はオンラインを逆手に取り、オンラインでしかできないことをやってみた、という感じです。

例えば、2021年は、MiroやOpen SE、Youtube LIVEなどのデジタルツールの活用をしています。さらに、オンラインでの新しい体験を考えた時、フィジカルな状況とリンクした時に面白さを感じるという仮説があって。「2021box」という箱を実際に送付して、オリエンテーションで箱の中に入っているフレグランスなど取り出して、同じ空気になったり、共同作業を行うなどの工夫をしました。

疲れた時にPCを閉じるのでなく、YouTubeを見たり、他のチームが何をやっているのか覗きに行ったりできると良いなと思いました。実際の場のハッカソンでも、トイレに行く時に他のチームの様子を見に行ったり、ご飯を一緒に食べに行ったり、そういうサブ的な要素が体験を面白くするじゃないですか。これを、どうオンラインで実現するかを考えました。

また、ベトナムハノイ工科大の学生が参加してくれたり、海外のゲストが登壇してくれたのは、オンラインだったからこそできたことです。オンラインじゃないと会えない人と繫ったり、知らない街の17:00のチャイムの音が聞こえてくるのは、同じ地球にいる感じがしていいなと感じました。

小川さん オンラインの難しさは、現場感の雰囲気を感じづらいことです。チーム間のコミュニケーションが、目に見えて伝わりにくいことはある。ただ、海外から参加者が集まるなど、スケール感の大きさにはメリットがあります。今後オフライン開催に戻ったときにも、オンラインで得られたこれらの収穫を、うまく取り入れたいと思います。

FabCafe 金岡

印象に残っているシーンなどはありますか?

小川さん 純粋に課題を解決していこうとする学生さん、ものづくりの楽しさを純粋に感じている学生たちを見れたのが良かったですね。

金岡 エンジニアが1人もいないのに応募してきたチームがいて、メンタリングも踏まえて最後まで頑張っていた様子は良かったですね。優勝したチームのアイデアも、ハック精神に溢れていてよかったです。

参加した学生からの声はいかがでしたか?

金岡 毎年、終了後にアンケートを実施していて、かなりポジティブな意見をいただいています。「新しいオンライン体験をできた」、「コロナ禍において大学のキャンパスが閉鎖されてしまった中で、今回のハッカソンを通して新しい仲間に出会えた」、「自分たちの活動する場を得た」などの嬉しい声がありました。

小川さん 今回のハッカソンで配布した、Tシャツやキーホルダーをハッカソン後も着たり、つけてくれている学生さんもいるようですね。また、履歴書などに活動実績として、ハッカソン受賞を記載してくれている方もいます。

2日間のなかで、DAIFUKUとしてどんな関わりをしようと思いましたか? 社員の方の関わりについてもお伺いしたいです。

大岩さん コロナで制約が多いなか、緊急事態が日常化して1年が過ぎました。オンラインでも、まずはつながっている、ということを意識してもらいたいと思い、その部分を提案させてもらいました。社長や、会社の幹部も何人か参加しましたが、どこまで社員と学生たちとの接点を作るかが、今後のチャレンジです。イベントの協賛だけでなく、社員を巻き込まなければいけない。バーチャルでなくオンサイトの空気感が一緒に感じられると良いなと。

オフラインとオンラインのハイブリッドを目指して

ディスカバリージャパンで今回のハッカソンの映像も作られていますが、どのような想いで制作されましたか?

小川さん 30秒でハッカソンの特徴や実績を伝える動画を作成しました。ディスカバリージャパンの既存の視聴者さんはもちろん、理工系の人たちにも届くよう、あまりDAIFUKUさんの活動を知らない人でも楽しめるような動画にしています。

大岩さん やはり、今は文章ではなく映像の時代ですよね。社員や来客に見ていただくなど、話題作りになります。コンパクトに、説明的ではなく、ありのままのムードを伝えたい。

当日の運営メンバー

今後のDiscovery Hackathonの展望を教えてください。

金岡 これだけチャレンジングな場を委ねてもらえた、そして新しいものを届けられたのは、大岩さんをはじめとしたDAIFUKUさんのおかげです。よりDAIFUKUさんを学生に知ってもらうために、どうもう一歩進めることができるのか、これが次のチャレンジポイントです。また今回、オンラインで得た知見は大きいです。今後はオンラインとオフラインのハイブリッドイベントに挑戦したいと思います。

小川さん 2022年は、コロナの状況にもよりますが、オフラインを基軸にしたオンラインとのハイブリッドに挑戦してみたいですね。開催地も大阪、東京、そして海外でもありえるかもしれない。我々は、これからも学生とDAIFUKUさんの媒介になるような存在になりたいと思っています。

大岩さん 参加者の学生が求めるもの、また、求める先にあるものを提供していきたい。それを軸として、これからも考えていきたいと思います。

体制

  • 審査員:
    池澤 あやか(東宝芸能株式会社)
    根津 孝太(有限会社znug design)
    小林 茂(情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] )
    杉本 将(ディスカバリー・ジャパン合同会社)
    信田 浩志(株式会社ダイフク)
  • インプットトークゲスト:
    太刀川 英輔(NOSIGNER株式会社)
    Mitch Altman
  • MC:
    あまり(株式会社MAD MANAGEMENT)
  • 主催:
    ディスカバリー・ジャパン合同会社
  • 共催:
    株式会社ダイフク
  • 協力:
    株式会社ロフトワーク
    FabCafe LLP
    さくらインターネット株式会社
    株式会社Keigan
    白光株式会社
    共立電子産業株式会社
  • メンター協力:
    Cord for Osaka
  • 舞台演出:
    岩沢 卓(有限会社バッタネイション)
    池田 匠
  • 舞台監督:
    田部井 勝彦
  • 画面POP・イラスト:
    星野 蒼天
  • 映像制作:
    株式会社VECKS

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