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Experience Design 2014 開催レポート 後編

実現したいのは「体験」とそのために「何をデザインする」のか

株式会社ロフトワーク イノベーションメーカー 棚橋 弘季

「エクスペリエンスデザインは、エクスペリエンスをデザインするのではない。エクスペリエンスのためのデザインである」と切り出した棚橋は、エクスぺリエンスデザインのプロセスは次の2つのフェーズに分けられると説明します。

「どんな体験?」を考えるフェーズ
何を作るかの前に、なぜそれを作るべきなのかを定義すべき。ゴールは「実現すべき体験を具体的にイメージすること」。具体的には、どんな体験を新たに実現したいのか?その新しい体験を最初に利用してもらいたい人はどんな人なのか?その人たちにとってなぜ価値になり得るのか?を考える。

「何をデザイン?」を考えるフェーズ
その価値を生むためにはどんな製品やサービスでなくてはならないのか?ユーザとのタッチポイントをどうデザインするか?インフラとしてのシステムはどうあるべきか?製品やサービスを運用する組織はどうあるべきか?などを総合的に捉え、1つの包括的な体験としてどうデザインすべきかを考える。

また、これらを検討していく際のポイントに、次の2つのキーワードを挙げました。

Diversity
なるべく発想の過程、デザインの過程をオープンにし、組織の外部の人を積極的に巻き込む。他人の話を聴くことで、自分の固定概念をはずしていく必要がある。異分野の有識者に新しい視点をもらうのも有効。答えをもらうのではなく、気づきを得る。

Lean Startup
今までにない新しいものを創り出す際には、リーンスタートアップの学習型アプローチを適用しながら、徐々に市場にマッチしたカタチを探っていくとよい。実際に提供してみないとわからないことも多いため、早い段階でコンセプトを開示したり、商品の発売前からコミュニケーションを開始したりする方法もある。

最後に「我々が実践する人間中心のデザインは、ユーザの体験から考え始めるけれども、ユーザにとって有用なもの、というだけではダメ」と棚橋。

棚橋セッション資料より

1.有用性
2.実現可能性(技術的に実現できるのか)
3.持続可能性(ビジネス視点で持続可能なのか)

この3つのバランスを取りながら、新しいエクスペリエンスを作っていくことが重要だと語りました。

CXMには、コンテンツとコンテクストをマネジメントするCMSが不可欠

株式会社ロフトワーク 代表取締役社長 諏訪 光洋

ロフトワーク 諏訪光洋は、「カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)」にフォーカスし、テクノロジー視点から昨今の企業に求められる取り組みに言及。CXは、企業Webサイト、ソーシャルメディア、リアルの店舗、サービスを行う場などを含め、どのようにタッチポイントを設計すべきかを考えることであり、さらにそれを統合的に管理していく考え方および技術が「カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)」です。

「CXMはもともとECからスタートしたテクノロジーですが、O2OやBtoBにおいて、どうやってお客様になってもらうか、どうやってお客様との継続的な関係を維持していくかといったことを考えていく上では、CRMやCMSの要素が不可欠」と諏訪。

中でも特に重要なのがCMSの要素です。その理由は、企業が持つコンテンツの特徴(不定形、企業視点or販売視点で作らざるを得ない、膨大で管理が難しい、感情測定が難しいなど)にあり、成果を出すことの難しさから、コンテンツを正しい場所に適切なタイミングで届けていくことが重視されるようになってきています。

「最終的に肝になるのは、コンテンツとコンテクスト。ここをマネジメントするのが非常に難しいため、このあとの分科会で登場する3社を筆頭に、CMSベンダー各社もCMXにフォーカスしてきている」と諏訪。Webのコンテンツやコンテクストをいかにお客様のもとに適切に届けることができるか。ここにテクノロジーを活用することで、実現されるエクスペリエンスも大きく変わることになりそうです。

学びを実践!UX、CXのデザインプロセスを体験

トークセッションパートが終了したところで、UX、CXを実現するためのWebテクノロジーを提供する企業と、このあとの分科会の紹介を兼ねたパネルディスカッションを実施。サイトコア株式会社、日本オラクル株式会社、株式会社のれんの3社より、各分科会で予定しているワークショップの内容が紹介されました。

テーマ「パーソナライゼーション」

サイトコア株式会社 片桐 佳江氏

サイトコア株式会社 マーケティング グループ マーケティング本部長 片桐 佳江氏

パーソナライゼーションは、サイトに訪問された方の属性、行動履歴に合わせてサイト上で表示させるコンテンツやエクスペリエンスを最適化すること。空港のWebサイトをお題に、訪問者に対するパーソナライゼーションのアイデアを考え、ワークショップ後には、パーソナライゼーションに成功している国内外の先進事例も紹介。

「顧客側からも求められ始めているテーマであり手法。Webでパーソナライゼーションを行っている企業では、実際に売上が伸びている。人間は非常にわがままな生き物であり、心地よい体験ができるほうへと目が行ってしまう。周りが始めると、他の企業も始めざるを得ない傾向にある。」(片桐氏)

テーマ「O2O」

日本オラクル株式会社 渡邊 紳二氏

日本オラクル株式会社 Fusion Middleware事業統括本部 WebCenterソリューション部 渡邊 紳二氏

オラクルデンキという架空の会社を作り、お客様に製品を買ってもらうための施策を検討。その際、カスタマージャーニーマップを作るだけでなく、そこにテクノロジーをどう当てはめていくべきか、オラクルが提供する7つの製品を組み合わせながら考えていく。

「グローバル競争の激化に加え製品がコモディティ化し、付加価値の提供が重要度を増している。ソーシャルの影響力も無視できない。O2Oにおいては、クロスチャネルで一貫したサービスを与えることが大事。また、買ったら終わりではなく、買った後にどんなサポートが受けられるができるかといったことも重要になってくる。」(渡邊氏)

テーマ「コンテンツ」

株式会社のれん 八木 康介氏

株式会社のれん 営業推進部 営業企画課 八木 康介氏

映画館に来てもらうために、お客様のコンテクストに合わせたコンテンツの最適化案を考える。具体的には、インタビューに基づいてカスタマージャーニーマップを作成し、コンテクストを分析。新たなアイデアを発想するところまでを体験。エクスペリエンス実践事例として、中部国際空港様の事例も紹介する。

「Webサイトに訪れる方はいろいろ。デバイスの進化によってお客様のコンテクストも変わってきているし、管理者にとっても今まで出来なかったことが出来るようになってきている。だからこそ、コンテクストをきちんと整理し、コンテンツとどう組み合わせていくかを考えていくことが重要。」(八木氏)

3つの会場に分かれ、テーマに沿った分科会を開催

各パートナーからの分科会の説明があった後は、3つの会場に分かれて分科会がスタート。会場はどこも満員で、活発な議論が繰り広げられていました。

目指すはプロジェクト化、さまざまなアイデアの種が生まれた分科会

分科会終了後、片桐氏、渡邊氏、八木氏より、各分科会の報告が行われました。「いろいろな人と話し合う中で非常にクリエイティブなアイデアが出てくるのは、ワークショップならでは」(片桐氏)、「面白いアイデアがたくさん出て、逆に私のほうが勉強になった」(渡邊氏)、「映画の予告編を見て面白そう!と思ったはずなのに、なぜか忘れてしまう。その記憶をとどめておけるような施策はどうか?という意見にはハッとさせられた」(八木氏)など、いずれの分科会もイノベーティブなアイデアが生み出された様子。

参加者からも、「新しい気付きを得た」「会社の枠の中では出来ないことを体験できた」「自分では考え付かないようなアイデアを聴けた」などの声が聞かれ、XPD2014が多くの参加者にとっての新しい体験になりました。

すべてのプログラムを終え、クロージングスピーチに立ったロフトワーク諏訪光洋は、「これからの企業は、どんな体験を、どんなコミュニケーションを、どんなワクワクをデザインしていくのかを考えるべき」として、「ぜひイノベーティブなエクスペリエンスを目指して、今日のセッションやワークショップで得た学びを忘れないうちに、できるだけ早く新しいプロジェクトを立ち上げてみてほしい」と締めくくりました。

Event Information:Pepper開発現場にみる、理想のユーザ体験を創るデザインプロセスを学ぶ

イベント概要

デザインにおいてますます重要な「ユーザー・エクスペリエンス(UX)」。最近では企業全体のビジネス成果を主眼におく「カスタマーエクスペリエンス(CX)」という考え方やそこにフォーカスするテクノロジーも多くうまれてきています。

Experience Design 2014ではこの両者に共通する、「体験をどうデザインするか?」を幅広いジャンルのスピーカーと実現するためのWebテクノロジーを提供する企業と一緒に考えていきます。

開催概要

セミナータイトル Experience Design 2014
開催日時 2014年3月12日(水)10:00~(9:30受付開始)
場所 六本木アカデミーヒルズ
対象 ・よりよい体験をユーザーに提供をしたいと考えている方
・最新のWebテクノロジーの活用方法を知りたい方
・マーケティング、Web担当者
参加費 事前クレジット決済:¥2,000 / 当日現金払い:¥3,000
定員 200名
主催 株式会社ロフトワーク

プログラム

9:30-10:00
受付開始
10:00-10:15
『Opening Speech』ロフトワーク 林
10:15-11:00
『Experience Design』frog Mr. Brandon Edwards
11:00-12:00
『ユーザーの本質的要求からビジョンを描く』 千葉工業大学 山崎氏
12:00-13:00
Lunch
13:00-13:45
『Experience Designの設計』  ロフトワーク 棚橋
13:45-14:00
『Experience Technologyの活用』  ロフトワーク 諏訪
14:00-15:00
『Experience Technologyを提供する企業のセッション&パネル』 モデレーター:ロフトワーク 林
15:00-15:15
Break
15:15-16:00
分科会
16:00-16:15
Break
16:15-17:00
分科会
17:00-17:15
Break
17:15-17:45
「分科会サマリー」
17:45-18:00
『Closing Speech』 ロフトワーク 諏訪

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