EVENT

コロナ影響下で「変化予測とビジョンドリブンの生存戦略」は変わったのか?
テクノロジー×行政×クリエイティブの立場から

新型コロナウイルス感染症は、世界に大きな転換点をつくったといえるでしょう。これまでの成長路線やシナリオをすべて刷新せざるを得ない状況に、企業も生活者も、それぞれに迷いを持っています。「元の世界にそのまま戻ることはできない」という前提はありながら、その後の世界をいかに描くのかを問われているようです。

いま、私たちに必要なのは、コロナウイルスがなかった時代に思いを馳せることではありません。共に生きる「ウィズコロナ」の生き方、対処法が見つかった後に訪れるであろう「アフターコロナ」の社会を予測しながら、新しく描いたビジョンの実現に向けて、いち早く行動を試みることです。

そこで、いち早く思考を進めるべく、ロフトワークでは企業のデジタル変革を推進するKPMG Ignition Tokyoと共催で、オンラインセミナー方式でのトークイベントを開催。テクノロジー、行政、クリエイティブの業界から、現在時点のアイデアを共有するスピーカーを募りました。

前述のKPMG Ignition Tokyoからは、代表取締役社長兼CEOの茶谷公之さん。先進的な試みと大胆な若返りにより話題を集める、茨城県つくば市の政策イノベーション部長兼スマートシティ戦略室リーダーである森祐介さん。そして、ロフトワーク代表取締役社長の諏訪光洋が鼎談。

企業に、市民に、クリエイティブに、求められていく「これから」の姿とは、いったいどのようなものでしょうか。今回は、三者のトークディスカッションを抜粋・構成しました。

テキスト:長谷川 賢人

Speaker

茶谷 公之

茶谷 公之

KPMG Ignition Tokyo
代表取締役社長 兼CEO

森 祐介

森 祐介

つくば市
政策イノベーション部長 兼 スマートシティ戦略室リーダー

諏訪 光洋

株式会社ロフトワーク
代表取締役社長

Profile

[KPMG Ignition Tokyo共催]
Post Covid-19 :
コロナ影響下における変化予測とビジョンドリブンの生存戦略

イベント概要はこちら

どうすれば、最も「正しく」伝えられるのかに気を払う

ロフトワーク 諏訪(以下、諏訪):個人的な所感としては、コロナウイルスの広まりも終盤に近づいてきていて、まさに「アフターコロナ」の状況も見えてきているのではないかと思います。ここからは「再起動(リブート)」も近づいている時期と捉えています。

そこで、今日はまず、これまでの反省と、これからの時期も踏まえた「情報発信の重要性」から話ができたらと考えています。結果として、日本はCOVID-19による死者も少なく、医療機関の踏ん張りもあって、対処は大成功だったと言っていいはずです。

けれども、政府に対する国民の評価は著しく低いように感じます。一方で、ニューヨークは数値の面では大災害、“Disaster” そのものだったと思うんですけれども、知事であるアンドリュー・クオモ氏は高く評価をされている。ニューヨークにいる知人に聞くと、各地からの高い評価を耳にすると。

情報発信という観点で見ると、どちらが正しく、どちらが悪いかという話ではなく、「コメントの発表の仕方」がいかに大切かを思い知らされました。森さんはつくば市という自治体の中にいて、現市長の情報発信を間近に見てきました。この観点については、どのようにお考えになりますか。

つくば市 森氏(以下、森氏):五十嵐立青市長(つくば市)は、今回このような状況下での情報発信を非常に注意しながら進めています。その注意は「情報をどこまで出すか、出さないか」といった保守的な観点ではなく、どういった形で情報発信をすると、最も「正しく」伝えたいことが伝わるか、というものです。それを相当に意識しています。

たとえば、つくば市が今までどんなことに取り組んできて、なぜこういう判断をしたか。そして、結果だけを取り上げるのではなく、その検討の経緯、根拠に値するものを、わかりやすい言葉で発信することに努めています。結果として、広報に関連することは、デザインの統一も含めて、最終的に五十嵐市長が全部に目を通していく体制を取っています。

また、情報発信を即座に行うための事前準備をかなり念入りにしています。

横浜市、神戸市、福岡市は、つくば市がよく比較されてしまう都市なのですが、これらの都市と異なりつくば市は政令市でもなければ中核市でもありません。そのため、例えば保健所を持っていないなど権限を持っていない部分もあるんですね。

そのような領域については県や政府の発表にその都度、非常に注目しています。「このような発表がなされた場合は、こうやって動こう」というオプションを複数、事前に考えておき、迅速に発表するようにしています。

その「想定し、事前に十分検討した上での発表」であることを、市民の方々に伝えることで、不安も多いこの状況下で少しでも安心していただけるように努めています。

諏訪:ありがとうございます。茶谷さんは、企業を率いるリーダーとして、あるいはコンサルタントの立場として、情報発信の仕組みやポリシーの発表をサポートしていることと思います。情報発信の重要性、どのように考えますか。

KPMG Ignition Tokyo 茶谷(以下、茶谷氏):弊社の社員数は100名ですが、国籍では26カ国の出身者がいます。外国出身の社員を多く抱えている立場から言いますと、国や自治体の公式情報は日本語のみの場合が多いので、社内向けの情報共有も気をつけています。

外国出身の社員は、日本語を話すことはできても、読むのが難しかったりするんです。そういった社員からすると、現状がいったいどうなっているのか、不安に思うことはすごく多かったと思います。

そういった意味でも、なるべく行政から流れてくる情報を社内掲示板へ噛み砕いて情報共有したり、ビデオカンファレンスシステムで全社会議で共有したりして、不安の解消に努めました。在宅勤務をするにしても、就業ルールに際しての課題なども挙げてもらい、いろいろと対策を打っててきました。

諏訪さんのお話で、ニューヨーク市長の発表が例に挙がりましたね。あの発表については、数値を伴う科学的な説明と今後の見通し、それに対する社会へのインパクトといった「情報の透明性」が高かったことが、ニューヨーク市長の評価された理由ではないかなと。

数値としては厳しいものが出てきたとしても、そのあたりが担保されていたからこそ、市民に対しても協力を求める理由が明確に語られていた。このような透明性の高いコミュニケーションが非常に高い評価を受けた点は、今後の手本としていくべきだろうと感じました。

アフターコロナで起きた「不可逆な動き」と「主従の逆転」

諏訪:ロフトワークも少なからず外国人の社員がいたりしますが、やはり持っている情報の量や質が全く違うと感じます。彼らと話すと、人によって「情報のソース」が違う。

ただ、これは日本人の中でもずいぶん異なります。公的なデータに基づくファクトではなく、テレビが日々打ち出してしまったような、あやふやなデータを鵜呑みにしている人も多くいるであろうことが、だんだんわかってきたわけです。

こういった非常時には、リーダーの強さ、情報発信の構造によって、ずいぶんと差が出てくるのだろうと一連の状況を見ていて感じました。それを乗り越えたリーダーシップは強く、ステートメントを発揮することで、考えも伝わっていくでしょうから。

ニューヨーク市の話が出たところで、視聴者の方から「つくば市がベンチマークしている海外の都市などはありますか」と質問をいただいています。森さん、これはいかがでしょう?

森氏:ベンチマークにしている海外の都市はないですね。限られた時間でいろんな情報を集めて、それを取捨選択し、次の政策を決めることが求められますので、海外よりも国内で類似のステータスを持っている自治体の情報を集めることが先決になってきます。

他方、つくば市は姉妹都市からも物品の提供などをいただきましたが、同様に情報という点でも、一部は入ってきます。それらも一つの参考にはしています。

諏訪:ありがとうございます。ここで、ひとつ考え方をシェアしますね。『ホモサピエンス全史』などを書いているユヴァル・ノア・ハラリさんが、最近受けてきた取材で、コロナウイルスがもたらす変化について話しています。

見ての通り、「不可逆な変化」をもたらす部分が結構ありそうです。たとえば、大学のオンライン教育は完全にはもとに戻らないでしょう。もともと全てオフラインでの講義が、オンラインでずいぶん行われてしまうようになって支障がないことがわかると、オンライン授業化の流れはそのまま進んでいくはずです。

我々自身でも、アフターコロナについて事業デザインをしている中で、端的に言えば社員へのフィードバックを、どのように取り組んでいくのかについて再設計しているところです。評価制度そのものを考えなくてはなりませんし、オフライン特有の「阿吽の呼吸」で運営されてきた部分を、いかにフルリモートで適用させていくのか。

細かなルールが再設定されて、精度が上がったことによって、コロナ前に「戻さなくてもいい部分」が出てきているわけですね。お二人から見たときに、その部分で大きく影響がありそうなところをお聞かせいただけますか。

森氏:市役所のわかりやすい例としては、行政手続のオンライン化の流れはどんどん進むんじゃないかと思います。しかし、法律で手続きが決まっているために実現できないこともあります。そこは法改正も含めて、同時に進めなければいけないとは感じます。

変わったことの一例を出すと、引っ越しをする前に役所へ届けなければならない「転出届」です。これまでは窓口でしか受け付けていなかったものを、総務省の通知により全国一律で郵送でも対応できるようになりました。これは戻らない流れだと思います。

一方で、「転入届」は未だ窓口でなければ受け付けられていません。本人確認を重視している観点からですね。テクノロジーからのサポートも期待したいところです。

何をオンラインにすべきで、何をそうしないべきか、メリットとデメリットを考えながら、対応していかなくてなりません。ただ、方向性としては、あらゆる業務がオンライン化に向かっていくのは間違いない。それは後戻りしにくいでしょう。

一度オンラインにしてみて不具合があった場合は、柔軟にオフラインに戻すことがあっても良いのではないかと考えています。どちらかに決め切るのではなく、後戻りをして方向転換をしていくことも重要かと思います。

茶谷氏:多くの職種では、主従が入れ替わるのではないでしょうか。在宅がメインとなり、オフィスへ行くのはミーティングやイベントといったサブの用件になる。これは多分、戻らない方向だと思いますね。

もう一つは、電子署名や電子捺印が進みます。我々の会社にも一部には従来のプロセスがまだ残っているんですけれども、電子化することのメリットを大きく感じています。署名プロセスを全て電子化することによって確実な記録が残るんですね。いつ、誰が、何を署名したのかを一覧できるのは、やはり利便性が高い。ビジネスのプロセスにおいても、押印のために出社するような流れはなくなっていくことは想像に容易いです。

ただ、署名や捺印が必要なのは、実はまだまだ行政などの書類で多い。ここもも早く標準化されるようになると、さらなる効率化や省力化が加速するでしょう。

「遠隔同居」をいかにうまく進められるか

諏訪:止まらないオフライン化でいうと、実は大きな課題は人材育成なのではないか、と考えています。

たとえば、新卒社員や未経験者が仕事を覚えるときには、やはりオフラインであれば阿吽の呼吸で、細かくフィードバックできる。ただ、どうしてもオンラインだと、四六時中のフィードバックはできないわけですね。そうすると、習熟速度も当然落ちてくる。

単調で反復な仕事は、それこそAIやコンピューターが代わりにやってくれるものが増えてくると考えると、人間が引き受けるものには「複雑な要因」か「コミュニケーション」が絡んでくるものが多くなるはず。つまり、オンラインでは学ぶことが難しいものが残ってきてしまうと思うんですね。

今、20歳くらいの大学生が就職をすると、リモート勤務ばかりでオフィスにほとんど人がいない。そういうときに、どうすれば仕事を覚えていけるのでしょうか。

森さんにお聞きしたいのが、もし、役所の機能の80%をオンラインで完結できるようになったとして、新しいスタッフを仕事ができるまで導けますか?

森氏:新卒といっても、人によってスキルやケイパビリティは異なります。ですから、そのことを前提とした今の対面の業務指導を完全にオンラインの研修等で代替するのは難しいかなと思います。

しかし、可能な限りのオフラインといいますか、オンラインでありながら、物理的に近づける方法は今の技術でもそれなりにはあるんじゃないかなと。Zoomなどビデオ会議システムを常時つないでおくのも、その一つですね。座席に決裁文書を持ってきて相談するような業務は、その方法でだいぶカバーできる。

ただ、私も遠隔勤務になってからZoomで常時職場とつながることを継続してきましたが、少し疲れも出て、今は止めてしまいました。職場にいるときより負担感があるんでしょうか。必要なときに留めています。

茶谷氏:アメリカのある映画会社では、テレプレゼンス用に高価な装置を使って、会議室を2拠点で結び付けているケースがあります。机もお互い同じものを使い、カメラを中央に置くと、ちょうど向かい合っているような、全く同じ会議室のテーブルを共有しているような雰囲気になれるセットアップをしているわけです。

Zoom、Microsoft Teamsなどのビデオコミュニケーションの常時接続は、まだまだ使い方に工夫の余地はあると思います。たとえば、遠隔地にいる親の家とつないでおけば、「遠隔同居」のような感じも実現できる。それらをカバーする新たなアプリが出てくるかもしれません。サービスの使い方をはじめ、イノベーションが起きてくる領域でしょう。

日本の「災害慣れ」と、不足した「データ教育」による混乱

諏訪:日本は約10年前に東日本大震災を経験し、今回はCOVID-19を経験しました。5年、10年に一度は危機的状況が訪れるなかで、組織はどうすればレジリエンスを身につけられるでしょうか?

茶谷氏:日本は災害のよく起こる国で、良くも悪くも「慣れている」んですね。最近、湯川秀樹さんが昔に書かれた自伝の『旅人』という本を読みました。出生からの約30年にわたる若き日々を振り返るものですが、作中でも台風、地震、噴火、津波といった記述がさらりと書かれている。ほんとうにあちこちで災害が起きているわけです。

日本に住んでいる人たちのネイティブな記憶として、災害が来たときに「戻っていく」ことには慣れているんだろうと思います。ただ、今回感じたのは、デジタルインフラに依拠することに関しては、まだ十分に対応できていないことの課題です。

インターネットのバンド幅が足りなくなったり、通信速後が急に遅くなったりと、社会インフラとしてのバックボーンが弱い。在宅勤務にも対応できていないので、ここからの復興を考えるのであれば、インフラも同時に整備していく必要があるだろうと考えています。

組織としては、常に災害を意識しておく訓練をすること。もっとも、机上の検証しかないとは感じますが、常に議論したり、役割を決めておいたりすることが大事でしょう。

諏訪:災害が多い日本社会は復活も早いのですが、興っていく最中には「魔女狩り」や「買い占め問題」など、特有のパニックが起こりやすい。すると、みんなが情報発信をしにくくなってしまいます。その悪いスパイラルも、COVID-19の環境下では起きてしまいましたね。

また、第二波、第三波が来たときに、このパニックに陥らないといいのですが。

森氏:そうですね。なかなか正解はないのかもしれません。ざっくりしたことを言うと、「失敗を許す組織風土」をいかにつくれるか、でしょうか。

新しいことが起きたときに、従来にはない提案を上司が承認する。あるいは、市民も行政のチャレンジを許容してくれる。新しいことを「やってみたい!」と自発的に動くためにも、失敗の許容は必要。それを普段から習慣づけできているかどうか。

もう一つ、それを可能にすることとして、きちんとデータやサイエンスに基づいた思考と行動であることが大事だと思います。単なるアイディアベースの施策を失敗したというのではやはり許されません。情報や数字を裏付けに、根拠に基づいた論理立てがあれば予測と反して失敗しても許されて良い。今はデータに基づく政策企画や立案がなされていないケースが多く見受けられます。データリテラシーを高め、EBPM(Evidence-based Policy Making、証拠に基づく政策立案)の推進がレジリエンスある組織のために必要でしょう。

諏訪:今回でいえば、データはある程度の段階から出始めてはいました。ただ、データを捉えられる「感性」が人によって違う。「一日の感染者数が30人」というデータを、どのように見るのか。「30人ながら恐ろしい」と考える人もいるし、「もう収束へ向かっている」と思う人たちもいる感性が大きく違うのですね。

すると、情報へのアクセスにも断絶が起きます。COVID-19で、移動平均線といった統計学上の考えが広まりもしたのですが、データの専門家である茶谷さんは、感性の問題をどう考えますか。

茶谷氏:私は東京都が公開していた患者のデータをダウンロードして、さまざまな移動平均線を作ったり、分析してみたりしていました。

それを基にすると「実際に報道されているよりは、それほどクリティカルな状況にならないのではないか」という感覚は、4月初旬くらいから持ち始めてはいました。ただ、私は感染症の専門家ではないですし、それを発信しても誰も信じてくれないでしょうから、自分の手持ちデータとしてだけ見ていたわけです。

僕が学生時代に注力していた「実験科学」の見地からすると、発表する側にしても、もっと情報を分解して、きちんとデータを見せた方が、さまざまな憶測を生まなくてよかったのではないかと思います。

そこには、見る側のリテラシーも当然必要です。たとえば、「平均」が示されたときに、分散値を表示しないと基本的には意味がない。そういった科学的な当たり前がなされていない発表もありました。そのあたりはデータを提供する側、あるいは見る側も、きちんと理解できる状態になるべきなのでしょう。

森氏:全く賛成でして、「一日の感染者数が30人」が多いか少ないかを、直感的に捉えてしまうのは非常に危険なことだと思います。

前日と比べた場合、1ヶ月前と比べた場合、人口何万人当たりの発症率、同規模の自治体との比較、他の国との比較……といったように、「30人」に対してのリファレンスが常にあることが大事だと思うんです。それを一つの数字だけで議論するのがナンセンスだろうと。茶谷さんのように自分でダウンロードして分析できるレベルにまで達するのは、なかなか難しいとも思いますが……。

ただ、日本政府もデータ教育や数学を子供たちに実施すると、特にこのIT化の流れの中で大々的に打ち出しているわけですね。それはそれで非常に素晴らしいことだと思いますし、進めるべきです。同時に、子供たちだけではなくて、成人されている方も含め、生涯学習の観点でのデータ教育も重要になってくるのではないかと考えます。

前提となる用語、データの見方といった知識が一人ひとりに備わり、きちんと科学的なに基づいてニュースを読み、その後の方策を決める。そういった行動につながっていけばよいですね。

日本企業は「問題解決」に偏重している。求められる「問題定義」の力

諏訪:ありがとうございます。これが最後の投げかけになりますが、ロフトワークにもすでにいくつかの企業から来ている相談があります。これからアフターコロナに入っていくにあたって、どういったステートメントや方針を持って進むべきか、です。

レジリエンスを取り入れ、V字回復を目指しながら、新しい企業の姿を考えていくのか。それをデザイン経営の視点などから考えてほしい、という相談ですね。

見方にとよれば、その組織にとっては大きなチャンスです。新しいステートメントを出してポリシーを作り上げていくことが、直近の2ヶ月から3ヶ月ぐらいで固めて、発表できるのですから。

つくば市でも、森さんご自身がイノベーションを考えるポリシーをまとめる立場として、どのように立案してまとめていくお考えですか。

森氏:タイミングが非常に重要ですよね。やはり「適時に、適切な情報を、適切な人へ届ける」という観点で考えると、それはいつが最適なんかを引き続き考えているところです。

インパクトがあった好事例として、千葉市さんが行政オンライン化について、このコロナ渦において来年度までの実施時期を明示し発表したことには、さまざまな人からのポジティブな反応があったと思います。各自治体が右往左往している中で、千葉市は市内でのコロナ感染者検証はもちろん、この困難を契機としてレバレッジさせ、発展していくのかについても、とても良いタイミングで発表なさったと感じます。

つくば市でも、市長のリーダーシップの下、市役所一丸となってウィズ・コロナ、アフター・コロナの社会像を考えています。科学教育などの分野では、引き続き、ロフトワークさん、諏訪さんからもアドバイスいただければと思います。

諏訪氏:楽しみです。ありがとうございます。

ビジネスの方針を決めるのは、それこそ茶谷さんたちの領域かと思います。茶谷さんもそれを技術部分からサポートしていくところだと思いますが、いかがでしょうか。

茶谷氏:ここで考えるべきは、問題の捉え方には二面あるということです。それは「問題を解決する」と「問題を定義する」です。「問題を解決」するのは、スキルだといえます。「問題を定義」するのは、センスやクリエイティビティです。

ただ、多くの会社では、「問題の解決」に多くのリソースを割いていますが、「問題の定義」をできる人が枯渇しています。たとえば、昨今のAIブームに経営者が「うちもAIで自社を何とかしなきゃいけない」という問題意識に目覚めたとします。そこで、副社長以下の経営陣、よりデジタルネイティブに近い世代の経営企画部長などに、その問題意識を伝える。ここで経営者が迫っているのは、「問題の解決」でなく「問題の定義」なわけですね。

今後も「問題の定義」をできる人が、ずいぶんと必要だろうなと思います。KPMG Ignition Tokyoでも、その点をお手伝いできるようなチームになろうと、常日頃、思っております。

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