EVENT ワークショップ

愛着のある家電をもっと長く使い続けたい。
「かでん保健室 – 家電修理相談・ペイントワークショップ」
イベントレポート

近年、古くなった家電は「買い替える」ことが当たり前になってしまっています。しかし、持続可能な社会の実現が叫ばれる今、身近にある家電との向き合い方を改めて考え直す必要があるのではないでしょうか。そのような問いのもと、これからの家電のあり方・関係性を探るために、本プロジェクトは立ち上がりました。

FabCafe Nagoyaでは、2日間にわたるイベントを開催。Day1では「かでん保健室」と題し、家電の修理相談およびペイントワークショップを行い、Day2ではモノを「使い続ける」ことにまつわる様々なアプローチに取り組んでいるゲストとともに、「これからの暮らしにおけるモノとの向き合い方」についてトークセッションを行いました。

本稿では、Day1のワークショップイベントの模様をお届けします。

開催概要:【名古屋開催】かでん保健室 – 家電修理相談・ペイントワークショップ –

家電ともっと長く付き合うために

ワークショップでは、「修理相談コース」と「ペイントコース」を設け、参加者のみなさんにご持参いただいた愛用家電の修理およびペイントをさせていただきました。

修理相談コース

修理相談コースでは、パナソニックマーケティングジャパン株式会社より、日頃、預かり修理工場にてパナソニック製品の修理を担う技術員が、当日参加者のみなさんが持ち込まれたパナソニック製品の家電の修理を担当。

“保健室”の名の通り、家電の診察からスタートし、家電の状態を見ながら故障内容を確認、参加者の方に処置方法を説明したうえで、修理対応を行っていきました。

“お客様の目の前で修理する”という普段の業務とは違った環境での作業をする技術員と、初めて家電の中身を見る参加者のみなさんとで、それぞれの気づきがある中、日常の使い方、収納方法、メンテナンス方法などの話も交えながら、修理から修理の検証までを一緒に行い、お持ちいただいた6台の家電のうち4台をなおして、参加者の手元に戻すことができました。

参加者のみなさんは、年代も性別もバラバラ。なかでも男子中学生のおふたりがお持ちになったのは、ご自身が生まれるよりもずっと前(!)である30年以上前に生産されたラジオカセットレコーダー。当時、修理に携わっていたパナソニック関係者の方によると、当時の販売価格はなんと約10万円もしたという最高峰のものだそう。

古い家電が好きだというおふたりは、「日頃から家電が故障すると、自分たちで解体したり、修理を行ったりしている」と言い、初めて体験したプロの仕事を前に、ワクワクが止まらない様子。

本イベントの企画に携わったパナソニックホールディングスの松野氏は、「こうした若い年代の方々のなかに『古い家電がおもしろい』と思ってくれている人たちがいることがわかったのは、今後の修理ビジネスを検討するうえで、とても大きな収穫になった」と語りました。

ペイントコース

ペイントコースでは、メーカーを問わず家電を持ち寄っていただき、大阪のブランディング会社でデザイナーとして働く傍らイラストレーターとしても活躍されているキヨカナコさんに、オリジナルの線画イラストをペイントしていただきました。

参加者のみなさんには、家電を使用する日常を思い浮かべながら、イベント限定の3パターンのイラストの中から、好きなイラストを選んでいただきました。

——マットなブラックのヘッドホンには、左右で異なるゴールドのかわいらしい犬のデザインを。毎日、ちょっと面倒だなと思いながら使用するドライヤーには、応援の気持ちを込めて「FIGHT!」の文字を。部屋に潤いを与えてくれる加湿器には、水をイメージした海のデザインを——。

それぞれ世界にひとつしかない家電へと、生まれ変わりました。

参加者のみなさんが口を揃えたのは、「ペイントされたこと自体よりも、自分の大切な家電にまつわるエピソードを伝えながら、キヨさんと一緒にデザインを相談しながらアップデートしていくプロセスがとても楽しかった」ということでした。

修理をハブとして技術者とユーザーが笑顔でつながる場に

次に、ワークショップに参加していただいたお客様やパナソニックグループのみなさん、そしてイベントの企画に携わったロフトワークメンバーで行った「振り返りトーク」の内容を抜粋してご紹介します。

参加者のみなさん

「家電は長く使い続けたいと思っているので、お別れ前の最後の行事として修理やメンテナンスを挟むことで、『次も愛着のもてるものをしっかり選ぼう』と思えるんですよね。今日のような対面で気軽に相談できる場があったらうれしいなと思いました」。
「今日はとても勉強になったので、技術者の方と話しながら一緒に修理できる場が増えたら、うれしいです」。(参加者)

修理を担当したパナソニックマーケティングジャパンさん

「今日は何よりも、お客様が喜んでおられる顔を見ることができたのが、うれしかったです。今後またこういう機会があれば参加したいですし、私以外の工場で働く人たちにもぜひ経験してもらいたいと思いました」。(技術員1)

「ふだんは依頼されたものを修理したら終わりなので、家電が壊れる前後のストーリーを知ることはできません。しかし今日は、お客様が『日頃どんなふうに家電を使われているのか』『どこに愛着をもっているのか』といった壊れる前のお話を聞いたり、なおった家電を手にされたときの笑顔をダイレクトに見たりすることができたので、とてもやりがいを感じました」(技術員2)

「いつもは『部品の生産が終了したので修理できません』とお伝えしなければならないことも多いのですが、技術のプロとしては、愛着をもって長く使っていただくために、今日のような“修理するのが当たり前”の世界を創る方法を考えていくべきなのだろう、と感じました。原点に立ち戻るきっかけとなるイベントに参加できて、感謝しています」。(企画者)

イラストレーターのキヨカナコさん

「みなさんが愛着をもって使われている家電に私のイラストが入り込むのはプレッシャーも感じていましたが、実際に普段の使用方法や生活スタイルを聞きながら、イラストをお客さんの日常に落とし込むという初めての経験ができて、本当に楽しかったです」。

ロフトワークメンバー

「『パナソニックさんのイベントだから参加した』『吟味して購入したパナソニック家電だからこそ、大切に長く使いたい』といった声が聞こえてきたのが、とても印象的でした。パナソニックさんが100年以上かけて築き上げて来られたブランドに対する信頼の表れだと思うので、“こうしたニーズをいかに取り入れながらサービスをアップデートしていくか”というのが、これからの大きな問いになっていくのではないかと感じました」。

パナソニックホールディングス 松野さん

「パナソニックグループとしては、今回のイベントを第一歩として、ここにいるみなさんと一緒に、修理が当たり前の世界を創るための取り組みをしていきたいと考えています」。

多くの参加者にとって、“モノとの向き合い方”を見直すきっかけとなった本イベント。『モノを⻑く使い続けること』や『廃棄ではなく修理やメンテナンスを選択すること』が、今よりもっと当たり前な世の中になるには、消費者の意識改革とともに、継続的なシステム構築の必要性を感じた方も少なくなかったようです。

ロフトワークのMTRLでは、今後もみなさんと一緒に、日常を共にするモノとの向き合い方を考える機会を創造していきます。

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