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山田 麗音, 飯澤 絹子 2020.09.17

創造的なチームをつくる「ゆるくて深い」リーダーシップ
〜後編:みんなが安心できる場をつくる

「自由なチーム」を支えるリーダーの視点

ロフトワークのクリエイティブディレクター 山田麗音(やまだ・れのん)が、社内勉強会の運営チームリーダーとして行った仕事は、ちょっと変わったものでした。リーダーなのに会議を仕切らない、積極的に決断しない。それなのに、なぜかチームメンバー自らがタスクを引き受け、クオリティの高いアウトプットが生まれるのです。

前編では、社内勉強会チームメンバーのひとり、ディレクター2年目の飯澤絹子(いいざわ・きぬこ)が、麗音とともに「ジャズセッションのような」チームの働きぶりを振り返りました。後編では、さらにリーダー・麗音の思考を探ります。

「リーダーがチームにおいて果たすべき役割」とは何か? ふたりの会話から、ちょっと新鮮な視点を得られるかもしれません。

執筆:中嶋 稀実
編集:loftwork.com 編集部

話す人

山田 麗音

クリエイティブディレクター。企業のブランディングや新たなムーブメントを創造するプロジェクトなどで、クリエイティブディレクションに携わる。社内勉強会の運営チームにおいてリーダーを担当した。

Profile

飯澤 絹子

入社2年目のクリエイティブディレクター。企業や官公庁などのデザインリサーチプロジェクトに携わっている。プロジェクトマネージャーとして成長するためのヒントを得るべく、山田にさまざまな疑問を投げかける。

Profile

ロフトワークの社内勉強会について

ロフトワークの社内勉強会「Creative Meeting(クリエイティブミーティング)」では、社員それぞれがプロジェクトを通じて得た経験や知見をプレゼンテーションしたり、さまざまな領域のプロフェッショナルから学んだりしながら、広義の「クリエイティブな学び」を共有しています。

>>詳しくは前編をご覧ください

バックミラーからチームを見ている

麗音:ひとつ聞きたいんですけど。絹子さんは、一緒に勉強会の運営をしている間、僕のことをリーダーだと思ってましたか?

飯澤:もちろん! 会議をぐいぐい引っ張るわけでもないし、積極的に決断するわけでもない。でも、迷ったり困ったりした時は、麗音さんに相談すれば必ずなんとかなると思っていました。それに、リーダー以外のみんなからちゃんとフィードバックがもらえるので、安心して思ったことを発言したり、自分に任された仕事を進行できた気がします。

麗音:実際、僕はみんなに任せる部分は多かったのですが、「なんでもあり」というわけでもなかったんですよ。

例えば、一度、若手メンバーのひとりが勉強会の「司会をやりたい」って手を挙げてくれたんです。司会は勉強会の体験に大きく関わる重要な仕事なので、彼女と2人で司会のなにがやりたいのか、時間をかけて話し合いました。単に進行をしてみたいのか、その会をよりいいものにする責任を持ちたいのか。ディレクターとして、常に品質管理をしていたつもりです。

麗音が、勉強会の初期構想で掲げた10カ条のひとつ、「発表者の『その人がその人でしかない面白さ』がちゃんと滲みでること」。ゲスト講師によるワークショップでも、必ず参加するロフトワーカーの「らしさ」が滲み伝わる設計を貫いた。

−− 表から見るとメンバーが自由にアウトプットしていたように見ますが、リーダーがメンバーのやりたいこと汲みながら、ちゃんと品質を支えていたんですね。

麗音僕、自分のことをバックミラー的な存在でもあると思っているんです。みんながプロジェクトのゴールに向かって進行方向を向いている中で、僕は後ろを見ながら、過ぎていく景色の中になにか大事なものが見落とされていないかを確認する役目。よく、プロジェクトの途中で「やっぱりこれ大事だったんじゃないの?」みたいなものを引っ張り出して、みんなを困らせることがあります。でも、一貫性があるかどうかはすごく気を遣っています。

−− 麗音さんのそのようなスタンスが、チームメンバーの安心感へとつながっていたんでしょうね。

ロジカルなことば、ポエティカルなことば

飯澤:これまで前職も含めて様々な会議に参加してきましたが、回を重ねるうちに、自分からアイディアを出したり発言したりすることに後ろ向きな気持ちになることがありました。

「アイデアある?」と聞かれても、問いかけたリーダーのなかには既に正解の範囲が決まっているような気がしてしまって。もし、ずれたアイデアを出してしまったら、受け入れてもらえないんじゃないかって。

麗音:そう感じてしまうのは、あまりよくない状態だよね。

飯澤:でも、麗音さんとの会議では、そんなふうに感じることがありませんでした。なにが起きていたのか、今でも不思議なんです。

麗音:きっと、「ロジカルなことば」と「ポエティカルなことば」の違いではないかな。プロジェクトではロジカルなことばを求められるシーンも多いと思いますが、そのような場では、正しいか正しくないかが判断基準になりがちです。

クリエイターとものづくりするときは、コミュニケーションのベースが「ポエティカルなことば」になります。例えば、「ブワーっていう感じだよね」とか。お互いの頭のなかで描いているイメージを共有するのが目的だから、ことばの正しさはそれほど重要ではないんです。絹子さんが発言したくなくなるのは、ロジカルなコミュニケーションが多くて、イメージやビジョンを共有するポエティカルなことばが足りないからではないかな。

飯澤:会議が、答え合わせをする場になっている感じですね。

麗音:ポエティカルなことばには正解があるわけではないし、考えが違っても楽しめることばの世界がある。僕は、プロジェクトにおけるコミュニケーションは、ロジカルなことばとポエティカルなことば、それぞれを足したり引いたりするものだと思っています。

ことばの使い方次第で、チームビルディングがうまくできるかどうかが決まる。チームをつくる人はクリエイターとたくさん話して、ポエティカルなことばを豊かにするといいんじゃないかな。

新しいことばが生まれる時間

麗音:有志で集まったメンバーで作ったチームでしたが、半年間、毎週の定例会議にほぼ全員が参加し続けてくれていました。それって、会議の場が楽しかったからだと思うんです。

飯澤:出張中なのに、ビデオチャットを使ってまで定例会議に参加していたメンバーもいましたね。なぜでしょうね? 麗音さんにとって、楽しい時間ってどういうものですか?

麗音:新しい気づきや発見がある時間は、嬉しいですよね。僕、オーラルコミュニケーションと政治に興味があって。会話によって人がどう動くとか、気持ちや行動がどう変わるとか、起きる事象に興味があるんです。この場で、この人たちで、この時間で。いろいろな条件が重なって、新しい「ことば」が生まれていく。その瞬間がすごく楽しいです。

飯澤:確かに、私も毎回の会議で「この場でなにが起こるんだろう」って楽しみにしていました。

麗音:それはよかったです。僕はチームのみなさんに、「僕と一緒にやることを楽しんでもらいたい。僕はそういう場を提供し続けるから、6カ月間頑張ってください」って思っていましたから。

−− お話を聞いていて、運営チームのメンバーが仕事に没頭できたのは、麗音さんが戦略的に「ヌケ感」をつくっていたおかげじゃないかなと感じました。

麗音:念のため断っておくんですが、「この日までに、ここまで決まっていないと間に合わない」ということは、僕もいつも意識していたんですよ。結果として、それを口に出す必要がなかっただけで。

飯澤:えっ!? そうだったんですか! モチベーションコントロールや品質管理だけじゃなく、進行もちゃんと見て下さっていたんですね。

麗音:僕、真面目なんですよ…。

−− 「リーダーなのに仕切らない」なんて言ってごめんなさい! でも、本当にいいチームだったということが伝わってきました。

ロフトワーク社内勉強会「Creative MTG」クレジット

(2019年10月〜2020年3月 肩書は全て運営当時のものです。)

  • 運営チーム(ロフトワーク)
    • 山田 麗音 / クリエイティブディレクター
    • 松永 篤 / クリエイティブディレクター
    • 松本 亮平 / Layout Unit クリエイティブディレクター
    • 松本 遼 / クリエイティブディレクター
    • 村岡 麻子 / クリエイティブディレクター
    • 伊藤 あゆみ / クリエイティブディレクター
    • 飯澤 絹子 / クリエイティブディレクター
    • 浅井 亜紀子 / エグゼクティブアシスタント
    • 岩崎 諒子 /マーケティング Div.
  • 協力
    • 阿部 広太郎 / コピーライター、「企画でメシを食って行く」主宰
    • 川俣 郁美 / 日本財団 特定事業部 インクルージョン推進チーム 兼 TRUE COLORSチーム
    • 小岩 秀太郎 / 縦糸横糸合同会社 代表/公益社団法人全日本郷土芸能協会 理事
    • 横石 崇 / &Co. 代表取締役
    • 重松 佑 / ロフトワーク シニアクリエイティブディレクター
    • 篠田 栞/ ロフトワーク プロデューサー

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対話を重ねる、外の世界に触れる。
空間に魂を吹き込む、オフィスリニューアルの軌跡