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横山 暁子, 岩沢 エリ, 山田 憲, 後閑 裕太朗 2023.07.31

新たな理念を伝え続けて、組織が変わる、事業が変わる。
デザイン経営スタディツアー#2 ファミリア

デザイン経営を学ぶために、「実践の現場」を訪れる

ロフトワークは、2019年にデザイン振興会と経済産業省 関東経済産業局との共同事業として『中小企業のデザイン経営』のリサーチレポートを公開。以降、これまで数多くの中小企業のみなさんとともに、プロジェクトを通じてデザイン経営導入を実践してきました。

数々の経営に関するお悩みを聞き、導入支援プロジェクト行う中で、「デザイン経営」にまつわる経営者の悩み・モヤモヤは、「現場」をみながら経営者同士で共有・ディスカッションすることで、より本質的な視点やヒントを得られるのではないか、という新たな仮説が見えてきました。

そこで、私たちが始めた活動が「デザイン経営スタディツアー」です。

本ツアーでは、デザイン経営に取り組もうとしている企業の経営者が、「先輩企業」を直接訪問します。工場やオフィスといった「デザイン経営の現場」を生で見学し、経営者同士が直接対話をすることで、「生きた経営アプローチ」を吸収することを目指しています。

 

執筆:新原 なりか
編集:後閑 裕太朗(Loftwork.com編集部)
企画:横山 暁子、岩沢 エリ、山田 憲(株式会社ロフトワーク)
写真:山元 裕人

ベビー・子ども服の老舗かつ最先端、「ファミリア」さんを訪問

第1回目の福永紙工株式会社につづく、2回目の訪問先は株式会社ファミリア。1950年に4人の “ママ友” たちが「子どものためにより良いものを」という情熱に燃えて、わずか3坪という小さなお店からスタートしたファミリアは、ベビー・子ども服の世界で確たるブランドとして成長。現在5代目社長を務めるのは、創業者の孫に当たる岡崎忠彦さんです。デザイナーとしてのキャリアを持つ岡崎社長は、2011年に社長就任後、2015年のファミリア65周年を期に企業理念を「子どもの可能性をクリエイトする」に再構築し、同社を新しい事業ステージへ牽引しています。

株式会社ファミリア 代表取締役社長 岡崎忠彦さん

社員の「美意識」を育むオフィス

ツアーには、全国から10社の経営者のみなさんが参加。それぞれの事業内容は、ファミリアと同じ繊維業界から、IT、農業までさまざま。老舗企業を先代から受け継いだ方が多く、大事な核を守りながらも変革を続けているファミリアの経営にみなさん興味津々です。

「話をする前に、まず現場を見てほしい」という岡崎社長の希望により、本社オフィスの見学からツアーはスタート。「なんにも隠すことないですから、全部見てください」と言う岡崎社長の案内で、2フロアにまたがるオフィスを回っていきます。お仕事中の社員のみなさんと岡崎社長の自然な掛け合いから、フラットな関係性や風通しのよさも伝わってきました。

ミッドセンチュリーのスタイルで統一されたオフィス。「創業時と同時代のデザインやアートは、今もなお色褪せていない。それを社員たちに常に肌身で感じていてほしいんです。」(岡崎社長)

社長室をなくしたり、営業チームの隣にあえてデザインチームを配置したりと、さまざまな工夫が施されたオフィス。中でも、目立つ場所に設置されている「ビジュアルプラットフォーム」と呼ばれるボードが肝のようです。「服のデザインから、ウェブサイト、運営しているプリスクールのプログラムまで、すべてのコンセプトやトンマナを一貫させるために、ビジュアルを通して全員の意識統一をしています。」(岡崎社長)

ビジュアルプラットフォーム

「宇宙人」から「信頼される社長」へ

続くトークセッションで岡崎社長が強調したのは、「理念」の大切さ。理念を飾りにせずに、「一度決めたら、それを信じて朝から晩まで徹底的に言い続けること」で、社内にも社外にも共感の輪が広がっていくと言います。また、ビジュアルプラットフォームによる意識統一についても、さらに詳しいお話を聞かせてくださいました。

組織づくりに関しては、“アメリカ帰りの社長の息子” だった自身を「宇宙人」に例えて、入社当初のまわりとのコミュニケーションの難しさと、それをどう乗り越えたかを語る一幕も。

参加者からは、「これまで子ども服をつくり続けてきた社員たちにとって、理念の刷新や新規事業のスタートは大きなトライだったと思うが、どうやって巻き込んでいったのか?」「岡崎社長は、迷うことはないのか?」など、たくさんのリアルな質問が。

社長と同じ「宇宙人枠」で採用されたというクリエイティブ・ディレクターの石田さんや、「社長」というニックネームで呼ばれている総務の野澤さんなど、ファミリア社員の方の生の声も交えながらディスカッションが進んでいきました。

理念が結実した「ファミリア神戸本店」

ツアーの最後には、旗艦店である「ファミリア神戸本店」を見学。この店舗は、妊娠がわかってから2歳の誕生日を迎えるまでの1000日間を応援する体感型新業態として、2018年9月にオープン。「子どもの可能性をクリエイトする」の理念に基づき、子ども服のショップだけでなく、訪れる親子をサポートするクリニックやレストランなどが併設されています。

岡崎社長が取り組んできた組織づくりや、更新された理念、そしてその理念のもと働く社員のみなさんの思いの結実である本店。空間や商品の随所にそのエッセンスが感じられました。

トークセッションの様子を詳しくご紹介

岡崎社長のデザイン経営についてのお話、経営者のみなさんのリアルな疑問、社員の方からの声など、当日のトークセッションの詳しい様子は、以下のダウンロード版レポートでご紹介しています。どなたでも、無料でご覧いただけます。「デザイン経営、気になるけどどこから始めれば……」という方へ、きっとヒントが得られるはずです。

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対話を重ねる、外の世界に触れる。
空間に魂を吹き込む、オフィスリニューアルの軌跡