FINDING
2024.02.14

FabCafe Taipeiが(もう一度)できるまで
Vol.3 居心地のよい居場所は見えないところから生まれる

2023年の5月中旬に台北市の西門エリアに移転して活動を再開しました。そこで、FabCafe Taipei(と、運営を行うロフトワーク台湾)がもう一度居場所を得るまでの道のりを連載でお届けします。

第三回となる今回は、2023年の5月より渋谷に参加することになったマーケティングメンバーの王が、建築士のCalvinやコミュニティマネージャーのYvonneとの視点を借りながら、実際にビルを借りると決まってからどのようなプロセスでリノベーションを行っていったのかや、実際行われた展示について紹介します!

執筆:王俐勻/ロフトワーク マーケティング
編集:Tim Wong 堤大樹/Loftwork Taiwan

風情溢れるレトロな建築

FabCafe Taipeiのビルを購入してから実際にオープンするまで、施工期間は2022年の12月から2023年4月までの約5ヵ月半かかりました。1月には台湾の旧正月があり、想定より時間がかかったのです。

肝心の施工ですがまずは床から見ていくと、築51年のビルの床材には台湾の石を砕いて作られたグレーのテラゾー床が敷き詰められていました。この魅力的な床材を生かさない手はなく、今回のリノベーションでは1階から3階の床はそのまま維持することに。また、印象的なビルの緑がかった外壁についても残すかどうか議論がありましたが、この建物と地域の歴史を刻んだものとして残すことに決定しました。

台湾の古民家でしか見れないテラゾー床 / エンボスガラスのランプシェード

整理作業が進むにつれ、建物には設計図には表示されていなかったが存在する隠れた配管と配線が次第に明らかになりました。私たちは建築家のCalvinと配管工、電気工と詳細な計画の検討を行い、一連の統合作業を行い、各階の要件にも対応しました。数回の準備と慎重な調整を行った結果、建物の基盤はすべて整備されました。

「玄関」となる1階の活用

次に、インフラが整って駆動し始めたFabCafeTaipeiの玄関口である1階について見ていきます。

1階は、カフェ席だけでなく展示エリアも兼ねています。右側にある大きなガラス窓からは窓柵を撤去し、自然光を取り入れられるようにすることで、外からも、カフェの様子や展示されているものが自然と目に入るようにしました。また、近隣住民にこの場所を開いていくために、気軽にコーヒーを楽しめるように、窓際に簡易な席を設置しています。

非常に立地に恵まれているFabCafe Taipeiですが、こうした立地を生かしカフェと展示、イベントなどを通じて屋内と屋外のエリアをゆるくつなげることが理想です。

その役割を担っているのが、入り口にある少し引っ込んだエントランス。そのスペースは、を使って2023年9月FabCafe Taipeiに開催された1日限定のポップアップイベントで早速活用されることとなりました。通行人の飛び入り参加を狙ったお茶とシーシャの体験イベントを行ったのです。

さらに、カフェマネージャーとして1階を預かるYvonneは「カフェ」と「展示スペース」の機能を最大限に発揮するため、いつでも店内レイアウトを調整できるように電源ケーブル内蔵、カッピングに適する・高さ102センチの移動式カウンターを特注しました。

空間に柔軟性を与え展示物の魅力を引き出すアイデアが、この場所でのオープニングパーティーの際にも生かされていて、大きな台湾式煮込み「滷味(ルーウェイ)」屋台をまるごと店内にいれ、カフェと滷味の組み合わせで参加者たちの胃袋を掴んでいました。

オープニングパーティーの模様

「FabcafeTaipeiがもう一度できるまで Vol.1」で堤が書いていた「100点満点のものではなく、今ある最善を選ぶ」という言葉。このことにより、さまざまな可能性が広がっていると感じています。

大野氏の作品がインテリアとして展示

こうしたビル全体を使った動きはすでにいくつか事例ができてきていて、FabCafe Taipeiを立ち上げてすぐの頃に関西出身の建築家、大野宏さんを最初のレジデンス制作アーディストとして迎えることができました。

そして2023年9月上旬には、FabCafe Kyotoと京都芸大の研究チーム「KYOTO5」とのレジデンスプログラム・リサーチ展示、京都ブランド「Whole Love Kyoto」と台湾のフィールドリサーチを行い、1カ月に及ぶポップアップストアも開催しています。

Fabcafe Kyoto、京都芸大「KYOTO5」による展示は2F空間を使用
小野さんがレジテンス滞在時制作したプロトタイプが展示ラックとして使用

2023年7月から8月末まで、私は週に一度、ここで台湾の仲間たちと一緒に働きました。ノスタルジックな雰囲気を湛えるテラゾー床、おばあちゃんの家を思わせるエンボスガラスのランプシェードはどこか懐かしさを感じます。久々の台湾での二ヶ月の仕事は、思った以上にリラックスした気持ちで過ごせたのです。

もし、FabCafe Taipeiを訪れることがあった際は、この古くて新しい建物にちりばめられたアイデアを発見することも、ここを訪れた際の最大の楽しみでもあるでしょう!

今後、Loftwork TaiwanとFabCafe Taipeiチームもさまざまな展示やイベントの計画を続けてまいりますので、どうぞお楽しみに!

Keywords

Next Contents

The KYOTO Shinbun’s Reportage
京都新聞論説委員が見る京都ルポ「課題の価値」