2018年2月、ロフトワークが設立・運営に関わるBioClub が、メディアカルチャーをテーマとした国際イベント「MeCA l Media Culture in Asia: A Transnational Platform」において、バイオテクノロジーへの理解を深める8日間の特別プログラムを企画・プロデュースします。イベント開催に先駆け、11月に行われた記者発表の内容を振り返りながら、“バイオテクノロジーとアート”をめぐる最新動向とロフトワークの取り組みについてご紹介します。

BioClubとは

BioClubとは、アートユニットBCLのゲオアグ・トレメル、福原志保、そしてロフトワークの 林千晶らによって設立された東京発のオープン・バイオ・コミュニティです。2016年2月の発足以来、ロフトワークが運営するFabCafe MTRLおよび併設のバイオラボを拠点に、ワークショップやトークイベントなどさまざまな活動を行なっています。ロフトワークも、これまで毎週のミートアップやイベントなどで協働を重ねてきました。それは、現在あらゆる領域に影響を与え、変革をもたらしつつあるバイオテクノロジーの飛躍的な進化に注目しているから。

「バイオテクノロジー」というと専門家だけが扱う印象が先行していたかもしれませんが、今や個人でもアクセス可能な技術へと変わりつつあります。近年では専門の研究機関だけでなく、市民バイオロジスト(バイオハッカー)による独自の研究活動が世界的に拡大しており、「DIYバイオ」や「ストリートバイオ」と呼ばれて注目を集めています。

すでにインターネットに次ぐ新たなプラットフォームとなりつつあるバイオテクノロジー。海外では、誰もがバイオについて学び、理解を深め、安全に利活用できるオープン・コミュニティが多数存在しています。こうした世界の潮流を背景に、BioClubは東京発のバイオハッカースペースとして誕生しました。

BioClubは、あらゆる人々が参加できフラットな立場でバイオテクノロジーについて実践・議論できる場です。ロフトワーク代表の林は、このようなオープン・コミュニティの意義について、こう語っています。

「バイオについて知りたいこと、気になることについての情報や見解を広く集め、誰もがアクセスできるコモンズとして育てていく。それは私たちの考察を深め、前向きな議論をするための土台であり、さまざまなプロジェクトを生み出す豊かなリソースにもなってくれるはず」(ブログ記事「 バイオはただのブームではない 」2016年2月22日より)

MeCA 特別プログラムのテーマは「庭」

BioClubのディレクター ゲオアグ・トレメルと、同じくBioClubとロフトワークのディレクターを務める石塚千晃は、来年2月、アジアのメディアカルチャーを紹介する「MeCA(Media Culture in Asia: A Transnational Platform)」の1カテゴリーとして開催される特別プログラムを企画・プロデュースします。

MeCAは、国際交流基金アジアセンターと一般社団法人TodaysArt JAPAN / AACTOKYOが共同主催する国際イベントです。
2010年代以降、デジタルテクノロジーの発展やソーシャルメディアの広がりによって、アジアにおけるメディアアートやクリエイティブの表現は、急速に変化しています。MeCAではニューメディアの動向を追いながら、アート展示、音楽ライブ、ワークショップなど6つのプログラムを通じ、日本初のメディアカルチャーの総合プラットフォーム創出を目指しています。

そんなMeCAでBioClubが手がけるのは、“バイオテクノロジーとアート”をテーマにした公募型ワークショップ「BioCamp: Gardens as ‘Biotechnik’」です。

「Biotechnik(ビオテヒニク)」とは、ドイツ語でバイオ技術、生物工学を表す言葉。今回の企画は、バイオテクノロジーを人間が生命を理解していくために必要な技術と捉え、「庭」をフレームワークにすることで、有機的なデザイン手法を探求していきます。
当記者会見の時点でプログラム参加の公募は締め切られていましたが、定員20名の3倍以上の応募があったとのこと。日本でもバイオへの関心が高まりつつある現状がうかがわれます。応募者には、国内外の研究者やアーティストだけでなく、一般の会社員、編集者、そして養蜂家や農家など多様な属性の方がいるそうです。

ワークショップのテーマに「庭」を選んだ理由について、プログラムディレクターの石塚は次のように説明します。

「昨今のクリエイティブシーンにおいて、バイオテクノロジーも選択肢の一つとなりつつあります。しかし、生命そのものを改変する技術でもあるバイオテクノロジーをクリエイティブな表現に用いるとき、私たちには(倫理面や安全性、法的な規制を含め)これまでとは違った手法や考え方が必要となるはずです。そこで、最も歴史の長い“生きものを使った芸術”であり、世界中に存在し各地で個性のコントラストがある『庭』をフレームワークとするアイディアが浮かびました」(石塚)

後半では、世界各国から集まった多彩なゲストを講師に迎え、前半で学んだ内容を踏まえながら、実際に試作するグループワークを実施。バイオテクノロジーを用いて「現代の庭」を有機的に構築するデザインに挑戦します。

講師/ファシリテーターには、前述の山内さんのほか、オーストリアを拠点とするアーティストで同国ニューデザイン大学およびウィーン応用美術大学で教鞭を執るグンタ・サイフリートゥ(Günter Seyfried)、フランスのハッカースペース「La Paillasse」の創設者として知られるバイオハッカー、トーマス・ランドラン(Thomas Landrain)の参加が決定しています。

また今回は、スペシャルゲストとして、バイオアートの第一人者で西オーストラリア大学のバイオアート研究センター「SymbioticA」の共同設立者であるイオナ・ズール(Ionat Zurr)、バイオアートの先駆者として知られ、独創的な作品で世界を驚愕させてきたジョー・デイヴィス(Joe Davis)も来日。プログラム内で特別なトークセッションを行うほか、ジョー・デイヴィスの自伝的ドキュメンタリー「Heaven Earth Joe Davis」の上映も行う予定です。

石塚とともにプログラム・ディレクターを務めるアーティストで、BioClub創設者のゲオアグ・トレメルは、今回の企画について「単にバイオアートの作品づくりをするハッカソンではない」と明言しています。

「今回のプログラムの目的は、バイオの知識を身につけ、表現する手法を学ぶだけでなく、バイオテクノロジーを大局的に理解することにあります。アートの枠組みを超え、『生命とは何か』という大きな問いを社会にどうやって投げかけていくか。そんな生命そのものを問い直す試みとしても注目してほしいですね」(トレメル)

プログラム詳細

「BioCamp: Gardens as ‘Biotechnik’」 http://jfac.jp/culture/events/e-biocamp/

会期:2018年2月10日(土)〜17日(土)
会場:Red Bull Studios TOKYO、FabCafe MTRL
プログラム・ディレクター: ゲオルグ・トレメル(アーティスト/ BioClub /BCL)、石塚千晃(アーティスト/ BioClub)、アンドレアス・シアギャン(Lifepatch)
ゲスト講師:山内朋樹、グンタ・サイフリートゥ、トーマス・ランドランなど
ゲストスピーカー:イオナ・ズール(西オーストラリア大学・SymbioticA主宰)、ジョー・デイヴィス(アーティスト・哲学者)
主催:国際交流基金アジアセンター、一般社団法人TodaysArt JAPAN/AACTOKYO
企画・制作:BioClub、国際交流基金アジアセンター、一般社団法人TodaysArt JAPAN/AACTOKYO
協力:オーストリア文化フォーラム・東京
助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、アメリカ合衆国大使館
問合わせ先:BioCamp Office|camp@meca.tokyo

(執筆協力:庄司里紗

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