2050年の京都市の都市構想への道筋を描く。
「創造的都市、京都」を提唱する、最終報告書を公開
ロフトワークは、京都市の「カルチャープレナーの創造活動促進事業」*にて採択され実施したプロジェクトの活動報告レポートを公開しました。本レポートは、京都市が目指す「文化と経済の好循環を創出する都市」をテーマに都市構造を読み解き、京都という都市が持続的に発展し続けるための構想を提案しています。
少子化や産業構造の変化による市外への人口流出をうけ、人口減少に直面する自治体は少なくありません。8ヶ月に及んだ本プロジェクトでは、ディスカッションやリサーチを経て、都市が人口の量を増やすことで都市の価値を測ることから脱却し、都市構造を本質的に読みとく重要性を提起しています。文化、環境、都市、サステナビリティ、ウェルビーイングなどの社会起点のオープンイノベーションや価値共創に挑むためには、一つの行政、企業や大学だけで対処するのは困難です。京都市と同様の課題や構想に挑む、行政、教育機関の方にも、参考事例として役立てていただける内容になっています。
レポートは、ロフトワークのウェブサイトからダウンロードが可能です。
最終報告書 (発行:京都市、株式会社ロフトワーク)
ダウンロードリンク
内容
*令和5年度カルチャープレナーの創造活動促進事業〜カルチャープレナー等の交流・コミュニティ創出
背景
少子化・人口減少問題への対応が市政の最重要課題になっている昨今、京都市は強みである文化力を最大限に活かした政策を推進しています。その中で、京都市は自分たちの文化、価値観への愛着等をエネルギーの起点に、共感者を増やし、文化的遺伝子を残していくことで事業を行う人を「カルチャープレナー(文化起業家)」として注目。彼らが創造する新しい評価軸や社会的インパクトを京都から提唱することで、創造的な人々が集まり、定着する「優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市」への発展を目指し、これからの都市デザインを議論する「カルチャープレナーの創造活動促進事業」を令和5年度から実施しています。
京都市との共同プロジェクトとして、ロフトワークは、2023年7月〜2024年3月まで活動。「京都市グランドビジョン」の策定(2025年)を念頭に、より良き京都の未来への道筋を探る視点を導き出すために、有識者、学生、起業家、情報機関、企業、行政等、京都内外の多様な人々とラウンドテーブル(ステークホルダーが一つの円を囲み、立場に関係なく公平に議論すること)を行い、ディスカッションを通じて新たな価値を見出しました。
Project Vision
本事業では、京都市グランドビジョン策定(2025年策定予定)も念頭に持続可能性の高い概念・プロセスを構築するため文化と経済の好循環を生み出す道筋と指標を設計し実践への道へと数年かけて実現させ成功へと導いていく起点を生み出すことが最大のミッションである。
京都の文化資本、社会資本、経済資本をクロスオーバーさせあらゆる課題を解決し、社会的富を生み出す人財、及び、その仕組みを再定義・再構築する必要がある。
本レポートの特徴
本レポートは、プロジェクトで行ったディスカッションの内容や、最終分析の洞察を得るためのリサーチ、最終統合分析結果を一括にまとめています。
3つの視点軸から都市の解くべき問題を洞察
都市という複雑な問題を解決するために、解くべき問題の核心は何か。 課題を的確に洞察し、紐解き、統合し、「解」を明確に導き出していくことが重要です。本プロジェクトでは、文化と経済、倫理と経済を再融合させることが求められました。下記の3つの視点軸を統合することで、解くべき問題の核心は何かを導き出し、プロジェクト設計、リサーチ設計、統合分析に反映させていきました。
- 「都市と水」をテーマにフィールドワーク型のリサーチツアーを行い、文化的観点から京都という都市の価値や解くべき問題の核心を洞察すること。
- 産業という文化を捉え直すことで、変革のスピリットから“京都らしさ”というルーツを洞察すること。
- 5人の有識者へのインタビューから得た5つの思考の軸を掛け合わせ、融合させることで、公共政策、金融政策、産業政策の観点に倫理的な観点を結びつけて洞察する構造的な視点を独自に生み出し、京都という都市のあるべき姿や構想を思考し、導き出すこと。
京都を拠点とした企業とのディスカッションを収録
京都に本社を据える企業の方々とディスカッションを行い、その内容を収録しています。
ディスカッションパートナー
オムロン株式会社/京セラ株式会社/株式会社島津製作所/株式会社SCREENホールディングス/NISSHA株式会社/ニチコン株式会社/株式会社村田製作所
取材協力
株式会社COFFEE BASE/西芳寺/株式会社島津製作所/島津製作所 創業記念資料館/招徳酒造株式会社/梨木神社/株式会社ヒューマンルネッサンス研究所
「創造的都市、京都」としての仕組みを設計し、 KYOTO_MODEL001 “ Interface ” ニジリグチコモンズを提唱
企業、京都市、ロフトワークが共にディスカッションを重ね、持続的繁栄を目指す都市構想モデル「創造的都市、京都」の仕組みとしてKYOTO_MODEL001 “ Interface ” を提案しています。京都の中核にある価値を維持するために、躙口(ニジリグチ)的インターフェースをOSとして設計することを仮説としています。躙口とは茶室に入るときの出入口で、千利休が草庵茶室・待庵に設けた小さな入口がはじまりと言われています。本プロジェクトでは、躙口を経済合理性が文化よりも優位に働くことを無効化するシステムとしてとらえ、“ニジリグチコモンズ” として表現し、文化と経済のバランスを最適化する役割を果たす機能を持った仕組みであり、同時に“新しい適応する何か”を起こすインターフェースとして提案しています。
「Interface ニジリグチコモンズ」 を本プロジェクトの重要なアイコンとしてビジュアライズ。茶室の躙口がデザインイメージソースとなっています。躙口とは千利休が草庵茶室・待庵に設けた小さな入口がはじまりと言われており、頭を垂れて伏してにじりながらでないと入れない大きさで、武士の時代には刀を腰につけているとくぐれないので躙口の外に刀を置く場所があったとされています。茶室に入ることで身分の差がなくなり、茶室の中では平等であり、人としてのコミュニケーションを紡ぐ場所として茶室という存在がありました。「今を生きる私たちにも他者と理解を深め合い、共に生きる社会の先に豊かさがあって欲しい」というグラフィックデザイナー鈴木孝尚さんの願いが込められています。マークは、縦2尺1寸8分、横2尺3寸の図形を二つ並べ、水色は濃度を薄く「弱さ」を、赤色は「温度」を、2色の重なりをInterface(界面)として表現しています。
ロフトワークについて
ロフトワークは「すべての人のうちにある創造性を信じる」を合言葉に、クリエイターや企業、地域やアカデミアの人々との共創を通じて、未来の価値を作り出すクリエイティブ・カンパニーです。ものづくりを起点に、その土地ならではの資源やテクノロジーを更新する「FabCafe(ファブカフェ)」、素材と技術開発領域でのイノベーションを目指す「MTRL(マテリアル)」、クリエイターと企業の共創プラットフォーム「AWRD(アワード)」などを運営。目先の利益だけにとらわれず、長い視点で人と企業と社会に向きあい、社会的価値を生み出し続けるビジネスエコシステムを構築します。
事例記事で、本プロジェクトのプロセスやコンセプトを紹介しています。
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