ロフトワークの棚橋弘季が、創価大学で特別講義
「企業は生態系を創れるのか」をテーマに登壇

複雑な社会課題とAI時代の人間独自の役割を問い直す
2025年6月4日、ロフトワーク執行役員 / CPO(Chief Produce Officer)の棚橋弘季が、創価大学法学部の3年生向け授業「地球平和共生チュートリアル」に登壇し、「企業は生態系を創れるのか」をテーマに特別講義を行いました。本講義は、企業が経済合理性だけでなく、多様なアクターとの共創を通じて複雑な社会課題の解決に貢献する可能性を探る、実践的かつ根源的な問いを提示するものでした。
棚橋が特別講義を行った「地球平和共生チュートリアル」は、多様な分野の実務家や専門家を招き、現代社会が直面する複雑な課題に対し、多角的な視座と実践を通して平和と共生の本質を探求する創価大学法学部の講義です。今回の講義は、その理念を体現し、「現代社会における生態系の捉え方」と「AI社会における人間の役割」を横断的に考察。学生たちからは「大変刺激的なレクチャーで、様々考えるための糧をいただけた」といった感想が寄せられ、既存の枠組みに捉われない思考と、未来への主体的な関与を促す貴重な機会となりました。
講義のハイライト:根源的な問いから実践へ
講義は、「世界ってなんだろう?」という根源的な問いから始まり、参加者一人ひとりが自身の「世界」の認識を問い直すことを促しました。そして、ロフトワークの事業とAI時代の人間の役割について、具体的な事例を交えながら深掘りしました。
1. 複雑な社会・自然を「生態系」として捉え直す
前半、哲学者ジュディス・バトラーやブリュノ・ラトゥールといった思想家の視点を紹介し、人間と自然、経済と環境が分離された近代的な思考が、現代の複雑な社会課題の根源にあると指摘しました。学生からは、「概念がガラッとひっくり返されたような感じでした」と、既存の思考のフレームワークを問い直すことの重要性が深く心に響いたことが伺えます。
2. ロフトワークの実践:多様なアクターとの共創
ロフトワークは、人間だけでなく非人間アクターをも含む多様な「アクターネットワーク」を「デザイン」することで、複雑な相互作用を可視化し、社会やビジネスの課題解決を目指しています。事例として、1800以上の団体が参加する共創プラットフォーム「GREEN×GLOBE Partners (GGP)」の運営や、規格外の「曲がり木」に新たな価値を見出す「Hidakuma(飛騨の森でクマは踊る)」の挑戦、日本電気株式会社(NEC)との「Naked」プロジェクトにおけるシステム思考とデザインリサーチの統合的アプローチなどが紹介されました。特にHidakumaの取り組みについて、学生からは「あえて曲がった木で作った机をオフィスとかで導入したら面白そうだと感じました」と、未利用資源から新たな価値を生み出す発想への共感が示されました。
3. AI時代の人間独自の役割と主体的な学び
AIの進化により、資料作成やリサーチといった「方法」の効率化が進む中で、人間の役割が情報生成から「対話」を通じた深い理解と共創へとシフトすることが強調されました。AIには扱えない「人の頭の中にしかない思い」や社会の「届かない声」を対話を通じて抽出し、言語化する人間の役割が、AI時代において極めて重要であると提言されました。さらに、棚橋は学生たちに対し「まず自分が学生だと思うことをやめた方が良い」「自分のやりたいことを追求すること」の重要性を強調。学生からは「AIに代えられない価値を提供できるのか」といった問いや、「自分のやりたいことと、学生という立場は関係ないという言葉がすごく刺さりました」と、AI時代の人間固有の価値創造と、自身の学びやキャリアを主体的に捉えることへの深い示唆が共有されました。
本講義が未来を拓く可能性
今回の講義で示された哲学や実践は、大学の教育・人材開発、および企業のイノベーション推進において、新たな価値創造の機会を提示します。
- 大学関係者の方へ: 複雑な社会課題を扱う学際的なプログラム開発、学生の批判的思考力や共創能力を育む教育アプローチの深化に貢献できます。既存の学問分野にとらわれない「世界」の捉え方や、AIと共生する未来における人間の役割について、実践的な知見を組み込んだ新たな講義やカリキュラム開発を共に進めることが可能です。
- 企業の人材開発・イノベーション部門の方へ: 変化の激しい時代に求められる、複雑な課題を構造的に理解し、多様なステークホルダーと共創しながら新たな価値を生み出す人材育成のヒントを提供します。AIを単なる効率化ツールとしてではなく、人間固有の対話や共感の力を引き出すための戦略的な組織設計やプロジェクト推進において、ロフトワークの知見と経験が貢献できます。
ロフトワークは、今後もこのような講義やワークショップを通じて、理論と実践を結びつけ、より持続可能で豊かな社会の実現に貢献してまいります。本講義に関心をお持ちいただいた大学や企業のご担当者様は、ぜひロフトワークまでお問い合わせください。
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