株式会社NHKエデュケーショナル PROJECT

テレビのあり方を変える、視聴者との双方向コミュニケーション

TEDのコンテンツとソーシャルメディアに着目した、語学教養番組の新たな挑戦

月曜夜11時からNHK Eテレで放送中の「スーパープレゼンテーション」は、アメリカのプレゼンイベント「TEDカンファレンス」の渾身のプレゼンテーションを通じて、世界を変える驚きの発想とプレゼンの極意を学ぶ、新しいスタイルの語学教養番組です。番組制作を担当する株式会社NHKエデュケーショナルは2012年9月、同番組の刷新にあたりWebサイトのリニューアルに着手。

ロフトワークとのプロジェクトでは、単なるWebサイトのリニューアルに留まらず、ユーザとのインタラクティブ性の実現に注力し、新しい形のイベントにもチャレンジ。現在もGoogle+やGoogle+ ハングアウトを積極的に活用するなど、独自の挑戦を続ける同番組の取り組みについて、NHKエデュケーショナルの田中瑞人氏(取材時)と金谷美加氏、ロフトワークのクリエイティブディレクター井上果林、二本柳春香の4人で振り返ります。

井上(ロフトワーク) まず、これほど興味深い番組がどのような経緯で生まれたのかを教えてください。

田中(NHKエデュケーショナル) 語学番組では、スキットをモデルに練習するのがスタンダードですが、内容自体に興味を持てないと効果は期待できません。“聴きたい!”と思えるかどうかという観点で、TEDのコンテンツに大きな可能性を感じました。もちろん、フリーでネット配信されている映像をわざわざテレビに持ってくることに疑問を感じる人もいます。でも、ネットだろうとテレビだろうとユーザーにとっての価値は変わらないし、ネットで触れる人とテレビで触れる人は違います。だからテレビに親和性が高い人たちに向けてパッケージングしたわけです。

株式会社NHKエデュケーショナル 語学部 専任部長 (取材時) 田中 瑞人氏

金谷(NHKエデュケーショナル) 私自身、TEDカンファレンスに足を運んでみて、アイデアが血液となってDNAに残るかのような感覚を味わいました。ネットには疎くてTEDのことをまだ知らない方にも、テレビを通じてこんなに面白いアイデアがあり、素晴らしい人たちがいて、今の時代はこうなんだ!ということを伝えたいと強く思いました。

ポイントは“インタラクティブ” 番組の枠を超え、リアルイベントも開催!

動画の内容をスクリプトとして紹介

井上 リニューアルのポイントの1つは、サイト内にTEDトークと呼ばれるスーパープレゼンテーションの動画を掲載し、その内容をコピー&ペースト可能なテキストに書き起こして語学に役立ててもらうこと。もう一つは、番組ナビゲーターであるMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏(以下、愛称のJoiと略)の存在を立たせたことでしょう。TEDトークに対するJoiの解説を番組内で聴けるだけでなく、Webでも展開しています。

田中 Joiの存在をもっと強く出したほうがよいとの提案をいただいたんですよね。Joiは日本とアメリカの両方の感覚をわかって話せる人という意味で重要で、実際、Joiを核に世の中の共感がどんどん広がり、一方通行で終わりがちなテレビのあり方を変えてくれています

金谷 Joiとのロケは本当に楽しいのですが、そこでの話を番組では数分でしか表現できません。これはもったいないとのことで、放送では紹介していないこぼれ話を盛り込んだり、英語を学びたい人たちのためにキーフレーズをピックアップしたり、ロフトワークのみなさんと一緒にアイデアを出しながら、形にしています。また、Joiの魅力を知る人たちが一堂に会する機会を作りたいと思ったのが、昨年10月のイベント開催のきっかけでもあります。

NHKエデュケーショナル 語学部 シニアプロデューサー 金谷 美加氏

井上 Webサイトのリニューアルと同時に、100人の女性を集めてJoiと「これからの働き方」を考える番組発のイベントを開催しました。「インタラクティブ性」や「ポジティブな意見が出やすい雰囲気作り」を心がけながら設計し、具体的には参加者からの意見を集めるために、コメントを書き込むボードを設置するなどして、Joiとの間で積極的なコミュニケーションが生まれるように工夫しました。会場の参加者や視聴者から集めた熱いメッセージや質問をもとにイベントを組んだことで、参加感の高いイベントになりました。

「Joiと100人の女性たち〜みんなで考えるこれからの働き方〜」の様子

「Joiと100人の女性たち〜みんなで考えるこれからの働き方〜」の様子

「Joiと100人の女性たち〜みんなで考えるこれからの働き方〜」の様子

クリエイティブディレクター 井上 果林

金谷 番組サイドがPRしなくても、参加者自らがソーシャルメディアを通じて番組の面白さを発信してくれたり、個々が持ち寄った問題意識をみんなでシェアしつつポジティブに語り合ったり、それが出来たのも100人の顔がきちんと見えるイベントだったからでしょう。Webでの情報発信のおかげで、イベントに参加できなかった人たちに追体験してもらうきっかけに出来ました。

ネットとテレビの効果的な組み合わせを、パートナーとして共に模索

二本柳(ロフトワーク) リニューアル後は毎月4本のコンテンツを制作しています。放送後のコンテンツ公開までのスケジュールがタイトなので、スピード重視のチェック体制を整え、常に安定した品質を維持できるように努めています。様々なトライアルを重ねた結果概ね、運用のベースは出来てきたかなという手ごたえがあります。成果についてはどのようにお考えですか?また、さらなる進化のために今後、具体的に計画されていることはありますか?

クリエイティブディレクター二本柳 春香

金谷 弊社は普段からイベントを数多く開催しますが、JoiとのイベントやGoogleハングアウトを使った放送のように、参加者同士が会場やオンライン上で積極的にネットワークし、コミュニケーションが生まれることはとても稀です。リアルのイベントやソーシャルメディアを通じて、参加者とのコミュニケーションの新しい形を作ることができたと感じています。

田中 今後は、ネットとテレビの関係性をもっと考え直すのが大切だと思っています。情報を提供するのはテレビ、アクションを起こす受け皿になるのがネット。その部分をソーシャルでやらなくてはなりません。せっかくGoogle+のアカウントもあるので、いろんなインタラクションを仕掛けていけるはず。現在はGoogle+のハングアウト機能を利用したイベントを展開していますが、トライアルを積み重ねながら、テレビとソーシャルの効果的な組み合わせ方を見つけたいですね。ロフトワークのアイデアにも期待しています。

二本柳 色々な方が参加することによってコミュニケーションが拡がっていきますから、Webの果たすべき役割を引き続き考えていく必要がありそうです。ロフトワークもパートナーとしての信頼にお応えすべく、ソーシャルメディアやイベントとの連携など、引き続き運用以外のご相談やご要望にも柔軟に対応していきます。

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