老舗企業としての魅力の表現と、Web上での"卸売"という挑戦
日本紐釦貿易としての魅力を最大限伝えつつ、将来に向けたWebリニューアルを決断
大正6年に創業した日本紐釦貿易は、約100年の歴史を持つ大阪・船場の老舗手芸用品卸の会社です。今回のリニューアルでは、2万点以上あるカタログ商品に加え、次々に追加される新商品を効果的に紹介するためにCMSとECパッケージを組み合わせたサイト構築を行いました。本プロジェクトを担った取締役 営業本部長 松井 謙典氏と企画部 樋越 勇気氏、ロフトワークの川村友希子、入谷聡がリニューアルプロジェクトを振り返ります。
川村(ロフトワーク) はじめに、今回のリニューアルの背景からお話を聞かせてください。
松井(日本紐釦貿易) 一番の課題は、以前のサイトが、日本紐釦貿易のできることや、状況を全く表現できていないことでした。商品の魅力や、”卸売”だからできること、さらにお客さんとの繋がりを大切にしている会社の雰囲気などが全然伝えられていませんでした。さらに、これからの企業としての広がりを考えていった時に、上記だけではなく、Web上での卸売販売にも挑戦したいなと考えました。
樋越(日本紐釦貿易) カタログの商品だけで2万点以上もある商品ボリューム、次々に追加される新商品に対応するためには、以前の静的なWebサイトでは限界だったこともありCMSの導入を検討していました。さらには卸売の機能をサイトへ組み込むことも視野にいれていました。
川村 パートナー探しはどのようにされたのでしょうか。
樋越 「WordPress」「制作」などのキーワードで検索して選んだ5社から提案を頂いて決めました。ロフトワークは、卸売という特殊な販売形態を理解したうえで、CMSとECパッケージの組み合わせという一番の解決策を提示してくれたことに魅力を感じました。
入谷(ロフトワーク) 商品詳細ページの表現自由度や社内スタッフによるニュースの更新性を高くするために「WordPress」と「カゴラボ」の組み合わせをご提案しました。
松井 ロフトワークのサイトを拝見した時に、「費用は高いだろうな」と感じましたが、最初の打ち合わせで、こちらの要求に対して「このやり方の方が効率的ではないか」と専門知識を元にして新しいアイデアを出してくれたのはロフトワークだけでした。実のある議論ができるという感触を得たことは大きな決め手になりましたね。
オリジナル商品と実店舗を持つ強みを生かしたWebサイトを提案
川村:提案書作成にあたっては、社内の手芸工芸部のメンバーと「どういう商品なら買うのか」をブレストしました。そのなかで、エンドユーザーは「類似商品を取り扱う小売ECサイトの値段を比較して購入する」と同時に「自分だけのオリジナルを作りたい」という思いがあることがわかってきたんです。豊富な商品ラインナップに加えてオリジナルな自社開発商品があることは日本紐釦貿易の大きな強みです。また、卸売でありながら実店舗があることも強みであると考え、実店舗とWebサイトを連携させた見せ方を提案。各フロアをカテゴリに見立てて、商品の探しやすさと新商品情報の伝えやすさを表現しました。
樋越:そうですね。「Chuko Online」は小売ではなく卸のECサイトですので、小売店、手芸教室からの仕入れを前提とした会員登録や、商品ごと、カテゴリ単位の一括注文、型番での注文などの対応をしていただく必要もありました。
入谷:小売のECサイトを想定している一般的なECのシステムでは対応できないことがあり、裏側の部分で最後まで調整が続きました。商品の豊富さと老舗のイメージを表現するデザインにも苦労しました。BtoBの商品買い付けのコーポレートサイトであることを押しだして、なおかつエンドユーザーへの販売導線も作るように工夫しました。一番難しかったのは、トップページのメインビジュアル。商品点数の多さと老舗感を表現しながら、インパクトのあるものをということで何度も提案し、4回目にOKをいただいたときはホッとしました。
川村:今回は、プロジェクトの進行をロフトワークのWebサイト上で公開しながら進めましたが、この取組みについてはいかがでしたか?
樋越:プロセスが公開されてしまったので、これはいいWebサイトを作らなければという気持ちになりましたね。
川村:関西圏での知名度がまだまだであった私たちとしては、仕事の内側を、様々な方に見ていただくとともに、日本紐釦貿易のWebサイトを紹介できたという意味で良い効果が得られたと感じています。最近はこれまでよりも、関西圏から制作のご相談も頂くようになってきました。
リニューアル後、社内のWebに対する意識の変化に確かな手応え
川村:リニューアルから半年、今感じておられる効果についてお聞かせください。
松井:お客さんがより見てくれるようになったことはもちろんですが、何よりもWebサイトに対する社内の意識が変化してきたことが重要な効果です。営業はWebサイトを営業ツールとして使っていこうとしていますし、売り場のスタッフもWebサイトで商品をしっかり見せることに効果を感じているようです。
川村:それは嬉しいですね。社員の方々に自信を持ってサイトを使って頂くことは、なによりもWebサイトの力を高めていくと思います。今後の展開についてはいかがでしょうか?
松井:まず、一年間でコンテンツを充実させて売上げをつくることが第一段階。我々にとっての効果はアクセスよりも売上げです。卸売のECである「Chuko Online」をなるべく早くカットオーバーし、1年後、3年後、5年後と確実に売り上げを伸ばしていきたいですね。同時に進めていきたいのは、Webサイトを活用したブランド化ですね。
川村:リニューアルと併せて、ブランドサイト「colore」も構築しました。
樋越:はい。「colore」は、「暮らしに彩りを」をテーマに、デザイナーとのコラボレーションによる生地やインテリア小物を紹介しています。動きあるWebサイトを提案していただけて、さっそく「この生地でオリジナル商品を作りたい」という小売店からの問い合わせや手芸雑誌の取材も入り手応えを感じています。
入谷:「colore」によって商品のブランド化の効果は感じておられますか?
松井:今は認定店での取り扱いを中心に展開していますが、世界観を伝えやすいので非常に喜ばれています。今後はエンドユーザーを対象とした販売も視野に入れています。
川村:手芸パーツの豊富さを活かして、アーティストとコラボレーションした商品開発をするのも面白いかもしれません。
松井:そうですね。Webサイトの運用が軌道に乗ったら、Webサイト上の企画から商品を開発するイベントがあってもいいと思います。実店舗からWebサイトへ、Webサイトからリアルな商品を生み出して店頭へという双方向な流れが作れそうです。
川村:本日はありがとうございました。これからも日本紐釦さんのビジネスの発展に向けて我々もご支援したいと思います。
※内容やお客様情報、担当ディレクター情報は本記事公開時点のものです。現在は異なる可能性があります。