学習院女子大学 Webサイトリニューアル 学長インタビュー
女子教育の草分け的存在としての伝統を今に受け継ぐ学習院女子大学。一学部三学科、学生数は約1,700名で、他大学にはない特色を持っています。目指す学習院女子大学の未来像と近い学生に来てもらえるようなメッセージを発信を目標に、Webサイトリニューアルを実施しました。
自学らしさを再定義、ターゲットとなる学生に明確なメッセージを発信
今回のWebサイトリニューアルプロジェクトは、プロジェクトメンバーとして石澤靖治学長自ら参加。清水大輔氏、ロフトワークの齋藤、浅見とともに、自学らしさを再定義しながら今の時代に合うメッセージを創り上げることに挑戦しました。
齋藤(ロフトワーク):改めて、今回のプロジェクトが立ち上がった背景を教えてください。
石澤(学習院女子大学):以前のWebサイトでは、本学のやわらかさや女性的なやさしいイメージは伝わるけれども、我々が受験生や在学生に伝えたいメッセージが曖昧であると感じていました。また、ユーザビリティの観点からも、情報量が多く必要な情報にすぐにたどり着けないという課題がありました。
清水(学習院女子大学):リニューアルにあたっては、そもそもの自学らしさや強みを整理したり、大学としてのWebサイトのあり方から相談できるパートナーを探していました。そんな中、津田塾大学さんの事例を拝見して、ロフトワークにご相談しようと思ったんです。
浅見:大学Webサイトリニューアルのご相談では「受験者数を増やす」「入学者数を増やす」という課題をお持ちの方が多いんです。でも、学習院女子大学の場合は「ターゲットとしている学生にちゃんと入学してほしい」という課題をお持ちだったのが印象的でしたよね。
石澤:従来どおり本学を志望してくれる学生に加えて、我々が目指す学習院女子大学の未来像と近い学生に来てもらえるようなメッセージを発信したいとお願いしましたね。
齋藤:最初のお話で石澤さんから「リーダーシップを持つことのできる人材を輩出したい」というキーワードが出てきました。バイタリティやモチベーションのレベルが高い学生も呼び込むために、大学の価値をしっかり伝える必要があると感じました。
そこでまず、石澤さんや清水さんが持つイメージを明確にするために、プロジェクトメンバーで「学習院女子大学が目指すのはどんな大学なのか」についてブレイクダウンすることからはじめました。
Webサイトのコンセプトをビジュアル化。プロジェクトメンバーで世界観を共有。
齋藤:コンセプトづくりの過程では、学生へのインタビューや他大学の調査も実施しました。インタビュー結果を大きなマップで貼り出して、それを見ながらプロジェクトメンバーで議論して「学生や受験生が大学に求めること」と「大学側の持つビジョン」などとの擦り合わせを丁寧にやっていきました。このプロセスがクリエイティブを生み出す種にもなったと思います。
石澤:大学広報において大切なのは「どんなメッセージを、いかに統一した形で発信するか」ということ。本学は、学長がリーダーシップをとりやすく、ブレないメッセージ発信を実現しやすかったのもよかったと思っています。
齋藤:どんなにテキストでコンセプトを確認し合っても、それをWebデザインに落とし込んだときにどうなるのかは、正直つくってみないとわかりません。そこで、議論を重ねてつくった言葉を視覚化するためにコンセプトビジュアルをご提案しました。具体的にはWebデザインをつくるまえに1枚のポスターにしてイメージを共有しました。ロフトワークとしてはあまりないアプローチでしたが、ビジュアルのイメージを擦り合わせるためにやってよかったと思っています。
石澤:コンセプトビジュアルを見たときは「なるほど、こうなるのか!」と素直に驚きました。しかし、コンセプトのベースになる部分について議論を重ねていましたし、納得していたので大きな齟齬を感じることはなく、プロフェッショナルの提案してくれたものなのだから間違いがないと信頼していました。
清水:プロジェクトの土台となるコンセプト作りに多くの時間をかけたおかげで「学習院女子大学はどういう大学で、他大学とどう違うのか」「何をメッセージとして伝えたいのか」が自分たち自身でも理解が深まり、軸がしっかりしたので本当によかったと思います。
Webサイトのコンセプトをベースに、大学として統一されたメッセージを発信
齋藤:Webサイトのデザインについてはいかがでしたか?
清水:当初はひとつのページにたくさんの情報を載せて、スクロールしなくていいようにしようと思っていたので、トップページのビジュアルが大きいことに驚きました。「スクロールの回数が多いんじゃないか」と思いましたが、今のトレンドや意図を丁寧に説明いただき納得しました。
齋藤:トップページでは、この大学に来ると大きな世界が広がっていることを予感してほしいという狙いがあったのでインパクトのある大きさと写真、簡潔なコピーライティングで表現しました。
また、新しいターゲットになる受験生に「あなたたちが来るべき大学だよ」というメッセージをダイレクトに伝えるために、大学サイトでは珍しいですがランディングページ(LP)を1つ設置しました。1ページの静的なコンテンツの中に、学習院女子大学の魅力を表現できていると思います。
制作にあたってはコピーライターとカメラマンをアサインして、クリエイティブチームを編成して進めました。プロジェクトの初期フェーズでしっかりとコンセプトを固めていたので、石澤さんや清水さん、大学のみなさんとも大きな齟齬無くデザインすることができました。
清水:LPをつくることについてはプロジェクトメンバー全員が合意していました。インタビューなどから引き出された本学の魅力は「世界に出会う、日本に出会う」「広く学ぶ、深く学ぶ」「個を育む、学習院で育む」の3つでした。今では、この3つのテーマが本学の特徴を伝える統一された言葉として役立っています。受験生向けの説明会やイベントで話す教職員にも共有していますし、学内広報としても、ひとつの筋道をつくることができました。
齋藤:我々がつくったメッセージが学内で共有されて、コアコンセプトとして定着するのはとてもうれしいです。
過去のトレンドを踏まえ、未来を見つめるWebづくり
浅見:リニューアルしたWebサイトの公開後、学内外の反響はいかがですか?
清水:学生たちからは「見やすくなった」という声もあれば、「前のほうが学女らしかった」という声もありますが、いろいろな意見があることが大事だと思っています。今後は、このサイトを使ってどうやったら学習院女子大学の魅力をより広くみなさんに知ってもらうかが目標です。
浅見:運用面ではいかがですか?
清水:まず、サイトを全体にスリムアップ。情報整理は大変でしたが、サイトコンテンツも800ページから300ページまで減らしました。また、管理権限の振り分けを行ったことによって広報主導でコンテンツを運用できるようになり、デザインの統一性を保持しやすくなり、他職員の使い勝手もよくなったと思います。
齋藤:数年前まで、多くの大学サイトの主流は、グローバルナビゲーション、メインビジュアル、ニュースの三本柱でつくるスタイルでした。今回のプロジェクトでは、そのスタイルを使わずに、他の女子大との差別化を図ることにもこだわりました。
石澤:トレンドが変化することを見越して、何年単位で見直しを図っていくのかということも今後の課題ですね。私の学長任期もあと2年弱。次の学長になれば、発信するメッセージやコンセプトも変化するかもしれませんから。
齋藤:そうですね。大学の方向性とともにWebサイトのあり方も自然と変化すると思います。
清水:Webサイトは変化がないとどんどん埋没していってしまいます。プッシュ型メディアとして、フレッシュな風をどんどん入れながら、閲覧されるWebサイトを目指したいです。
齋藤:Webサイトを見てもらうことについては、我々にご支援できることもあると思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
プロジェクト概要
課題 ・学習院女子大学らしさ(強み)がメッセージとして明確ではなかった
・サイトの情報量が多くユーザに最適な情報を届けられていなかった
目標 ・学習院女子大学らしさとは?をプロジェクトメンバーで再定義する
・学習院女子大学が持つ魅力をデザインやテキストで表現する
・ターゲットとなる受験生にちゃんとアプローチできるようにする
成果 ・大学らしさのコアコンセプトが明確になり学内に浸透
・Webサイトの情報量を、ページ数で半数以下にスリム化
・Webサイトの管理権限などを整備、各コンテンツのフォーマットを統一して安定運用を実現
関連リンク
プロジェクトメンバー
石澤 靖治氏
学習院女子大学
学長
清水 大輔氏
学習院女子大学
事務統括部 事務運営課
浅見 和彦
株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー
メンバーズボイス
コンセプトを固めていくための抽象的な作業が非常に多かったことが印象的でした。コンセプトが固まった後にもいろんな作業はありましたけれど、それは大きな話ではなくて。最初の土台づくりというか、それに非常に時間を割いていたと思います。その過程で、こちらの考えは十二分に伝えてお互いに理解しあえていたので、信頼してお任せすることができました
学習院女子大学学長 石澤 靖治氏
学内の意見調整は、各学科から選出されたWebプロジェクト担当の先生方との間で行いました。節目となる大きな意思決定については学内の広報委員会に諮りましたが、丸投げにするのではなく責任をもって「これで進めましょう」と言いきるようにしていました
学習院女子大学事務統括部 事務運営課
清水 大輔氏