遠東集團(Far Eastern Group) PROJECT

台北市街の最新百貨店「遠百信義A13」
シームレスな Wayfinding system

2019年12月、台湾の老舗百貨店チェーンを傘下に持つ遠東集團(Far Eastern Group)は、台北市新義区に新店舗「遠東新義A13」をオープン。最新テクノロジーを取り入れ、顧客の購買体験を向上する「スマートリテール」を実現しようとしています。
「遠東新義A13」の特徴のひとつは、フロアブロックをフローティングブロックのように積み上げた建築デザインにあります。しかし、ブロックの中で人々が迷子にならずに自由に移動できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。この問題を解決するために、ロフトワーク台湾と遠東集團は、Wayfinding(ウェイファインディング)*、サインシステム、マップを組み合わせて、シームレスな顧客体験を創造しました。

* Wayfinding(ウェイファインディング)…ここでは、目的地までのルートを快適に導くものをさします。

* 記事原文
Creating a Seamless Wayfinding Experience At Taipei’s Far Eastern Xinyi A13 Department Store
https://loftwork.com/en/project/20200317_feds_xinyi_a13/
—-

Outline

遠東新義A13(台北市新義区)

顧客体験の一部としてサインシステムをデザイン

百貨店が立ち並ぶ賑やかな新義地区は、たびたび訪れる顧客でも、建物の正確な場所を覚えていることが難しい場合があります。店舗への行き方の案内するウェイファインディングは、文字や記号など整理された指示システムを用いて、正確な方位情報を提供することで、より安心して目的地に向かうことができるようにしています。

顧客が百貨店を訪れる理由はさまざまです。気軽に買い物をしたり、友人や家族に会ったりしてリフレッシュしたい場合もあります。百貨店のサービスだけでなく、スムーズな移動のためのサインとしてウェイファインディングはユーザー体験を向上させるための重要かつ不可欠なツールとなっています。

リサーチを踏まえ、建築の特徴を活かすサインを考える 水平方向・垂直方向、両方のガイドの重要性

この建物は、部分的にオープンエアになっているエスカレーターがあったり、巨大な劇場もあります。異なるサイズのボックスが積み上がっているような外観が特徴です。
館内の案内・誘導サインを設計する上での大きな課題の一つは、いかに他のフロアへの誘導を促しながら、ユーザーに館内の構造や店舗の位置などを感覚的に把握させるか、ということでした。

遠東新義A13の館内。B2-1F、4F-7F、7F-10Fが主なブロックを構成していて、それらを接続するエレベーターがある。

通常、百貨店では1階と駐車場が顧客の出発点となりますが、遠東新義A13にはもう一つの探索的な入り口があります。顧客はB2からデパートに入ることができるだけでなく、3つの直通のクロスフロアエスカレーターがあり、顧客が建物を上るまでの時間を短縮しています。建物はB2-1F、4F-7F、7F-10Fの3つの顧客体験ボックスに分割されており、パブリックな上下移動が可能となっています。

顧客のニーズを満たすためには、水平方向(同じフロア内の動線)と垂直方向(各フロア間を移動する動線ん)の両方から動線を考える必要があります。そこで、プロジェクトチームは顧客の大まかな動線と各フロアについて分析したのち、メインエントランスから各フロア間を移動し建物をでるまでの手段を比較・分析しました。そうして、建物内で設計されていた全体的なつながりや流れをより深く理解しました。

7Fに設置された特別なミラーの。ミラーとのインタラクションで7F~10Fのエスカレーターへの誘導が可能。
7Fのミラー看板
B5駐車場のサインシステム
B5駐車場 出口壁に看板設置

点から線へ、連続した会話を続けながら

垂直方向のガイドをするうえで重要な点と全体的なウェイファインディングの構造を理解した後、次のステップとして取り組んだのが、エモーショナルでナラティブなストーリーによって顧客体験を高めることでした。建物内のいろいろな場所で目にするサインシステムですが、顧客の感覚的に構造を理解し移動するために、どのようなコミュニケーションであれば信頼を獲得できるでしょうか?

今回のウェイファインディングの設計のキーコンセプトは、顧客に向けて直観的で美的な対話を積極的かつ継続的に行うこととしました。遠百信義13は、建物の上品で、精緻で深い審美的な経路探索システムを実証することで、「シック」「洗練」「直観」の3つの主要要素を統合しました。

遠東信義A13の案内サイン

ロフトワークは、遠東信義A13の独特の上品さを表現するために、ウェイファインディングの標識に連続した糸を使用することにしました。また、金属の材質や立体感を細かく分析し、重厚感を出すためにスペクトルを使用しました。各フロアの主要設備は、連続した糸をコンセプトに開発されたシンボルで明確にアウトライン化(概略化)されています。
お客様にとっては、百貨店は滑走路のような存在です。ウェイファインディングのサイン標識を配置する際には、適切な位置に配置することはもちろんのこと、ぶら下がりサインやエスカレーターからフロアを挟んだ特殊なサインなど、情報量が多すぎて消費者にわかりづらいものにならないようにすることが重要でした。サインシステムは、ウェイファインディングとユーザーとの相互作用を高め、すべての顧客が自分のルートと経験を発見し、形にすることができるようにしなければなりませんでした。

Member

メンバーズボイス

“新店の準備を進める中で、私たちは信義区のどの百貨店とも全く違う百貨店を創造するという明確な目標を持っていました。新しい消費者体験を創造することが私たちの使命であり、デザインコンセプトを実行してくれる優秀なチームを見つけることが最も重要でした。ロフトワークと始めてMTGをしたときに、私たちのことを理解してくれる唯一のデザインエージェンシーだとわかりました。彼らは、遠東信義A13が、これまでとは異なる、全く新しい視点でのウェイファインディングを作ることを支援してくれました。建築やインテリアデザインを含む伝統的なウェイファインディングのデザインだとととらえたほとんどのパートナー候補は、コスト面とサインをつくることしか考えていませんでしたが、ロフトワークのチームはそれ以上のことをしてくれました。ロフトワークのおかげで、アートとサイエンスの完璧なバランスを見つけることができました。ロフトワーク、そして革新的かつ創造的で、勇気のあるデザイナーのチームに感謝しています。彼らと仕事ができたことを嬉しく思います。”

FEDSデジタルトランスフォーメーションオフィス ディレクター、モニカ・リー氏

Project Summary

プロジェクトの目標:

  • 単なるサイネージデザイン以上のサインシステムをデザインすること。すなわち、お客様一人一人が安心して、自分の立ち位置や方向性を理解できるようなパスシステムを作ること。
  • フロア間を移動する長いエスカレーターを視覚的に連動させ、お客様が自由に移動できるようにするなど、極東新義A13の空間的な特徴を取り入れ、人の流れと主要フロアのインタラクションを促すこと。

プロジェクトスコープ:

  • ウェイファインディングのコンセプト開発・主要フロアの経路探索の定義
  • 百貨店内のウェイファインディングの設計
  • 駐車場のウェイファインディングの設計
  • サインシステムおよび標識のデザイン

プロジェクト期間:

2018年11月〜2019年3月

Keywords

Next Contents

社会課題解決に向け、地域に「共助」の仕組みをつくる
NECが挑む、新たな事業領域の探索