人間をエンパワーする、思考のツールとしてのデータビジュアライゼーション:「QUICK Data Design Challenge 2023」審査員らが語る未来像
株式会社QUICKが主催となり、データから読み取れる内容をクリエイティブなアイデアで表現する作品を募集した「QUICK Data Design Challenge 2023」。インフォグラフィック、データビジュアライゼーション、動画、写真、ウェブサイトなど、応募者ならではの視点でデータの新しい見せ方に挑戦した176点の作品が寄せられ、グランプリ作品1点、準グランプリ3点、QUICK特別賞の1点が選出されました。
数字や専門用語の羅列など、一見すると理解しにくく、分かりづらいと感じてしまう「データ」を、誰もが自由に学びを得られるようにできないだろうか?そんな問いからはじまった本アワードを振り返りながら、QUICK常務執行役員の山口芳久さんと審査員を務めたTakram代表取締役の田川欣哉さん、企画運営を行ったロフトワーク代表取締役の諏訪光洋の3人が、データ活用の現状と未来について語り合いました。前編となる本記事では、アワードの開催経緯をはじめ、応募作品から感じられたデータ×デザインの現状について語られた内容をお届けします。
データ×デザインの可能性を発信するアワード
-今回のアワードの開催経緯をお聞かせください。
山口芳久さん(以下、山口):私たちQUICKは、データ活用を通して社会をより良くすることを使命にこれまで事業を展開してきました。一方で、新しい展開に取り組んだり、会社として成長したりするためには、これまでと同じような考え方では十分ではないと考えています。2021年からQUICKは、デザインをキーワードとする新しい組織の活動をはじめており、今回のアワードを「QUICK Data Design Challenge 2023(以下、QDDC2023)」と名づけたのは、単にデータを提供するだけではない、デザインの力を組み合わせた新しい取り組みへの姿勢をアピールしていきたいという想いを込めたからです。アワードの活動を通してQUICKのメッセージを社会に発信すると同時に、応募していただくクリエイターの方たちとのつながりが、社員にとっての新たな気づきとなり、「昨日と同じ明日では駄目だ」ということを問いかけるきっかけにもなればと思っています。
諏訪光洋(以下、諏訪):いみじくもQUICKさんからとてもいい言葉が出てきましたね。昨日と同じ明日では駄目だ、と。僕らも普段から思っているのですが、アワードは企画運営側にとって大きな学びの機会になるんですよね。応募作品から「なるほど、そう来るか!」という気づきが得られますし、さまざまな視点や考え方に触れるきっかけになることがアワードの価値のひとつだと思います。
もともとロフトワークが運営する「AWRD」は、創業時にオープンした「loftwork.com」内のクリエイターコミュニティのプラットフォームとしてはじまった経緯があります。時代とともにさまざまな変遷があり、役目を終えた機能を減らす中でも、最後まで残ったのがAWRDでした。なぜ僕らがAWRDを残したかというと、新しい才能やクリエイターにとっての後押しとなる場をつくることに強い想いがあるからなんです。
今回のアワードのように、審査員である田川さんや、QUICKさんのような大きな企業が若い才能を認めてあげる場があることが重要で、それこそが次の時代のクリエイターや企業が生まれるきっかけになると考えています。QDDC2023の開催は、データ×デザインの領域で活動する方々にとって有意義な機会だったんじゃないかと思っています。
-審査員には、QUICKさんのご指名で田川さんが就任されました。田川さんは今回のアワードの依頼を受けた際に、どのような印象を持ちましたか?
田川欣哉さん(以下、田川):まずはデータ×デザインというテーマでアワードを開催する、このアイデアがすごいなと思いましたね。QUICKさんとは、これまでに3年ほどお仕事をご一緒させていただいていて、今後はデータを扱うことができるデザイナーの存在がとても重要になってくるという課題意識を共有していましたが、そんなQUICKさんの姿勢や考え方を、アワードを通して発信していくのはとてもいいなと感じました。
メディアでもデータサイエンティストやエンジニアが足りていない現状が取り沙汰されていますが、いわんやデータを扱うことができるデザイナーは本当に希少種です。Takramもまさにデータを活用したサービス開発に取り組んできましたし、データ×デザインの領域の仲間を増やしたいという思いがずっとあったので、なにかしら貢献できることはあるんじゃないかなという気持ちで審査に臨みました。
データ活用を広く開放するデザインへの期待
-QDDC2023の募集作品では、データを「自身の視点で捉え直し、新しい見せ方」を考えることがチャレンジ内容に掲げられました。これはデータを扱うビジネスにおいて特に重要なテーマなのでしょうか?
山口:データを取り扱うビジネスをこれからも展開していくにあたり、データの見せ方や使い方、伝え方において、さまざまな工夫が必要になるだろうと思っています。その際に、新しい視点や解釈を取り入れていくことがひとつの鍵になるのではないだろうかと考えたんですね。アワードのテーマに掲げることで、応募作品を通して私たちにとって学びが得られるんじゃないだろうかという期待がありました。
-田川さんはデータビジュアライゼーションにおける「新しい視点」についてどのように感じていますか?
田川:たとえば金融系のプロフェッショナルの人たちが使っている画面を見ていると、ものすごい情報量のテキストと数字の嵐で、傍から見ていると何をやっているのかさっぱりわからないですよね(笑)。そういったプロフェッショナルのツールにWebの技術が入ることで、当初のターゲットユーザーとは異なる方が触れる機会が増えることが随所で起こっていると思います。これからは事業会社やコンサルティングファームなど、常にデータに触れているわけではない人たちがデータを活用するようになり、新しい視点の発見や、考えを深めることができるようになるかもしれない。その時に、ツールの使いやすさはデータ活用の可能性の広がりに大きく関わるので、デザイナーの役割が重要になると思います。
Takramでは「ヒューマナイゼーション(humanization)」という言葉を使っているのですが、テクノロジーはそのままの状態だと難解で使いにくいので、エンジニアやデザイナーといったプロフェッショナルが、より人間に近いインターフェースをデザインする必要があり、そうすることではじめてツールとして世の中に浸透することができます。今後デザインがデータに関与していく可能性があるのは、そういったユーザーの裾野を広げていくための使い勝手やUIの場面だと思います。
一方で、金融のプロフェッショナルたちにとっても、デザインが入ることで新たな可能性が開かれるのではないかと感じています。普段からデータに触れているプロフェッショナルの方々の中には、いつも定型の作業だけをしていることも多いですよね。先輩から代々口承で伝わってきている秘伝のレシピのような(笑)、独自のルーティンでデータを使っている方も少なくないはずです。今後ヒューマナイゼーションによって、データを扱うツールを人間の側に引き寄せることができれば、専門家にとっても、これまでとは異なる新しい視点やインサイトを導き出せるようになるんじゃないかなと思います。
山口:私たちのメインのサービスはまさに数字と文字の羅列で、馴染みのない方からすると、何が何だかわからないものだと思います。私たちとしては、多彩なデータを正確で、より早く、タイムリーに扱うことが役割だと考えてきましたが、個人投資家向けにスマホで株式取引などができる証券会社のようなサービスも生まれてきている中、これからはいわゆるマーケットに関わる投資家や金融業界の方々だけではなく、一般の方に向けてデータを伝えていくことが、新しいビジネスにつながるのではないかと思います。その際は田川さんがおっしゃるように、デザインの存在が大きな違いを生むのではないかと考えています。
田川:デザインの力は、データという抽象的なものを人間的なものに落とし込む際に発揮されるので、専門家たちの間だけに閉じられていたデータの使用場面を、広く開放していくことにつながるんじゃないかなと。今回のアワードは、QUICKさんがデザインの領域にぐっと踏み込んでいく意思表示であると同時に、現在の時流を反映した出来事でもあると思います。さまざまな人が意思決定や思考を深めていくツールとして、データが使われていくフェーズになったんだなと感じますね。
応募作品から感じるデータへの関心の高まり
-第1回の開催を振り返った感想をお聞かせください。
田川:真っ先にこの応募数と作品の質にびっくりしました。これまでに僕は、いろんなアワードの審査に入らせていただいているので肌感覚としてわかるんですが、よくこれだけの数とクオリティの作品がこの期間で集まったなと。募集締め切り後に、応募作品のラインアップをご連絡いただいた際に、「もうこの時点で成功ですね」とすぐにお返事したんです。むしろロフトワークさんがどうやってこれを達成できたのかを聞いてみたい(笑)。
諏訪:いや、最初は大丈夫かなってちょっと不安だったんですよ(笑)。実はロフトワークは定量的なことが苦手な会社なんですね。審査のプロセスで田川さんの話を聞いていても、ロフトワークとTakramは同じデザインのフィールドにいるのに、なんて真逆の会社なんだろうと思って(笑)。
どちらかというとロフトワークは、外部接点の多さやコミュニティをつくることで人を巻き込んでいくような、定性的なことが得意なんです。デザインやアートの分野の方にはリーチできている実感がありますが、今回のテーマで作品が集まるのかには少し不安がありました。結果的に、これだけ素晴らしいクオリティの作品がたくさん集まってよかったなと思います。とはいえ今回の結果は、これまでQUICKさんと田川さんがデータ×デザインにかける想いやメッセージを発信してきたからこそだと思いますね。
山口:それではここで応募総数をデータで申し上げますと……。
一同:(笑)
諏訪:さすがですね(笑)
山口:最終的に176点の作品が集まり、複数応募いただいた方もいらっしゃったので、参加人数は161名でした。実はアワードの実施にあたり、当初の社内資料では目標応募数を60と書いていたんです。さらにいえば60でも不安で、その後30まで下げていたほどでした。これだけの数が集まったのは驚きでしたし、受賞作品を一覧で拝見しても、動画もあればインフォグラフィックスもあり、作品のバリエーションも使用しているデータの種類も多様で、すばらしい結果だと感じています。
田川:たとえば大学の情報デザイン系のコースで作品を募集するよりも、1段も2段もクオリティの高い作品が、今回の応募作品のボリュームゾーンだったと思います。それだけ全体のレベルが高いのに驚きましたし、データ×デザインに興味のある方は増えてきていて、データを扱うことが一般化しつつあるのを感じましたね。オープンソースのデータも増えてきているので、データという着眼点さえあれば、すぐに制作をスタートできる状況が整いつつあることに希望を持ちました。
データを伝えるストーリーと「ファクト」の行方
-審査を通して、印象的な作品はありましたか?
諏訪光洋(以下、諏訪):僕は今回審査員ではありませんでしたが、準グランプリを受賞したサウンドインスタレーションの作品を見て感じたことは、データをナラティブなものとして伝えていく上で、デザイナーやアーティストの力が発揮されることが、今後必要になるんじゃないかということでした。というのも、ここ数年ロフトワークでは環境への取り組みについて企業から相談を受けることが増えてきているんですね。東証プライムにおける情報開示のルールが整備され、数字として出さなくてはいけないことが厳密になってきていることがその背景にありますが、環境への取り組みを企業が推進していたとしても、なかなか評価されていない現状があります。
その理由は、ただフォーマットに則ってデータを出しているだけでは伝わっていないからだと思うんです。これまではプロの投資家だけに数字を示していればよかったものの、より多くの人が企業の社会的な取り組みに関心を持つようになったことで、定量情報としての数字だけではなく、もっとエモーショナルな表現を求められるようになったのではないかと。それはQUICKさんがデザインに力を入れていくことにもつながっていますよね。
鑑賞者が瓶に近づくと、プラスチックの破片が入った瓶の水が渦を巻きはじめるサウンドインスタレーション。水中マイクがプラスチックの音を捉え、ヘッドフォンを着用することでその音を鑑賞することができる。しばらくすると海の生命の声が鳴りはじめるが、徐々に音が歪んでいく。1950年代から現在までの海のプラスチック変化量のデータと、鑑賞者と瓶の距離、水中マイクが捉える音の大きさによって歪みの量は増加し、やがて生命の声をかき消してしまう。
山口芳久さん(以下、山口):そうですね。まさに東証プライムでは、統合報告書という企業の活動をまとめた発表資料があり、そこではいかにストーリーとして語ることができるのかがポイントになっています。たとえば、「女性役員の比率は37.5%です」と数字だけを示すのではなく、何年前と比べてどれだけ増えているのか、その数字の周りにある文脈と組み合わせて伝える必要があり、そこにデザインが加わることが重要だと感じています。
-準グランプリ作品に対してのエキソニモさんの評では、「語りたいストーリーが先にあり、そのためにデータを利用していると感じられる点が指摘され、データビジュアライゼーションのアワードとしての評価の仕方が問われる一面もありました」と書かれていました。確かにこの作品では、他の作品とは逆の発想でデータが用いられているように感じますが、審査ではどのようなやり取りがあったのでしょうか?
山口:まさしく逆の発想ですよね。データをデザインすることで新しい視点を提示するのではなく、伝えたいことのためにデータを活用している。この作品は、そんな考え方を表現した作品になっていると思います。一方で、審査中のやりとりで印象に残っているのが、クリエイターの考えていることや伝えたいことを表現するためにデータを使う場合、恣意的にならないように気をつけなくてはいけないということでした。
データは「ファクト」であるという受け手の前提があるので、特定の方向に解釈を導くことができてしまいます。私たちは日本経済新聞社のグループ企業でもあるので、メディアとしてニュースを報じる際に、ストーリーありきでデータを扱う際には注意するべきだということを、今回の審査を通してあらためて感じました。
-たとえば2019年に刊行された『ファクトフルネス』(日経BP刊)では、人間はドラマティックな解釈に陥る傾向があるため、正しい認識を持つためにデータを正確に見ることの重要性が書かれていました。日本でもかなり話題になったので、データへの意識が広がるきっかけにもなったように感じます。
田川欣哉さん(以下、田川):たしかに『ファクトフルネス』では、メディアに流れるセンセーショナルなストーリーからのみで世界を見ようとすることを諌めていますが、同時にデータがすべてではないことも指摘していますよね。僕らに必要なのは、自分たちが見ているのは物事の一側面でしかないかもしれないと想像する力であって、どれだけその力を身につけることができるのかが、これからの時代におけるリテラシーだと思います。データビジュアライゼーションはそういった力を提供してくれる数少ないツールであり、今回のアワードで評価されたのはそんなアプローチが感じられる作品だったんじゃないかな。
データとナラティブの二項対立を超えて
-最終的な評価の決め手は何でしたか?
田川:最終審査では相当議論しました。同じく審査員である尾形真理子さんとエキソニモのお二人は、それぞれ三者三様のバックグラウンドで、多様な視点から議論が生まれておもしろかったですね。グランプリ作品を選ぶ際には、アワードとしてのメッセージ性が生まれるので、どんな基準で考えるべきか十分に話し合って決めました。
最終的に審査で評価が高かったのは、データとナラティブの二項対立を超越した作品だったと思います。作品の入り口がデータなのかナラティブなのかは、それぞれつくり手の専門によって異なりますが、優れているかどうかは、その作品が真実を捉えているかによって決まります。
ナラティブの中に間違いが含まれることがあれば、データが実態からかけ離れてしまうこともあります。どちらも決して完璧ではないので、最初は誰もが真実ではないところからスタートすると思うんですね。そしてデータを謙虚に見ている人たちは、裏取りのために現場に行きますし、ナラティブを取材している人たちは、データで裏取りをしてからストーリーを組み立てています。そうやって定量としてのデータと、定性としてのナラティブの間を行き来することで、新しい認知を獲得し、より確からしい真実に到達することができる。最終的にグランプリに選ばれた「いちご見本帳」は、そのプロセスが見られることが評価のポイントになりました。
山口:いちご見本帳は、他の作品と並んでいる中でもパッと目に入る作品でしたね。つい触ってみたくなるのも魅力的で、私自身の性格としてすべて操作したくなってしまいました(笑)。動かしながら品種の親子関係や季節によって産地が変わることがすぐにわかりますし、素晴らしい作品だと思います。
田川:グラフなどの静止画とデータビジュアライゼーションとの決定的な違いは、コンピュテーションが入ることでユーザーとデータとの間にインタラクションが生まれ、ユーザー側に気づきが生まれることですよね。人間が操作することでグラフが変化し、見た人の考えがアップデートされ、また別の操作をしたくなる。それは結果だけが導き出されるブラックボックス型のサービスとは大きく異なるところだと思います。データビジュアライゼーションは、新しい解釈が手に入ることで創造性が発揮される思考のツールであり、人間をエンパワーするものだと僕は思います。
「いちご見本帳」は、そういった思考のツールとしての要素がある作品でした。グラフィックデザインの視点で言えば、もっと洗練されたものもあるとは思うんですが、データビジュアライゼーションの力が十分に発揮されているんですよね。「鳥の目、虫の目、魚の目」のように、ネットワーク図と時間軸、品種の比較分析が、すべてインターフェースの中に入っていて、ユーザーが操作可能なソフトウェアとしてプログラムされている。
それに、少なくとも僕はいままでいちごの品種の違いに疑問を持ったことはなかったので(笑)、この着眼点がすばらしいと思いました。僕自身、作品を触ってから明らかにスーパーでのいちごの見え方が変わりましたし、僕の中での「いちご観」がアップデートされた感覚があります。データビジュアライゼーションによって圧倒的に理解の効率が上がっていて、そんな体験を引き起こすことがデータ×デザインの価値だということを、ずばり言い当てた作品だと思います。
生成AIがデータビジュアライゼーションにもたらす未来
諏訪:お二人に聞いてみたいなと思ったのが、この半年で急速に注目を集めている生成AIが、今後どのような影響を与えていくのかについてです。あれはブラックボックス的なツールなので、データビジュアライゼーションとは違いますが、大量のデータを処理してくれるマシンであり、データとの向き合い方を変える可能性があるのではないかと。次回以降のアワード開催が決まったとしたら、きっと当然のようにAIを使用した作品があると思いますし、それは取りも直さずQUICKさんが今後どこへ向かっていくのかにも関わるのではないかと感じます。
山口:まさに先日、生成AIを使った新しいサービス「QUICK Smart Brain」をリリースしたばかりでした。昨年は、企業の意思決定をサポートする「QUICK Data Cast」をリリースしており、我々のサービスの中にもAIを導入する動きはすでにあります。QUICKとしても新しいビジネスの可能性への期待がある一方で、ユーザーにとってはブラックボックスであるため、いかに人間が振り回されることなく、あたらしいものを生み出すためのツールであるかが重要だと考えています。
田川:AIは進歩のスピードが早すぎるので、今日の話題はきっと半年後には古くなってしまうと思いますが、今後は生成AIが人間の代わりに難しいデータを読み解いてくれるようになるんじゃないかなと思います。データから付加価値を取り出す際に、時系列や地域、種別ごとに比較分析するのがひとつのパターンですが、現状では、さまざまなデータをマッシュアップするためにはある程度手作業で組み合わせたり、コードを書く必要があったりします。これからはそこにAIが介在することで、人間的な言葉で指示するだけでグラフを描画してくれるようになるかもしれない。
それはかつて、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)が革命を起こしたように、人間とコンピューターの間の距離をAIが縮めてくれるような、新しいユーザーインターフェースが生まれる可能性でもあります。その時、まったく新しい職能も生まれると思いますし、GUIとボイス入力やタイピングが融合した、新しいUIが出てくるんじゃないかな。
これまでは、着眼点を持っていたとしても統計の知識がなかったり、ツールを使いこなせなかったりという理由から諦めていた人もいたと思うんですよね。テクノロジーは人々の機会を公平にすることを実現してきたので、AIによってコンピュータサイエンスや統計の知識がない方でも、データの分析ができるようになるんじゃないかなと。少し楽観的すぎるかもしれませんが、そんなことを思ったりしています。
-最後に、アワードの今後にかける期待や、データ×デザインの領域に興味のある方へのメッセージをお聞かせください。
諏訪:ロフトワークのAWRDのチームは、新しいことにチャレンジしている若い才能や、企業の中で新規事業に取り組む方々を応援するプラットフォームでありたいと思っています。ぜひこのアワードは続いてほしいですし、今後グローバルに成長していくとさらにおもしろいですよね。金融的なデータがメインだったQUICKさんの扱うデータの幅も、アワードという活動を通して広がっていくんじゃないかなと感じます。データビジュアライゼーションの力を活かしながら、社会課題の解決に向き合う人がこれからもっと増えてくると思うので、今後の広がりが楽しみです。
田川:アワードを通して、データビジュアライゼーションの領域が0→1から1→10のフェーズに入っているのかもしれないと感じることができました。今回の応募者の中には、自分の作品がどんな評価をされるのかがわからない方もいたんじゃないかなと思います。いつの時代もそういった既存の職業観から認知されないような人たちが時代のニーズを掴み取り、社会を前進させてきました。新しい職種はそうやって生まれてきているので、この領域に興味のある方は、ぜひ来年以降の開催が決まったら挑戦してもらえるとうれしいです。
山口:今回のアワードは、データ×デザインの新しい可能性を感じると同時に、私たちのビジネスの観点からもとても重要な機会だったと考えています。グランプリ受賞者の方には授賞式にご参加いただきましたし、これまで接点を得られなかったような若いクリエイターの方とつながる機会を得ることができました。これからもデータとデザインの可能性を追求する姿勢を示しつつ、さまざまな方にチャンスを提供できる間口の広い場として、このアワードを継続していきたいと思っています。
- 期間
- 2023年4月23日ー6月18日
- 募集内容
- データから読み取れる内容を、クリエイティブなアイデアで表現する作品を募集
- 受賞作品詳細
- https://awrd.com/award/quick_data_design_challenge_2023/result
執筆:堀合俊博
撮影:加藤麻希
編集:AWRD編集部
本記事は、AWRDサイトからの転載記事になります