津田塾大学 震災時のアクセス集中を機に、迅速な情報発信にも強いサイトへ
迅速な情報発信に課題、誰にでも使いやすいサイトの重要性を感じリニューアルを決意
2010年に創立110年を迎えた津田塾大学では、Webサイトでの迅速な情報発信についての不安・課題解決、運用面でも更新作業の改善を求めてリニューアル。1998年にWebサイトを開設、今回で7度目のリニューアルとなるそうです。2003年のリニューアルから長きにわたり携わっているという斉藤治人氏、実際に運用を担当する羽鳥可奈子氏、ロフトワークの入谷聡がリニューアルプロジェクトを振り返ります。
入谷(ロフトワーク) まずは今回のリニューアルの背景からお話いただけますか?
羽鳥(津田塾大学) 東日本大震災時に、サイトを使った生徒への迅速な情報発信で課題が表面化したことがきっかけです。3月11日はちょうど春休み期間で、学生は学校に来ていません。震災により新学期の予定に変更が生じ、Webサイトで発信する情報は多いのですが、告知予告を出すとその時間にアクセスが集中して情報がスムーズに届かない。これは重要な問題だったので、サイトリニューアルが優先事項になりました。
斉藤(津田塾大学) CMSを利用していましたが、CMSサーバとWebサーバを一つのサーバで兼ねていたので、データ量によっては表示スピードが落ちるのが課題でした。また、サイト表示毎にPHPで動的にページを生成するタイプだったので、サーバへの負荷が高かったのです。今回のリニューアルでは、静的にページを生成し、さらには各部署が簡易に操作できるCMSを求めていました。
入谷 リニューアルの目的はかなり明確だったのですね。パートナー選びで意識されたことはどんなことでしょうか?
羽鳥 昨春にスタートして一般入試の願書配付が始まる秋には必ずリニューアル公開をしたかったので納期は意識していました。ロフトワークは、プレゼン時に「テンプレート作成とコンテンツ移行が同時に行える」と言われていたので、確実に間に合いそうだと魅力を感じました。また、CMSサーバとWebサーバを分けるプランを提案下さったこと、WebRelease2の実績が豊富だったことも決め手になりました。
持ち帰らずその場で決める!要件定義をワークショップ形式で一緒に精査
入谷 ペーパープロトタイピングワークショップを用いた要件定義を提案しましたが、いかがでしたか?
斉藤 パートナーと一緒にワークショップで問題点を可視化していくのは新鮮でした。漠然と問題に感じている部分も一つひとつ明確にできたのでその後の工程がスムーズに進みました。
羽鳥 議論して一致した意見をその場で共有できるので、メールで書類を受け渡しするよりかえってスピーディでした。
入谷 我々も一緒になって組織横断的に議論することで、2~3時間のワークの中で素早くコンセンサスを得られ、確定、承認まで持っていくことが出来ます。また、ペーパープロトタイピングによって、関係者の意見や要件定義の過程が可視化されます。そこが関係者みんなの「腹落ち感」に繋がってくるので、ワークショップはとても重要なプロセスだと思っています。
入谷 ワークショップの中で、サイトのターゲットユーザについても議論しました。その点についてはどのようにお考えでしたか?
斉藤 「受験生に向けた情報発信」「社会全般への情報発信」「卒業生、教職員、在学生などインナーのコミュニケーションツール」など、位置付けによって仕様が変わってくるので、ターゲットユーザについては最初のワークショップで入念に確認しました。本学の場合は、大学を取り巻く人たちにとって大切な情報ソースになっているので、あらゆるステークホルダーにとって使いやすいWebサイトを目指す必要がありました。
入谷 デザインは、常に新しい情報がアップされていることが視覚的にわかる“更新感”を意識しました。サイトトップにニュースや教員紹介など、よく更新するコンテンツを持ってくるようなデザインにしました。
斉藤 できるだけデータ量を少なくするためにグローバルナビゲーションのメニューなどをテキストにしていただいたのですが、デザインとのバランスをよく配慮していただいたと思います。
アクセスが集中する合格発表時のサイト閲覧もスムーズに
入谷 リニューアル後の成果として感じていることはありますか?
羽鳥 アクセス集中時には、チェックボタンひとつでトップのメイン画像を非表示にする仕様を盛り込んでいただきました。レスポンシブにも対応していて、スマートフォンでの移動中のアクセスも素早くできるようになり、実用性を見込んだCMSの設計にとても助けられました。
斉藤 ある学科の受験当日は大雪の予報で、受験生や保護者向けに緊急告知として情報発信する必要がありました。その際に、「受験生の方へ」の緊急用ページを設置し随時情報を更新。モバイルでのアクセスが多くなることが予想されたのでメイン画像をオフにして、データ通信量を出来るだけ軽減する対応を取りました。
この対応で、朝から電話対応に忙殺されることなく情報収集や告知に専念することができました。
羽鳥 合格発表時には受験番号をサイトで一覧表示しています。例年は必ず発表時にアクセス集中でサーバがダウンしていたんですが、今年は表示スピードが落ちることもありませんでした。合格発表時のサーバダウンをクリアできたのは初めてで、リニューアルの大きな成果のひとつです。
入谷 こうして喜んでいただけるのは、我々にとっても一番のモチベーションになります。WebRelease2の設計段階では、テンプレート作成について綿密にやりとりをしました。実際に操作してみていかがですか?
羽鳥 表示パターンを選べるなど、かなり自由度が高いCMSだなと感じています。新年度は情報の入れ替え作業が多いのですが、すでに他部署からいろんな質問をいただいて、それぞれで作業を進めている様子が見受けられます。これまでは、企画広報課がすべての更新作業を行っていたので助かっています。
斉藤 テンプレートの定義や仕様をしっかり固めてからデータ移行をしたので、公開までに造り直しの作業も発生せずスケジュール通りに進めることができました。
入谷 今後のWebサイト運用について考えていることはありますか?
斉藤 新年度からは、ライトな話題をコンスタントに発信する方法としてFacebookページとの連携を進めていく予定です。
羽鳥 リニューアルの段階では予定していなかったのですが、将来的な可能性を考えてSNSと連携可能なテンプレートも作成予定です。
斉藤 ただ、SNSは移り変わりが早いものですから、あくまでWebサイトを補完するツールだと思います。公式情報を発信するのはあくまでWebサイトです。公式サイトとしてしっかりコンテンツを固めておくことが重要ですね。
入谷 最後に、パートナーとしてのロフトワークについてお伺いしたいと思います。
斉藤 制作プロセスや仕上がりも大切ですが、私は保守の面がしっかりしていることが安心材料だと思っています。我々が操作ミスをしても必ずすぐに対応してくださるし、「技術的にどう実現したらいいかわからない」と相談しても、解決方法をしっかり伝えてくださいます。立ち上げから導入は半年から1年程度ですが、そこから先の3年、4年と運用する時間の方が圧倒的に長いわけですから、保守範囲やフローが明確で信頼してお任せできることが非常に大きいと感じています。
入谷 本日はありがとうございました。今後とも信頼に応えられるようにロフトワークとしてもご支援をさせていただければと思います。
※内容やお客様情報、担当ディレクター情報は本記事公開時点のものです。現在は異なる可能性があります。
入谷 聡
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター