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浅見 和彦, 柳川 雄飛, 伊藤 望 2020.07.15

「料理のアクティビティ化」のエッセンスを考える
Butterfly Effect ー 小さな変化への問いかけが、あたりまえを更新する Vol.2

新型コロナウィルスの影響で、今まで考えたこともない問題や、ずっと解決を後回しにしていた課題や違和感に直面することが増えています。これらを、新たな「気づき」として捉え直してみると、新しい日常をつくる出発点となりそうです。必要は発明の母、窮すれば通ず。本連載では、毎回お題ごとにロフトワークメンバーがそれぞれ個人の視点で、小さな気付きを発信します。

今回のテーマは “「料理のアクティビティ化」のエッセンスを考える”

STAY HOME期間中に料理に注目する人が増えました。中にはパンを焼いたり、ケーキを作ったり、普段よりも手の込んだことをする人も。それがキッカケとなり、緊急事態宣言の解除後も、料理が新しい趣味として定着している人は多いのではないでしょうか。

料理は、好きな人にとっては趣味となり、嫌いな人にとっては労働となります。労働から趣味にすることが唯一の正しいベクトルではありませんが、楽しめるかどうかは大切な視点で、もしかしたら嫌いな人でも、何かキッカケがあれば手の込んだパン作りも楽しめるようになるかもしれません。

料理に注目することは、そもそもモチベーションとは何なのかを考えることにつながりそうです。

料理をタスクからアクティビティへ

自宅から出ない生活が続いているため、今まで以上に食事が楽しみになった。uber eatsなどデリバリーが充実しているが、毎食外食となるとお金もかかるので料理をすることが増えた。今までは、仕事が忙しくて料理をする時間がなかったり、外食する機会も多くて食材を余らせてしまったりしたが、この状況だとそうした心配が無い。

一方で、それでも料理をしない人はしない。よっぽど料理が嫌いな人もいるが、料理をする人=料理が好きな人というわけでもない気がする。子どもがいるなど日常的に料理をする人に目を向けると、好き嫌いに関わらず大切なタスクとしてルーティーン化している。

もしかしたら料理をしない人はルーティーン化していないだけかもしれない。

どうすれば、料理を当たり前のこととして、楽しくルーティーン化出来るのだろうか?

Kazuhiko Asami(Producer)

「ザッカーバーグ化」のアップデート

コロナ期間に1人になると、ご飯が本当に面倒くさくなってしまった。健康と効率について考えたあげく、最終的に僕の朝ごはんは『パックのご飯』『納豆』『もずく』『インスタント味噌汁』『野菜ジュース』の5点セットに落ち着いた。常に冷蔵庫にこのセットが入っていて、ご飯の時間にサクッと用意して、サクッと食べて仕事を始める。

こんな『食事のザッカーバーグ化』は、ご飯をつくらなくてはいけない、3食のメニューを考えなくてはいけないことが、僕にとっては想像以上のストレスだったことの顕れだと思うし、レシピ動画が流行っているのもそういう欲求を示しているとも言える。リモートワークが当たり前になって、どこでもいつでも自由に働ける、仕事とプライベートが溶け合う時代になった。生活は変わった。でも料理は変わらない。

どうすれば、料理嫌いでも料理がしたくなるような、新しいエンターテインメントにアップデート出来るだろうか?

Nozomi Ito(Directer)

 

料理は家族とのコミュニケーション

料理は面倒だ。

三食規則正しく食事はするが、料理はできればしたくない。かと言って、毎回外食するのも何となく気が引ける。ほぼ毎食、妻が料理をしてくれているが、共働きなので、きっと仕事で疲れたときは、料理をしたくないに違いない。

冷蔵庫のありもので料理をしたときは、適当に作ってしまったと妻は申し訳なさそうな顔をしている。そんな気持ちにさせてしまうのが自分でも申し訳なくて一緒にキッチンに立つと、意外と楽しい時間になったりする。なぜだろう、とずっと考えていた。

料理は誰かが「しなくてはいけないこと」。

もしかして、そういう常識が、つくる人の負担を大きくしているのかもしれない。もし、料理から食卓までを家族の時間として過ごせたら、料理を「しなくてはいけない」から「やりたい」に変えることができるのかもしれない。

どうすれば、料理を家族がコミュニケーションを取るためのアクティビティに変えられるだろうか?

Yuhi Yanagawa(Producer) 

浅見 和彦

Author浅見 和彦(SPCSプロデューサー)

2014年、株式会社ロフトワークにプロデューサーとして入社。ブランディング、サービスデザイン、街づくりなど、多様なプロジェクトに携わる。2018年に、STYLY・PARCO・ロフトワークによるXR領域での世界同時多発的な実験的プロジェクト「NEWVIEW Project」を担当。これを契機に、2021年に株式会社ロフトワークを退職し、株式会社STYLYに入社。STYLYでは「NEWVIEW」の総合プロデュースをはじめ、XR技術を活用して企業や地方自治体との事業創出支援などを手がける。
現在は、ロフトワークが推進するSPCSプロジェクトのプロデュースを担当するほか、クリエイティブ関連企業にて編集長、自治体と連携したXRプロジェクトを担当するなど活動の幅を広げている。
過去には、東京都および東京都歴史文化財団によるシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]では、アーティストフェローとして都市回遊型展覧会「AUGMENTED SITUATION D」を開催。奈良県の芸術祭「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」では、エリアディレクターを務めた。
最近の関心テーマは、 リアルとバーチャル / 人間と人間以外 / 人口と自然 / 夢と現実など、対立する概念のあいだに存在するグラデーションや曖昧さといった「境界」。

Profile
伊藤 望

Author伊藤 望(プロデューサー)

デザインリサーチを通じた深い生活者理解と、未来洞察による社会変化への見立てをもとに、様々なイノベーション創出や、課題解決のプロジェクトに携わる。2023年より新たなチームを立ち上げ、新規事業開発、サービスデザイン、顧客のコミュニケーションデザイン、行政のデザイン思考導入実践、企業のパーパス策定などのプロジェクトを行う。生活者へのリサーチ / インサイト把握をもとにした、サービス / 事業のデザインを得意とする。
プライベートでは人がアイデアを思いつくに至るまでのプロセスを研究をしており、それらを活かして、様々なアイデアソン、ワークショップの設計、審査員も務める。

Profile
柳川 雄飛

Author柳川 雄飛()

大学卒業後、Web広告業界で6年間にわたり営業・メディア開拓・新規事業立ち上げまで様々な事業に従事。その後、2014年に株式会社ロフトワークに入社。プロデューサーとして企業のコミュニケーション戦略から新規事業のコンセプト策定、Webサイトリニューアルなど幅広いプロジェクト設計を担当する。また本業の傍らで、地域活性のプロジェクトに関わったことがきっかけとなり、ロフトワークでも、地域にまつわるプロジェクトへと活動の幅を広げている。

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