FINDING 木下 浩佑, 小島 和人 2020.11.09

ロフトワークが「壁」になります!
モヤモヤを解消するオンラインワークを2つご紹介

みなさんはビジネスイベントに参加されますか? イベントの良い点として、似た課題を持った人や登壇者と対話することで、モヤモヤしていた悩みが言語化されたり、次のアクションが見えたり、仲間ができたりすることがあります。ロフトワークもこれまで開催した数々のイベントを通して、新しい企画や仲間に恵まれてきました。

未曾有のパンデミックを期にイベントの多くはオンラインに切り替わり、今ではすっかり当たり前に。人数や地域の制限なく参加できたり、アーカイブで後から内容が追えるなど、オンラインイベントならではのメリットも多い反面、対面のイベントに比べて、参加者の反応や人となりが見え難かったり、対話が難しいという課題もあります。

そこで、京都ブランチのメンバーで始めたのが「オンライン壁打ちワークショップ」。イベント参加者の方々と対話し、悩みやモヤモヤを議論するための「場」として実施しています。今回は、その際に活用している主な整理法を2つご紹介。いずれもシンプルなのでみなさんもぜひご活用ください。そして、ロフトワークのメンバーはいつでも壁になります!お気軽にお声がけください。

※ 本記事の最後のリンクより、壁打ちワークショップのテンプレートがダウンロードいただけます。ぜひみなさまのビジネスにご活用ください。

【随時受付中】ロフトワークメンバーとの壁打ち/相談会

・新しい取り組みをしなければならないが、何から始めたらいいかわからない
・チームや会社のミッションやビジョンを明確にし、具体アクションに繋げたい
・まだ要件が固まらない段階だが、ロフトワークと何ができそうか相談してみたい

など、ご相談/壁打ちをご希望の方はお気軽にお声がけください。部署やチームでの複数名での参加も可能です。

>> ロフトワークメンバーとの壁打ちをご希望の方はコチラ

対話を生み出し、発想をドライブさせる「壁打ちワークショップ」

皆さんは新しいアイデアを考えるとき、どのように視野を広げたり、発想を切り替えたりしていますか?アイデアに行き詰まった時、考えが煮え切らない時、誰かに話す、つまり「壁打ち」をすることで、新しい視点が持てたり、自分の考えがまとまったり、モヤモヤが晴れて一歩先に進めたりするものです。

ここでは、2人のプロデューサーから、それぞれが目的別に活用している2つのフレームワークを紹介します。ちなみに、いずれのワークも「miro」という、オンラインホワイトボードサービスを使用して、フルオンラインで実施可能。直感的に付箋を貼ったり同時に編集できるので、対面でワークしている時と近いライブ感もあり、ワークショップで頻繁に活用しています。

1:なぜを5回繰り返すことで見えてくる「あなたがそれをやる理由」

最初に紹介するのは、FabCafe Kyotoで素材にフォーカスした事業をサポートするMTRLを担当している木下。企業、職人、クリエーター、研究者、学生、肩書に関係ない個人、あらゆる国籍の方々を繋げ、混ぜる企画を多く手掛け、業界内に閉じていた技術や文化を開き、新たな化学反応を促すプロジェクトを仕掛けています。彼がオンライン壁打ちでよく活用している整理法は「The 5 Whys」です。

木下 浩佑(MTRL プロデューサー)

素材を起点に共創とイノベーションを支援するプラットフォーム「MTRL」と、オープンかつジャンルレスにクリエイター・研究者・企業が集うコミュニティ拠点「FabCafe Kyoto」に立ち上げから参画。カフェであると同時にコワーキングスペースやメイカースペースとしての顔も持つFabCafe Kyotoの運営と年間平均100件を超えるイベント開催を通して「化学反応が起きる場づくり」「異分野の物事を接続させるコンテクスト設計」を実践中。

木下  「The 5 Whys」はその名の通り「5つのなぜ」です。日本語では「なぜなぜ分析」と言われていて、元々はトヨタ自動車の生産管理で生まれてきた 原因究明の手段であり、理解の解像度を上げていくための手法 として世界的にも広く使われている思考法です。(参考:Wikipedia「 なぜなぜ分析 」)やり方はシンプル。 1つの質問に対して、その理由を5回掘り下げるだけ です。シンプルなんですが、やってみると難しい。2回目くらいで止まってしまう人も多いですし、並列の理由を並べていってしまう人も多いです。あと、論理的に整えようとしすぎたり、主語が「社会」とか「みんな」になってしまうこともありますね。ここでは あくまで「自分」を主語にすることがポイント です。そうして苦しみながら5段階まで掘り下げていくと、物事の本質的な原因が見えてきたり、プロセスを通じて自分の中で理解が進んでいくんですよね。

大事なのは、 自分が感じている課題・違和感に対して、本当にそうなの?という視点を向けていくプロセス だという点。 当たり前だと思っているところにこそ落とし穴があったり、宝が潜んでいるもの。「それはなぜ?」と繰り返し問うことで、対象となるものごとをいつもより深く観察し言語化していき、課題の構造や本来の目的に気づくことができます。唯一の正解にたどり着く…というより、 「因果関係や優先度を明確にできる」のがこの「5Whys」の大きな効果 です。

このワークはひとりでもできるんですが、 他者の視点がないと”当たり前の沼”にハマっていきがち 。なぜなら、当たり前だと思っていることは無意識の中に存在しているので、自分では気づけないんですよね。誰かと行うことが効果的だし、その時に相手になってもらう相手は、フラットな立場の人物だといいですね。

miroを使ってオンラインで行ったワークシートの例。参加者が書きながら、木下をはじめとしたファシリテーターは別の質問を書き込んでいき、思考を深めていったり、キーワードを書き出しながら議論を整理していく。

ワークを使うタイミング

ひとつは、何か違和感を感じた時。 「違和感」って信じるべきだと思うんですね。言語化できていなくてもきっと何かあるはず なので、違和感を感じたタイミングで、その実態を見定める方法として良いと思います。間違った方向に行ってしまう前に。

もうひとつは、「何か新しい仕事をやれ、アイデアを出せ」と言われたタイミング。 自分や自分の部署/組織がなぜこれをやるべきなのかを考えることは、プロジェクトに取り掛かる前に必ずやるべき だと思っています。自分やチームメンバーひとりひとりにとって「やるべき理由」への腹落ち感がないなと、プロジェクトの土台がグラグラしてしまいますよね。あと、この掘り下げ、時間もかかって大変なんですが、個人のモチベーションや課題の定義など深いところまでディスカッションできるので、 その後のミーティングの質も上がりますし、コミュニケーションもスムーズになるし、ブレそうなポイントもわかるようになる 。あと、壁打ちされる側にとっても血肉になるので、みずから率先して壁側にもなれ!って言いたいですね。

木下は京都精華大学の授業内でも、ディレクターの上ノ薗とともに学生たちが取り組む準備としてThe 5 Whysを活用した。オンラインで他のメンバーが見える状態で行うことで、記述に詰まっている箇所が見えるので、リアルタイムでフォローしやすい。他のメンバーの回答が見えるのも議論を活発にするために有効。

2:未来から逆算し、今できるアクションを考えるロードマップ

次に紹介するのは、新規事業を支援することが多い、プロデューサーの小島です。彼はプロデューサーの傍ら、ハモニズムという名前でアーティストとしても活動しています。ふたつの活動に共通しているのが、「まだ価値のないものと思われているものでも、未来にはこういう価値になり得るのでは?と問い続けること」だという彼。新規事業支援では「目指すべきものが何なのか」から一緒に考え、アクションに落とし込んでいっています。そんな彼がいつもクライアントと作っているのが、ロードマップ。ビジネスアイデアを考える手法でロードマップを描くというプロセスはよく使われますが、小島はそれをカスタマイズして活用しているようです。

小島 和人(プロデューサー)

新規事業創出や共創空間作り地域産業推進など幅広くプロデュースを担当。2020年からはSFプロトタイピングなどの手法を積極的に取り入れ、先行きが見えない社会の中で企業や団体がこの先で何をすべきか?を提案している。企業人としても作家としても「未来」に対する問いの設計に興味がある。あだ名は「ハモさん」。個人では美術作家「ハモニズム」として活動し、ファッション / 植物研究 / 都市菜園などのコラボによりジャンルを越境した作品づくりを行う。

小島  こんにちは。ロードマップおじさんこと、小島 和人です。僕が作っているロードマップでやっていることは、一言で言うと、 現在から未来に向かう時間軸の中で、自分個人と、所属する企業や業界、そして社会状況を視覚的に行き来することで、今やるべきことが何に繋がるのかを導き出していくワーク です。

ここでポイントなのは、行き来するということ。色々なやり方はありますが、多くの場合、ワークの前の段階で僕の方で社会状況や業界予測、仮説などは5割程度書き込んでおくことが多いですね。その上で、ワークの中で今自分たちがやろうとしていることや考えていることを行った時に社会がどうなっているか予想し、またその予想を踏まえて、何をすべきか考え直していく。そして最終的には、導き出した仮説をベースにビジョンだけでなく具体的なアクションに繋げていきます。 いろんな軸で思考を行ったり来たりさせるのを、ひとつのシートで可視化していけるのがポイント ですね。

もうひとつ大切なのは、こういうワークをする時に、 自分がやりたいことやどうあるべきだと思っているかという、個人的な思想を大切にしてほしい んですよね。そのレベルでディスカッションしていると、チームの中で、 価値観の総和みたいなものが見えてきて、これが、その後のプロジェクトの拠りどころになる んです。

ワークを使うタイミング

大きくふたつあります。ひとつは、新規事業などで、使いたい技術とか開発したいものはあるものの、どうしたらいいか、何から始めたらいいかわからない時。大事なのは、この技術をどう売るかではなくて、この技術が発展して行った時に、世界がどうなっているかを考えること。 売るためではなくて、売れた後を考えるということです。そうすると単なる技術売りじゃなくて、「社会に対してのアクション」になっていく んです。

もうひとつは、企業がブランディングをしていきたい時。企業こそ、最終的にどういうどういう世の中を作っていきたいなを語れないといけないと思うので、目先の物売りだけでなく、未来をどう作りたいのかを語れるようにするために使えると思います。逆に、 これなしにペルソナやビジネスモデルキャンパスを作ると、自分や自社がそこからすっぽり抜けたものになってしまう んですよね。「困っている誰か」というラベリングだけからスタートしてしまって「自分がこれをしたい」がそこにないと、結局そのビジネスアイデアに必然性は生まれない。最終的な拠り所になるのは個人の熱量でしかないと思うので、「社会課題を解決する」だけだと動けない。 手段を目的化させてしまわないために、ロードマップづくりは有効だと思います。

ファシリテーションのポイント

このワークをうまく機能させるためには、多くの視点を入れることが大事ですね。スペキュラティブ、ロジカル、生活者、ジェンダーなど。SF作家とか僕のようなアーティストタイプで、かつ視点の切り替えに慣れている人が1人入っているとなお良いですね。 ファシリテーターはとにかく面白がることが大事 。たとえば、よくある「否定しない」というファシリテーターのルールも、結局「否定しない」というルールに縛られてしまっている。どちらかという と僕が必ずやるのは「ボケる」です 。そうするとみんな本音で喋りやすくなる。綺麗なロードマップを描くことより、それぞれが自分ごととして視点をシェアできる場を設計することが大事ですね。 ワークがうまくいくと、「弊社はこうだと思う」ではなく、「私はこう思う」になっていく 気がします。あと、みなさん間違いなくスッキリしたっておっしゃっていますね。

【無料ダウンロード】ロードマップテンプレート

こちらから小島が作成したロードマップのテンプレート(PDF)がダウンロードいただけます。ロードマップを引く際のポイントも記載されていますので、ぜひご活用ください。

未来から逆算し、今できるアクションを考えるロードマップ

壁打ちしたい人はお声がけください!

いかがでしたでしょうか?みなさんにとっても使えそうなワークはありましたか?いずれのワークも「こうあるべき」を作るのではなく、相手を個人として尊重し、自分も個人として発言する関係性を作るということが核にあります。それは、ビジネスをする上で最も大切なことですし、ワークショップとはそもそもそういう場所であるはず。奇しくも、このコロナ禍において、この記事で紹介したオンラインワークショップを実験したことで、私たち自身も改めて気づくことができました。
もしご紹介した壁打ちワークを私たちと体験してみたい方はお気軽にご相談ください。

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