#14 ロフトワークの未来、どうしていこう?
(ドーナツの穴 — 2020年代を生きるということ — )
ロフトワークは、2020年2月に設立20周年を迎えました。この20周年イヤーの6月某日、渋谷オフィスに、わたし林千晶と4人のメンバーが集まりました。彼・彼女らは、ロフトワークをこれから引っ張っていく立場にある4人です。この日の議題は「ロフトワークのこれまでを振り返り、未来について考える」。「Keep(良い点/続けるべきこと)」「Problem(課題/改善すべきこと)」、そして「Try(挑戦すること)」——3つのパートにわけてディスカッションを行いました。5人の間で繰り広げられた会話をお届けします。これからのロフトワークがますます楽しみになりました!(林千晶)
4人のメンバーそれぞれの「辞めない理由」
林千晶(以下、林):じゃあまずはみんな、簡単に自己紹介してみましょうか。今の自分の役割と、なぜ入社したか、そしてなぜロフトワークを辞めないのか(笑)
ちなみに私だったら、「役割は人を元気づける、新しいことをやる」。会社をはじめたきっかけは、諏訪くんに誘われたから。
一同:(笑)
寺井翔茉(以下、寺井):僕の役割は、京都の事業をドライブさせること。12年前に新卒入社したんですけど、なぜかホイホイ面接に通ってしまったんですよね。でもそれがよかった。就活のお作法に合わせて、嘘をつかなくてもいいところが。
2017年に京都に異動してから「で、いつ独立するの?」ってめっちゃ聞かれるんですけど、逆に「何で独立する必要があるの?」と。ロフトワークにいた方が、ポテンシャルがある気がしています。
岩沢エリ(以下、岩沢):いいですね。じゃあ私も。役割、はじめは「マーケティング」と書いたけど、そうじゃなくて「ロフトワークの価値を伝える」かな。そのうえで、未来のクライアントやパートナーとの関わりを作っていくこと。
入社したきっかけは、夫のススメなんです。気がついたら入っていた感じ。なぜ辞めないかは、辞める理由が本当に思いつかない。今が一番楽しいです。
寺井:ほんと、そうなんだよねー!
高井 勇輝(以下、高井):僕は、入った経緯から。前職でサービスを立ち上げようとしたことがあったんだけど、「自分じゃつくれねぇな」と。そのときたまたま、ロフトワークが開催していたプロジェクトデザイン講座に参加したんです。その講座が終わった後、社員の一人から声をかけてもらいました。
辞めないのは、2人と似てるんですけど、何だかんだロフトワークが好きなんですよね。今以上、面白い仕事ができる会社は見つかってないです。役職は渋谷クリエイティブDiv.のシニアディレクターなんだけど、役割でいうと「次を担う」かな。
松井 創(以下、松井):なんか締められてしまった感があるなぁ(笑)。僕の場合は、役割=CLOです。Chief Layout Officerね。入社したのは8年前なんだけど、当時、自分と同じくらいの世代のメンバーがイキイキ働いていたのが印象的で。ホームグラウンド感があって、自分が一番パフォーマンスを発揮できる環境がロフトワークだと思っているから辞めてないんだけど……なんとなく、卒業しないといけないかなと感じることもあって。
心地良すぎるのもあるし、外に出ることで会社に貢献できることもあるような気がするから。だから「そろそろ辞めないといけないかな?」って、毎年思ってます。その気持ちが、レイアウト事業を引っ張っていく力にもなっている。
Keep:「プロジェクトの面白さ」「本質をみる」「PMBOK」
林:みんなありがとう。じゃあ早速、ロフトワークを「Keep」「Problem」「Try」3つのテーマで振り返ってみたいと思います。まずはKeep(良い点/続けるべきこと)からいきましょうか。
高井:面白いプロジェクトが多くて、やりがいを感じられる裁量の大きさがある。もちろん、その分の責任もありますけどね。実験やチャレンジを、みんなが歓迎するカルチャーもいいですよね。
そして、いわゆる“嫌なヤツ”がいない。それがなぜなのか考えてみると、ロフトワークって、「そもそも」に立ち返って本質的な意味を考えることを大事にしているから、誰と話しても感情論にならないんじゃないかな。いつも建設的なコミュニケーションができるので、僕はすごく楽です。
寺井:確かに、「そもそもどうあるべきか」を考えてプロジェクトにコミットしていく姿勢はあると思います。そしてプロジェクトといえば、やっぱりPMBOK(プロジェクトマネジメント)。
プロジェクトマネジメントを大事にする考え方が根底にあったからこそ、20年の間に業態がここまで広がったんだと思います。PMBOKがなかったら、たぶん、ロフトワークはずっとWeb制作会社のままだったんじゃないかな。
岩沢:本当にそうだと思う。私が入社した当時はWeb制作案件が多かったけど、年々仕事内容が変わっていって、今は全く違うプロジェクトを手がけてる。それがすごく面白くて、飽きないところですね。
Problem:「100人を超えた組織デザイン」「経営についての知識不足」
林:さて、じゃあ次はProblem(課題/改善すべきこと)。現状の課題、変えた方がいいことを挙げていきましょう。
松井:オープン&フラットなカルチャーがあることは間違いないんだけど、現状では若干、ヒエラルキー的な思考が残ってしまっている気がしています。もうロフトワークはヒエラルキー型の組織ではないし、みんなもその思考はないはずなんだけど、ときどき「それってヒエラルキー的じゃない?」って感じる言葉を使う人がいたりしますよね。
岩沢:その点に関して、マネジメント側の考え方が、メンバーに対して十分に伝わっていない部分があると思います。まだ、心理的な距離があるというか。社員数が100人を超えた中で、これから先、どんなコミュニケーションを取っていくかは大きな課題の一つですね。
高井:「ロフトワークはかくあるべし」という共通認識が曖昧なところはありますよね。人それぞれの価値観、仕事の基準に差が出てきている。
林:そうだね。次のフェーズの仕組みを取り入れないと、今の延長線上ではムリだよね。
松井:もう一つはクライアントワークに関連して、メンバーがビジネスを知らないこと。BS(貸借対照表)/PL(損益計算書)すらわからなかったりするじゃないですか。
さらにLayout Unitの仕事だと、空間は固定資産になるから減価償却について知らないといけないとか。これからデザイン経営を推進していくなら、ロフトワークはかなり本気で経営と向き合う必要があると思います。
林:それはね、私自身が感じていることでもあるんだよね。勉強しよう、経営。
Try:「ロフトワークとは何かの定義」「自治組織」「プレイヤーシップ」
林:さて、ここまで良い点と課題についてそれぞれディスカッションしてきましたが、この項目を踏まえて、Try(挑戦すること)にいこう。ロフトワークは、これからどんなことにトライしていくのか。
寺井:僕は、新しい契約の仕方を考えていきたいです。クライアントとの仕事の仕方、もっとバリエーションがある気がするんですよね。
松井:たぶんその話に近いと思うんだけど、僕は手触り感のある仕事をもっとしていきたいですね。今、プロジェクトの上流工程の仕事が増えていますよね。コンセプトを考えるとか、リサーチまでとか、空間のイメージパースが納品物になるとか。
でも、アウトプットが実装されて動いていくところまで見ていきたいんです。ちょっと、頭でっかちになってる感じがある。世の中に出ていっている感覚がないというか。
高井:僕も、根本は2人の意見と共通しているかも。クライアントとの新しい契約の仕方、手触り感ある仕事、そうしたプロジェクトに主体的に関わる人を増やす選択肢の一つとして、デザインの内製も入れていきたいなと。
林:なるほどね。でもそれは議論と工夫が必要かもね。単純に「デザインを外注するか、内製するか」という話ではないから。会社があって、そこに社員がぶら下がっている組織じゃなくて、クリエイティブなプロジェクトに取り組む、そのインフラとしてロフトワークがあるようにしたいなと私は思っていて。
高井:そう、そうなんですよ。そこがまさに、この議論の肝になると思うんです。そもそもここで話している「ロフトワーク」って、どこからどこまでなのか、一体何を指すのか。
松井:以前、経営合宿をしたときに「ロフトワークはクリエイティブカンパニーである」と定義づけられて、賛否両論ありましたよね。ここでいう「カンパニー」は「コーポレーション(会社)」ではなくて……。
林:「仲間」ね。
松井:そう、仲間。この議論にさらに重ねると、これからのロフトワークに必要なのは、自立した個人の集合知と自治だと思っています。
林:それはその通り。でも「自律」と「自立」、そして「自治」って、それぞれ違うんだよね。「自律」は自分で自分を律すること。「自立」は、社会の中でどう生きていくかまで含まれる。それに対して、「自治」は自分一人ではなく、集まった「私たち」としてどうルールを設定し、一人ひとりの足りないところを補い合いながら(補完し)、生きていくことの意味を考える。“We”の視点が必要。
私もまだうまく言語化できていないんだけど、これからは「自治」だなと思ってる。
寺井:その「自治」が成立した上意下達ではない状態で、指導する立場の人をどう呼ぶのがいいんでしょうね。
林:うーん。デンマークの民主的建築を“Democratic Architecture”と呼ぶんだけど、ずばり、デモクラティック・コミュニケーター(民主的コミュニケーター)?!
寺井:デモクラティック・コミュニケーター!
一同:(笑)
高井:僕は、自治の状態を目指すために必要なのが「プレイヤーシップ」だと思うんです。アントレプレナーシップやリーダーシップより、プレイヤーシップがロフトワークではしっくりくる。
100人以上いるロフトワーカーの総体を「ロフトワーク」と呼ぶのであれば、誰かが監督として指示を出してくれるのを待つのではなくて、全員がピッチに立っているプレイヤーですよね。だから誰であっても、勇気をもってボールを蹴り出したら試合が動いていく。その力を一人ひとりが持っているんだ、と。
寺井:ただね、千晶さんがインタビューを受けた昔の記事を読んでいたら、「200人のクリエイティブ・カンパニーってダサいよね」みたいな話が出ていたんですよ。今、少しずつその状態に近づいているわけで。だから人数をわけたらどうかなって。50人ずつくらいでどうですか?
林:うん、実はね、すごくそう思ってる。
松井:その場合、その50人はどういう構成になるんだろう?
寺井:50人の社員プラスアルファで、その周りを取り囲んでいるプロジェクトや企画がいくつかあるイメージ。メンバーそれぞれの自己肯定感がある状態で、プロジェクトにコミットしている感覚を得るためには、ある程度は身の丈に合ったサイズ感が必要だなと思うんです。
高井:そうなると、ビジョンをどう設定するかが難しいですよね。インディペンデントな自治の状態をゆるやかにまとめるようなビジョンなのか、パーパスなのか……今は正直わからないけど、唯一の目的や目標を掲げてしまうと、上意下達の組織になりかねないから。そこは丁寧に考えていかないといけない気がします。
何というか、「ロフトワーク」を主語にして考えるとうまくいかないんじゃないかな。
林:「ロフトワークさん」はいないからね。
高井:そうなんですよね。いつも僕はそこで、何だかわからなくなってしまうんです。「ロフトワークって何なんだろう? 」って。入社してもう8年が経つのに、うまく説明できない。
林:わかる。できない! 私も20年できていないから(笑)。
一同:(笑)
Discussion:ロフトワークの在り方を考える
松井:そういえば、千晶さんのコラムのタイトルになっている「ドーナツの穴」。「それって何なんだろう?」と考えたとき、ロフトワークの場合は人と人の間に何かが生まれて、それがどんどん連なってドーナツ状になっているんじゃないかな、と思ったんです。
一部だけを切り取ったら何も定義できないけど、プロジェクトがあって、そこで発生する活動を通してはじめてお互いの間に何かが定義できる。そんな状態の“ドーナツ”を、千晶さんは描いていたんじゃないかなって。
林:ピンポン! まさにそうなの。私はね、自分自身はある意味、何もない人だと思っていて。でも例えば今、こうしてこの4人と一緒に「ロフトワークって何だろう?」っていう話が生まれている。いろいろな人との間にいくつものプロジェクトが生まれて、形ができて、気づいたらそれが美味しそうなドーナツになってるんだよね。
松井:なるほど……そう考えると、ロフトワークとして改めて、ビジョンとかパーパスを定義する必要はないのかな。
岩沢:「ロフトワークはそういう状態だよ」ということは、もっと伝えていってもいいのかもしれないですね。わかりやすく「何かを世界中に広める」みたいな旗を経営者が立てて、みんなでそれを目指すのが会社組織だと思いがちだけど、そういうことじゃないんだ、と。「こういう風にみんなが生きていたらいいよね」という考え方が、まだ社内でも共有されてないのかもしれない。
松井:ちなみに「ビジョン」って、どう捉えていますか? 「ビジョン」「ミッション」「パーパス」とか、企業によって関係性や解釈が変わったりしますよね。
林:うーん。私は「どんな未来にしたいか」を考える意味で、ビジョンだけでいいんじゃないかなと思ってるの。だからそれが何なのか、今年中に何かしら形にしたい。
私はロフトワークの仕事を、後回しにするものでも、先んじるものでもなくて、それがあるから人生がより豊かになる仕事しかやりたくないなぁとは思っていて。だからやっぱり、ロフトワークの仕事は“Labor”でも“Work”でもなくて、“Action”なんだよね。ハンナ・アーレントがいうところの「活動」ね。
寺井:僕、千晶さんが「人間性を取り戻す」という言葉を使っていたことがずっと自分の中に残っていて。まだうまく言えないんですけど、それがプロジェクトの中ですごく大事なキーワードな気がしています。
松井:僕が運営に携わっている「100BANCH」で3年半の活動についてまとめようとしたとき、結論としてたどり着いたのが「人間性の開放」だったんですよ。
一同:おお〜!
林:うん。生きることを大事にすることも大切だと思う。それが仕事。「どっちが大事か?」じゃなくて、どっちもなんだよね。
寺井:プロジェクトの定義って、「創造的な行為」ともいわれるじゃないですか。だから仕事も含めて、プロジェクトが増えれば増えるほど、世の中が創造的になっていく——と、言ってしまおうかな。
一同:なるほど〜!
林:まさにそう。ロフトワークの未来はみんなに託すから、これからもよろしくね!
【連載目次】「ドーナツの穴 ー創造的な仕事のつくり方ー」
- #00 はじめに
- #01 デザインとクリエイティブ
- #02 付箋と民主主義
- #03 デザインは、量より質?
- #04 「わからない」が面白い
- #05 場が働き方をつくる
- #06 折り紙付き採用
- #07 合宿のススメ
- #08 その人にしかできない仕事を
- #09 きっかけは他者にある
- #10 FabCafeのつくり方
- #11 FabCafe Globalの育て方
- #12 飛騨の森でクマは踊るか
- #13 2020年代を生きるということ
- #14 ロフトワークの未来、どうしていこう?
- #15 ダイバーシティとどう向き合う?
- #16 「プロジェクトマネジメント」の技術をどう伝える?
- #17 「人とのつながり」をどうつくる?
- #18 おわりに
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