FINDING
後閑 裕太朗, 宮崎 真衣, 岩崎 諒子 2023.11.28

カイシャの編集会議 Report. 1
コンテンツの「企画」と「成果」をn=1視点でつなぐ、編集の挑戦

どうやったら、価値あるコンテンツをつくれるの?

企業が、自分たちでコンテンツをつくり発信することが当たり前になった時代。一方で、コンテンツの価値や効果とは何かを定義することは、簡単ではありません。また、コンテンツ企画・制作に従事する広報担当者やマーケティング担当者はもちろん、その発信を支援する編集者やライターにとっても、PVやCVなどの数値を追いかけ続けるのは「しんどい」ことでもあります。

このジレンマを乗り越えて、〈いいコンテンツ〉をつくり、自社やクライアント、あるいは業界や社会にとって望ましい変化が現れる〈いい仕事〉をするには、どうすればいいのでしょうか? 

そんな問いのヒントを探るべく、2023年9月29日、ミートアップ『カイシャの編集会議』を開催。地域を軸とする編集チーム・Huuuuと、インタビュアーのくいしんさん(くいしん株式会社)、ロフトワークのコーポレートメディア編集チームの3社が「価値を生み出すコンテンツづくり」を試みた事例を紹介しながら、会場のみなさんと一緒に「どうやったら、価値あるコンテンツをつくれるのか?」をテーマにディスカッションしました。

本レポートでは、ディスカッションの起点となった各社のコンテンツづくりの事例を、全3回にわたって紹介します。これからのコンテンツづくりについて、コンテンツ企画・制作に従事するみなさんとともに考えるきっかけとなれば幸いです。

カイシャの編集会議 3つの議題

  • いいコンテンツをつくるための〈企画〉と〈KPI〉ってなんだ?(本記事)
  • 伝えたい価値を引き出す〈インタビュー〉ってなんだ? >>Report. 2
  • 〈編集チーム〉が企業に伴走する意義ってなんだ?

執筆・編集:岩崎 諒子/Loftwork.com編集部
企画:後閑 裕太朗/Loftwork.com編集部、宮崎 真衣/ロフトワーク 広報
写真:川島 彩水

いいコンテンツを生み出すための〈企画とKPI〉ってなんだ?

ロフトワークのコーポレートメディア「Loftwork.com」の編集部・後閑裕太朗から紹介したのは、マーケティング施策としてのコンテンツ企画とその成果を図るKPIをどのように設定したのか、という実践の話でした。

ロフトワーク 後閑裕太朗

コンテンツの成果というと、ページの閲覧数(PV数)と、そのコンテンツがいくつのコンバージョン(CV)に繋がったかを問われることは多いと思います。しかし実際には、ECサイトなどコンバージョンまでのプロセスがシンプルなWebサイトでないかぎり、PV数とCVの間のプロセスはブラックボックスであることが多く、PVとCVの相関関係について「これだ」という明確なロジックを立てるのは難しいケースが多いようです。

Loftwork.comでは、お客様からの問い合わせをもらうことがCVに設定されています。編集部はこれまで、プロジェクトレポート(事例)やインタビュー、スタッフコラムなどさまざまなコンテンツをつくってきており、経験的にマーケティング施策において「コンテンツは重要」という共通認識を持っていましたが、それがどのような過程でCVに繋がっているのかを測るKPIは、揺れ動くことも多くありました。

既存コンテンツに埋もれている価値を届けなおす

そんなモヤモヤに対して、後閑が実践したのが「特集」という新しい枠組みのコンテンツです。雑誌の特集のように、時代性を意識したひとつのテーマのなかで既存のコンテンツを束ね再編集することで、それぞれの記事にシナジーを生み、ターゲットにより適切に訴求することができるのではないか。そんな発想から、「特集 『未来』」のコンテンツを制作しました。

その内容は、事業開発に携わる人たちが注目している「未来洞察」のアプローチについて、最新のトレンドと現代思想からの解釈、有識者による視点など、段階的に理解を深めてもらいながら、自社のプロジェクト事例へと話題をつなぐ大型の読み物コンテンツです。

併せて、特集のターゲットである読者に向けて、「ミライの談話室」という、少人数で「会う」ための企画も用意。未来洞察という、まだ黎明期にあるデザインのアプローチに関心を持った人が、その実践者であるロフトワークのディレクターに直接話を聞くという、少人数制の相談会を実施しました。
実際、特集から「ミライの談話室」への参加申し込みがあったことで、読者と対面する機会という、コンテンツのPVとCVの中間に位置する新しいKPIを設定できました。

特集「未来」

読み手の「知りたい」に真摯に応える

特集 「未来」の企画の着想となったのは、クライアントの担当者の方から直接、未来洞察プロジェクトを実施するに至った背景と課題感を聞いたことでした。

コンテンツの企画を、ページビューや訪問数といった「数」や「データ」からのみ考えるのではなく、n=1の考え方で「あの人(話を聞いた担当者)に読んでもらいたい、役立てて欲しい」を重要視しながら形にしたこと。また、同じ課題感を抱えている人に求められているであろう「情報」と「機会」は何かを考え抜いたことが、結果として新しいKPIの発見と成果につながったといえそうです。

コンテンツづくりに携わるみなさんからの声、お待ちしてます!

「カイシャの編集会議」は、コンテンツ制作従事者のみなさんと一緒に、オープンに「これからの〈いいコンテンツづくり〉」を考える、Huuuu、くいしん社、ロフトワークの3社による活動です。
コンテンツづくりに従事する企業の広報担当者、マーケティング担当者のみなさんや、ライター・編集者の方たちとのミートアップを不定期で開催しています。
本記事の感想や、「こんなテーマでイベントをしてほしい」などのご意見をお待ちしています。

Keywords

Next Contents

街の緑、食品ざんさ……都市の「分解」を可視化する。
「分解可能性都市」展示レポート