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銭 宇飛 2020.03.24

中国向けサイトは作る必要ない?
リアルユーザーが語る「あなたの知らない中国向けWebサイトのこと」

Tokyo WordPress Meetupが主催する「道玄坂 WordPress Meetup #5 あなたの知らない中国向けWebサイトのこと」にロフトワーククリエイティブディレクターの銭が登壇。好評だった内容をダイジェストでお届けします。

クリエイティブディレクター
銭 宇飛

1993年中国南京生まれ。その後幼少期を横浜で過ごし、再び中国へ。南京大学建築学部、武蔵野美術大学大学院基礎デザイン学科卒。日中バイリンガル。大学院在学中にデザインの根本はディレクションであることに気づき、ディレクターを志望する。2019年ロフトワークに新卒入社。中国ではインフルエンサーとしても活動。Wechat、Weibo、Alipayを使用するヘビーユーザー。

中国ユーザーはwebサイトを見ない!?

まずは、中国のネットユーザーの状況についてご紹介。

中国ネットユーザーがどのデバイスを利用しているかという調査では、98.8%がスマホ、48.0%がデスクトップ、 35.9%がノートパソコンという結果が出ている。(複数のデバイスを利用するユーザーもいることはもちろん前提ではあるが)ネットにアクセスする際は、スマホが主流であるという状況が結果から見える。

そしてスマホユーザーが多いという事実と合わせて、中国のネットユーザーに関する重要なポイントがある。それは、ほぼ情報収集がスマホ端末で操作しやすいアプリで行われているということだ。実はスマホの普及によりネットへ新規参入したユーザーも多く、中国ではインターネット=アプリという認識が強い。日本でネットと言うとWEBページを想起しがちだが、中国の感覚でWEBページは、ネットと言う大きなカゴの中のブラウザアプリの一要素としか捉えてないのだ。

Weibo(ウェイボー:中国のメインSNS、日本でいうツイッターに近いもの)で登録し公式認証された行政アカウント数が13万8253。これは、ほぼ全てのユーザーがスマホでSNSを通して情報収集しているため、行政などのオフィシャルな情報もSNSで行わているという事実を示している。例えば上海市など約800万のフォロワーを所持してる行政アカウントは、平均的に1時間1,2件のWeiboを呟いてる。

自分自身の中国での体感値を持って日本で仕事をしていると、日本でイメージされている中国のネットユーザーは中国のリアルなネットユーザーと全く違う感覚と習慣だと感じる。中国のネットユーザーというのはほぼ様々なアプリ内で完結されていて、よほどなことがない限りブラウザアプリを開いてURLを入力することはない。スマホ普及のタイミングでネットを始めたユーザーたちの中では、そもそもURLを知らないユーザーもいる。

中国人消費者の情報収集のリアル

実際に日本の中国人向けWebサイトは機能しているのか

実際に日本の中国人向けWebサイトは機能されてるのかという状況についてみていく。

中国のネット環境事情に詳しい人は、GreatFirewallの存在から、日本サイトと別に中国向けサイトを現地のサーバーに置くことで、アクセスはされるだろうと考えているが、実際に中国Webサイトを作りたいという依頼に関しては多くのケースにおいて作る側の希望的観測(wishful thinking)でしかないと感じる。

なぜかというと、先ほども述べたように中国のネットユーザーは、情報収集をほとんどSNSを活用して行なっているというのが現状なのだ。ブラウザを開いて、何かを調べるという行為はほとんど行われない。中国で全くWebサイトが機能してないというほどではないが、どのような目的を持って作るのかもう一度考え直す必要がある。

中国で売り上げを伸ばす日本企業の事例

中国では、主にWeibo、WechatといったSNSが情報源となっている。もちろんブラウザでの利用は可能だが、殆どの機能がアプリに置かれているためアプリをメインに活用している。企業も行政も自分の公式アカウントを通して情報発信をしている。成功している日本企業もこのように中国のSNSで情報発信を行なっている。いくつか事例を紹介する。

例えば中国で人気の化粧品シュウ ウエムラ。中国公式Webサイトを作っていているが、同時にWeiboの公式アカウントとWechatのサービスアカウントを通して情報発信している。こういったSNSによる情報発信は、アプリ内でのシェアだけではなく、中国常用アプリ間でのシェアもワンタップでできるようになっている。

アプリを通して情報を得ることが当たり前の中国ユーザーにとっては、わざわざブラウザアプリを立ち上げてWebサイトにアクセスするより、SNSで公式アカウントをフォローすることに慣れている。

そうであれば、SNSにWebサイトのURLを貼ればいいのでは?と考える人もいるかもいれない。しかしそれは日本で通用するかもしれないが、中国では通用しない。なぜなら、アプリネイティブな彼らからすると、SNSからURLをタップしてブラウザのWebサイトを覗きに行くことは、想像以上に不便で面倒な行為なのである。

無印良品のTwitterアカウント(日本での情報発信)
Weiboでの無印良品アカウント(中国での情報発信)

次に無印良品の事例を日本の情報発信の方法と比べて紹介する。Twitter(日本向け)では、一つ一つのツイートにWebサイトのURLを貼っているのに対し、中国のWeiboでは、URLは貼らず、画像と文字のみになっている。中国のユーザーは興味を持つ商品に関してはTaobaoやTmallで検索して買う習慣があるため、わざわざ遷移させる必要はないのだ。稀にリンクもあるが、直接Tmallアプリの購買画面に遷移させるものである。

販売に関しては、Webサイト内でもオンライン販売をしているが、中国で最もアクセス数の多いECモールのTmall(テンマオ、2011年6月にアリババから独立事業化した電子商取引サイト)で主にオンライン販売をしている。

無印良品のTmallページ
シュウウエムラのTaobaoページ

TaobaoやTmallは個々の店舗に24時間いつでも秒で対応してくれるオンライン問い合わせスタッフがあり(秒は誇張ではなく本当に秒で返信してくれる)Webサイトに載っている電話より利用率は高い。

最近は、日本企業だけではなく日本の地方行政や、大学なども中国でSNSアカウントを作って宣伝をしてたりするが、殆どがうまく利用できてないのが現状である。

今回のまとめ

  • 中国のネットユーザーは、ほとんどがスマホユーザー
  • 中国のネットユーザーの情報収集は、webサイトではなくSNSやアプリが主流
  • 購入先の動線は、公式サイトではなくTaobaoやTmallへ

     

銭 宇飛

Author銭 宇飛(クリエイティブディレクター)

南京大学建築学部、武蔵野美術大学大学院基礎デザイン学科卒。日中バイリンガル。2019年ロフトワークに新卒入社。空間、グラフィックなど「モノ」のデザインから、サービス、エクスペリエンスなど「コト」のデザインまで、領域横断的なデザイン力を日々研磨中。
毎月バトルに出場するストリート・ダンサー。D-pride vol.4 Challenger ベスト16、SODA POP vol.1 準優勝。

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