Webサイト運用の道具箱 Vol.1
「アクセス解析」と仲良くするには?
ツール活用と自動化でチームのPDCAを推進する
ロフトワークは、Webクリエイティブのプロフェッショナルとして、さまざまな企業や大学、自治体のWebサイト制作に携わっています。一方で、実は、ロフトワークにも他社と同様に「Web担当者」がいるんです。
普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのマーケティングUnitでWeb担当者として活動している長野彩乃が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。
執筆:長野 彩乃/ロフトワーク マーケティング
編集:岩崎 諒子/Loftwork.com 編集部
Webサイトの目的を達成するための定期的な「健康診断」
自社の広報やマーケティング活動に欠かせないWebサイト。
SNSやnoteといった便利な発信プラットフォームを活用するケースが増えていますが、とはいえ、Webサイトも依然として、問い合わせやその他のコンバージョンを実現する上で重要な役割を果たしています。
しかし、Webサイトを運用していると、担当者は多くの課題に直面します。「リニューアルしたけど効果がわからない」「頑張って記事を更新しているけど、なかなか閲覧されない」「コンバージョンの増やし方がわからない」等、悩みはつきません。
また、Webサイト運用の現場では「Webサイトの運用=記事を更新する業務」というイメージが強く、アクセス解析やWebサイトの改修といった技術的なアプローチが必要な業務が後回しになりがちです。しかし、これらの業務はコンテンツをユーザーに適切に届けるための重要な施策。せっかく記事やイベントを更新してもその中身がユーザーにきちんと届かなければ、十分な効果が発揮されません。
みなさんが読んでいる本サイト・Loftwork.comは、BtoBマーケティングにおける1つの重要なツールとして運用されています。Webサイトが想定通りに機能しているかを確認するために、ロフトワークのマーケティングチームでは、Loftwork.comの定期的な「健康診断」を行っています。
そこで今回は、日々の運用業務の中で優先順位が下がりがちになってしまう「アクセス解析」を、いかに必要十分なルーティンの中で効果的に実践していくか、私たちが実践していることをいくつかご紹介します。
Loftwork.com 基本情報
プロジェクト事例、イベント情報、イベントレポート、Findings(コラム)メソッド、ニュース、社員、採用情報等様々な情報を発信しているLoftworkのコーポレートメディア。月に30件前後の記事が更新されています。Webサイトへの集客施策は、主に週1のメルマガ配信とSNS、Web広告運用。おもにBtoB向けのWebサイトで、問い合わせやイベント申込みをコンバージョンとしています。
1)ツールを使用した自動連携による「定点観測」
Webサイトが想定通りに機能しているのか? 自分たちが行っている施策が目的に対して有効に作用しているのか? これらのWebサイトの運用課題に対して、運用者個人の主観だけに頼らずに、客観的な判断基準を提供してくれるのが数値による「定点観測」です。
定点観測の意義は、施策の効果や進捗を図るだけではありません。サイトの表面上からはなかなか気づけない「いつもと違う」や「何かがおかしい」を、数値変化から気づくきっかけを得るのも、大事な目的のひとつ。
Webサイトの課題をWebサイトを表面から眺めて発見しようとすると、なかなか見つからなかったり、見つけても「これって本当に課題なんだろうか…?」と判断がつかずに手が止まってしまったりします。そもそも、運用者自身が日々慣れ親しんだWebサイトから課題を発見しようとすること自体が難しいことなのです。
Loftwork.comでは、Google Analytics4(以下GA4)を使用して数値を計測しています。
しかし、サイトの更新などの業務を行いながら、毎日・毎週・毎月GA4を確認して、数字を記録する時間を取るのは大変…という方も多いはず。私たちの運用チームでは、作業負荷を抑えながら定点観測を継続的に行うために、2つのツールを活用しています。
Looker Studio
Loftwork.comの記事更新に関係するメンバーは、社内に10人近くいます。しかし、その全員が同じ頻度でGA4にアクセスして定期的に数値をみたり、細かく数値を分析するわけではありません。更新に携わる多くのメンバーにとっての定点観測は、アクセスしやすい場所で必要なデータを確認できさえすれば、十分事足りるのです。
そこで、重要な数値だけを最新の状態で定点観測できるダッシュボードを用意しました。使用したのは「Looker Studio」です。Looker Studioを選んだ理由は、利用料が無料であるという点と、作ったものを誰にでも共有できるという利便性の高さです。
このような「みんなが見たい数字」をまとめたダッシュボードが用意されていると、運用者全員が同じ環境のもとでアクセス数の変動を把握できるため、施策を打つべき時期を検討しやすくなります。また、前年比で大きく数値が変化している場合、適切なタイミングで要因を調査したり、新しい打ち手を検討・実施したりするきっかけを提供できます。
また、メールマガジンやSNS投稿といった定期的な施策を打っている場合、毎回の施策実施後にその効果をキャッチアップすることが、施策のPDCAを回す上で欠かせないルーティンとなります。
Loftwork.comの場合、毎週木曜日にメルマガを配信しています。定期的に開催されるメルマガの編集会議の場では、配信5日後の開封率や、どんな記事がクリックされているのか、イベントの申し込みにどれだけ繋がったか、といったことを報告・共有します。また、ミーティングで数値結果を共有することが、次の施策を検討するトリガーにもなります。
ツールを設定するのは難しそう……と思われるかもしれませんが、一度設定してしまえば後は勝手に更新されるため、都度レポートを作るよりもはるかに効率的です。さらにテンプレートの種類が豊富にあるので、実は、最初の設定の時間は半日もかかりません。
Google Apps Scriptを利用したGoogle Spreadsheetへの自動反映
GA4のデータはデフォルトで2ヶ月間、設定を変更すれば14ヶ月間しかデータを保持してくれません。一部の標準レポートではそれ以前のものも閲覧できますが、それ以外は期間をすぎると消去されます。
仮説を導き出す過程で過去とのデータ比較を行うケースは多々あります。
データが残っていないと比較はできない……でも毎月アクセス記録を残すのは大変……。そんな運用課題に対応するために、Google Apps Script(以下GAS)を使用しました。
具体的には、
- GASで「ディメンション」「指標」「データ取得期間」「フィルター」を設定するコードを記述
- GASの機能にある「タイマー」を設定し、指定の時間に記述したコードが動くように設定
- タイマーで設定した時間・頻度でGoogle SpreadsheetにGA4の数値が追記されていく
過去のデータを扱うには「BigQuery」の活用も1つなのですが、私自身がまだ十分に知識があるわけではないこともあり、また機能としても必要十分なGASを利用したデータ保存を実施しています。(BigQueryも、いつかやってみたい。)
2)目的に対してネックとなるページを発見する
Webサイトの健康診断は、サイト全体の数字を定点観測することだけではありません。ひとつ一つのコンテンツの効果・パフォーマンスを高める上で欠かせないのが、個別ページにおけるアクセス数、CV数の計測です。
ただし、Loftwork.comでは、平均1日1ページのペースで記事が公開されています。それらの記事をすべて確認して、都度数値を追っていくのは現実的ではありません。
そこで、私は「タイミングを決める」「常に一定のアクセス数を持っているページどうしを比較」という2つの軸で、計測するページを絞り込んでいます。
(調整したページや数字の結果をどうやってためているのかは、改めて別の機会でご紹介します。)
タイミングを決める
Loftwork.comのセッションが集まる機会はいくつかありますが、週に1回メルマガが配信される木曜日の午後はそのひとつです。
そこで、メルマガ配信前にアクセスが集中しやすそうなページを確認し、ページの表示確認とレイアウトの調整をし、読者のエンゲージメントを高めるための調整を行います。例えば、スマートフォンで読むと長尺すぎて読みづらいページがあった場合、1カラムで組んであるレイアウトを2カラムにして見やすくする、といった細かな調整を行っています。
その結果を踏まえて、記事がどのような見た目や構成であればユーザーのエンゲージメントを高めやすいのか傾向やナレッジをためていき、記事を更新しているメンバーに展開することで、コンテンツ運用の改善に繋げています。
こうした細かなルーティン業務は、忙しい時はついつい後回しになりがちですが、日々の積み重ねによって大きな数値の改善に繋がるものです。そのため、「メルマガ配信前日の水曜日に行う」など、決まったタイミングに作業を設定することで、無理なく定期的にスケジュールに組みこんでいます。
一定数常に数字を持っているページを比較
メールマガジンに掲載される、SNSで発信されるなど、特定の施策で活用されるページ以外にも、流入が発生するページはあります。自然検索や他のページからの遷移等の流入がある「常に一定数のアクセス数を持っているページ」です。
「常に一定の数字を持っているページ」もいくつかパターンがありますが、その中で調整対象に向いているのは、「なにかの数字が著しく低い」ページです。
代表的なのは「滞在時間」「エンゲージメント率(直帰していない率)」です。これらの項目が、セッション数が多い他のページと比較して極端に少ない場合は、調整対象としています。
これらを調査するとき、比較対象として「なにかの数字が高い」ページも確認します。
数値が低いページと高いページの間で比較・分析を行い、調整するべき点の仮説を考えたり、場合によって広告などの他の施策と組み合わせてABテストを行ったりして、改善を進めています。
まとめ
今回はロフトワークのWebサイト担当が主に行っているアクセス解析方法についてご紹介しました。
状況によっては「Microsoft Optimize」等のツールを使う場合もありますが、そちらは改めてご紹介しようと思います。
今後、「WebサイトのUI・UX改善施策の回し方」「運用者側の課題発見と関係者コミュニケーション」等の情報発信もしていきます。
本記事が、忙しいWeb担当者のみなさまにとって、少しでもお役に立てれば幸いです!
アクセス解析のPOINTS
- 定点で見ていくことで、変化や違和感にいち早く気づき、アップデートのきっかけとなる
- 目的に対してネックとなるページを発見するには、がむしゃらに探すのではなく、ページをピックアップするためのきっかけや理由を決める
Webサイト担当者と話しませんか?
Loftwork.comのサイト運営に関わるメンバーに、Webサイト運用に関して一緒にお話しませんか?
「社内に他にWeb担がいなくて、相談相手がいない…」という方、一緒にどうやったら解決できそうかのアイディア出しや相談を受け付けています。
※営業、競業の方、ツールを変わりに設定してほしい等のご相談はお断りする場合があります。ご了承ください。
シリーズ:Webサイト運用の道具箱
普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのWeb担当者が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。
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