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長野 彩乃 2024.01.04

Webサイト運用の道具箱 Vol.2
運用業務をスムーズに進行するための、Web担当者のコミュニケーション術

シリーズ「Webサイト運用の道具箱」について

ロフトワークは、Webクリエイティブのプロフェッショナルとして、さまざまな企業や大学、自治体のWebサイト制作に携わっています。一方で、実は、ロフトワークにも他社と同様に「Web担当者」がいるんです。

普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのマーケティングUnitでWeb担当者として活動している長野彩乃が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。

前回は、日々の運用業務の中で優先順位が下がりがちになってしまう「アクセス解析」を、いかに必要十分なルーティンの中で効果的に実践していくかについて解説しました。

今回は、それらのアクセス解析の結果を元に、「実行決定」まですすめていくためのポイントをご紹介します。

Web担当ときくと、Webサイトの専門知識を習得することに意識が行きがちですが、実際にそれを実行しようとするとき、知識だけではなかなかうまくいきません。
施策や改善をスムーズに進行するためには、社内のコミュニケーションや意思決定のプロセスをいかにコントロールしていくのかという「コミュニケーション術」もまた重要となります。

執筆:長野 彩乃/ロフトワーク マーケティング
編集:岩崎 諒子/Loftwork.com 編集部

まずは、情報を整理・管理することから

適切な進行とそのためのコミュニケーションに欠かせない、いわば下準備と言えるのが、改善や改修の検討項目を整理・管理することです。

ここをきちんと整えておくと、社内で改善や改修の要望を挙げている人たちがその内容を見て「自分の依頼をきちんと認識してくれている」とか「検討した結果、やめたんだ」など、検討項目のステータスや判断基準を認識できるようになります。進行状況の透明化・見える化は、周囲との信頼関係づくりの第一歩です。

ロフトワークの場合、さまざまな分析から見えた改善ポイントや、社内からの改善依頼、バグ、ページの修正や改修は、進行スケジュールや実施・見送りの判断結果とその理由も含めて、すべてNotionで一元管理しています。

こうした修正・改修項目の管理方法は、一般的な業務のタスク管理と似ています。優先度の高いもの(バグなど)から整理し、すぐ対応できるものは、できるだけ即座に対応します。

そうすると、デザインの修正やシステム開発等、Web担当者1人で完結しないものが自然と残っていきますが、それらは1〜1.5ヶ月のサイクルで改修を行います。一定期間で改修サイクルが回るようになると、すぐに対応する修正・改修項目と、1ヶ月程度で対応するものとで安定したサイクルが出来上がります。

逆に、こうしたサイクルを回すことができないと、対応するべき項目がどんどん溜まっていき、次第に優先度をつけることが難しくなっていくという、負のスパイラルに陥ってしまいます。

施策の優先順位を判断するために、社内の状況を把握する

社内から挙がってきた様々な改善ポイントの中から、何を優先的に実行するべきか? 判断基準をより解像度高く持つために、まず「社内の状態」を把握することが重要です。

現在、社内では誰が、何をやりたくて、どんな事柄が優先されているのか? 何がチームにとっての課題やボトルネックになっているのか? こういった社内の状況を把握しておくと、自分自身が持っている改修項目の中で何を優先するべきかを判断するのが楽になるだけでなく、ミスを防いだり、工数が無駄に増えてしまうような認識齟齬を起こさなくて済みます。

現在、私はWeb担当をしていますが、日々、社内で情報収集をしたりコミュニケーションしたり、業務に関する情報を整理・管理するために、1日に少なくとも30min〜1h程度使っています。具体的にどんなことをやっているかというと、

  • 社内コミュニケーションツール(Slack)で自分が入っているチャンネルはすべて目を通す
  • 施策一覧の進捗状況と企画書の内容に目を通す
  • 自分がかかわっていないものも含めて、タスク管理ツールの更新状況を確認する

こうして見ると、この時間があれば何か別の作業を完了できるんじゃないか、という気もしてしまいますね。ただ、この一見して回り道のような時間の積み重ねによって、いざ、チームや組織の意思決定が必要な業務が発生したときに、よりスムーズに改善・改修項目の優先順位を整理できるのです。

なお、実際に施策実行の優先順位をつけるときは、

  • 2分で終わるものは即対応
  • バグか否か
  • 社内への影響度が少ない(変更しても、サイト全体に影響が少ない)
  • 社内のブランディングや事業契約による優先度
  • 確認工数が短いか否か

などを基本的な判断基準におきながら、対応要否を判断しています。

チームの意思決定を促すコミュニケーションの工夫

Web・デジタルの用語や考え方は、業界の外の人に伝わらないものが多くあります。組織によっては、それらの知識にほとんど馴染みがない人も多く、またそのような人が決済者であるケースもあるはずです。
たとえば、「WBS」「SP(スマートフォン)」「ブレイクポイント」「description」といったよく使う言葉も、知らない人には伝わりません。「コーディング」はなんとなく伝わりそうですが、人によってはどこまでの作業を指しているのか理解できていない場合もあり、認識ずれが発生することも。社内のWeb担当者は、相手のリテラシーに依らずスムーズに意思疎通を図る必要があり、そのための工夫が求められます。

私が社内のコミュニケーションでいつも気にかけていることは、たとえばのようなことです。

  • カタカナ語を避ける
    ニュアンス的で人によって認識がずれる、または、自分もぼんやりした理解度になっている可能性がある
  • 目的と選択肢、予測される結果を端的に伝える
    技術的なことを正確に説明するよりも、何がメリットでなにがデメリットかをはっきりさせ、意思決定に必要な項目をわかりやすく提示する
  • 実際の画面や概念図を使って説明する
    Webサイトの機能等、最終的にイメージで見せられるものについて文字だけで伝えずに、画面やキャプチャ画像、概念図などを用いて説明する

さらに、Web・デジタルの専門用語は「なんとなく理解できている気がする」と思っている人が多いのも事実。社内で意思疎通や意思決定をはかるときは、この「なんとなく」をなんとなくのままにせず、チーム内・組織内でイメージをすり合わせ、共通認識を持てるようにはたらきかけていくことが必要です。

幅広い専門知識が求められるWeb担当の業務。それだけに、Web担当者にとって、自分が知っている知識や情報を、知らない人向けに「翻訳」することは、自らのミッションを遂行する上で欠かせない仕事だと言えるのです。

 

POINTS

  • 改善や改修の進捗を全て透明化・見える化し、関係者に共有する
  • 施策実行の優先順位の判断を適切にするために、社内で「コミュニケーション」「情報収集」するのは、Web担当業務の一環
  • 人に情報を伝えたり、意思決定を促すときは「翻訳すること」を意識する

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