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長野 彩乃 2024.04.10

Webサイト運用の道具箱 Vol.5
組織を横断する更新ワークフローとアカウント、どう管理する?

シリーズ「Webサイト運用の道具箱」について

ロフトワークは、Webクリエイティブのプロフェッショナルとして、さまざまな企業や大学、自治体のWebサイト制作に携わっています。一方で、実は、ロフトワークにも他社と同様に「Web担当者」がいるんです。

普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのマーケティングUnitでWeb担当者として活動している長野彩乃が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。

これまでの記事では、Webサイトのユーザーから見えるUIや機能の改善・改修や数値解析の結果を施策にフィードバックするなど「表側」に影響があるお話をしてきましたが、今回は、ユーザーには直接影響のない「裏側」の話になります。

Webサイトを運用していると、常時何かしら「社内の各部署のメンバーとのコミュニケーション」が発生するのは、これまでもご紹介してきた通り。「表側」のアップデートや改善に関する相談もあれば、コンテンツの掲載や差し替え・更新の相談もあり、アカウントの作成についての相談もあるなど、きっかけはさまざまです。

そこで今回は、組織内のさまざまなメンバーを巻き込みながらコンテンツ運用業務を行う際に不可欠な「CMSのアカウントの管理方法」と、社内の各部署から寄せられる「更新のオーダーに対応するためのワークフロー」の2点について、ご紹介します。

執筆:長野 彩乃/ロフトワーク マーケティング
編集:岩崎 諒子/Loftwork.com 編集部

CMSのアカウント作成

前回の記事で、「WordPressでLoftwork.comで更新に関わる人は、所属部署や立場、更新頻度はバラバラですが、社内で10名を超えています」とお伝えしました。

実はこの「10名」という数は、業務の中で日常的にWebサイトの更新に関わっているメンバーの人数です。なんとLoftwork.comでは、70名超もの人々がWordPressのアカウントを持っています。つまり、「日常業務で頻繁に更新するわけではないが、ときどきWebサイトを更新する」アカウントの数がとても多いのです。

Web担当者の仕事には、こうした「ときどきWebサイトを更新する」約60名分のアカウントの管理──例えば、アカウントの作成・削除や、管理権限の変更を行うのなど──も、含まれています。

現在、Loftwork.comで使用している権限の種類は、5種類。公開権限を持つ・持たない。特定の機能にアクセスできる・できないなど、さまざまな段階があります。社内から「WordPressのアカウントを新しく作ってほしい!」「記事を更新したい!」とオーダーを受けても、彼らが扱う場所は、自社のコーポレートサイト。公開した内容が直ちに企業としての公式発信につながることから、誰に、どういった権限を付与するのかという判断は慎重にならざるを得ません。

とはいえ、一律でみんなの権限を低く設定すればいいのかと言うと、そうとも言い切れません。月に30本以上の記事を更新しているWebサイトなので、公開権限をもつメンバーを少なくしすぎると、特定のメンバーの運用負荷だけが高くなってしまいます。だからといって、全員に公開権限を渡すのはリスクが高い。そんなジレンマが、組織のCMSアカウント管理業務には付きものです。

Loftwork.comでは、Webサイトを管理責任者であるマーケティングチームのリーダーによる判断を仰ぐことで、起き得るリスクを考慮しながらも効率的にサイトの更新ができる体制を検討しています。

その際に、誰に対して承認者以上の権限を付与するか。その判断基準は、「Loftwork.comのコンテンツの品質を考慮でき、また担保できる人かどうか」としています。

また、アカウントを保有する社員が60名以上いると、その中のメンバーが異動したり、業務上の役割が変わっていることがありますが、Web担当者の立場では、こうした変化に逐一気付けない場合があります。そのため、アカウントリストは3ヶ月に一度、必ず見直しを行います。今後、更新する予定がないメンバーのアカウントは権限を落としたり、本人の確認をした上で不要であれば削除したりします。

社内問い合わせのワークフロー

コーポレートメディアとして運用しているLoftwork.comでは、ほぼ毎日、社内から何かしらのコンテンツを掲載したいという問い合わせや相談がきます。

プレスリリースを発行したい、プロジェクトの事例記事をつくって欲しい、イベントの告知情報を掲載したい、コラム記事を執筆したい、等々。

そんな数々の問い合わせに関して、私たちが徹底しているのは「担当者は1to1メールで、社内からの掲載や記事制作のオーダーを受け付けない」ということです。

DMでオーダーを受け付けるデメリットには、以下のようなものがあります。

  • 他の人からやり取りが見えないので、認識齟齬や問題が起こったときに関係者が把握できない、対応できない
  • 決済が通っていない、あるいは決済の状況が曖昧なオーダーへの対応が進んだ結果、結果として業務が進まなくなってしまう場合がある
  • 社内で顔の広いメンバー、あるいは依頼の声をかけやすいメンバーにオーダーが集中し、個人の対応負荷が増える

私たちは社内コミュニケーションでSlackを使用していますが、こうした掲載に関するオーダーは、専用のチャンネルで、ワークフローを使って申請してもらう仕組みを導入しています。

私たちが使っているワークフローの項目は以下の通りです。

  • プレスリリース/ニュースを出したい
  • 取材/登壇/寄稿などの依頼を受けた
  • Profile文章を変更したい
  • Loftworkのメールマガジンに掲載する
  • Loftwork.comにイベント告知を転載したい
  • LWの公式SNSで告知して欲しい
  • 事例を作ってほしい

ワークフローからのオーダーがあった場合は、Loftwork.comを管理しているマーケティングのメンバーがやりとりしているチャンネルに、担当者にメンションが付く形で自動通知が送られます。これによって、事前に必要な情報を把握でき、確認のための連絡のやり取りの工数を簡略化できます。

ちなみに、Googleフォームなどのアンケートツールを使わずにSlackのワークフローを使用する理由は、そのワークフロー投稿自体に直接返信ができ、依頼者と担当者がクイックにコミュニケーションできるからです。

他のタスク管理ツールを導入することも検討しましたが、やり取りする場所が不明瞭になってしまったり、二重管理で煩雑になってしまう場合があるため、採用を見送りました。検討の結果、「普段みんなが使っている場所」で、「管理は1か所」という方法に落ち着きました。

ワークフローの見直し・改善について

頑張って管理ルールやワークフローを構築してみたけれど、社内になかなか浸透しなかったり、規定した方法とは別のやり方で物事を進めようとする人たちはいるものです。

組織の中にはいろいろな人がいるので、想定通りにいかないのはある程度やむを得ないかもしれません。ただ、あまりうまくいかない場合は、立ち止まって検証することも必要です。もしかしたら、周知のやり方に問題があるのかもしれないし、そもそものルールやワークフローが煩雑な可能性もあります。

こうした複数人が関わる社内ルールやワークフローの見直しや改善を行う際、都度、個人の感覚や上長の裁量による判断のみで物事を決めてしまうと、なぜその判断になったのかの根拠が、他の人からわかりづらくなりがちです。

そのため、Loftwork.comでは、社内の運用ルールやワークフローを設計する際に「YES」「NO」で明確に判断ができる基準を設定しています。

  • 「アカウント作成したい人は、イベント実施に関わるものを更新する?」→YES
  • 「Profile文章を更新したい?」→No
  • 「comにイベント告知を〜」→YES

判断の答えや聞き方が二択ではない場合、そこに運用上の課題がある可能性があるので、気を付けて確認してみてください。

まとめ

今回は、ユーザーに見えない「裏側」の管理方法についてご紹介しました。

こうした組織内のアカウント管理やワークフローの設計は組織・団体によって異なり、これといった正解があるわけではありません。組織文化や管理する人数に一番合う形は何かを考えた上で判断する必要があります。

とはいえ、自分たちに合わせてゼロから考えるのもなかなか大変。さまざまな事例を参照しながら最適なやり方を構築していく必要があります。私たちのやり方もその例の一つとして、何らかみなさんのヒントになれば幸いです。

POINTS

  • 権限のポイントは、サイトの品質を考慮し、担保できるか
  • 社内からの問い合わせは「普段みんなが使っている場所」で、「管理は1か所」になるように設計に
  • 判断の答えや聞き方が二択ではない場合、そこに課題がある可能性がある

Webサイト担当者と話しませんか?
Loftwork.comのサイト運営に関わるメンバーに、Webサイト運用に関して一緒にお話しませんか?
「社内に他にWeb担がいなくて、相談相手がいない…」という方、一緒にどうやったら解決できそうかのアイディア出しや相談を受け付けています。

※営業、競業の方、ツールを変わりに設定してほしい等のご相談はお断りする場合があります。ご了承ください。

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普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのWeb担当者が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。

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