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宮崎 真衣 2023.12.25

「GATE」- 2023年を振り返り、未来を企む、Year End Partyレポート

12月は溜まった名刺を整理しながら、今年出会った人の顔を思い浮かべてお歳暮や年賀状の準備をする人もいるのかもしれません。ロフトワークでは、お世話になった方に感謝を伝える場として、そして、これから一緒にプロジェクトに取り組みたい方と未来について“企む”場として、「Year End Party(通称YEP – イエップ)」を開催しています。

当日は、350名を超えるゲストにお越しいただき、渋谷オフィスの4つのフロアをまたいで、ロフトワークが考えるクリエイティブの未来に触れる展示をご案内しました。その一夜の様子をお届けします。

執筆:宮崎真衣(ロフトワーク)
撮影:永田崚、松永篤・渡邊健太 ・宮崎真衣(ロフトワーク)

そろそろパーティの時間ですので、GATEをお通りください!

2023年のテーマは「GATE」。ロフトワークは、日々さまざまな人と出会いコミュニティやプロジェクトを創り出していますが、YEPで起きたことが、これから紡がれる未来の物語の“はじまり”になりますように……という想いを「GATE」に込めました。

キービジュアル制作:大澤利己 Riki Osawa(アーティスト / デザイナー)

まずはFabCafe Tokyoで乾杯! FabCafeでは、今年リニューアルオープンしたFabCafe Taipeiにちなんで、1夜限りのスペシャルドリンクとフードを提供しました。ドリンクのテーマは「もし台湾の茶人がバーテンダーとなったら?」。台湾茶は高品質で長い歴史を持っていますが、その中でも特徴的な四大銘茶を使用したオリジナルドリンクや、台湾名産の果物を使った台湾ビールが並びました。フードは、FabCafeのコミュニティ「In the Loop」のパートナー、SHOUCHIKUENとLOVEGによる、ビーガン麻婆豆腐やパイナップルケーキなどが振る舞われました。

“In the Loop” は、循環型デザインや持続可能性を追求したアイデア、製品、サービスを創っていくためのポップアップコミュニティ。

湯気が立ちこめる蒸し器をフル稼働。中華マンはあっという間に完売。

赤坂兄弟による、台湾茶を使ったスペシャルカクテル。FabCafeのバリスタ赤坂流偉(ルイ)と、渋谷パルコにあるComMunEバーテンダーの赤坂良偉(ライ)による、実の双子兄弟の競作。

東方の香辛料と台湾茶を合わせたオリジナリジンジャエール。 お茶の優しい香りと生姜のピリッとした絡みが個性を引き出しあってクセになる〜

パーティで初めて会う人同士でも話がしやすいように、YEPのテーマ「GATE」にちなんでパスポートを作成。ゲスト自身が「行きたい未来」と、その未来に「誰と行きたいのか」を書いてもらいました。「土の香りがする都市生活を送っている未来」「バーチャルヒューマンが社会を面白くしている未来」など…… 皆さんだったら、どんな未来を誰と行きたいですか?

FabCafeでは、これまでコラボレーションしたクリエイターの展示を披露しました。環境データを公開する世界有数の市民科学プロジェクトを支援する「Safecast」による展示や、CCBTで活躍中のTMPR(てんぷら)による、パーティでの振る舞いをAIが提案してくれる「人工知能版パーティ完全攻略シート」などなど、触って・話して・見て、五感を刺激するような展示が行われました。

Safecastのメンバーの一人Azby Brown氏。プロジェクトで制作した大気質測定器や放射線センサーを搭載したガイガーカウンターなどのIoT機器を紹介。

「パーティ完全攻略シート」は、「パーティで誰と何を話せばいいかわからない!」そんな人に、人工知能が全力サポートしてくれるというツール。

2023年に開催したAWRDで生まれた受賞プロジェクトを一挙に展示。毎年、AWRDのプラットフォームで、沢山のクリエイティブなプロジェクトに出会えます。

おにぎりからプロジェクト大解剖まで。2023年の活動が大集結

パーティでは、ロフトワークの事業部やユニットがブースを出店。少し先の未来をのぞく展示や、交流の場となるスナックをオープンしたり、微生物を探究してみたりと、同時多発的にフロアが賑やかなムードに!

未来のおむすび(VUユニット・ゆえんユニット)

未来のサービス構築/事業創出を支援する「VUユニット」と、地域の事業者を支援する「ゆえんユニット」がタッグを組み、共に取り上げたテーマは「おむすび」。日本の伝統的な日常食である「おむすび」の歴史を紐解きながら、今後起こりうる未来のおむすびのあり方について、AIの力を借りながら考えるという試みを行いました。

キッチンスペースでは、フードクリエイターのANDONさんが特別なおむすびを握ります。ただ握るだけじゃない! 未来の物語を添えて、物語を起点に想像しながら「いただきます」。

ANDONさん(左)がふわっと握る、おむすびのうまいこと! 具材は、鮭、海藻、燻製ビーフの風味がするこんにゃくジャーキーなど。

Chat GPTで未来のおむすびを想像(創造)してみよう。

未来のおにぎりを考えるにあたり、おにぎりの歴史を遡り、おにぎりが社会でどのような変遷を経てきたかをまとめました。

スナックゆえん(ゆえんユニット)

ゆえんはおにぎりの他に、地域の今とこれからを共創する交流の場「スナックゆえん」をオープン! 既に地域で挑戦をしている方々はもちろん、これから地域で仕事をしたい、生み出したいと思っている企業、クリエイター、そんな活動に興味を持って一緒に挑戦したいと思っている方々が集まりトークイベントを開催しました。

トークの後は、味噌汁やポップコーン、焼き鳥やお酒が振る舞われ、スナックムードに突入。

変革のしかけ

2023年にロフトワークが伴走したプロジェクトの中から、6つのプロジェクトの分解図を描きました。さらに、それらのプロジェクトを駆動した10の“変革のしかけ”をご紹介しました。

展示にご協力いただいた企業や自治体

  • 富山県|スタートアップエコシステム形成プロジェクト T-Startup
  • パーソルキャリア株式会社|デザイナーのキャリアオーナーシップ探索プロジェクト
  • 日産自動車株式会社|DRIVE MYSELF PROJECT
  • 株式会社ピコトン|子どもの子どもまでプロジェクト
  • デジタルハリウッド大学|コンセプトブック・Webサイトリニューアル
  • 南海電気鉄道株式会社|まち活キャストプログラム設計

Play with Uncontrollable Nature(SPCS|スピーシーズ )

自然のアンコントローラビリティ(操作できなさ)を肯定的に受け入れるデザインを探究するコミュニティ、SPCS(スピーシーズ)と、市民科学のラボBioClubが共同ブースを出店。微生物や排泄物、身の回りにある不安定なものをクリエイティブに楽しむ作品や活動を紹介しました。「どうぞ〜」とすすめられたのは、なんと虫の糞で煎じた「虫秘茶」(ちゅうひちゃ)!  桜の葉を食べる虫の糞のお茶を飲んでみると、臭みや苦味は全くなく、桜の花の香りそのものでした。

道玄坂の小さな森(飛騨の森でクマは踊る|ヒダクマ)

ヒダクマのメンバーは、はるばる飛騨の森の幸を振る舞ってくれました。ご当地のつまみを肴に広葉樹でつけこんだお酒で乾杯! 広葉樹の小枝を軸にした綿菓子は意外にもお酒に合うんです! 天井のガーランドは、木の端材や植物などが吊るされていて縁日ムードが漂います。

他にも、素材メーカーとクリエイターを支援するMTRL(マテリアル)や、空間、建築、まちづくり、コミュニティなど人が関わるあらゆる領域を手がけるLAYOUT(レイアウト)では、様々なパートナーと取り組んでいるプロジェクトを展示しました。

京都ブランチでも乾杯! テーマは、つなぎ「会」わせる

京都ブランチでもクライアントやクリエイター、さらにはご近所さんも招待して忘年会を開催しました。テーマは「つなぎ“会”わせる」。ロフトワークやFabCafe Kyotoのメンバーがハブになり人々を繋ぐことで、新たな“企て”が巻き起こる、そんな想いを込めました。

当日は、2023年に京都ブランチで新しくチャレンジした様々な活動を展示しました。プロジェクトスタジオ「なはれ」によるオフグリッドWebサイトや屋台が出現したり、ターンテーブルの上でコーヒーを抽出してみたり、FabCafe Kyotoが仕掛けるプロジェクト・イン・レジデンスのプログラム「COUNTER POINT」を紹介したり、京都ブランチならではの実験的な取り組みが盛りだくさん!

フードは、FabCafe Kyotoのご近所にオープンした飲めるパン屋「this is ormary store」さんと、京都市内で姉妹でケータリングを提供する「まつは」さんが担当。フードとペアリングした日本酒やワイン片手に、1Fと2Fのフロアを横断しながら、未来の企てがあちこちで巻き起こっていました。

プロデューサーの小島和人(ハモ)によるDJパフォーマンス。ターンテーブルでコーヒーを抽出するとおいしい!?

「なはれ」のプロジェクトによるモバイル屋台。カモメ・ラボの今村謙人さん製作の屋台の前で、「なはれ」メンバーの一人であるシニアディレクターの国広信哉が紹介。

体も心もにっこりする“おばんざい”を堪能。

キャベツを抱えながら、NFeTish (エヌフェティッシュ)のテーマである「デジタル化されたフェティッシュは心を揺らすことができるのか?」を熱く語る、クリエイティブディレクター加藤あん。

いい感じの畳の空間ですっかりくつろぐゲストのみなさん。ここは居酒屋ではなく、FabCafe Kyotoの2Fです。

パーティのおわりは、はじまりの合図

2023年もロフトワークは、本当にたくさんのクリエイター、クライアントの皆さんとプロジェクトをご一緒しました。今日この日の出会いを、3年後、5年後、10年後に振り返ったとき、「あのパーティが、このプロジェクトの出発点だったね!」と、一緒に笑いたい。一夜限りのパーティは終わりましたが、私たちの企みは、まだまだ続いていきます。

2023年にロフトワークで始動したFUTURE TEAM。メンバーのMAOがヒップホップライブをお届け。「音楽は宇宙だ! by MAO」

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The KYOTO Shinbun’s Reportage
京都新聞論説委員が見る京都ルポ「課題の価値」