パナソニック「Aug Lab」との共同研究を発表!
自然への「共感の拡張」をテーマにした2作品
ロボディクス技術で、環境に対する共感を促進、自然との共生を促す試み
ロフトワークが運営するMTRL(マテリアル)は、パナソニック株式会社の組織「Aug Lab」の共創パートナーとして、自然への“共感の拡張”をテーマにしたロボット「UMOZ」と「MOSS Interface」を開発しました。
UMOZは、コケをまとった6本足歩行のロボットで、霧吹きで水を与えると元気になって歩き出したり、表面のコケの好みに合わせて、日光に近づいたり離れたりします。コケの知覚が振る舞いに現れることにより「自然環境への共感」を促す作品です。
MOSS Interfaceは、コケを家電のインターフェースとしたもの。コケに水を与えると照明が明るくなり、乾燥すると照明が暗くなるなど、家電のインターフェースを「制御」から「共生」の対象へと発想を転換した作品です。
いずれの作品も、ドイツの哲学者ユクスキュルが提示した、「環世界(あらゆる生物は固有の見方で世界を捉えており、それぞれ異なった世界を経験しているというとする考え方)をもとに開発されました。 作品は、9月下旬まで東京・有明のAkeruEにて展示中です。ぜひ実際にご覧ください。
※両作品とも現時点で販売予定はありません。
MTRL × Panasonic Aug Lab「環世界インタフェースプロジェクト」展示が東京有明 AkeruEで開催
作品詳細
コケの振る舞いから、環世界を想像するきっかけをつくる 「UMOZ」
UMOZはコケの環世界にインスピレーションを得て制作した移動式ロボットです。コケは日光・水・空気を葉や茎などから吸収し、それぞれの種類が適した環境に根差します。コケには「仮根」という器官があります。仮根は一般的な植物の根とは異なり、養分や水分を吸収する機能を持たず、ただ定着するための脚のような役割を果たします。そのため、コケは他の多くの植物のように土が必要ではなく、石の上や木の表面などに定着することができます。
一方で、人間が暮らす現代社会は光や湿度が自在に制御され、環境の状態は常に移り変わっていきます。 そのようなある意味「制御された自然」環境でコケが合理的に生きるとしたら、仮根は「根差す」のではなく「移動する」ための器官になるのではないでしょうか。
コケの移動能力を拡張することは、コケの知覚が振る舞いとして表出されることにつながります。コケの環世界について考えるきっかけをつくることで、人のコケや自然環境に対するエンパシー(共感)を促進させます。
インタフェースを“制御”から“共生”の対象へ「MOSS Interface」
私たちの身の回りにはスイッチを始めとしたさまざまなインタフェースがあります。それらが搭載された製品には、ユーザーの操作が確実に反映される「正確性」が求められています。その正確性が求められるインタフェースを「制御」から「共生」の対象へと発想を転換したのが本作品です。
コケは葉や茎から湿気などを取り込むことで成長しますが、種類ごとに適切な水分量や乾燥速度にはそれぞれ違いがあります。MOSS Interfaceはこの性質と人の暮らしに重要な照明を連動させることで空間内での体験に変化をもたらします。
コケは時間帯や季節ごとに適切な湿度が常に移り変わっていきます。それゆえ、MOSS Interfaceのユーザーは照明から望ましい光量を得るためには、コケの湿度を「適当に」コントロールする工夫が求められます。今日の気候、自分の気分、コケとのバランスを考慮し、望ましい環境を実現するために、「今日はどれくらい水をあげればよいか」を考えながらインタフェースと向き合う必要があります。このような関係性をもったインタフェースによって、コケや我々を取り巻く環境への想像力や共生を想像するきっかけをつくることを目指しました。
「環世界インタフェース」というアプローチについて
本プロジェクトは、「環世界インタフェース」というテーマで制作されました。
環世界(Umwelt:ウンベルト)とは、ドイツの生物学者・哲学者ユクスキュルが提唱したもので、ユクスキュルは著書で、「すべての生物は自分自身が持つ知覚によってのみ世界を理解しているので、すべての生物にとって世界は客観的な環境ではなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である」と述べています。
プロジェクトでは、環世界の概念を、人と環境をつなぐ「インタフェース」に導入することで、人と環境やテクノロジーとの関係性に感性的な拡張を行えるのでないかと仮説を設定。なかでも、見た目は似ているにも関わらず、多様で多彩な個性を持つ「コケ」に着目し、人の他生物に対する“共感の拡張”をテーマに「UMOZ」と「MOSS Interface」という2つの作品を制作しました。
プロジェクトメンバー柳原よりコメント
プロジェクト最初期の環世界インタフェースの提案は人の環世界に寄ったものでした。Aug Labのみなさんやロフトワークのメンバーともいろんなディスカッションを重ねていく中で対象が人間を取り巻く自然物へと変わっていきました。
元々プライベートで制作を一緒に行ってきたGADARAのメンバーとは作品の世界観や方向性を探るべく、鎌倉や飛騨に行ってコケが自生している様子を観察したりしてきました。
まだまだプロトタイプの段階なので、引き続きプロジェクトメンバーとディスカッションしブラッシュアップしていけたらと思います。
我々が作品の制作を通じてコケの面白さを知ったのと同じように、本作品に触れた人の生物に対してのまなざしが変化したり、自然そのものへの関心につなればと思います。
制作チーム
共同研究推進
パナソニック株式会社ロボティクス推進室が主宰する「Aug Lab」とは、ロボティクス技術が自動化(Automation)以外にもたらす新しい価値として、自己拡張(Augmentation)をテーマに研究開発を行うためのオープンラボ型の組織です。
https://tech.panasonic.com/jp/auglab/
共同研究パートナー
MTRLは素材メーカーとクリエイターの共創を支援しイノベーションを生み出す、グローバルプラットフォームです。https://mtrl.com/
デザインサポート
GADARAは、「自然のゆらぎ」をデザインの軸として、フィジカルなインタラクティブデバイスの開発、センシングやAIを用いた音楽表現などを実験的に行い、人とテクノロジーの関係性を探求するインタラクションデザインユニットです。https://gadara.io/
ロフトワークについて
ロフトワークは「すべての人のうちにある創造性を信じる」を合言葉に、クリエイターや企業、地域やアカデミアの人々との共創を通じて、未来の価値を作り出すクリエイティブ・カンパニーです。ものづくりを起点に、その土地ならではの資源やテクノロジーを更新する「FabCafe(ファブカフェ)」、素材と技術開発領域でのイノベーションを目指す「MTRL(マテリアル)」、クリエイターと企業の共創プラットフォーム「AWRD(アワード)」などを運営。目先の利益だけにとらわれず、長い視点で人と企業と社会に向きあい、社会的価値を生み出し続けるビジネスエコシステムを構築します。
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