日産自動車株式会社が主催し、ロフトワークが企画運営を行う公募プロジェクト「身近な発明チャレンジ」の受賞作品・プロジェクト13点を発表しました。身近なモノやコトの組み合わせで「その手があったか!」を提案する作品が受賞しました。

「身近な発明チャレンジは」まだ世の中にない新しい価値を自分の意志を起点に生み出していくことにチャレンジし、未来をより豊かでエキサイティングにしていく次世代×NISSANの共創型プロジェクト「DRIVE MYSELF PROJECT」のうちの一つです。よりよい未来の創造に向かう挑戦の一つとして、みんなのアイデアをシェアすることで人々の生活を豊かにするオープンイノベーションの公募プロジェクトです。

本公募では、「寄せ集めて自分で繕う」を意味する「Bricolage(ブリコラージュ)」のテーマで、2023年7月19日(水)〜10月2日(月)までアイデアを募集しました。約2カ月半の募集期間で、プロダクトや仕組みのデザインなど多様な表現によって世界21ヶ国から200の作品やプロジェクトが集まりました。

審査は、建築家ユニットのKLEIN DYTHAM ARCHITECTURE、パーソンズ美術大学 プログラム・ディレクターのKyle Li氏、「IDEAS FOR GOOD」編集長の戸沼君香氏、日産総合研究所の上田哲郎氏ら国内外のキュレーターの4組により行われ、総合賞5点、次世代賞4点の受賞作品・プロジェクトが決定しました。また、一般投票により、みんなが選んだ賞4点が選出されました。

審査の視点

  • Inspirational / 見る人をハッとさせる視点
  • Forward – looking / 未来志向
  • Mix&Match / 異なる要素の組み合わせ
  • Thoughtful / 受け取り手を想っているか
  • Resource- efficient / 今あるリソースで

*Bricolage(ブリコラージュ):1960年代、フランスの文化人類学者であるクロード・レヴィ=ストロースが著書『野生の思考』のなかで提唱した概念である。「寄せ集めて自分でつくる」「ものを自分で修繕する」「器用仕事」とも訳される。

応募総数200プロジェクト! 21の参加国から選ばれた受賞プロジェクトを発表

審査員

KLEIN DYTHAM ARCHITECTURE
建築家ユニット・デザインオフィス/PechaKucha Night創始者
パーソンズ美術大学 MFAデザイン&テクノロジープログラム プログラム・ディレクター
戸沼君香
「IDEAS FOR GOOD」編集長
上田 哲郎
日産総合研究所 モビリティ&AI研究所エキスパートリーダー/博士(システムズ・マネジメント)

総合賞

タイトル:The Rebirth of Furniture
作家名:Luling Jing

審査員コメント

KLEIN DYTHAM ARCHITECTURE
建築家ユニット・デザインオフィス/PechaKucha Night創始者

The Rebirth of Furnitureプロジェクトは、ブリコラージュのアイデアを非常に直接的で力強い方法で具現化している。ベビーベッドは通常、短期間で使われ、次の赤ちゃんのために受け継がれなければ、使われなくなる。ベビーベッドには特徴的なパーツがあり、椅子やベンチ、ローテーブル、コート掛け、タオル掛けなどに無限に作り変えることができる。ユーモアを交えながら、ベビーベッドの短い寿命を延ばす楽しい方法だ! 私たちは、The Rebirth of Furnitureプロジェクトが、リミックスされた家具が持つあらゆる興味深い可能性について考えるきっかけになることを願っています!(日本語訳)

タイトル:ボトルキャップ循環ガチャ
作家名:ファブラボ広島安芸高田・渡辺 洋一郎

審査員コメント

Kyle Li
パーソンズ美術大学 MFAデザイン&テクノロジープログラム プログラム・ディレクター

教育体験の成功とは、参加した人たちが自分自身のやり方で、そのテーマをもっと知りたいと思うようになることです。ガチャが世界のポップ・カルチャーで注目を集めるなか、このプロジェクトは若い世代にリサイクルを遊び心あふれる方法で伝えているという点で、とても意義深いと感じます。カプセルの中身をデザインするという発想も面白く、学習体験を次のレベルへと押し上げています。このプロジェクトは、オープンソースとして公開されていて、誰でも、遊び心にあふれた学びと、自分なりのリサイクルの形を作り上げることができます。古いものと新しいもの、遊び心と学びの融合(remix)は、究極のブリコラージュだと私は思います。(日本語訳)

タイトル:ライト一体型ドアノブ
作家名:OLIBRAINnh

審査員コメント

戸沼君香
「IDEAS FOR GOOD」編集長

どこかで地震が起こるたびに「うちでも何か対策しておかなきゃ」と思いながらも、なかなか準備が進まない人は多いはず。一から防災グッズをすべて揃えるのは難しくても、シンプルで、ドアノブがある部屋ならどこにでも設置できるものがあったとしたら?小さな工夫で誰かを助けられるかもしれない、という発想にインスピレーションを受けました。非常時以外でもドアから取り外して懐中電灯として使えることで、日常的な汎用性も高いのでは。本アワードのテーマである「ブリコラージュ」は、何も複数の素材を寄せ集めなくても、「ライト×ドアノブ」というちょっとした掛け合わせで実現できるものなのだと思わされたプロジェクトでした。

タイトル:使い捨てない天然素材の歯ブラシ 日本製
作家名:ナエス - Nhes. 自然にかえる歯ブラシ

審査員コメント

上田 哲郎
日産総合研究所 モビリティ&AI研究所エキスパートリーダー/博士(システムズ・マネジメント)

今回のテーマはブリコラージュでした。ハイテクやエンジニアリングとは異なるアプローチでサステナブルな未来に個人レベルでチャレンジできる、それがブリコラージュの意義です。そういう意味で歯ブラシのような一見使い捨てしてしまいそうな小さなものを使い続けるためのサービスが存在しているというのは秀逸なアイデアだと思いました。結局のところ小さな知恵の積み重ねによる全員参加の活動こそが一番サステナブルに効くのだと思います。車のような大きくて重たいものでも是非見習っていきたいと思います。

次世代賞

タイトル:エコ手摺
作家名:Junji Kezuka

審査員コメント

KLEIN DYTHAM ARCHITECTURE
建築家ユニット・デザインオフィス/PechaKucha Night創始者

都会のタワーマンションに住んでいると、バルコニーや手摺はどこにでもある。また、パンデミックにより、人間のウェルビーングに対する植物の重要性がますます強調されるようになり、緑あふれるバルコニーが増えている。エコ手摺は、必要な安全機能と、さらに自由なマイクロ気候制御を組み合わせた賢いアイデアだ。日差しは弱いものの十分な日照がある東京の冬、手摺は暖かくなりそばにある植物が恩恵を受ける一方、暑い夏にはパイプから涼しげなミストが放出される。理想的な状況では、エコ手摺は、バルコニーだけでなく室内側の冷暖房の負担を軽減するミクロな気候緩衝ゾーンを作り出すことができる。素敵なアイディアだと思いませんか? (日本語訳)

タイトル:Oneness
作家名:Zeynep

審査員コメント

Kyle Li
パーソンズ美術大学 MFAデザイン&テクノロジープログラム プログラム・ディレクター

自然と共存している未来について思い描くことが多いですが、そんなときにぴったりなジャケットです。一見突飛にみえるかもしれませんが、人類が直面している厳しい環境状況を考えると、近い将来、我々が行う努力の真摯なシナリオを示しているプロジェクトだと思います。私たちがそのような未来に向かわざるを得ないのか、それとも私たちの意志なのかは別として、デザイナーが考え抜かれたデザイン・プロセスに自然を取り入れ始めていることを高く評価したいです。未来の共存に向け、ブリコラージュの臨機応変さを実によく物語っているといえるでしょう。 (日本語訳)

タイトル:Strawless Turtle Pak
作家名:Malika Chopra

審査員コメント

戸沼君香
「IDEAS FOR GOOD」編集長

社会をもっとよくする世界のアイデアを日々発信するメディアの編集者として、「草ストロー」や「竹ストロー」などプラスチックに変わるさまざまな代替素材ストローを取り上げてきたのですが、この「The Strawless Turtle Pak」は、そもそも紙パック容器の形を工夫すればストローはいらないのでは、と根本的なマインドを問い直してくれるプロジェクトでした。日本では誰もが触れたことのある「折り紙」をうまく使い、できるだけ少ないリソースでアイテムを作っていることも評価できた点です。外出先で飲む想定ということで、一度使った後すぐに捨てなくていい設計ができたら素晴らしいですね。

タイトル:誰にも取らせない。私だけの便利な傘。
作家名:rtzmzm

審査員コメント

上田哲郎
日産総合研究所 モビリティ&AI研究所エキスパートリーダー/博士(システムズ・マネジメント)

楽しくなければサステナブルではないというのは本当だと思います。傘と靴ベラという小さなものをよく観察して組み合わせるというのはブリコラージュ的に優れたアイデアだと思います。しかしこのアイデアの本質はそこではなくて人が使った靴ベラに触りたくないという心理が傘の盗難を防ぐという点です。思わず自分が人の靴ベラを握ったらどうだろうかと想像するとクスっと笑ってしまいたくなります。二重三重に考えられたアイデアに敬服しました。

タイトル:solar crew:空き家が地域をつなぐ防災拠点に
作家名:solar crew

DRIVE MYSELF PROJECT事務局コメント

「solar crew」は、コンセプトが美しく、ブリコラージュをより大きなスケールで実践しているプロジェクトでした。ブリコラージュの手法が建築やリノベーションにも適用されていて、さらにコミュニティに根ざしているところが素晴らしいと思いました。また、地域のコミュニティセンターとして機能すると同時に、プロセスの中で若者や子どもたちが防災について学ぶことができるという教育的側面もあります。日本の空き家は全国レベルで増え続けていますが、これはひとつの活用戦略になるかもしれません。空き家を改修してソーラーパネルなどの持続可能エネルギー源を利用し、災害が起こる前の教育と災害後の支援を担いながら地域住民が集う拠点を形成するというしくみですが、平時と災害時の空間の使い分けもある意味ブリコラージュの一種として捉えることもできますね。日本において空き家のリノベーションは浸透しつつありますが、このプロジェクトは、日本の課題を複数まとめて解決する非常に興味深い試みだと思います。ブリコラージュはそんな課題のソリューションを束ねるためのひとつのアプローチ手法なのではないでしょうか。

みんなで選んだ賞

一般投票により、みんなが選んだ賞4点が選出されました。

タイトル:Al Laymoun: Shortened Character-set for Flick-input
作家名:Maroa-Isabell Al-Sahlan

タイトル:Anemo
作家名:Nirmal Thomas

タイトル:フスマスペース
作家名:loha

タイトル:SOFT LOOP SHELF
作家名:SOGU

記念品について

選ばれた作品・プロジェクトには、事務局より記念品を授与いたしました。次世代クリエイターの古井翔真さんと共に、ものづくりにおける身近なものや廃材などを寄せ集め、「Bricolage(ブリコラージュ)」を体現したトロフィーを制作しました。

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