富士通デザイン株式会社 PROJECT

張り詰めた空気も一瞬でなごむ
ワークショップ用コミュニケーションツール開発

アイデア発想の場で使えるオリジナルのツールが欲しい。でも、何を作る?

パソコン、スマートフォンなどのパーソナル機器から、ATMなどの社会・公共システムまで、あらゆる富士通製品のデザインを手がける富士通デザイン株式会社は、ICTを利用する人にフォーカスし、人間主体の製品やサービスの開発を目指しています。そんな同社は、以前から課題を感じていたお客様との共創プロセスにおけるフラットな関係作りを改善し、より創造的なアイデアを生み出すため、ワークショップ用プロダクトのテスト開発に取り組みました。

開発した「しゃべるカード」

ロフトワークと作り上げたのは、アイスブレイクに役立つ「しゃべるカード」です。プロトタイプとはいえ、その完成度はすぐにでも商品化できそうなほど。作るものが決まっていない状態から、短期間にどうやってアイデアをカタチにしていったのか。ロフトワークのイノベーションメーカー棚橋弘季とディレクター浦上幸江が、富士通デザイン株式会社の横田洋輔氏、コンサルタントとして参画した株式会社富士通総研の佐々木哲也氏と、そのプロセスをたどります。

棚橋(ロフトワーク) 前回、アプリ画面などのペーパープロトタイプ制作に使用する「UIステンシル」を作らせていただきましたが、その第二弾とも言えるプロダクトの開発経緯をお聞かせください。

横田(富士通デザイン) 富士通では共創プロセスによるイノベーション活動に力を入れており、お客様と一緒にアイデアやサービスを考える機会が増えてきています。そこで、プロトタイピングのフェーズで使うステンシルとは別に、もう少し前段階のアイデア発想に使えるツールが作れないかと考えました。

富士通デザイン 横田 洋輔氏

佐々木(富士通総研) たとえば、ブレインストーミングを楽しみながら体験できるカードゲームのようなアイテムはいいなと思っていましたが、具体的に何を作るかは決まっていませんでした。

アイデアを速やかにカタチに。検証を繰り返しながら1ヵ月でプロトタイプが完成

横田 日々ワークショップを実施されている富士通総研の佐々木さんに入ってもらい、お客様と一緒にものを考える場で一番大事なことは何かを議論するうち、発想よりさらに前段階の、発見やチームビルディングのフェーズが大事だよねという話になりました。

株式会社富士通総研 佐々木 哲也氏

佐々木 実際、複数部門の方々を集めてワークショップをやると雰囲気が堅く、毎回アイスブレイクをどうやるかが課題になります。上司がいて、中間管理職がいて、部下がいる。気の利いたことを言おうなどと、ストレスの中でアイデア出しするのはきついものです。そんな言いたいことも言えない空気を一瞬で変え、お互いをわかり合えるツールが作れたらと思ったのです。そんな話をしたら、ロフトワークのお二人がキョトンとされたので、逆にこれはいける!と直感したんですよ。すぐに形にできるようなら、ありきたりのものしかできませんからね。

棚橋 当社のワークショップに集まるお客様は、はじめからフラットな関係にある人たちが多いせいか、アイスブレイクが必要ないことも少なくありません。ですから、一瞬で空気を変える何かを作りたいというお話をいただいたとき、正直なところすぐにはイメージできなかったのです。

横田 この人はこういうことを考えている人なんだ!とわかると、それ以降のプロセスがスムーズになります。議論の中で“居酒屋感”というキーワードが出たように、仕事上与えられている役割を脱ぎ捨て、リラックスしてなんでも言えるようにすることで、一緒にものを考える環境を整える。そんなツールを目指しました。

浦上(ロフトワーク) 参考までに他のツールも使ってみましたが、楽しむというより考え込んでしまうことが多く、仲良くなって一緒に発想するという意味では、我々が目指すものとは違いました。

棚橋 作るものが決まってからは1ヵ月でしたね。

横田 完成品を作るというよりはプロトタイプを作り、一回使ってみて、本当に良ければブラッシュアップしていこうと考えていました。変に欲張らず、まずは作ってみよう!試してみよう!ぐらいの意識が、短期間でうまくいった要因かもしれません。

クリエイティブディレクター 浦上 幸江

浦上 限られた時間の中でしたが、毎回ブレストして出てきたアイデアを元にプロトタイプを作り、実際に遊んでみて調整する。というプロセスを繰り返しながら内容を詰めていきました。カードに書かれた指示を見て考え込んでしまったり、恥ずかしくて言えなかったりしそうなものを除外し、場があたたまるようなものを追加するなど、飲み会の席で許されるレベル、少々赤面しながらでも言えるレベルを判断基準に調整しました。イラスト表現にも、ゆるさとか、クスッと笑える感じを盛り込んでいます。

内容・イラスト共に飲み会の席で許されるレベルのゆるさを目指して制作

いいな!と思ったら、まずは作ってみること。それが短期間でプロダクトを開発するコツ

浦上 完成品の感想はいかがですか?

横田 当初の予定にはなかった箱まで作ってもらい、感動しました。プロトタイプから一気にプロダクトになった感じです。説明書のクオリティも高く、売っていてもおかしくない出来映えです。完成品を見た社員の第一声が、「飲み会に使えますね」でした。きっかけづくりが大事な場面で役に立ちそうです。

棚橋 ロフトワークとのプロジェクトは期待どおりのものでしたか。

横田 一緒に作っていくプロセスが非常に楽しかったです。一方的に提案するだけの制作会社が多い中、一緒に考える場づくりを大事にしてくれましたし、前回同様、トライアルしながら作っていくことができました。「あ、いいな」と思ったら、まずは作ってみることが重要ですね。カタチにしてみると、意外な気付きを得られます。企画書を書いて提出して、といった手順を踏んでいたら、いろんな人がいろんなことを言い出して、時間はかかるし、もっと複雑なゲームになっていたかもしれません。

佐々木 通常なら、「もう少し詰めてからにしましょうよ」と言われるところを、「じゃぁやってみましょう!」と言ってくれる。その姿勢というか、テンポが心地良かったです。

イノベーションメーカー 棚橋 弘季

棚橋 ありがとうございます。横田さんも佐々木さんもワークショップに慣れていらっしゃるので、発想の場で自分のあり方をよくご存じです。普段は場づくりを意識するのですが、このメンバーの場合はあまりその必要がなく、私自身は、浦上と一緒に三人が楽しそうに考えてくれて、次々に出てくるアイデアを整理するだけで十分でした。第三弾もありそうですか?

横田 これ自体を大きく変える予定はないですが、まずはいろんな人に使ってもらって感想を集め、現場のヒントを得ながらツールを増やしていきたいですね。富士通として「しゃべるカード」をどう扱うかは未定ですが、クリエイティブコモンズに登録して自由に使ってもらえるようにするのも一案です。使ってもらって初めて意味があると考えています。

浦上 将来的に「しゃべるカード」が全国区になるかもしれませんね。楽しみです。

※内容やお客様情報、担当ディレクター情報は本記事公開時点のものです。現在は異なる可能性があります。

プロジェクトメンバー

棚橋 弘季

株式会社ロフトワーク
執行役員 兼 イノベーションメーカー

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