NTTコムウェア株式会社 PROJECT

共創空間の価値を強力に伝える
COMWARE TO SPACEプレイブック

NTTコムウェアさん(以下敬称略、NTTコムウェア)が本気でアジャイル開発に取り組む場として誕生した「COMWARE TO SPACE」。 他社がすでに作っている “よくある”場」ではなく「まだこの世に存在しないオリジナルの場」を創造し、空間を通してアジャイル開発を社内に浸透させることにチャレンジしている。

ロフトワークは、空間のプロデュースの一部として「プレイブック」を制作した。プレイブックとは、実際に社員の方々に継続的に使い込んでもらうためのガイドだ。空間に込めた思いを伝えるとともに、この空間をどう使えば効果的に価値を出すことができるのかを紹介している。

このプレイブックのポイントを、プロジェクトを担当した松本が紹介する。なお、空間自体の紹介は以下で公開中なので、未読の方は一読いただけると嬉しい。

松本 亮平

Author松本 亮平(Layout Unit シニアディレクター)

関西学院大学卒。学生時代には途上国開発や国際問題を学びながら、アメリカのNGOの海外住居建設プログラムに参加し東南アジアを歴訪。卒業後は大手オフィス家具メーカーに就職し、オフィスワーカーの働く環境改善や提案に奮闘。クリエイティブが生まれる環境を自ら創造していきたいと、2014年ロフトワークに入社。Webディレクションで培ったプロジェクトマネージメントの力を基盤に、共創空間、クリエイティブ空間のプロデュースに従事。国内外問わず、あだ名は「へいへい」。

共創空間にプレイブックが必要な理由

共創空間をつくる上で大切なことのひとつに、空間に込めた想いをいかに持続させられるか、ということがある。

共創空間の目的は、空間を作ったらそこで達成ではない。しかし、空間ができたら、一区切りとして、プロジェクトメンバーが解散されることもしばしば。初期の熱量を持ち続けながら、場を中心に生まれるコミュニティの発展まで見届けられるメンバーを巻き込むことは簡単ではない。理想は、コミュニティマネージャーが空間構築からプロジェクトに関わり、その後も常駐してもらい、活動を見守りながら場の価値や使い方を直接伝えてもらうことだが、なかなかそうはいかない。

ロフトワークはそんな悩みを抱える企業に、それに代わる支援方法をいくつか提案している。

その一つに、プレイブック(playbook)をつくること、がある。

プレイブックは、ロフトワークの共創空間系のプロジェクトでよく提案するクリエイティブツールの一種だ。引用元は、劇の脚本の意味で使われる playbook から。まだその場や空間に慣れていない利用者が、理想の過ごしかた、利用のしかたをまず演じてみることからはじめる、スターターガイドのようなツールだ。

空間(ハード)と内容(ソフト)の2冊で伝えるプレイブック

表紙がオレンジの方は空間(ハード)の紹介、空間写真を中心とした写真集となっており、外部配布するイメージだ。
ライトグレーの方は、内容(ソフト)部分をイラスト中心に解説。空間に入居する社内外のプロジェクトメンバーが、場での過ごし方、空間の使い方、そして拡張した使い方のヒントを得るためのガイドブックとなっている

今回、2冊のプレイブックを作成した。

1冊めは、空間(ハード)の紹介。社内外の方に向けて、どのような空間か紹介する写真集のような体裁をとっている。 もう1冊は、内容(ソフト)部分を紹介。空間に入居する社内外のプロジェクトメンバーに向けて、場での過ごし方、空間の使い方、そして拡張した使い方のヒントをイラスト中心で解説している。 2つで1セットの COMWARE TO SPACE(以下、CTS)オリジナルのプレイブックだ。

「ハード」と「ソフト」を分けたのは、異なる対象に向けてシンプルに内容を説明する意図がある。

まだその場を訪れたことがない人の興味を喚起する、空間(ハード)編

そもそもその場、空間はどんなところなのか、どんなエリアがあって、他の場所と何が違うのかを知ってもらうこと。まだその場を訪れたことがない人に一番興味を持ってもらえそうな写真をふんだんに盛り込み紹介する。空間の顔、特徴的なエリア、シンボリックな家具などアイデンティティとなるところにフォーカスして撮影した写真を使用する。

普段の利用者に、使い方のヒントの提供する、内容(ソフト)編

場、空間で大切にしている価値観・世界観を知ってもらうこと。どんな姿勢で過ごすと価値が120%体感できるのか、もとが取れるのかを、コンセプトメッセージと共に活動シーンのイラストや説明文章でまとめると良い。また空間構築にのせた思いや、プロジェクトメンバーの創意工夫がわかるエピソードも添えらると、プロジェクト初期の熱を思い出すキッカケにできるのでオススメだ。

さまざまな利用シーンで活躍する機能とデザイン

採用している色はそれぞれ空間のカラールールと合わせて統一されているのもこだわりポイントだ。やさしい茶色がかったオレンジ色はカーペットと同じ色、上品な趣きのあるライトグレーはCTSでシンボリックな什器と同じ色をしている。そしてツールの中身部分に使われているホワイトは、CTSのテーブル等の家具と同じ色をしている。

ツールの形状にもこだわりが詰まっている。打ち合わせ時に協創パートナーや関係企業に配布するだけでなく、外部の会場でブースを出して事業内容を広報したりするシーンも想定し、デザイナーの飯田さんとともに蛇腹の形状を提案させていただいた。

紙のパンフレットは、皆さんもさっと目を通したら捨ててしまう、ということが少なくないと思う。私もそうだ。しかし、このツールはそうしてほしくないと考えた。本当に有用な情報が詰まっているからだ。そこで、消費されるだけの冊子だけではなく、空間の価値を伝える、空間の一部として機能する「プロダクト」としてつくっている。

豪快に広げて立ててみると存在感が増す。背面のワントーンで塗られた部分も可愛い。
扇型で展示できるのもこの蛇腹型の製本の特徴。

プロジェクトメンバーと共に思いを込めた、このCTSのオリジナルのプレイブック。直接空間作りのプロジェクトに参加していない利用者でも、プレイブック片手に場を案内すれば、擬似コミュニティマネージャーに早変わりも可能だ。

プレイブックをボロボロになるまで持ち歩き、その場で行われている活動に従事し続けることができるのなら、場の価値を唱え続けられる人はどんどん増えていく。

空間と同様にこちらのツールも是非使い込んでいただくことを願っている。

プロジェクト概要

  • 背景
    ・CTSの構築に合わせ、対外的に場の魅力を紹介するツールが必要となった。
    ・新しくCTSに入居するプロジェクトメンバーが、空間を効果的に利用できるようにサポートするツールが必要となった。
  • 支援内容
    ・クリエイティブツール(プレイブック)制作
  • プロジェクト期間
    ・2019年3月~2019年5月
  • 体制
    ・クライアント:NTTコムウェア株式会社
    ・企画・プロデュース・プロジェクトマネジメント・クリエイティブディレクション:松本 亮平
    ・グラフィックデザイン:飯田 将平 (ido)
    ・イラスト制作:大庫 真理
    ・加工・製本:株式会社小林断截

Member

松本 亮平

松本 亮平

株式会社ロフトワーク
Layout Unit シニアディレクター

飯田 将平

飯田 将平

ido
グラフィックデザイナー

大庫 真理

大庫 真理


イラストレーター

Keywords