Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ PROJECT

中小企業とデザイナーの関係性をデザインする
- Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ

こんにちは、Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ 事務局の飯澤絹子です。

これからの時代を生き抜くために、経営にデザインの視点を。
Dcraftは、30社の中小企業が、次世代のビジネスを牽引するリーダーとなることを目指し、経験豊富なクリエイティブディレクターや経営者を講師に招き、デザインを活用した経営手法=デザイン経営の実践を支援する7ヶ月間のプログラムです。
全4回行われる導入支援プログラムのうち、今回は小板橋基希氏を講師に招き開催した、導入支援プログラムの第2回「中小企業とデザイナーの関係性をデザインする」を紹介します。

第2回の講師

小板橋基希氏 (アートディレクター・デザイナー/株式会社アカオニ代表取締役)
1975年群馬県生まれ。東北芸術工科大学卒業。大学入学とともに山形に移住。東北の「自然・暮らし・遊び・食べ物」に魅せられ卒業後も山形に定住し、2004年にアカオニを立上げる。以来、グラフィックデザインからWeb、写真、コピーワークなどのクリエイティブを駆使するデザインチームとなり、全国津々浦々に点在するクライアントの様々な要望に応えている。現在も山形市にて「アカるく すなオニ」営業中。https://akaoni.org

講義編 【デザイナーの役割への理解を深め、対等な関係性を築く】

デザイン経営で「デザイン」が担うこととは

――デザインの役割について、小板橋さんはどう考えていますか。

小板橋基希氏(以下、小板橋) シンプルに言葉にすると「理解を深め、定義し、共有する」ことだと思います。
お客さん、サービス、想いなど、様々なことを理解して、クライアントと話をしていく中で定義をし、クライアント、クライアントの会社で働いている方、エンドユーザー、地域の方々と共有する。これらが、デザインの担う部分です。

デザイナーも企業のことをもっと知りたいと思っている

――デザイナーとしての立場から、企業との関係性をどう捉えていますか。

小板橋 デザイナー側としても、企業のことはなるべくしっかり知った上でデザインしたいと思っています。そのため、関係性をデザインすることができるデザイナーさんは優れていると言えるでしょう。企業の面白さがお互いの共通認識として存在する状態が良好であるため、気を遣うことなくオープンに伝えあい、相互理解を進められる関係性が必要です。デザイナーの視点を共有しながら、企業の視点を融合させていけると面白いデザインに着地します。

ワーク編 【やさしくたのしくビジョンをつたえる絵本を制作する】

第1回では、ビジョンを更新する方法について学びました。
第2回は、ビジョンへの共感を広げるために、「伝える」方法をワークショップで学びます。「やさしくたのしくビジョンをつたえる絵本」をテーマに30社がワークに取り組みました。小板橋さんとも相談しながら、ロフトワークメンバーがワークを開発しました。

なぜ、ビジョンを絵本にするのか

小板橋さんも言及していたように、優れたデザイナーはビジョンをストーリーにして伝えることで、ステークホルダー(利害関係者)に共感の輪を広げ、ビジョンを実現する仲間を増やしていきます。企業にとっては、デザイナーとの関係性を築くことが共感の輪を広げる第一歩となります。
今回は、デザイナーに自分たちの思いや実現したいことをどう伝えるかを課題にしました。

ビジョンを具現化する方法には様々なフレームワークがありますが、今回のワークでは、複雑な仕組みをわかりやすく、楽しく伝えるということを特に大切にしています。
なぜ絵本なのか?
「絵本はみんなが知っている言葉を使い、シンプルな構成で、シンプルに伝える役割があり、デザインと同じような機能を持っている」と小板橋さんは話してくれました。

ストーリーとして具現化するときの2つのポイント

誰もが持っているバイアスに気づくこと

ストーリーとしてビジョンを具現化するときには、経営者のビジョンがひとりよがりなものにならないように、独自の視点と客観性の両方を持つことが大切です。企業の中で使われる言葉やビジョンは色々なバイアスを持っています。例えば、自分たちが考える提供価値が顧客のニーズと食い違っている、ということは思い当たるひとも少なくないのではないでしょうか。
自分たちでも認知していないバイアスに気づくために、経営者やコアチームだけでなく、外部パートナーの視点を取り入れる必要があります。

やりたいことを、シンプルに伝えること

経営、経済面でやらなければならないことはあると思いますが、そういったものを主軸に据えてブランディングをしてしまうと、人からの共感は得られません。
自分たちが本当にやりたいことは何かを見つけること、みんなにシンプルに伝わることが大切です。

伝わるビジョンかを確認するチェックリスト

絵本制作の目的は、クール1で作ったビジョンが誰にでも伝わるものになっているか検証することです。今回は以下の5つの指標をチェック項目として設定しました。

参加企業の感想

デザイン経営の担い手(実行者)は、まず、「核」となる想いを “描き切る力” を磨かねばなりません」のフレーズに、ゴツンと頭をたたかれました。

今回の絵本の課題から、真の特長や伝えたい一点をフォーカスすることで、わかり易く、より印象的に自社のブランドや目指す姿が伝播し、拡散するのだと学びました。

この作業は私たちの企業にとって、みんなの中で会社に対して思っていること期待しているものを物語として繋いでいく、有意義な時間となりました。

ビジョンを絵本にしようとしたとき、具体的なイメージがパッと自分の中にないこと、言葉だけが先行していたんだと実感しました。ビジョンを実現するために今やっていることを落とし込んで行くとようやく形が見えてきて、今やっていることは未来に繋がってるんだと、少し自信が持てるようになりました

まとめ

デザイン経営においては、経営の川上から、デザイナーをいかに巻き込めるかがとても重要ですが、そのために、経営者もデザイナーへの理解を深めること、そして、デザイナーがその役割を最大限発揮できるような依頼と関係性の築き方を考え実践していくことが何より大切だと改めて感じました。

次回は長谷川哲士氏による導入支援プログラム第3回「共鳴する組織をデザインする」です。
お楽しみに!

飯澤 絹子

Author飯澤 絹子(クリエイティブディレクター)

社会福祉士・精神保健福祉士を取得し、地域活動に関する研究にてシステムデザイン・マネジメント学科修士課程修了。LITALICOジュニアで発達や特性に合わせた学習やコミュニケーションの指導を行った後、仕組みを作ることによって人や組織の持つ魅力が世の中に花開くことに関わりたく、ロフトワークに入社。想像を超える未来をつくること、能力を最大限発揮して生きていくこと、を追求し続けた結果、説明しなければ伝わらない経歴を更新中。まずは自分が体現する存在になる、をモットーに、関わる方々や自分と向き合う日々を送っている。

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