統一されたブランド発信で学校改革を目指す
中高一貫校の広報ブランディングを刷新
Outline
一貫性のあるブランド発信で、学校改革を推進する
京都産業大学附属中学校・高等学校は、2007年に開校した私立の中高一貫校です。「知性」「品格」「気概」を柱に、時代に応じた教育を展開してきました。近年、保護者のニーズが学力を重視する傾向から、多様な学びや豊かな経験を重視する傾向へと変容する中、よりニーズにマッチしたカリキュラムや体験を提供するため、2025年春のスタートを目指した学校改革構想が立ち上がりました。
この改革に伴い行ったのが広報ツールのリニューアルです。広報活動においては、Webで発信するイメージと紙媒体や学校説明会など、オフラインで伝えるイメージの統一ができておらず、一貫性のあるブランド発信ができてないという課題がありました。そこで約1年をかけて、Webサイトのリニューアルに加え、パンフレット、ポスター、オープンキャンパスなどの学内・学外イベントにて使用するチラシやタペストリーに至るまで各種広報ツールを刷新。ロフトワークは一連のプロジェクトを担当しました。
今回のリニューアルでは「キミも知らない、自分に出会う。」というコンセプトを軸に据え、オンライン・オフラインの双方で統一した世界観を表現し、同校の志や取り組みを伝えています。また、各広報ツールにはQRコードを用いてWebサイトへの流入経路や効果を計測するための仕組みを導入。これにより得られるデータをもとに、より戦略的な広報計画を立てることが可能となります。
各種広報ツールは学校改革をより効果的に推進するための基盤として活用されています。
プロジェクト概要
- クライアント:京都産業大学附属中学校・高等学校
- プロジェクト期間:
- Webリニューアル:2023年6月〜2023年12月
- 広報ツール制作:2024年1月〜2024年6月
- ロフトワーク体制
- プロジェクトマネジメント:クリエイティブディレクター 村田 菜生
- クリエイティブディレクション:クリエイティブディレクター 笹島 啓久、クリエイティブディレクター 許 孟慈
- プロデュース:プロデューサー 藤原 里美
- 制作パートナー
- デザイン:杉山 あずさ(株式会社FIELD )
- 撮影:小椋 雄太
執筆:田原 奈央子
企画・編集:横山 暁子(loftwork.com編集部)
Outputs
Points
ターゲットに合わせて情報を適切に届ける
コロナ禍を経て受験生の情報収集手段の比重がオンラインに置かれるようになり、受験生獲得においてWebサイトに求められる役割がより大きくなっています。そこで、本リニューアルではWebサイトのメインターゲットを中学受験生の保護者と高校受験生に据えました。
同校は中高一貫校であることから、サイトには中学生と高校生に加え、それぞれの保護者が訪問します。ユーザーによって必要な情報は異なるため、中学校と高校をタブで切り替えられる仕様を採用し、明確な導線を設計。一貫校としてのデザインを保ちながらも、必要な情報にスムーズにアクセスできるようデザインしました。
コンセプトを軸に学校の思想を伝える
リニューアル以前の「君も知らない、自分に出会う。」というコンセプトは2016年にロフトワークがWebリニューアルを担当した際に策定したものです。今回の方針策定にあたり、学内インタビューを通じて見えてきたのは、京都産業大学附属中学校・高等学校は2007年創立とまだ若い学校であるからこそ、生徒はもとより先生や職員たちにとっても挑戦ができる場所であるということ。そして、キャッチコピーは学校に関わる人々に根付き、「挑戦ができる場所である」という学校の特色を体現している言葉であることです。そこで、本リニューアルではこれまでのコピーを活かし、大幅な改変は行わない方針を決定しました。
「キミも知らない、自分に出会う。」というコンセプトを軸とし、学校のシンボルである希望の星座「サギタリウス」からインスピレーションを得たデザインを採用しました。
また、コンテンツにおいても生徒の未来を応援する学校の姿勢を表現するため、コンセプトに基づきいた特集ページを制作。「キミは、どんな自分になりたい?」と題したこのページでは、中学・高校それぞれの学びについてのトピックを3つずつピックアップし、親しみやすいイラストや挙動を用いて、受験生が能動的に情報を得られるようにしました。
Webサイトは、受験生や保護者とのコミュニケーションを促進し、学校選びをサポートするツールとして寄与しています。
Member
メンバーズボイス
“印刷物の制作やWebサイトの更新が、媒体ごとの対応となり、一貫性のある発信ができていないという課題がありました。そこで広報物一式の制作をロフトワーク様に依頼しました。
制作過程ではプロジェクト体制をしっかりと整えていただき、様々な角度からディスカッションを深めることで、コンセプトの統一だけでなく、「大学附属校でありながら、多様な進路を選べるコース設定」という強みを改めて明確にすることができました。校舎や生徒・教職員の自然な表情を多面的に見せるデザインで、本校の等身大の魅力を表現していただけました。
生徒たちにとって「キミも知らない、自分に出会う。」場所であり続けるため、これからも改革を進め、進化し続けていきたいと考えています。”
京都産業大学附属中学校・高等学校 入試広報部長 伊藤 隆成
“弊社ではツール全体のデザインを担当させていただきました。
ターゲットが小学生〜中学生、その保護者の方と幅が広かったので、それぞれの立場でほしい情報は何か、その情報の魅力的な伝え方は何か…という点に留意しながら制作を行いました。
軸となるメインビジュアルでは、学校に関わる生徒、先生、職員、施設…それぞれの活躍を写真で見せながら、個々の持つ輝きが集まることでより強い輝きになる様を学校のシンボル「サギタリウス」から着想し星の煌めきのように表現しました。
輝きの集まりには「一人ではなし得なかったことが学校に集まり、関わることで広がっていく、できるようになる」というメッセージを落とし込んでいます。
今回、ブランドツールを一新することで、京都産業大学附属中学校・高等学校様の目指す方向や伝えたい魅力がしっかりと訴求できるようになったと感じています。また、ロフトワーク様と密な協力体制を取れたことも良いツールにすることにできた理由のひとつです。デザインに注力できる環境をしっかりと作ってくれたことには感謝しています。”
株式会社FIELD デザイナー 杉山 あずさ
“初めて京都産業大学附属中高にお伺いさせていただいたのは、2023年春のオープンキャンパスでした。これから入学を考える方たちに混ざりながら校内を巡らせていただき、開放感ある環境と礼儀正しい在校生の姿に、清々しい気持ちでいっぱいでした。校長先生のお言葉で印象的だったのは、「学校がまだまだ若いからこそ、これから挑戦してきたいことがたくさんある」ということ。生徒だけではなく、先生も職員も、全員がそれぞれ挑戦し、新しい自分に出会う場所であるという第一印象をそのままに、外への発信イメージを膨らませていきました。美しいデザインだけの模様替えではもちろんなく、何よりも広報課さまが運用しやすいようにという思いもありました。広報課さまのチームプレーがあってこそ、たどり着けた成果物です。今後も未来の受験生に、この学校に行ってみたいな!と思ってもらえるよう、一緒に精進していきたいと思います。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 村田 菜生
“Webリニューアルにおいて、撮影や詳細な仕様検討を担当しました。京都産業大学附属中高に足を運ぶたび、皆さんから挨拶があり、撮影にも多大な協力をいただき、様々な提案に前向きに取り組んでいただくなど、開放感のある校舎と校風を全身で感じていました。ウェブサイトに訪れる方に、まずその空気を感じてもらえるよう、もちろん機能として迷うことがないように、広報部の皆さまと一緒に進めました。京都産業大学附属中高の特長や魅力を、一人でも多くの人に感じてもらいたいです。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 笹島 啓久
“Webのデザインを踏襲した広報ツール制作にて、情報設計および制作ディレクションに関わりました。
このフェーズでは、進学フェアやオープンキャンパスで保護者や受験生と直接対話・接触するための重要なアイテムであるチラシやパンフレットなどの広報ツールを制作しました。
これらのツールは、対面でのインタラクションが活発に行われる広報課の強力な武器として、WEBデザインと一貫した世界観を持ちながら、ストーリーテリングにも工夫を凝らしました。学校改革に対応し、豊富なカリキュラムを提供する中で、初めて接する人に必要な情報をわかりやすく伝える工夫を重ねました。これには、広報課の過去の貴重な経験を参考にしながら、情報の優先順位や展開をシミュレーションし、最終的には校内外で高く評価される制作物に仕上げることができました。
このような多角的なタッチポイントをうまく融合させることで、京都産業大学附属中高の精神を、オンラインとオフラインの垣根を意識せずに、より多くの人々に伝え、その魅力を広く届けていきたいと考えています。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 許 孟慈
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