学校法人椙山女学園 PROJECT

100年つづく教育の提供価値を再構築し、未来に継承する
椙山女学園大学 リブランディング

Outline

現代に問い直す、女子大学教育の意義

1905年開校の「名古屋裁縫女学校」を起源とし、約120年に渡って女性教育を実践してきた『椙山女学園大学』。「人間になろう」を教育理念に掲げ、自立した女性の生き方とは何かという問いに向き合ってきました。

創立から100年を越え、社会が変化するなかで、教育機関としての提供価値を問い直す必要があると考えた椙山女学園大学は、ロフトワークをパートナーにこれまでの教育の実践を振り返りながら、ブランディング方針の再構築を決定。

女性が社会で活躍することがスタンダードとなりつつある世の中において、椙山女学園大学が提示するべき「女子大学教育の意義」とは何か? そして、現代における「女性の存在意義」とは何を意味するのか。本記事では、ロフトワークがともに実践したパーパス策定のプロセスを中心に、歴史ある大学がいかに未来に向けて再構築したブランディング方針として言語化し、各コミュニケーション施策へと落とし込んだのかを紐解きます。

執筆・編集:乾 隼人
編集:岩崎 諒子/Loftwork.com編集部
キービジュアル:鈴木 孝尚/16 Design Institute 図録デザイン研究室

Output

タグライン

Commentary

タグライン設計:小川 敦子(ロフトワーク アートディレクター)

「私」という言葉は、こうありたいと願う未来の自分の姿であり、社会の意思決定の場に自らの意思を持って参画する、自分の“未来”を反映している。

一人ひとりが自らの意思を持って、社会に関わり、自分の人生を選択し、意思決定する力、アイデンティティの確立、学びと経験を通して実現する。その自覚を受験生に強く促すことを想定し、ステートメント的に設計した。

受動的ではなく、能動的な女子教育を貫いていく姿勢を社会に対して明確に示すことによって、椙山女学園大学の独自の価値を高め、企業・保護者・受験生から選ばれる存在であり続ける、大学としての意思表示でもある。

コミュニケーションマーク

Commentary

VI設計・解説:鈴木 孝尚(16 Design Institute 図録デザイン研究室)

2007年に制作されたコミュニケーションマークを改訂。旧マークでは漢字の「人」をアクセントに使っていたが時代感と英文のロゴタイプとのミスマッチがあったため「i」と「人の造形」を重ねて再構築。学園の教育理念である「人間になろう」の「なろう」の前向きなメッセージを人が一歩踏み出したような造形で強調している。シンボルカラーの緑色は人間が環境と調和して進展していく21世紀の地球を表現し、あたたかい人間性を表現している。また「他者との関係性」という観点からも、自分を「緑」他者を「黒」で表している。

大学Webサイト(日本語版)

Commentary

プロジェクトマネジメント・クリエイティブディレクション・解説:䂖井 誠(株式会社ロフトワーク)

Webリニューアルのミッションは、再構築したブランディング方針を大学組織全体に浸透させ、広報コミュニケーションにおいて「変化」を体現すること。リブランディングという大きな変革に向けて過去と未来をつなげていくために、いかに椙山女学園大学の教職員のみなさんの視点を「繋げ」、「表現する」のかが重要なテーマだった。

一方で、椙山女学園大学の歴史が積み重ねられてきた旧大学Webサイトのコンテンツのボリュームは、そこから派生した各学部のWebサイトを含めると5,000ページ超。学部のWebサイトには、それぞれの学びの特徴や個性を体現した数多くのコンテンツが存在した。

新サイトではこれらの「らしさ」を引き継ぎながらも、新たな方針に基づいたコミュニケーションへと移行させる必要があった。そのため、本リニューアルでは、Webサイトの構造設計や情報設計、データ管理の経験・知見に加えて、大学組織内の合意形成をサポートすることが欠かせなかった。

今回、椙山女学園大学 広報課のプロジェクトチームと協働し、各学部の教職員のみなさんと「ブランディングを体現していくWebサイトとはなにか」を繰り返し対話しながら、学部ごとに存在していたWebサイトを統合。大学が見つめる「これからのユーザー像」に即したWebサイトの構造設計を実施し、大学の「想い」を形にしていった。

振り返ると、日頃から教職員や学生がコミュニケーションの重要性を認識し、それぞれが「社会への問いかけ」を実践している椙山女学園大学だからこそ、実現できたプロセスだった。大学の未来を構想する視点と、現場で行動し未来をかたちづくる視点。立場やポジションによって、未来を見つめる角度や距離感は異なっても、目指すべき北極星はひとつだったと感じている。

学部・研究科詳細ページ
「女性と社会とのこれから。」をテーマにした新規コンテンツの1つ、「教員が考える女性のこれから」 カテゴリTopページと詳細ページ

Approach

女性として社会にどんな価値を生みだせるか? 学びの意義を問い直す

「人間になろう」を建学の精神として掲げてきた椙山女学園大学。まだ女性の高等教育の環境が整えられていなかった1900年代初頭から、女子学生たちにさまざまな自立の可能性を提供してきました。

時代によって、学生たちを待ち受ける課題は異なります。近年、世界ではビジネスや政治、あるいは環境・社会課題解決の場において女性リーダーによる活躍が増えつつある一方で、日本国内では依然としてジェンダーギャップ等の問題が根強くあり、組織の中で女性の意思決定者が少ないことが問題視されています。

また、椙山女学園大学を取り巻く状況に目を向けると、東海地方エリアにおける他大学との競争はますます激しさを増しています。少子高齢化により18歳人口が減少する現代において、大学組織を維持していくためにより多くの生徒の獲得することも課題です。

社会的な側面においても、大学運営という側面においても、これからの未来を担う学生たちが椙山女学園大学で学ぶことの意義や価値を伝える必要がありました。

これまでの教育理念の実践をふまえた上で、これからの社会に求められる女性教育のあり方を学内・学外に示すべく、北極星としてのパーパスとブランディング設計書を策定。さらに、タグライン、VI、Webサイト等の広報コミュニケーションへと展開しました。

開学120年の歴史から現代に生きるパーパスを紐解く

課題感を大学側と共有したロフトワークのプロジェクトチームは、今回の問いに答えを出すためのリサーチへと進みました。リサーチは、「パーパスの紐解き」と「社会の探索」という、大きな2つの段階で実施。まず、「パーパスの紐解き」として学園の歴史を知ることからはじまりました。

ブランディングの構造とその構築プロセス(椙山女学園大学 ブランディング設計書より)

ヒントになったのは、椙山女学園大学が制作した『椙山女学園百年史』。初代理事長による教育理念の探索を、創設者の孫にあたる後代の理事長が主体となってまとめたものです。そこに書かれていたのは、時代の変化に呼応しながら、自立した女性の生き方に向き合ってきた、女性教育の実践の歴史でした。

「時代の進歩のなかで、女性は社会のなかでいかなる意義があるのか、その自覚を強く考えることに、女子教育の使命がある」

これこそが、椙山女学園大学が担ってきた社会的役割であり、120年間貫いてきたパーパスでした。百年史から紐解かれたこのパーパスが、椙山の新たなブランディングを設計する軸となったのです。

プロジェクトチームは今の椙山女学園を構成する人々の視点を知るため、同大学の卒業生や教職員に対するリサーチを実施。まずは、合計20名以上の関係者へのインタビューやアンケートを実施しました。

リサーチを進めるなかで発見されたのは、教育理念である“人間になろう”という言葉がフレーズとして用いられているのではなく、教員個々人のなかにしっかりと息づいていたことでした。“人間になろう”という言葉を自らへの問いとして捉え、それぞれの仕事、生き方として実践しながら、学生たちと向き合っていました。

独自の価値を言語化・可視化したブランドコンセプト(椙山女学園大学 ブランディング設計書より)
アートディレクター 小川敦子
アートディレクター 小川敦子

ブランディング構造設計を担当したアートディレクター 小川は、プロジェクトを振り返り「椙山女学園において、パーパスを新たにつくりなおす必要はないと感じました」と話します。

「大学関係者の方々の中には、すでに普遍的なパーパスがありました。『人間になろう』という言葉のなかに、現代を生きる私たちが学ぶべきスピリットがあった」。

同大学で『人間になろう』という言葉が掲げられたのはなぜなのか。関係者へのリサーチを進めていくなかで、小川は、その言葉に込められた思いに触れていくことになります。

「女性が自立するということは、ただ自分が幸せになるだけではない。周囲との協調関係によってよりよい状態を目指すこと。ビジネスの世界では男性的な強いリーダーシップが求められがちですが、現代においては他者を思いやり、一人ひとりの可能性を引き出し、ともに変容するリーダーシップが求められる場面も増えているのではないでしょうか。女性が自らの意思によってそれぞれの生き方を決め、仕事をすること、社会の変容に関わることは、女性に限らない多様な人々が、それぞれの創造性を発揮できる社会を実現することにも繋がっているように思うのです」

椙山女学園はこれまで、学生たち一人ひとりの意思を尊重し、共に成長し合う土壌を築き上げてきたのではないか。そこには、ダイバーシティや「利他」という現代社会に必要な精神がすでに組み込まれていたのではないか、と小川は考えます。

「だからこそ、私たちがやるべきことは、女性の社会的な存在意義を問い続けるという普遍性の高い教育理念を現代社会のニーズと接続させながら、再解釈をし、再構築をすること。それは、椙山という女子教育機関の存在意義を社会に明示することでもあると捉えています。」(小川)

それは大学の教育理念を改めて言語化することでもあり、現代社会に向けて必要な「教育とは何か?」というメッセージを編集することでもありました。

社会背景を反映した、タグライン策定

リサーチの次のステップとして実施したのは、「社会の探索」と位置付けられたインサイトの抽出でした。プロジェクトチームは、起業家、フリーランスとして活躍している実践者、企業内で活躍する20〜60代の実践者を対象としたインタビューと、12〜17歳の女子学生へのインタビューを行いました。それらのインタビュー解析をもとに、「女性の未来会議」を企画・実施。大学の学生・教職員が集まり、インタビュー対象者である起業家数名とディスカッションを行いました。

社会の探索レポート(椙山女学園大学 ブランディング設計書より)

「パーパスの紐解き」と「社会の探索」。プロジェクトチームは2つのリサーチを通して、椙山女学園の役割を「社会のなかでの女性の存在意義を、社会に向けて提言していくこと」だと理解しました。小川の言葉からは、社会の状況やインサイトに呼応するように、椙山女学園が実践する女子大学教育の意義と輪郭が見えてきたことが伺えます。

「女性活躍推進という動きがあるなかで、企業のなかの役職者数が20%に満たないのも事実です。もちろん、役職者であることが女性の理想の在り方だと言い切ることはできませんが、女性がどれだけ自ら仕事を生み、意思を表明できるポジションに就けているのかは、社会の中、企業の中のダイバーシティの度合いを図る物差しのひとつとして解釈できます。

女性が自らの生き方を自らの意思を持って決め、キャリアを自分らしくデザインした上で、社会や企業の中の変容に関わっていくためには『自らの〜』が非常に重要になってきます。

重要なのは、自らアイデンティティを構築して、自分の人生を主体的に決めていくこと。意思決定の連続の上に未来があるんです。そこで、椙山女学園大学がこれまで行ってきた教育を体現し、未来の学生たちにその理念を伝える言葉として、『私を選ぶのは、わたし』をタグラインとして提案しました」(小川)

プロジェクトチームは椙山女学園の教育理念を正しく伝えるために、このタグラインを含むクリエイティブコンセプトを策定。さらに、広報コミュニケーション戦略と、その実践を通した「これからの価値創造メカニズム」を構築しました。このプロセスによって、教育理念である「人間になろう」を柱に、社会やステークホルダーに向けてより深いメッセージを届けていくためのブランディングの基礎が整いました。

椙山女学園大学 クリエイティブコンセプトの構造

クリエイティブコンセプトは、教育理念「人間になろう」を基本とし、コミュニケーションマーク、タグライン、ビジュアルが制作されています。ブランドコンセプト、ブランディング方針、パーパスが複合的に重なり合っていくことでメッセージを深く理解するための役割を果たします。また、それぞれが連携しアップデートし続けることこそが、広報戦略における「これからの価値創造メカニズム」と考えています。

社会への問いかけをコミュニケーションに落としこむ

新たに策定されたパーパスとタグラインをもとに、大学としてのコミュニケーションを具体的な形で実装することも、プロジェクトチームに課せられたミッションでした。

学生や社会への問いかけをブランドコミュニケーションとして体現するために大学日本語サイトからWebサイトをリニューアルし、さらにこれまでと異なる視点から新規コンテンツを制作しました。そこには、ブランディングフェーズで問い直した『私を選ぶのはわたし』というタグラインが、同大学においてどのように実践されてきたのか、教育理念とこれまでの活動を結びつける意味合いもありました。

プロジェクトチームは新しいコンテンツを制作する際に、ブランディングフェーズのプロジェクトメンバーたちと対話し、前フェーズでのアウトプットを振り返りながら、「なんのために、誰の声で伝えるべきか」を検討。これからの椙山に必要な視点や、伝えていくべきことはなにかを問い直した上で、Webサイトのブランドコミュニケーションの軸となる新規コンテンツとして、教授陣へのインタビューを中心とした『教員が考える女性のこれから』、社会で活躍するOGなどの実践者と椙山の現役学生が意見を交換し合う『学生と先輩の交換ノート』を制作しました。

「学生と先輩の交換ノート」

コンテンツを担当したクリエイティブディレクター 村田菜生は、コンテンツづくりの活動自体を「学生が社会と関わる機会」に繋げたいと考えたといいます。

クリエイティブディレクター 村田菜生
クリエイティブディレクター 村田菜生

「学生が社会と接点を持つことの難しさを、私自身も学生時代に感じていました。今回のブランディングプロジェクトにおいても、重要なのは、学生が社会と接点を持ちながら女性の生き方の多様さとその具体像を知るきっかけをつくることがではないかと考えました。また、コンテンツとしての企画・更新のしやすさと、制作の過程に椙山女学園の学生に関わってもらうことの2つを考えた結果、往復書簡のようなコンテンツをつくろう、というアイデアに至りました」

コンテンツの制作にあたって、社会で活躍する女性ら数名と有志の学生数名を集め、インスタントメッセージツール『Discord』でチャットルームを開設。「学外の多様な大人と密に対話ができる環境をつくって、それをログとして残してみようと考えました」(村田)

制作は、チャットを通じた交流や意見交換のなかから、コメントを抜粋・編集する形で行われました。Discordで話された内容は、学生たちが学部での授業や留学での学びを通して感じた自分自身を取り巻く社会や文化への気づきや違和感、就職活動や進路決定に対する迷いや課題感など、さまざまでした。先輩とのやり取りの中で、「社会の中の女性という存在」について、学生らしい等身大の視点や意見が交わされたことも、印象的だったといいます。

「学生にとっては、社会で活躍している人を相手に、『自分はいま何を考えているんだろう?』を壁打ちするような時間になったのではないかと思います。それは『私を選ぶのは、わたし』というタグラインの『わたし』とは何か?を考え、解像度をあげる時間でもあったんじゃないかと。このコンテンツづくりの体験自体が、学生のなかで何らかの変容を実感できるような機会になっていたら、嬉しいですね」

Outlook

普遍的な教育理念があったからこそ、現代を生きる人々に向けた「伝え方」を問い直すことになった、椙山女学園のブランディング。その北極星となるパーパス、タグライン、コミュニケーションマークが刷新され、大学の広報コミュニケーションの基盤としてのWebサイトが刷新されました。

これから、受験生や保護者をはじめ、学生や地域、企業といった各ステークホルダーへの働きかけがはじまり、椙山女学園の考える「女子教育の意義」を広く社会に向けて伝えていきます。

本プロジェクトの総合プロデューサーを務めたロフトワークの藤原里美は、今回のプロジェクトを以下のように総括します。

「私立大学には、それぞれの起源に物語があります。そのとき、その場所で、『ここに大学を創らなければならない』と強く信じた人がいるからこそ、そこに大学が存在しているのです。だからこそ、多くの私立大学はその古の想いを大切に受け継ぎ、地域とも強いつながりを持つ傾向にあります。しかし、大学が増え、競争が生まれたことで、集客に比重が移り、自学の理念を伝えることの重要性が薄れてしまった時代がありました。

今、改めて自学のブランドが何であるかを見つめ直す大学が増えているのは、それを時代が求めているからのように感じます。ただ、理念を伝えるのみで何かを変えていくことは難しいでしょう。言うは易し、行うは難しといいます。理念を体現するための活動があって、初めて『なにかを変える』きっかけになっていくはず。我々も微力ながら、そのお手伝いができればと思っています。」

今後もロフトワークはクリエイティブパートナーとして、学校法人椙山女学園の系列校のブランディングに取り組み、各校の広報コミュニケーションへの反映や社会接続活動を推進していきます。

Staff Credit

クライアント:学校法人 椙山女学園

ブランディングフェーズ

  • プロデュース:藤原 里美
  • プロジェクトマネジメント/クリエイティブディレクション:小川 敦子
  • クリエイティブディレクション:村上 航(以上、株式会社ロフトワーク)
  • アートディレクション・VI設計:鈴木 孝尚(16 Design Institute 図録デザイン研究室)

Webリニューアルフェーズ

  • プロデュース:藤原 里美
  • プロジェクトマネジメント/クリエイティブディレクション:䂖井 誠
  • クリエイティブディレクション:村田 菜生、村上 航
  • テクニカルディレクション:小野村 香里、山本 夏寧(以上、株式会社ロフトワーク)
  • Webデザイン:鈴木 孝尚(16 Design Institute 図録デザイン研究室)
  • コーディング・開発:株式会社ネクストページ

Voice

プロジェクトオーナーである椙山女学園大学のみなさまからの、本プロジェクトを振り返るコメントをご紹介します。

椙山 泰生/学校法人椙山女学園 理事長

ロフトワークにブランディング設計を依頼した一つの理由は、ブランドのデザインと社会科学の定性分析の方法を結び付けた、ボトムアップでブランディングしていく方法を買っていたからです。分析を通して、定性データの解釈にしっかり基づきながら、我々がこれから大切にしていきたいイメージを、一緒に作り上げることができたと評価しています。このプロセスに参加した我々の学びになったことも含めて、かなり満足感があります。

広報コミュニケーションの刷新を起点に、今後の学園の方向性をより明確にしていければと考えています。本学は、学園全体として、主体性を発揮して自分の未来を選択していく人づくりを進めていきたいと考えております。そして、女性の社会参画を後押しするための教育プログラムを、社会人の学び直しや新しい機会の提供も含め、より洗練させていきます。

大学のある星ヶ丘を、東海地域の女性にとって寄る辺となるハーバータウンのような場所にできればと考えています。

黒田 由彦/椙山女学園大学 学長

ロフトワークについては、伴走しながらウェブサイトを刷新してくれる会社という程度の認識でしたが、想像していた以上に広く深く椙山を理解しようとして下さり、またその営為がブランディング方針の導出と新しいタグラインとコミュニケーションマークの設計に結実していったと理解でき、わたし個人としての納得度は高いです。というより、椙山歴が長くない私にとっては、再確認も含めて椙山について改めて学ぶことが多い時間でした。

しかし、椙山の新しいイメージは学内でもまだ浸透していませんし、ましてや外の社会へは始まったばかりです。高校の先生方に椙山の新しい方向性をお話しすると、素晴らしいと共感して下さる方がいたり、高校生はそんなところまで見ていませんからと言われたり、いろいろです。

道はまだ遠い、と思っています。

中島 結城/学校法人椙山女学園 企画広報部 広報課 主任

本プロジェクトで女子高生にヒアリングをした際、「将来、仕事を頑張るか子育てをするか、どちらにするか悩んでいる」と聞き、正直、驚きました。社会での女性活躍の気運はあきらかに高まっているはずなのに、若者の意識に変化がないのは、当事者である女性自身が、女性の社会参画についてどこか他人事と捉えてきたからではないか、そして私もそのうちの一人だと思いました。

本学はブランディング方針として、一人ひとりが当事者意識を持ち、女性の自立した生き方とは何かを問い続け、世の中の当たり前を変えていく場になると明示しました。それは、本当の意味で女性の社会参画を推し進めたいという社会的に大きな意義があるとともに、女子教育を貫き通してきた本学の覚悟がここに表れていると受け止めています。

現在は、多様な女性の生き方や働き方があることを知ってもらうために、学生や教員、社会を巻き込んだコンテンツの制作を進めています。このプロジェクトに関わったことで大きく意識や行動が変わった私のように、だれかの何かを変えるきっかけとなり、タグラインである「私を選ぶのは、わたし。」の生き方を実現できる社会になることを信じています。

Member

小川 敦子

株式会社ロフトワーク
アートディレクター

Profile

藤原 里美

株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

Profile

村上 航

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター / なはれ

Profile

村田 菜生

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

北島 識子

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター / デザインエヴァンジェリスト

Profile

䂖井 誠

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

小野村 香里

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ シニアディレクター

Profile

山本 夏寧

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター

Profile

三輪 彩紀子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

Keywords

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