立命館大学 リフレクションを基軸に“創発性人材“を育む
課題解決型学習プログラムを開発
Outline
不確実性に対応したスキルとマインドを獲得するプログラム
学校法人立命館(以下、立命館)は「挑戦をもっと自由に」を学園ビジョンR2030に掲げ、あらゆる人が自由に挑戦できること、そしてその挑戦がとどろくような環境づくりを目指しています。
その中で、目玉となる改革の一つが2024年4月映像学部・情報理工学部の移転とともに実装される、大阪いばらきキャンパス(以下、OIC)の刷新です。OICでは、社会課題を解決するための実証実験や価値創造が行われ、社会とのつながりと拡がりをもったダイナミックなプラットフォームへの改革を目指すソーシャルコネクティッド・キャンパスの創造を推進しています。
同学は創発性人材を育むために、幅広い知識や専門的な素養を身につける必修科目に加え、自ら挑戦し解決を導く力を身につけるための”実践型の学び”の必要性を感じていました。
ロフトワークは学園ビジョンを体現するための学びを具現化するために、先行事例やインタビューを通じてターゲットとなる学生像を定義。OICで実装される育成プログラムとして、これからの時代を生き抜くためのマインドとスキル習得を支援する課題解決型の学習プログラム『QULTIVA(カルティバ)』を開発しました。
不確実性に対応したスキルとマインドを習得をしていくには、失敗も経験しながら繰り返し挑戦する経験が必要であることから、本プログラムの基軸に置いたのは「リフレクション」です。自身・仲間・リフレクションパートナーという多視点からのフィードバックを通じて内省を促し、参加者自身が成長を感じられるプログラム設計を目指しました。
プロジェクト概要
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プロジェクト期間:2022年3月〜2023年4月
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プロジェクト体制:
- クライアント:学校法人立命館
- ロフトワーク
- プロジェクトマネジメント:シニアディレクター 国広 信哉
- プロデュース:シニアプロデューサー 藤原 里美
- クリエイティブディディレクション・プログラム設計:
- クリエイティブディレクター 岩倉 慧
- クリエイティブディレクター 村田 菜生
- クリエイティブディレクター 服部 木綿子
- FabCafe Kyoto ブランドマネージャー 木下 浩佑
- テクニカルディレクション:テクニカルディレクター 土田 直矢
- 制作パートナー
- ネーミング・コピーライティング:宗像 誠也(ホワイトノート株式会社)
- VI制作:佐々木 拓、金井 あき
- Webデザイン:伊藤 瑞希 (株式会社スピッカート)
- コーディング:原國 政司(ubu)
- 撮影:小椋 雄太(あかつき写房)、佐藤 航(locofilm)
編集・執筆:横山 暁子(loftwork.com編集部)
Outputs
課題解決型 学習プログラム『QULTIVA(カルティバ)』
プログラム名は「Quest(探求)」「Cultivate(たがやす)」「場」という3つのキーワードから名付けられました。「QULTIVA(カルティバ)」は、実社会が抱える課題をテーマに、仲間と共にその解決策を考えながら、参加者一人ひとりの可能性を掘り起こし、育んでいく人材育成プログラムです。多角的な視点から内省・振り返りを行う「リフレクション」を基軸としたプログラムの実践を通じて、7つのマインドと3つのスキルを中心とする「コンピテンシー*」の習得を支援します。
プログラムは、参加者同士が顔を合わせるミートアップからスタート。取り組みテーマに合わせてチームビルディングを行い、プロジェクトを開始します。アクション期間中はチーム内でディスカッション、プロトタイピング、リフレクションを重ね、実践の中で参加者一人ひとりのコンピテンシーを引き上げていきます。最終成果を発表するファイナルプレゼンテーション後、プロジェクトを始める前と後で自身の成長の過程を総括するリフレクションを実施します。
特徴1:身につくコンピテンシーを定義、評価まで実施
次世代人材ルーブリックをベースとし、プログラム全体を通じてプログラム全体を通じて獲得されうる力を7つのマインドと3つのスキルを定義しています。コンピテンシーマップを活用し、プログラム開始前の自身の認識レベルと、終了時の実感値を評価することで、客観的に自身の成長に気づくことできる設計を目指しました。
*コンピテンシーとは:高い成果を生み出す人に共通して見られる行動・思考特性のこと。コンピテンシーは、企業で人事評価や採用活動、能力開発・キャリア開発などに活用されています。
特徴2:多角的なリフレクションを通じて成長を促進
自身、チームメンバー、リフレクションパートナー**との多角的な視点から内省・振り返りを行う「リフレクション」に重きをおいたプログラムです。プロセスに多様なリフレクションを組み込むことで、参加者一人ひとりの可能性を掘り起こし、さらなる成長へとつなげます。
- 1)パーソナルリフレクション
自分自身の行動や言動を内省 - 2)チームリフレクション
同じ課題に取り組むチームメンバー同士で行うピアレビュー - 3)パートナーリフレクション
リフレクションパートナーによる多角的な視点からの振り返り
**リフレクションパートナー:オブザーバー的立ち位置でプロジェクトに参加しながら、参加者が自発的に次のアクションを考えていくために、先輩として過去の経験をシェアをし、後方支援していくメンバー
VI
QULTIVA Webサイト:https://www.ritsumei.ac.jp/qultiva/
Process
Approach
仮説検証を繰り返し、学内で自走可能なプログラムを設計
新しい教育のかたちを模索するため、既存のスクールやサービスの調査、フィールドリサーチ、編集者、学校理事長、キュレーター、建築家など、多様なエキスパートへのインタビュー等の複合的なリサーチから、高速で初期仮説をたてました。その上で、メインターゲットの設定、グランドコンセプト、社会課題の集め方など初期仮説からチューニングが必要なポイントを洗い出し、軌道修正をはかる集中ワークショップをSHIBUYA QWSで実施。コアとなるコンピテンシーとリフレクションを基軸としたプログラムの骨格を仕上げていきました。
プログラムの詳細設計においては学内のメンバーが実装していくことを想定し、コンセプトだけでなく運用における詳細プロセスまで具体化する必要があると考えました。そのために実施したのがテストプログラムです。まず、社内にてプログラムを実際に行い、設計段階では想定できていない改善ポイントを抽出し、第一弾のブラッシュアップを実施。その上で、コンセプトが機能するかを検証するためのPoCとなる、チャレンジプログラムを行いました。チャレンジプログラムはFabCafe Kyotoを舞台に参加者である学生と社会人、リフレクションパートナー、プロジェクトメンバーが一堂に会すキックオフを皮切りに、中間発表、最終プレゼンテーション、評価までの一連のプログラムを実施するというもの。3週間に渡り、10名の学生が以下の3つのテーマに取り組みました。
- どうすれば、世代やバックグラウンドを超えて繋がりをつくることができるだろうか?
- どうすれば、心身がヘルシーでいられるための拠りどころをつくれるだろうか?
- どうすれば、大量生産・大量消費のファッショントレンドを変えられるだろうか?
結果、短期間での実施にも関わらず、最後まで参加者全員が走り切り、アウトプットするところまで辿り着くことができました。そして、最終評価やアンケート分析の結果、リフレクションフローは内省の助けとなり機能すること、プログラムのテーマ設定や座組も大筋、効果的であることがわかりました。同時に、人数規模やプログラムの期間、詳細なツールの選定に至るまで改善点が明確になったことで実装にむけたアップデートが可能となりました。
今回、プロジェクト設計全体においても重きを置いたのはリフレクションです。「カタチにして修正する」を繰り返すことで、プログラム実施後の参加メンバーの成長を担保しながら学内での運用の実現性が高いプログラムを目指しました。
参加者の声(一部抜粋)
- リフレクションという振り返りの時間を設けられることで、改めて自分の1週間の行動を振り返るキッカケになるし、さらにはグループでの時間は、個人で振り返るだけでは気がつけないポイントに気が付くことができたため、時間としてはかなり有意義でした。20代 学生(立命館大学)
- 始まりと終わりにコンピテンシーマップで自己分析をしてみて、やったことがないことにチャレンジしたり、普段使わない頭を使うことで、苦手だと思っていたことが意外とできてしまったりすることが発見でした。自分が意外と得意なこと、意外と苦手なことがはっきりと見えてきたような気がします。20代 学生(嵯峨美術大学)
- 普段インプットアウトプットを同時に行えるプロジェクトに参加しないので、循環が起こって成長に繋がるいい機会でした。社会人と学生をチームの中で混ぜるのは進行上難しいなという感覚もありましたが、社会人が学生とプロジェクトを行う機会や若手起業家とお話しできる機会を持てることは大変良かったです。(20代 社会人)
多様な視点を持つクリエイター/パートナーと創る
不確実性に対応したスキルとマインドを獲得するプログラムをつくるにあたり、さまざまな経験からなる多様な視点が欠かせません。本プロジェクトに関わっていただいた外部パートナーは総勢25組です。
- 制作パートナー
- ネーミング・コピーライティング:宗像 誠也(ホワイトノート株式会社)
- VI制作:佐々木 拓、金井 あき
- Webデザイン:伊藤 瑞希(株式会社スピッカート)
- コーディング:原國 政司(ubu)
- 撮影:小椋 雄太(あかつき写房)
- ムービー撮影・編集:佐藤 航(locofilm)
- エキスパートインタビュー
- 加藤 直徳(NEUTRAL COLORS 代表 / 編集者)
- 田中 みゆき(キュレーター /プロデューサー)
- 田口 一成(株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長)
- 阿座上 陽平(株式会社Zebras & Company 共同創業者)
- 渡邊 信彦(株式会社Psychic VR Lab取締役 COO)
- 植山 智恵(株式会社Project MINT代表取締役 / ミネルヴァ大学大学院 卒業生)
- 岩瀬 直樹(軽井沢風越学園 校長)
- 菅 俊一(コグニティブデザイナー)
- Eske Bruun(Studio KONDENS Founder)
- Trine Sørensen(PR of Kommunikation of GODSBANEN)
- Marcellina, Leonhard Bartolomeus, Kevin, Jj(GUDSKUL)
- プログラムインタビュー
- SHIBUYA QWS 入居プロジェクト
- 北村 優斗 (ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」
- 坪沼 敬広(合同会社渋谷肥料 代表)
- SHIBUYA QWS 入居プロジェクト
- リフレクション設計アドバイザー
- 臼井 隆志 (株式会社MIMIGURI ファシリテーター / アートエデュケーター)
- リフレクションパートナー
- 高橋 鴻介(発明家)
- 小林 百絵(DAYLILY 共同創業者兼CEO)
- 池上 慶行(land down under 代表)
- ファイナルプレゼンテーション協力
Member
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