クラシエホームプロダクツ「BASARA」
ブランド方針を起点に、商流に適したツール制作まで総合的に支援
Outline
カネボウの男性化粧品販促活動から派生して誕生した、クラシエホームプロダクツ販売株式会社プロフェッショナル事業本部は、理美容サロン、宿泊・温浴施設等に向けたプロフェッショナル向け商品の開発・製造・販売を半世紀以上前から行っており、代理店を通じてサロンやレジャー施設への商品展開を主な事業としています。なかでも男性向けのトータルケアを提案するブランド「BASARA(バサラ)」は、同社におけるサロン向けブランドの代表格です。
2021年、BASARAは商品のリニューアルをきっかけに、ロフトワークの支援のもと、ブランドとしてのコミュニケーション方針を策定しました。「サロンのパートナーとして、共に個性を引き出す」をコンセプトに掲げ、さらに商品のタグラインを刷新するなど、顧客との新しい関係性構築に取り組んでいます。
今回、ブランドの新たなコミュニケーション方針を体現する具体施策として、サロンに配布する販促資料を作成。プロフェッショナル向け商品ゆえの独自の商流を踏まえ、商品の強い訴求ではなく「製品を導入しているサロン(既存ユーザー)の言葉や商品活用の工夫」にフォーカスし、顧客に寄り添いながらブランドの価値を伝える資料の制作を目指しました。
執筆:後藤 諒弥
編集:後閑 裕太朗(Loftwork.com編集部)
撮影:澤 翔太郎(株式会社ロフトワーク)
プロジェクト概要
プロジェクト期間:2022年12月〜2023年2月
クライアント:クラシエホームプロダクツ販売株式会社プロフェッショナル事業本部
- 体制
- プロジェクトマネージャー・クリエイティブディレクター:川原田 昌徳
- クリエイティブディレクター:玉木 春那
- プロデューサー:藤原 舞子
- アートディレクション・デザイン:ゲンママコト
- ライター・編集:丸山 るい
- フォトグラファー:永禮 賢
Point
- 理美容業界独自の商流に対応し、顧客の利用シーンに最適化したコミュニケーションデザイン
メーカーが直接販売せず、代理店を通して流通を行う、プロフェッショナル向け商品(BtoBtoC商品)であるため、ユーザーと直接コミュニケーションが取りにくいという課題があった。これに対応するコミュニケーションツールとして機能するよう、販促資料の設計を工夫。商品やブランドイメージの直接の訴求以上に、使い手やTipsにフォーカスした活用事例集というアプローチから訴求している。
- コミュニケーション方針を体現するアウトプットで、顧客に寄り添う姿勢を示す
ブランドのコミュニケーション方針から伴走し、「サロンのパートナーとして、共に個性を引き出す」という言語化されたコンセプトや提供価値を体現する具体施策として販促資料を制作した。
Output
「&BASARA」
コンセプト
いいサロンには、理由がある。
長年、通ってくださるお客さまへ、
変わらないよさを届けたい。
はじめて訪れてくださるお客さまへ、
新たなよろこびを提供したい。
多様に変化する価値観や美意識のなかで、
これからも、選ばれ続ける存在であるために。
個性やこだわりを大切にしながら、
昨日よりも、もう一歩、いいサロンへ。
踏み出しましょう、BASARAと。
Challenge
独自の商流でも、価値を伝えるために。 サロンオーナーのリアルな“語り”からアプローチ。
一般的に、化粧品ブランドによるサロンへの販促ツールは、ブランドや商品の世界観を伝えるために、モデルを中心としたカットやイメージカットが多用されがちです。しかし、与件の整理やヒアリングリサーチを通じて、「販促資料をユーザーがどう受け取るか」という視点から、販促資料というツールにおける4つの課題が見えてきました。
- 代理店の判断次第で、そもそもサロンが資料や商品に接する機会が持てない場合がある
- ブランドの世界観に偏りすぎると、かえってサロンが作りたい店舗像と合致しにくくなる
- サロンオーナー同士は横の繋がりが強く、知人の紹介も商品購入の大きな検討要因である
- 販促資料を使った営業はきわめて短時間であり、その間に共感や好感触を得る必要がある
これらの発見から、本資料では、サロンに対して商品やブランドイメージを強く訴求する内容ではなく、BASARAの商品を使っているサロンが、「実際に商品をどのように活用しているのか」「商品を導入してどのようなメリットがあったのか」を伝えることが重要であると判断しました。
具体的なアプローチとして、4つのサロンへの取材を実施し「BASARA導入の背景」「BASARAの導入によって、サロンビジネスや顧客とのコミュニケーションに起こった変化」「BASARAの使用時に意識しているコツ、ポイント」についてインタビューしたコンテンツを、資料の中心として掲載しています。
また、「最後まで読まれることが少ない」という課題を改善するために、Tips集のような形式で、取材先のサロンのオリジナルな工夫やこだわりも併せて紹介。手元にとっておき、後から見返したくなるような資料を目指しました。
Process
コミュニケーション方針の策定から伴走し、
顧客に寄り添う「新たな関係構築」を体現するツールに
本資料の制作は、その前年度に実施したブランドコミュニケーション方針の策定から、一気通貫で行なったことも大きな特徴といえます。コミュニケーション方針は、自分たちが顧客とどのような心構えや前提で向き合うのかを定義するもの。それを策定したことにより、ブランドとして経済合理性だけではない、新たな判断軸が生まれました。
この判断軸をもとにプロジェクトに取り組んだことで、新たなブランドの提供価値を伝え、実際に顧客との「パートナー」としての関係構築を体現するようなツールを制作することができました。
現場のニーズと目指す姿を調査・合流させる
本資料の企画にあたっては、サロンの運営者に対して事前にユーザーリサーチを実施し、販促資料の役割と訴求すべき価値を整理しました。リサーチでは、サロンと代理店の間の営業形態や、販促資料を受け取った後どうしているか、などをヒアリング。サロン用品をめぐる商流や、そこで生じるコミュニケーションの傾向や課題について掘り下げています。
さらに、リサーチの結果を踏まえつつ、改めて自分たちの実現したいコミュニケーション方針と合流させるためのワークショップを実施。販促資料を通じたサロンオーナーの一連の購買体験について仮説をたて、十分な議論の後に、現場のニーズ・課題の解決とブランド方針の両面を反映した、販促資料のコンセプトを策定しています。
Member
メンバーズボイス
“ブランドコミュニケーション方針策定後、具体施策へとなかなか踏み出せていない我々でしたが、ロフトワークさんへご相談し、プロジェクトを進めていくことで、コンセプトに沿った販促施策実現に向かうことができました。
ワークショップでは顧客が求めるものに対して向き合い、それをアウトプットで形にできたことはとても大きな成果です。短い期間ながら円滑に進めていただいたロフトワークメンバーの皆さまには感謝しております。
今回この冊子を通してブランド“コンセプト”をお伝えできたことがとてもうれしく、この想いに共感し、BASARAと共に一歩踏み出してみようと思うサロンさまが多く出てきてくださることを心待ちにしています。”
クラシエホームプロダクツ販売株式会社
プロフェッショナルマーケティング部
野津 謙太 様
“このプロジェクトでは、BASARAブランドのコンセプトをサロンオーナーに伝えることはもちろん、販促につなげるものとして冊子を作りました。そのために、現状商品がどのようなコミュニケーションを経てサロンオーナーの手に届いているのか、その中でBASARAとしてコミュニケーション方針を体現できるポイントはどこなのかをリサーチし、冊子に落とし込みました。
リサーチでは、サロンオーナーとの対話を中心とし、制作の面でも彼らに撮影のご協力をいただくなど、ブランドのコミュニケーション方針をプロジェクトのプロセスからも体現できるような設計を心がけました。
今回は冊子という形に落としこみましたが、商品と顧客の接点となる全てにおいて、コミュニケーション方針を体現する取り組みを展開していければと思います。”
株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター
川原田 昌徳
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