株式会社ユニソン PROJECT

ステークホルダーの声から自社固有の価値を捉える
パーパス探索プロジェクト

Outline

トップダウン型組織からボトムアップ型へ、組織変革の一歩を踏み出す

愛知県に本社を置き、ブロック、レンガ、ポストなどのエクステリア商品を扱うメーカー、株式会社ユニソン。同社は、意匠性と機能性を追求した幅広い商品を揃え、中京圏から西日本まで営業所を展開しての素早い配送力で、快適な住環境づくりに貢献しています。

創業から30年が経過したユニソンは、これまでのトップダウン型組織から、ボトムアップで価値が生まれる組織へと転換を図るために、パーパスを策定。社員一人ひとりが自社の経営理念を自分ごと化しながら、より一層チャレンジできるような文化を形成するべく、パーパスを生かした組織デザインをスタートしました。ロフトワークは、主にパーパス探索のフェーズを伴走しました。

本記事では、同社によるパーパス探索のプロセスと、その過程で行われた顧客インタビューを紹介します。

Process

パーパスの探索から言語化、浸透のプロセス

本プロジェクトは、ユニソンにおけるパーパス(存在意義)とは何かを探り、既存の企業理念と合わせて確認することで、企業理念と社員と社会をつなぐことを目指しました。

ユニソンでは、以前より企業理念や価値創造の言語化・構造化を実践していました。その方向性は社内でも浸透しており、組織としての成熟度は高い状況でした。今回のパーパス探索で目指したことは、ユニソンが現在の成熟した状態から、さらに未来への方向性として進んでいくために、各所からブレイクスルーとなるようなチャレンジが自発的に起こる状況へと組織を変革すること。現在の企業活動の延長線の上にさらなる機会領域が存在するイメージを描くべく、探索と整理を行いました。

Interview

ユニソンと顧客 ── ICMガーデンズとの対話

“顧客の困りごとを未然に減らす”対応力と商品力が、あらゆるステークホルダーの満足につながっていく

本プロジェクトでは、社外の環境・状況をリサーチするフェーズにおいてユニソンの価値を紐解くべく、株式会社ICMガーデンズ・代表取締役社長の両角一彦さんとの対談を実施しました。

ICMガーデンズはユニソンと同じく愛知を拠点に、外構・エクステリアを専門とし、エクステリアのプロフェッショナルが設計から施工までをトータルプロデュースしている企業で、ユニソン中部西営業所長・石垣さんと長らく関係性を築いてきました。石垣さんと両角さんの対談から見えてきたユニソンの価値。それは顧客のニーズを捉えているだけでなく、もっと大きな、社会的な存在価値にまでつながるものでした。

プロジェクトチームは、「ユニソンの『人への小さな心配り』や『商品への細やかなこだわり』から、仕事の枠組みを超えた対応力や画期的な商品力が生まれている。それが結果的に、エクステリアの周辺に関わる多くの人の困りごとを未然に減らすことにまでつながっている」とわかりました。

ユニソンがもたらす小さな変化は、一人ひとりの豊かさの総量を増やし、結果的に、その一人ひとりを包括する社会全体にも小さな豊かさを増やすことにつながっているのではないかという、気づきを得たのです。石垣さんと両角さんの対談から見えてきたユニソンの価値。それは顧客のニーズを捉えているだけでなく、もっと大きな、社会的な存在価値にもつながるものでした。

プロジェクトチームは、「ユニソンの仕事の枠組みを超えた対応力と画期的な商品力が、取引先の顧客だけでなく、エクステリアの周辺に関わる多くの人の困りごとを未然に減らすことにまでつながっているのではないか」という気づきを得たのです。

聞き手・編集:くいしん
執筆:小山内 彩希

担当が変わっても、顧客と20年以上続く関係性を築く

── 石垣さんと両角さんのお付き合いは何年ほどになるのでしょう?

石垣 両角社長に初めてお会いしたのは16年ほど前で、私が担当として関わっていたのは8年間くらいになります。ユニソンとICMガーデンズの間には代理店が入っているのですが、代理店担当の方から両角社長のご活躍を伺ったことからぜひお会いしたいと、仕事場に直接お邪魔させていただいたのが一番最初です。

両角 ユニソンとのお付き合い自体は、石垣さんが担当になる以前からで、かれこれ25年ほどになりますね。うちがショールームを作ったとき(2008年)は、石垣さんが担当してくれましたよね?

石垣 はい、そのときは私が担当していました。ショールームを作ると伺う以前から、ICMガーデンズは企業としてもっと大きくなるだろうと思っていて、やりがいを持って仕事をしていましたね。うちの商品をショールームの中に置かせていただくということで、壁にユニソンのレンガを張るなどお手伝いをした記憶があります。

── ユニソンとICMガーデンズ、石垣さんと両角さんがそれだけ長い年月で関係性を築けているのはどんな理由からでしょう?

両角 ユニソンはエクステリアのメーカーですが、多くのメーカーにとって私たちのような顧客と直接話す機会は、新しい商品を提案するときか、こちら側のクレームを聞くくらいしかないもの。さらにユニソンは、代理店を通してうちと取引をしているので、なおさらコミュニケーションが少ない状況になりやすいはずなんです。

エクステリア業界としても、商品価値は20年くらい前から考えると、上昇してきています。その中でユニソンは、たとえばエクステリア商品のコンクリートブロックで7割のシェアを持っていたりするので、すごくがんばって売り込まなくても売上が立つはずなんです。

そういった前提がありながらも、ユニソンは自分をどう売り込もうか考えて積極的に自己アピールしているメーカーだと思っていますし、それがこの長い年月で関係性が続いている理由じゃないかと。

ユニソンの仕事の枠組みを超えた対応力

── ユニソンがしっかり自己アピールできているというのは、たとえばどんなことを指しますか?

両角 たとえば、新しい商品を売り込むのは当たり前で、意識して早く見積もりを出すとか、配送についてもこちらの要望に応えようと努力してくれたり、そういうこともされている印象です。

石垣 ほんの小さなことでも、できることは確実にやろうという意識はありますね。

両角 ここ20年ほどエクステリアのニーズが高まっている中で、お客様の要望は、決して簡単ではないと感じています。セメントを使うエクステリア工事では、コンクリート商品やレンガ表面に白い粉状の物質が付着することがあります。白華(はっか)と呼ばれる現象で、年に1、2回お客様より問い合わせがきます。

そういったときに、施工した我々が前に出るのではなく、その資材を手がけるメーカーさんに対応をお願いすることもあるんです。そのほうが説得力があるので。そういう面での対応から、デザインや価格について協力をお願いすることもあります。ユニソンさんの柔らかさ、細かな部分まで行き届いた対応力は秀でていると感じますね。

石垣 対応力というお話をしてくださいましたが、私たち営業は、配送には特に意識を割いています。「お客様の現場を止めるわけにはいかない」という意識が社内に共通してあるので、配送の部署はあるけれど、お客様と配送現場の間に営業も関わって細やかに気配りをして調整していたり。

両角 たしかにユニソンの配送力はすごい。愛知を含めた中京圏なら、最悪、現場でコンクリートブロックがひとつ足りないとなったときにすぐに届けることができますからね。ドライバー不足が嘆かれているこの世の中で、現場は間違いなく助かっているはずです。

石垣 物流拠点が愛知だけでなく三重、岐阜にもあることが、中京のお客様に贔屓にしていただいてる大きな理由だと思います。基本は翌日、現場に必要な品物がお届けできるのは地元企業の強みですね。

両角 午前に発注して次の日に届くということはなかなかないですから。

── 石垣さんが営業でありながら配送まで気にかけているというように、ユニソンの対応力とは「自分の仕事はここまで」と決めずに、ある意味で、仕事の範疇を超えたところまで関わっていく姿勢を指しているのかなと思いました。

両角 そうですね。石垣さんからは、実務的な部分だけでなくコミュニケーションの面でも、自分の担当する仕事の枠組みを越えて対話しようとする姿勢を感じています。

石垣 営業としての仕事以外でも、両角社長に聞かれたことは答えられるようにしていますね。単なる受発注の関係性ではなく、細かいことばかりではありますが、業界の周辺や裏側のことも、答えられることにはどんどん答えて、関係性をつくっていきたいという思いがあります。

中京圏から画期的な商品を生み出す

── コンクリートブロックを長年の主力製品とし、現在は宅配ポストで業界3位のシェアも誇るユニソンですが、商品としての強みはどんなところにあると思われますか?

両角 画期的さですかね。たとえばこのショールームにはユニソンのいろんな種類のコンクリートブロックをディスプレイしていますが、コンクリートには見えないものがたくさんあるでしょう。たとえばこの商品、コンクリートに見えます? いや、どう見ても石畳でしょう。

石垣 まさにそれをねらって作っています。カタログにも、ヨーロッパの石畳調のような意匠で雰囲気を保ちます、と書いています。商品名も、カッシア街道やティブルティーナ街道など、商品デザインに反映したヨーロッパの街道名に由来しています。ちょっとした工夫や、今あるものをとことん追求していくことで、空間を華やかにし、豊かにすることができるんです。

両角 こういうデザインのコンクリートブロックが出てきたのがもう、15、6年くらい前なんですけど、ものすごく画期的で、勢いを感じましたね。

ユニソンから画期的な商品が生まれたり、うちも新しい商品を使って庭や外構をプロデュースできるのは、土地柄も大きいのではないかと思っています。愛知、岐阜、三重の中京圏は見た目にこだわりが強く、外構に限らずあらゆるものを、少しでもより良く見せたい、という意識が根付いている地域なので。

── たしかに名古屋の結婚式はひと昔前までは“派手婚”のイメージが強かったりと、見た目へのこだわりの強さが文化としても表れているのかなと思います。

両角 家の中だけではなく、外側にもこだわっている方が多い地域だから、私たちの事業が飛躍できたという側面もあるのではないかと。エクステリアの専門企業というのは、20、30年前まではなかったので。

石垣 狭小地の多い関西に比べて、中京圏は敷地も広いというのもありますね。

両角 そうですね。だからこそ、画期的な商品が生まれていると思いますし、より面白いものが作れるような気がしています。それはユニソンも一緒なんじゃないかな。エクステリアというのは、家づくりでは内装、外装ありきで一番最後になる部分。インテリアに引けを取らないデザイン性のあるものが使えたらいいなと思っているので、石垣さんからはこれからも面白い商品を提案してもらえると嬉しいですね。

顧客の先の満足度につなげる

── ユニソンはその対応力や商品力で、ICMガーデンズさんのような顧客のニーズに応えているだけでなく、実際に商品を手に取るお客様も含めた周辺の人たちの困り事を先回りして減らしているような印象を持ちました。

石垣 たしかに商品の話で言うと、たとえば石畳調コンクリートブロックは、コスト高や経年劣化などといった困り事を事前に防げているのかもしれません。本物の石ではなくコンクリート素材にすることで、石に比べて低予算で購入、維持できます。また、石は経年劣化しやすいですが、コンクリートは石よりも色や形を長く保てるという特徴があるんです。

限られた予算の中でデザイン性はもちろん、長い間楽しめる空間をつくることが、お客様の満足度がトータルで高まることにつながり、それがエクステリアを長く楽しんでいただくことにもつながってほしいと願っています。

両角 エクステリアの多くは見て楽しむものだから、使うわけではないんですよね。その価値をどうやって高めるかとなったときに、商品の見た目だけを考えがちだけれど、やっぱりお客様はデザイン性に加えて少しでも長持ちしてほしいと思っているはずです。そういった商品開発はもちろん、配送などの対応、顧客との会話においてまで、ユニソンは真摯に行動していると感じています。

── エクステリアのニーズが高まっている中で、今後、お互いに期待することは?

両角 時代の流れとともにエクステリアのニーズが高まり、専門化も進む一方で、若い世代が少ないのがこの業界の現状です。20代、30代の従業員は少ないですよね?

石垣 少ないですし、なかなか定着しないですね。

両角 それは、上の世代が「楽しみながら仕事をすること」を、伝えてこなかったからだと思うんです。だからこそ、ユニソン含めて周りの人たちと、次世代のためにもっと働く楽しみを増やしていきたい。それが私たちの責務だと思っています。業界としては、メーカーや販売といった企業の垣根、仕事の範疇を越えてもっとお互いにコミュニケーションを取れるようになると、それが新しい商品企画や人材の育成にもつながるでしょうし、楽しみも増えるんじゃないかと期待しています。

石垣 そうですね。多様性が大切にされる時代の中で、企業とも個人のお客さんとも、一方通行ではなかなか成り立たない関係性になってきていると感じているので、どのように多方向で楽しみを増やしていくかということはもっと考えていきたいところかなと思います。

おわりに

目で見て楽しむ存在であるエクステリアを主に手がけるユニソンには、対応力や商品力で「顧客の困りごとを未然に減らす」という、目には映りにくい価値が眠っていました。そして、困りごとが未然に減らされるというのは、顧客だけでなく、あらゆるステークホルダーにまでもたらされることだとわかったのです。

目には映りにくい小さな変化をもたらし続けることで、結果的に、より多くの人が豊かな状態に変化する。

これは、ガーデンエクステリア事業だけでなく、このまちで暮らしたいと感じさせるまちづくりを提案するランドスケープ事業や、生活の基盤である住環境を快適にする温熱環境デザイン事業においても、同様に大切にされていることのように感じました。ユニソンは、ちょっとした心地よさを生む庭や公園を追求したり、施工に携わる人たちの仕事が円滑に回るようちょっとした心配りをして調整したりと、一貫して小さなアクションにこだわってきたからです。

ユニソンの根本にあるのは、創業から変わらない「Think Global Garden(深く探求しよう、地球規模の理想的な環境を。)」の言葉。「地球規模の理想的な環境」のような大きなテーマに対して、小さな変化を起こしていくことは途方もないことのように感じられるかもしれません。

しかし、そこで思い出すのが、アメリカの犯罪学者であるジョージ・ケリングが提唱した「割れ窓理論」。ディズニーやニューヨーク市が実践したとも言われる理論で、軽微な不正を正すことで甚大な不正を抑止できるという考え方ですが、ユニソンにもこれに通ずる精神性が根付いているように感じます。

一人ひとりの豊かさの総量を確実に増やすことが、世の中の小さな嫌なことを減らし、世の中に小さな良いことを増やすことにつながる。そのためにユニソンは、目には映りづらい、けれども確実な変化を、今日も起こし続けているのでしょう。

Outputs

パーパスの探索リサーチによって、社内・社外から得られた言葉や示唆を整理した上でパーパスとブランディングを構造化し、レポートにまとめました。

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社会課題解決に向け、地域に「共助」の仕組みをつくる
NECが挑む、新たな事業領域の探索