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岩崎 諒子, 岩沢 エリ, 横山 暁子, 山田 憲, 大石 果林 2023.04.13

技術とデザインを武器に、変化の時代をポジティブに生き抜く
デザイン経営スタディツアー#1 福永紙工

王道がない、「デザイン経営」のリアルを探るために

ロフトワークは、2019年にデザイン振興会と経済産業省 関東経済産業局との共同事業として『中小企業のデザイン経営』のリサーチレポートを公開。以降、これまで数多くの中小企業のみなさんとともに、プロジェクトを通じてデザイン経営導入を実践してきました。

当然ながら、企業によって業界の状況や事業内容、規模が異なるほか、課題とされていることとそのステータスも異なります。「経営」にひとつの正解がないように、「デザイン経営」のやり方にも全ての会社に当てはまる王道がないことから、どの課題から手をつけたら良いのか、あるいは今のやり方で本当に正解なのかなど、悩んでいる経営者の方も多いようです。

そんな中小企業経営者のみなさんとロフトワークが、デザイン経営のリアルを探るべく始めた新しい活動、「デザイン経営スタディツアー」についてご紹介します。

執筆・編集:岩崎 諒子/Loftwork.com編集部
企画:岩沢 エリ、横山 暁子、山田 憲、大石 果林/株式会社ロフトワーク
写真:村上 大輔

「現場」と「対話」を通じて、デザイン経営を立体的に学ぶ

先行している実践企業はどうやってデザインを経営に取り入れ、どんな具体的な成果を得ているのか。私たちがプロジェクトの活動を通じてさまざまな企業をリサーチしていく中で、いくつかの仮説が浮かんできました。

「デザイン経営」にまつわる経営者の悩み・モヤモヤは、経営者同士で共有・ディスカッションすることで、より本質的な視点やヒントを得られるのではないか? デザインが事業や組織作りに作用している「現場」を生で見ることによって、デザイン経営をリアルに実感できるのではないか?

そこで、私たちが新しく始めた活動が「デザイン経営スタディツアー」です。

生きた学びと実践者どうしの関係づくり

「デザイン経営スタディツアー」では、デザイン経営に取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている企業の経営者が、「先輩企業」を直接訪問します。工場やオフィスといった「デザイン経営の現場」を生で見学し、経営者同士が直接対話をすることで、「生きた経営アプローチ」を吸収することを目指しています。

さらに、業界・業種を超えた経営者同士が「デザイン経営」というテーマで繋がり、お互いの実践知を交換したり、チャレンジを後押しできるような関係づくりの場を提供します。

印刷加工のマエストロ「福永紙工」さんを訪問

第1回目の訪問先は福永紙工株式会社。東京都立川市で1963年に創業。同社は、2006年に発足した紙の可能性を追求するプロジェクト『かみの工作所』を皮切りに、デザイナーとの共同制作でオリジナル製品の企画・開発・販売をスタート。印刷・加工の枠組みにとどまらない取り組みが広告塔となり、現在では、世界的なアパレルメーカーなど多くの有名企業とのコラボレーションが生まれています。

社長が始めた「部活動」がはじまり

2023年2月某日、福永紙工さんの工場件オフィスにて、デザイン経営スタディツアーを行いました。ツアーに参加したのは、都内から東海地方まで、地域も事業内容もさまざまな7社の経営者のみなさんです。

ツアーのはじめに、福永紙工 山田明良社長(以下、山田社長)が事業内容を紹介します。司会・進行は、ロフトワークのCulture Executive 岩沢エリが務めました。

福永紙工 代表取締役社長 山田明良さん

元々は、大手印刷会社の下請け仕事がメインだった福永紙工でしたが、今ではほぼ全ての案件が「福永紙工さんと仕事をしたい」というクライアントからの依頼です。

変化のきっかけとなったのは、2007年からはじまった「かみの工作所」という自社ブランド。社長が始めた「部活動」的な活動で、さまざまなデザイナーとともに、印刷加工技術を使って作ってみたいプロダクトを発想し、プロトタイピングから製品化までを行うというもの。

これまで制作した中でもヒット商品となったのが、トラフ建築設計事務所とつくった「空気の器」。国内のみならず、海外の美術館のギャラリーショップなどでも扱われ、一躍有名になりました。以降、ミナ・ペルホネンや仲條正義さん、瀧本幹也さんといった著名なクリエイターとのコラボレーション製品も発表。現在も、多くのギャラリーショップで取り扱われています。

福永紙工の「ならでは」に触れる、工場見学

山田社長による事業紹介の後は、いよいよ工場の見学へ。

職工さんたちが断裁や抜き加工の機械を動かしながら、オリジナルプロダクトを製造している様子を見学したほか、箱や立体物の構造設計を手がける「構造設計部」の仕事を見せてもらいました。

山田社長曰く、「使っている機械自体は特別なものではない」とのことですが、難易度の高い繊細な加工を可能にしている職工さんの技術と、構造設計部による設計力が福永紙工の資産であることは間違いなさそうです。

また、ベテランの職工さんたちの間で、若い社員さんが多く働いていたのが印象的でした。

紙にまつわるデザインプロダクトを紹介「SUPER PAPER MARKET」

次に、一行は福永紙工が経営する紙のセレクトショップ「SUPER PAPER MARKET」を見学しました。

SUPER PAPER MARKETでは、紙にまつわる特殊な製造技術をもった世界中のメーカーや企業のオリジナル製品を展開する”WORLD PAPER PRODUCTS” を中心に、福永紙工のオリジナル製品全ラインナップが揃うコーナーや、紙にまつわる書籍など、紙と紙に関わる作り手の技術を伝えるミュージアムのような場を提供しています。

スタディツアーに参加した経営者のみなさんも、紙を素材としたデザインプロダクトの種類の豊富さに大興奮。デザイン経営を学ぶための参考資料としてか、あるいはシンプルにお土産なのか……みなさん、たくさんお買い物していました。

新事業開発から事業継承まで、中小企業の「デザイン経営のリアル」を語り合う

スタディツアーの締めくくりとして、福永紙工のデザイン経営の実践内容をさらに深く掘り下げ、そのエッセンスを言語化するためのトークとディスカッションを行いました。

ここから、山田社長の三男である十維さんが参加。十維さんはデザイナーとして活躍しており、昨年、福永紙工の新しい事業「UNBOX」のデザインとプロデュースを手掛けました。トークでは、十維さんと山田社長がこの「UNBOX」の成り立ちと事業内容を紹介。自社製品とOEMとの「間に位置する」新事業が、なぜいま必要だったのかを語りました。

左から、山田社長、三男の十維さん。

後半は、参加者も交えたディスカッションを実施。「事業継承についてはどう考えていますか?」「デザイン人材が在籍し続けるために、工夫していることは?」など、経営者視点からの質問が投げかけられました。

福永紙工がさまざまなデザイナーとの協働を通じて、発見できた自社ならではの「強み」とは? そして、デザインの力を活かして実現した事業と組織の変革とは? 詳しくは、以下のダウンロード版ホワイトペーパーでご紹介しています。どなたでも、無料でご覧いただけます。

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ツアーの中身や福永紙工による具体的なデザイン経営の取り組みを、ホワイトペーパーに掲載しています。
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空間に魂を吹き込む、オフィスリニューアルの軌跡