FINDING
長野 彩乃 2024.03.13

Webサイト運用の道具箱 Vol.4
Webサイトの“バックヤード”の課題、どこから・どう改善する?

シリーズ「Webサイト運用の道具箱」について

ロフトワークは、Webクリエイティブのプロフェッショナルとして、さまざまな企業や大学、自治体のWebサイト制作に携わっています。一方で、実は、ロフトワークにも他社と同様に「Web担当者」がいるんです。

普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのマーケティングUnitでWeb担当者として活動している長野彩乃が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。

前回は「データ」をいかに取得し、そこからUI・UXの改善施策をどのように見つけていくのか、どのように改善したのかをご紹介しました。今回は、Webサイトの「裏側」について、運用ルールや業務フローに関わる改善・改修の話をします。

Webサイトを運用するということは、必ずそこに「更新する人」がいます。
「ここが更新しづらい…」「ここは今の方針に合わせて選択肢を変えたい」「更新する人を増やしたい」等、外からは見えない、内側にいる運用する人にとっての課題がたくさん発生するのです。

Loftwork.comは「コーポレートメディア」をうたっており、月に30本以上の記事を更新しています。Loftwork.comで更新に関わる人は、所属部署や立場、更新頻度はバラバラですが、社内で10名超となかなか大所帯です。

そのため、Web担当の元にはそれぞれの視点からの使いづらさや、Webサイトの更新ルール、業務フローなどに関する課題についての相談が各方面から入ってきます。今回は、そんなさまざまな改善相談に対して、何から、どう対応するのかをお話ししていきます。

執筆:長野 彩乃/ロフトワーク マーケティング
編集:岩崎 諒子/Loftwork.com 編集部

Loftwork.comの構造とCMS

Loftwork.comはWordPressというCMSで更新作業を行っています。
CMS内には、いくつものテンプレートがあり、大きくは、「Work(Project)」「Findings」「Events」「People」「News」「Recruit」「Group」「Method」「その他」に分かれており、その中でもいくつかの分岐があります。発信したい情報に合わせて作成されたテンプレートは、htmlの知識がなくても、誰でも更新できる仕様になっています。

社内から相談が来た。何から動く?

社内からコンテンツ運用ルールや業務フロー改善等の相談が来たときに、すぐに「対応します」「対応しません」と判断するのは難しいですよね。これも、UI・UX改修と同様に、重要度や優先順位を適切に見極める必要があります。相談が来た際、主に以下のポイントを確認した上で実施如何や優先度を決めていきます。

  • 影響範囲はあるか
    • そのテンプレートだけなのか、他のページで「自動引用」されている場合、影響はあるのか
  • 影響範囲に伴う関係者の範囲
    • かなり絞られた人しか関係ない話になるのか、関係者全員に関係する話なのか
  • 工数
    • 実施した場合、誰が関係者となって、何をする必要があるのか
    • 優先度/緊急度

これらをクリアにした上で、運用ルールや業務フローの改善を進めていきます。
実際に、Loftwork.comで改善を実施した例をご紹介します。

例1)ハッシュタグの一括更新

Loftwork.comでは、各詳細ページ共通で「ハッシュタグ」が存在します。
あらかじめサイト内で指定されたハッシュタグは、全詳細記事が紐づけ可能です。ある記事を読んで、他にも関連する記事を読みたいなと思ったとき、ハッシュタグから簡単に関連記事に遷移することができます

ハッシュタグページ例)https://loftwork.com/jp/tags_main/website

ハッシュタグには、以下の2種類が存在します。

  • 一覧やTOP、詳細ページ全てに表示されるMainタグ
  • 一覧やTOPページには表示されないSubタグ
表示箇所例)Findings詳細ページ
表示箇所例)TOPページ

Mainタグは、Webサイトリニューアル時に策定して以降、マーケティングの戦略や方針に合わせて、マーケティングチームの管轄のもとで「追加」を行ってきました。一方で、一覧には表示されないSubタグに関してはあまり厳密なルールはなく、各部署のメンバーが必要に応じて自由に追加してきました。

その結果、

  • MainタグとSubタグに同じ名前のものが存在する
  • MainタグとSubタグの方針ルールが曖昧になる
  • Mainタグの古いものが残り、良い記事なのにたどり着きづらくなる/管理画面上でも探しにくい

という問題が発生してしまったのです。

一見すると、今回のケースは機能の改修が含まれないので、「コンテンツの編集担当者が、自分でタグを登録しなおせばいいのではないか?」というふうにも見えるかもしれません。しかし、実はこの作業はWeb運用の知識がないとかなりの時間と工数がかかってしまいます。

今回の場合は、

  • MainとSub合わせて200~300のタグをすべて書き出し、更新する
  • 紐づけ作業は1つ1つの記事に入り付替作業をする

という作業が発生することが見込まれました。

そこで「更新作業の軽減」という視点で、Web担当の業務として対応したのです。

影響範囲 サイト全体
影響範囲に伴う関係者の範囲 サイトに関わる全員
工数
  1. CSVでの一括登録の可否を確認する→今回は可(自分)
  2. 運用ルールを決める(編集責任者)
  3. タグ一覧から、「テキスト変更」「削除」「そのまま」からを判断し、新規追加するものを検討する(編集責任者)
  4. 決まったタグに紐づける記事を決定する(編集責任者)
  5. 流し込み用CSVに反映する(自分)
  6. 反映作業と確認時間を抑える(自分)
  7. 運用ルールを関係者に展開する(編集責任者)
先度/緊急度 高 ※急ぎではないが、施策戦略としては優先度高

Web担当者の作業だけでは完結しない内容に加えて、作業量自体もかなりボリュームがあったのですが、声を上げたのがコンテンツ編集の責任者だったことから、課題が提起された直後から動きました。

ただし、ボリュームのある作業についてはコンテンツ編集に携わるメンバーの協力を仰ぎながら、3週間ほどで更新作業を行いました。

例2)表示ルールの変更

Loftwork.com内の記事テンプレートには、「本文」「見出し」「画像+本文横並び」「枠付き」「リンクセット」等、記事の本文を構成するための「コンテンツのパーツ」が数多く存在します。実際の記事は、それらを組み合わせて公開しています。

そのなかの一つに「関連リンクセット」というものがあります。記事の関連リンク集をテキストリンクでまとめて掲載できるというもので、シリーズ記事やテーマが関連する記事同士などの回遊を促す機能として実装されています。

しかし、この関連リンクセット、リンクはすべて改行がされず、横並びという仕様で表示されていました。もともと上述の「ハッシュタグ」を並べて使用する想定だったらしくこの仕様だったのですが、運用していく中で、他社サイトへのリンクでこのパーツを使用することが増えてきたので、コンテンツ運用チームから「改行できるようにしたい」という相談がありました。

以前リンクごとに改行できなかった
追加した改行できるパターン
影響範囲 詳細ページすべて
影響範囲に伴う関係者の範囲 サイトに関わる全員
工数
  1. 関係者に表示ルール変更の確認をする

  2. 改行ルールになるようにコーダーに依頼する

    1. サイト内に「箇条書き」のデザインはあったのでルールは同様とする

  3. 確認し、サイトに反映する

先度/緊急度

今回の改修の中では「関係者に表示ルール変更の確認をする」という工程が、実は1番重いな、と思いました。その理由は、関係者全員に「関連リンクセットの中身が全て改行されて大丈夫ですか?」と合意を取って回る必要があるからです。

ここでとった手段が「機能追加」です。パーツが増えることで操作画面が多少煩雑になってしまう懸念もあったのですが、ここで既存パーツに手を加えると、過去公開したものもすべて改行されてしまいます。そのことで問題が発生するかどうかを社内の全ての関係者とコンテンツに対して確認をしていくのは、かなり工数がかかってしまうだろう、と判断しました。

結果として、関係者の確認工数がほぼ0になり、自分主導でスムーズに機能追加を進められました。

まとめ

今回は具体的な実践例を通して、どのように運用課題を改善しているのかをご紹介しました。

Web担当者の元には、組織やチームの中から絶えず運用ルールやフローなどの改善について要望が届くと思います。中には、「ちょっと無茶だなあ」というものや、「本当にやりたいことって、そういうことなんだろうか?」と悩んでしまうものもあるでしょう。他部署の人々との間にリテラシーのギャップがある場合、なおのこと難しい局面は増えていく。

しかし、Web担当者が運用に携わるメンバーからの投げかけに真摯に耳を傾け続けると、相談の内容が

「これをこうしたい!」という言い切りから
「これに悩んでいるんだけど…どうしたらいい?」

というふうに、一緒に解決の道筋を探って欲しいというものに変わっていきます。

それは「この人ならなんとかしてくれるだろう」という信頼関係が出来上がってきた証でもあると思うのです。とにかく、要望に対して「無理!」と断る前に、「本質的な課題解決をするには、何を支援してあげられるだろうか」という視点から、できるだけスマートな解決策の選択肢を用意しながら、コンテンツ運用の現場に寄り添っていけると良いですね。

運用改善のPOINTS

  • 相談が来たら、「影響範囲」「影響範囲に伴う関係者の範囲」「工数」「優先度/緊急度」から判断する
  • 「Webサイトの設定」や仕組みを知っているからこそ提案できる更新・運用方法がある

Webサイト担当者と話しませんか?
Loftwork.comのサイト運営に関わるメンバーに、Webサイト運用に関して一緒にお話しませんか?
「社内に他にWeb担がいなくて、相談相手がいない…」という方、一緒にどうやったら解決できそうかのアイディア出しや相談を受け付けています。

※営業、競業の方、ツールを変わりに設定してほしい等のご相談はお断りする場合があります。ご了承ください。

Webサイト担当者相談へ申し込む

シリーズ:Webサイト運用の道具箱

普段、プロジェクトなどの情報発信の裏方として活動している「ロフトワークのWeb担当」がどんな仕事をしているのか、どうやってコミュニケーションを支えているのか。ロフトワークのWeb担当者が、Tipsや小噺的なエピソードをご紹介します。

Keywords

Next Contents

街の緑、食品ざんさ……都市の「分解」を可視化する。
「分解可能性都市」展示レポート