第2回:ブレインストーミング~集合知を形にする方法~ [HUBのTips編]
第2回:ブレインストーミング~集合知を形にする方法~ [HUBのTips編]
2012年7月4日、「Tokyo Art Research Lab 実践!プロジェクトデザイン」第2回講座が開催されました。(第1回のレポートはこちら)今回のテーマは、「ブレインストーミング~集合知を形にする方法~」。アイデアをどのように引き出し、ファシリテーションしていくべきか、座学と実践の両方で学びました。
世界で唯一の、グローバル コワーキングスペースから「ブレスト」を学ぶ
ゲスト講師は、『HUB Tokyo』の槌屋詩野さん(写真右)、片口美保子さん(写真左)。講座冒頭では、世界中約30カ所に展開するコワーキングスペースネットワーク『HUB』の東京拠点設立プロジェクトを手がけるお二人に、HUB流アイデア発想法や、ブレストの秘訣をご紹介いただきました。
HUBはアントレプレナー、クリエーター、デザイナー、アーティスト、エンジニア、ライターなど様々な業種業界の人がつながる世界的なプラットフォーム。互いに知識や経験などをシェアしながら、新しい価値や新しいビジネスが続々誕生する「秘密基地」には、どんな秘訣があるのでしょうか?
Pop-up HubのブレストTips
槌屋さんが今回紹介されたのは、参加者が議題を持ち寄り、ブレストを展開するイベント「Pop-up Hub」。ときには数日間かけて数十人〜数百人が参加することもあるイベントだそうで、初めての人も参加しやすく、議論の途中からでも価値ある提案ができるような様々な仕掛けが実践しています。
*議論をバトンしていく仕組み
課題テーマごとに分かれたテーブルで、新しく出会った人とその場で30分話し、また席替え…を繰り返すトレーニング的なブレスト。議論の経過をまとめてホワイトボードを見れば、メンバーが変わってもテーマを引き継ぐことができるような仕組み。
*スペシャリストがアイデアを刺激する
ファシリテーターは、HUBのスタッフが担当。各テーブルに必ず1名参加し、客観的な立場でファシリテートしていく。Twitterでそれぞれの議論展開を発信し、リプライを拾っていく専任担当者や、議論の面白い部分をマンガ化し、張り出していく「カートゥニスト」も重要な役割。
*アイデアの駐車場 アイデアを出し合い共通点を探っていく中で、どの項目にもつなげられないような単語がでてきた場合、「パーキング」エリアにプールさせておきます。後から意外なつながりがでてくる可能性も大事にします。
ブレインストーミングによる発散の基本の「き」
*ブレインストーミングを発散させるコツ
- ソリューションを限定したり、広げすぎず、目的を適切に設定すること。
- 人が本当に集中できるのは15分。終了時間を決め短期集中すること。
- 考えていることを言葉にして書き出して明文化すること。・まずは質より量を重視し、ゲーム感覚でアイデアを多く出すこと。
- 他の人のアイデアからストレッチして、絵や図を使って展開していくこと。
- 書いたり、立ったり座ったり、体も動かすこと。
- 既存のものを観察したり、街のアンケートをとったりと、あらゆるものを使うこと。
*ブレインストーミングに良くないこと
- 順番をつくること。
- くだらない、実現不可能と言うこと。
- 偉い人、専門家が正しいとは限らない。
第2回:ブレインストーミング~集合知を形にする方法~ [ワークショップ編]
プロジェクトデザイン講座 第2回の後半は、実践的なワークです。チームごとにブレインストーミング(ブレスト)を開催しました。
ワークショップ: 実践! ブレストでアイデアの発散・構造化・収束
◎お題:
チームで手がける「プロジェクト」企画を決める
◎方法
1. チームのファシリテーターを決める
2. 前半30分間:それぞれ持ち寄った企画やテーマを出し合い、アイデアを拡げる
3. 後半15分間:膨らんだアイデアを収束させながら、プロジェクトの具体的内容まで落とし込む
◎ポイント:
- ファシリテーターは各アイデアを客観的にジャッジし、ラベリングし、マッピングしていく
- メンバーはファシリテーターに話すようにして、意見はみんなで聞く
- アイデアは付箋に書いて動かしたり、矢印でつないで動かせるようにする
- 上位概念や共通点をみつけアイデアを発散する
- 発散の時間はどんどん言葉や線を増やしていく
アウトプット:各チームのプロセスとアイデアマップ
ブレインストーミングやファシリテーションは、簡単なようで深いもの。慣れないチームでの短時間ブレストはなかなか難しかったようです。チームによって進行もアウトプットの形も様々だったので、簡単にそれぞれのチームのプロセスとアウトプットをご紹介します。
コンセプトビジュアルから“出航”、「ホットジャパン」を目指す!(チーム白船)
*プロセス:
チーム名である船の絵を描くところからスタートし、付箋にキーワードを書いて共通点ごとに郡を作るスタイルで展開。違う共通点がみつかると、付箋をどんどん動かし、フレキシブルに展開していきました。
*ポイント:
最初に船出発点に絵を描いたことで、チームの方向性がイメージとしてシェアしやすくなり、コンセプトもスタートからブレのない、腑に落ちるものとなりました。テーマは、「クールジャパン」に対抗して「ホットジャパン」。日本のクリエイティブを海外に発信していくプロジェクトを展開していきたいとのこと。
「もてあましている人」と「足りない人」を繋げたい、具体化に課題(チーム熱帯低気圧)
*プロセス:
ホワイトボードに直接キーワードを書き始め、ディスカッションの中で出てきたキーワードは付箋に書く方法。アイデアの郡を作りながら、共通するキーワードを色の違うペンで書き込んでいきました。
*ポイント:
「もてあましている人」と「足りない人」を繋げたいというコンセプトは決定しましたが、収束のフェーズでさらに上位概念に発展してしまったため、具体的に落とし込むことが次回への課題となりました。具体化・詳細化が足りないと、抽象化しても着地が難しくなります。
2人ファシリテーター体制、「自分の力で生きる」をテーマに詳細化(チームMixedCandy)
*プロセス:
メンバーそれぞれが付箋を使いながらキーワードを貼っていきました。そして繋がりを線で書きながら出てきたアイデアや共通点は横に直接書き出していきました。このチームでは2人のファシリテーターがメンバーに問題提起するかたちで進行していきました。
*ポイント:
テーマは「自分の力で生きる」ために人の資源を繋げること。ただ、抽象的な単語が多かったため言語化できていない部分があり時間が足りなかったようです。みんなのイメージに共通する言葉でより具体的な方向性を明文化していくことが課題となりました。
拡散と収束のメリハリを大事に。ファシリテーターは客観性が重要(チームReal)
*プロセス:
初めピンクの付箋だけを使ってキーワードを貼付けていきました。キーワードの量は多くありませんでしたが、矢印で繋げたり、丸で囲ったりしながらファシリテーターがどんどんボードに書き込んでいきました。プロジェクトテーマは、「アンチロジカルな日本独自のワークスタイルができる場」。
*ポイント:
前半はファシリテーター主導で話が進んだため、後半はメンバーのアイデアを改めて付箋に書き直していきました。収束のフェーズで一人一人のアイデアを発散させてしまったので、時間が足りなかったようです。これからは客観的な立場でメンバーをファシリテートすることが課題となりました。
事前準備でチームビルディングもしっかり。言葉のミックスでイメージを共有(チームハプン)
*プロセス:
「それぞれのやりたいことをチームで共有する」という宿題をしっかりとこなし、まとめたシートを事前に印刷して配布するという、しっかりしたチーム。付箋でキーワードを貼付け、どんどん動かして矢印で繋げていきました。その繋がりについて一人一人が意見し、みんなが聞くというスタイルだったので、発言が活発でボードへの書き込みも増えていきました。
*ポイント:
「目的のない場所」というキャッチコピーが派生し、「縁側っぽい空き地」というコンセプトの“場”を作ることがテーマに決定。参加者みんながイメージできるキーワードを掴みにもってきたことと、「縁側」と「空き地」という言葉のミックスが人を惹き付けつけました。
Facebookで事前のブレスト、ファシリテーターが指標を決める(チームSHINEZ)
*プロセス:
事前にFacebookグループで話し合った内容をiPadで見ながらリーダーが箇条書きでキーワードを書き出すところからスタート。その後、共通する点を付箋に書いて貼っていくという他のチームとは違ったスタイル。現代の家庭の問題を、新しい女性・古い女性とセグメントし、マーケターの視点を取り入れながら、最終的に「新しい社会に適応しきれていない家族を“マッチングする仕組み”を作る」という方向性に落とし込みました。
*ポイント:
ブレストの途中からファシリテーターを決めたことにより「楽しいかどうか」という指標が定まってきました。マーケッターチームらしい、バランスのとれた議論でしたが、まだまだ具体化の余地はありそうです。
まとめ:チームビルディングがブレインストーミングの質を上げる
今回のワークでは各チーム、アイデアを具体的な言葉に落とし込んでいくことが難しかったようです。講師からのまとめでは、それぞれが自分の意見を主張しながら、粒度を上げる(みんながイメージできるように言葉の粒の度合いを小さくし具体化していく)ことが重要だと提示されました。また、集合知を形にしていくためには、心を開いて意見をぶつけ合えるチームビルディングが必要とのこと。
今回の宿題は、様々な「観察」の手法を用いながら、「プロジェクトに関わる具体的なイメージに近いものを探してくること」。次回は、プロジェクトの方向性を決めるのに重要な「プロジェクトコンパス」作成にチャレンジします!