第4回:ラピッドプロトタイプ ~仮説検証のモデルを作る~ [FabLabの実践編]
第4回:ラピッドプロトタイプ ~仮説検証のモデルを作る~ [FabLabの実践編]
2012年7月18日、「Tokyo Art Research Lab 実践!プロジェクトデザイン」第4回講座が開催されました。(レポート:第1回 / 第2回 / 第3回)今回のテーマは、「ラピッドプロトタイプ~仮説検証のモデルを作る~」。プロジェクトの価値を人に伝え、検証していくための手法を学びました。
「つくる」ことの価値とは何だろう? FabLabのメソッド
次世代のものづくり現場から「プロトタイプ」作りを学ぶ
ゲスト講師は『FabLab Kamakura 』の渡辺ゆうかさん。講座冒頭では、3次元プリンタやカッティングマシンなどの工作機械を備えた市民参加型工房『FabLab』の日本初の拠点、『FabLab kamakura』のコンセプトと実践内容を紹介。ソーシャルなものづくりと、プロトタイプの考え方について、渡辺さんからご紹介いただきました。
FabLabは、自分の手で自分のほしいものをつくる『パーソナルファブリケーション』という考え方をもとに、世界130カ所以上にネットワークを展開している、次世代のものづくりの「インフラ」。誰もが使えるオープンな存在でありながら、最先端技術を備える工房では、様々な実験が行われています。(ロフトワークのFabLabレポートはこちら)
化学反応を起こすプロトタイプの方法
渡辺さんが今回紹介されたのは、一般の方と共同でものづくりに取り組むプログラム、『結のファブ』。 当日FabLab Kamakuraに来ていただき、“黒板に名前を書いた順”というゆるやかなルールで、1日2組限定の完全予約制で続けています。ゆっくり、じっくりとカウンセリングを行いながら、ものづくりに打ち込める街医者診療スタイルをとっています。
*「結のファブ」に参加するためのちょっと変わった条件
- 制作した作品1点を展示用に提供すること
- 作品の写真と文章を制作すること
- 作品データをオープンソースにすること
- 作品をWebなどでシェアすること ものづくりをソーシャルにしていくことで、問題が解決されたり、様々な化学反応が起こる仕組みになっています。
同じデータでも素材を変えるだけで見え方が全く違ってきたり、素材の特性で新しい発見があったりと実験工房では日々新しい学びが生まれています。 渡辺さんが実践しているのはまさに、完成形をつくることそのものではなく、アイデアを形にすること、そのためにあらゆる方法で様々な形でつくってみること。後半では、このFabLabナレッジを活かしつつ、プロジェクトデザイン的プロトタイピングに挑戦します!
第4回:ラピッドプロトタイプ ~仮説検証のモデルを作る~ [ワークショップ編]
前回は各チームともプロジェクトコンパスシート(プロジェクトの目的や課題、スケジュール等の全体像)を完成させました。(第3回のレポートはこちら)。プロジェクトの方向性が固まると、スピードも加速していきます。
中には、講座以外の日に集合し、サービスのロゴデザインを作ってみたり、モックサイトの立ち上げたりする精力的なチームも。今回のテーマである「プロトタイプ」のイメージは十分にできているようです。
ワークショップ:プロジェクトのMVP(実用最小限の製品)を作ろう
「大衆向けを目指さない」プロトタイプのターゲット設定
今回、ワークショップで挑戦するのは、「ラピッドプロトタイプ」。プロジェクトで作り上げようとしている製品・サービスのコアな価値を伝え、検証して行くためにMVP(Minimum Viable Product)を制作してみます。
ここで重要なのがターゲット。コンセプトを考えるときと同様、いきなり大衆向けのものを作ろうとすると、課題も大きくなりすぎてしまうもの。MVPではミニマムな単位で課題を設定し、実用最小限の製品をまず作ってみて、目的達成の効果検証をしていくことを大事にしていきます。
ミニマムな単位を見つけるには、特定の課題にフォーカスすることが重要。先端動向に敏感で、情報収集を自ら行い、他の消費者人たちに影響力のある「アーリーアダプター」を具体的なターゲットとして意識してみることが手がかりになります。
ワークショップ:やりたいことの価値を最小限の形で最大限伝える
ストーリーボード、ポスター、プレスリリース、パフォーマンスなど、プロトタイプには様々な表現方法があります。例えば、Twitterのコンセプトをストーリー仕立てにしたアニメーションもその一例です。各チームは、自分たちのプロジェクトに合わせたMVPを制作することに挑戦しました。
◎ お題:
プロジェクトの価値を伝える「プロトタイプ」を何で表現するか決め、形に落とす
◎ ポイント:
- 既存の表現に縛られないこと
- ユーザを中心にで考えること
- 材料の選択、手法は自由
触れたらわかるぐらいの「エッヂ」はどこにある?
ワークの前半では、どのチームもA4サイズのフライヤーやパンフレットなどのフォーマットをプロトタイプとして考えていたようです。でも、それで本当に、その企画のコアは検証できるのでしょうか? そこで、講師陣がヒントとして提供したのは、既存の形に縛られずユーザー中心に考えること。例えば、FabLab 渡辺さんが挙げたアイデアは、以下のようなもの。
- 人の繋がりや輪を表現するなら、A4ペラのフライヤーではなく、ジャバラ式や巻物にしてみる
- 「座る」といっても色々な座り方があるから、座っている人のシルエットをたくさん描いてみる
- ユーザーテストする時に、みんなでお揃いのTシャツを着てみる
渡辺さんのアドバイスをきっかけに、それぞれのチームから、独特のアイデアが出てくるようになりました。MVPは、プロジェクトのユニークネスを体現するモノでもあります。このアイデアがとても重要。
「FabCafe」でプロトタイプ
プロトタイプのイメージができたチームは、実際のものづくり作業に突入です。「チーム熱帯低気圧」は、自分のニーズと、余っているニーズの部分を凹凸で表した“パズル”をプロトタイプにしました。講座の会場であるloftwork IDの1階には、デジタルものづくりカフェFabCafeがあります。このFabCafeにあるレーザーカッターを使用してプロトタイプ作りに挑戦しました。
必ずしもレーザーカッターを使う必要はありませんが、講座の最後に、FabCafeチケットが配布されました。また、次回の講座では、FabLabのデジタルソーイングマシーンもお借りできることに! 次回は、できあがったプロトタイプを元に、ユーザーインタビューで検証を重ねる「プロトタイプテスト」を学びます。