コミュニケーションを加速させるチームの集まり方を考える
〜「Donuts Basecamp Project」実験レポート
こんにちは。LAYOUTユニットの伊阪です。
LAYOUTでは様々なプロジェクトを通じて、新しい共創スペースや、働く人の⾏動や思考さえも変えるような場所をつくっています。私もそんな空間をつくる一員になりたい!と思い、2022年4月にロフトワークに入社し、LAYOUTに所属してもうすぐ一年が経とうとしています。
そんな私ですが、ロフトワークに入社する前は建築の設計事務所に勤めていました。当時は会社から徒歩3分の場所に自宅を構え、毎日出社し、毎日固定の席でデスクトップPCに向かう日々。隣にはすぐ先輩社員がおり、クライアントや業者との打ち合わせも必ずオフラインで行っていました。2020年以降、コロナウイルス感染拡大により、対面でのコミュニケーションに注意が必要になった頃も、模型や図面を囲む業務であるがゆえに、なかなかすぐにはリモートに切り替えられず、毎日出社していました。
昨年、ロフトワークに入社し、そんなワークスタイルは大きく変わりました。
時には渋谷のオフィスで過ごし、時にはLAYOUTが運営に関わるSHIBUYA QWSで過ごし、自宅やカフェで作業をすることも。社内の打ち合わせも社外の打ち合わせもオンラインで行うことが多くなり、実際に人と会うことが少なくなりました。
この記事ではこの数年で働き方が大きく変わったひとりである私・伊阪がLAYOUTユニットで行なった、組織力を高めるためのオフィスのレイアウトの実験「Donuts Basecamp Project」のレポートをお届けします。
編集:鈴木真理子(ロフトワーク)
組織の生産性/創造性を上げるために
コロナ禍での感染対策が拍車をかけ、この数年で多くの人が当たり前のようにzoomなどのオンラインツールを使えるようになり、働く場所の選択肢は大幅に増えました。出社した際のオフィスでも、フリーアドレス制を導入する企業が急速に増え、オフィスのどこでも好きな場所で過ごす様子が多く見られるようになりました。
個人の希望に合わせて、働く場所を自由に選べることーーこれらはメンバーの価値観やライフスタイルを尊重する、多様性のある働き方にもつながっています。しかし、個人を超えて、組織として成果を上げる(=創造性と生産性を上げる)ためには、働く場所の選択肢が増えることだけで十分でしょうか?
組織として創造性と生産性をあげるためには、オンライン/オフラインの両方のコミュニケーションが行われるという前提で、個人のスキルや経験も異なるメンバー同士が、良い影響を与えながら組織として成果を上げることが必要です。
これは、入社一年目の私が、実際にリモートワークをしながら感じていたことでもあり、先輩社員に雑談をしながら気軽に聞けたり、チームの雰囲気を感じられる機会が減ってしまうリモートワークでは、いくら自分の好きな場所で働けても、成長機会を逃しているように感じていました。
そこでLAYOUTでは、働く場所の選択肢だけではなく、コミュニケーションのとり方などを含めた「組織全体の働き方の選択肢」を増やすことで、生産性や創造性を上げることはできないかと考え始めました。
まず私たちは、「出社したときの生産性と創造性をあげるワークプレイスの形は、出社だけを前提にしたオフィスの形とも、フルリモートを想定したオフィスの形とも違う、新しいものが必要なのではないか?」という問いをたて、以下の仮説を作り実験を行うことにしました。
仮説
1. オフィスでのミーティング後、すぐにラップアップできる状態がチームの生産性/創造性を高めるのではないか
2. 隙間時間の雑談・余談を通して、メンバーの様子を近くで感じる状態がチームの生産性/創造性を高めるのではないか
Donuts Basecamp Project始動!
この2つの仮説から渋谷オフィスの一角をドーナツ型にアレンジし、「オンラインミーティングや個人作業は背中合わせの状態」「ミーティング後のラップアップは向かい合わせの状態」のそれぞれが行えるようにデスクやモニターなどの什器をレイアウトしました。中の円に集まり、外の円に解散する形から、この場所を「Donuts Basecamp」と名付けました。
そして、渋谷メンバーの各チームごとにこのDonuts Basecampを使用する日を設け、「背中合わせの状態」「向かい合わせの状態」をそれぞれ意識してもらいながら終日過ごしてもらいました。
コロナ禍を経て実際に人と合わないオンラインのミーティングが多く、またチーム内には同じプロジェクトメンバーもいるため、近い場所で同じオンラインミーティングに入ると自分の声が自分のマイクに隣にいるメンバーのマイクにも入り、ハウリングが起きることが予想されました。そのため、集音性の高いマイクを使用してもらい、背中合わせの状態でzoomなどに入ってもらいハウリングを防ぐようにしました。
実験でみえた、集まる価値と改善点
1日過ごしたチームには感想や気づいたことをアンケートに書いてもらいました。
よかった点には、次のようなことが挙げられていました。
- ちょっとしたミーティングがすぐにできる
- わからないことや質問を気軽に聞くことができました。
- 困った声をあげると、すぐ全員が気がつく。
- ちょっとした細かいこと(Slackで投げるまでもないなーというくらい些細なこと)がすぐ聞ける
- 部屋っぽさがあることによって、心理的な安心感がある。移動したあととか帰社時に「ただいま〜」という感じが良い
- チームの方が今、何やってるかな・・とか動きが少しでも感じられたのが良かった
- 一体感(チーム感)を感じられました!
- 後ろを向けばオフラインのミーティングができるのはすごく便利です
オンラインツールに慣れているロフトワーカーにとっても、リアルで集まる価値や背中合わせ⇄向かい合わせのような動きによる「チーム」を感じたようです。(=組織の生産性/創造性はアップしたのでは⁈)
しかし、まだまだ課題もあります。
アンケートには改善点としてこのように挙げられていました。
- ハウリング等オンラインミーティングがしづらい(同時にミーティングに入ると隣の人の声を拾う、支給されたイヤホンを付けても声が二重に聞こえてしまう)
- 出入りの導線が少ない、または狭い
- プロジェクトメンバーがチームを横断している場合があり、空間の話以前にそもそもラップアップは生まれにくいかも(プロジェクトのラップアップを行うのがDonutsBasecampの中で近くにいる同じチームの人でない場合がある)
- 個人情報や給与情報など、他の人に見られてはいけない業務が多いので、このスタイルは向いていなかった
- 真ん中の席に来るタイミングが分からなかった(特に不便ではないが)
特にネガティブな意見として上がった音の干渉については、今回の実験のあと岩沢兄弟(デジタル・アナログ両方のツールを活用したコミュニケーション設計を得意とする)にも協力いただきながら、当初導入したマイク(イヤホン)よりさらに高性能のヘッドセットを導入しました。
まとめ
このプロジェクトは今後も「組織としての生産性や創造性を高めるために」「気持ちよく働くために」何ができるのか、どのような働き方の選択肢をつくることができるのか模索すべく実験を続けていきます。
それは空間のレイアウトだけではなく、最新のデジタルツールかもしれません。ユニークな家具かもしれません。チームメンバーの動作といったようなソフトな面が働き方の選択肢を新たにつくることもあるかもしれません。
そしてこのプロジェクトはLAYOUTユニットメンバーだけの実験・ロフトワーク渋谷オフィスだけの実験にとどまらず、さまざまな方とコラボレーションしながら働き方についてディスカッションしていきたいと思います!
ぜひ今後の実験にご期待ください!そして私たちと実験しましょう!
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